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6月30日(土) ワールドカップの影で強行された働き方改革関連法案の採決についての『日刊ゲンダイ』でのコメント [労働]

〔以下の私のコメントは、ワールドカップへの熱狂のどさくさに紛れて強行された働き方改革関連法案採決について『日刊ゲンダイ』2018年6月30日付に掲載されたものです。〕

 「労働法制は人の生き死にかかる重要な政策です。過労死を容認するような中身で、多くの問題点が明らかになっているのですから、強行して成立させるような法案ではありません。政府も当初こそ『労働者のため』と言っていましたが、ここへきて経営者の利益が優先されていることも見えてきました。正々堂々と議論できないから、『国民がW杯に気を取られているうちに……』『サーカスに惑わされているうちに……』という姑息なやり方で法案を成立させようとするのでしょう」

 「支持率1%に低迷したままの国民民主は立憲民主とは違うことをして独自性を示したいのでしょうが、与党を利するだけです。『野党の足並みが乱れている』とメディアに報じられ、有権者にも『党利党略』と思われ、結果的に国民民主にとってプラスにならない。支持率も上がりませんよ。どうしてそういうことが分からないのでしょう」(五十嵐仁氏=前出)

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5月1日(火) 賃上げと時短は日本の経済と社会の再生のために待ったなしの課題だ [労働]

 今日、5月1日はメーデーです。「万国の労働者、団結せよ」というスローガンのもとに、労働時間の短縮を目指して全世界の働く人々が一斉に声を上げるべき日になっています。
 今日の日本において、賃上げと労働時間の短縮は経済と社会を再生するために待ったなしの課題となっています。この課題の達成のために決意を固めあい、行動に立ち上がる日になってもらいたいものです。

 1886年5月1日、シカゴを中心に8時間労働制を要求して統一ストライキが闘われました。それが起源となって8時間労働日を求める運動が世界中に広がり、世界の労働基準として確立されてきました。
 それから100年以上も経つのに、この日本では未だに8時間労働制が十分には確立されていません。しかも、この8時間労働制を定めた労働基準法は、安倍政権によって風前の灯火となっています。
 働く人々の命と生活を守るためにも、戦後最大の危機を迎えている労働基準法の改悪を何としても阻止しなければなりません。

 アベノミクスの下で大企業は史上空前の利益を上げています。しかし、それは働く人々には還元されず、低賃金で労働条件が劣悪な非正規労働者の拡大によって貧困化が進み、格差が拡大してきました。
 大企業の儲けは内部留保を増やしているだけです。消費者でもある労働者の可処分所得は増えず、内需が衰退し国民経済の発展にも全く役立っていません。
 多くが非正規で働いている青年労働者にとって、結婚や家庭は「贅沢品」だとさえ言われています。これでは少子化が進み、社会が縮小するばかりではありませんか。

 結婚して子ども産み育てることができるような働き方の実現は、日本の経済と社会の将来にとって死活的な重要性を持っています。低賃金で家庭を持てず過労死するような働き方を根絶できなければ、日本の経済と社会は持続可能性を失ってしまうからです。
 すでに、そのような危機が間近に迫ってきていることが分からないのでしょうか。本来の働き方改革は、日本社会の持続可能性を回復するものでなければなりません。
 しかし、現実に提案されている「働き方改革」は、過労死を減らすのではなく増やすことになります。残業代を払わずに定額で長時間労働を強いる裁量労働制の拡大や高度プロフェッショナル制度の導入は、働く人々の収入減と過労死の増大を招き、日本経済の衰退と社会の崩壊を早めるだけでしょう。

 安倍政権は「働き方改革」一括法案を閣議決定して通常国会に提出しました。相次ぐ不祥事やスキャンダルに抗議して野党が国会を欠席していることを「これ幸い」と、厚生労働委員会を強行開催し、連休明けにも力づくでの採決を狙っています。
 法案の内容が問題だらけであるだけでなく、このような国会運営も断じて許されません。安倍政権はもはやまともな国会運営を行う能力を失っていると言うべきでしょう。
 安倍政権の下で、日本は「自死」への道を歩んでいるかのようです。政治的自由と議会制民主主義を破壊し、立憲主義と極東の平和に背を向けるだけでなく経済と社会の持続可能性をも喪失させてしまう安倍政権を一刻も早く打倒し、この国を救わなければなりません。

 なお、今月も以下のような講演が決まっています。一カ月の回数としては、これまで最多の9回の講演が予定されています。
 これも、「打倒安倍政権」への期待が高まっていることの現れでしょうか。お近くの方や関係者の方に沢山おいでいただければ幸いです。

5月3日(木)13時30分 岐阜文化センター:岐阜憲法会議・9条センター
5月5日(土)13時30分 我孫子市民プラザ:我孫子憲法を考える市民の集い
5月11日(金)13時10分 家庭クラブ会館:全農協労連
5月12日(土)13時30分 府中市民活動センター「プラッツ」:府中革新懇
5月12日(土)18時30分 東京保険医協会:東京保険医協会
5月20日(日)14時 八王子市保健福祉センター:東浅川共産党後援会
5月26日(土)13時30分 調布市文化会館「たづくり」:調布科学懇話会
5月27日(日)13時30分 サンエール相模原:横浜市緑区革新懇
5月28日(月)13時30分 八王子市長池公園自然館:別所憲法9条の会


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3月1日(木) 裁量労働制の対象拡大で「白旗」を挙げた安倍首相をさらに追い込んで改憲の野望を阻止しよう [労働]

 これ以上、火が燃え広がっては困るから、ボヤのうちに消してしまおうと考えたのでしょう。安倍首相が「白旗」を挙げて、逃げにかかっています。
 野党が一致して攻勢をかけた結果でした。通常国会での最重要法案の審議において首相を追い込み、大きな成果を上げたことになります。

 安倍首相は昨晩、提出を予定していた働き方改革関連法案から、裁量労働制の対象拡大に関する部分を削除する方針を決めました。裁量労働をめぐる厚労省の調査結果にフェイク・データが400件以上も見つかり、調査にたいする信頼性が失われてしまったためです。
 法案の前提が崩れたわけですから、法案の提出を断念するのは当然です。このような判断を行ったのは与党内からも批判が出たためで、最終的には二階幹事長が断念を迫ったとされています。
 しかし、予算案は衆院を通過して参院に回り、今年度内での成立が確定しました。今後、参院予算委員会での審議が始まりますが、引き続き働き方改革の問題や森友学園疑惑などでの追及が続くことになるでしょう。

 提出が予定されている働き方改革関連法案では、裁量労働制の適用対象を一部の営業職に拡大することとともに、高収入の専門職を労働時間の規制対象から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」の導入もめざされています。「高プロ」は「残業代ゼロ法案」との批判も強くあります。
 労働時間を減らして過労死や過労自殺を予防するという「労働再規制」に反する内容であり、残業代なしの長時間労働を助長することになります。今回、裁量労働制に関する部分を切り離したわけですから、この「高プロ」にかかわる部分も切り離すべきでしょう。
 野党は引き続き共闘を強め、この問題でも安倍首相を追いつめていただきたいものです。首相の迷走によって戦略が狂い、さらに焦りといら立ちが増すことになれば、かつての「消えた年金」問題と同様に安倍首相に大きな打撃を与え、3選を阻止して9条改憲の野望を打ち砕くことができるにちがいありません。

 なお、今月も以下のような講演が決まっています。お近くの方や関係者の方に沢山おいでいただければ幸いです。

3月10日(土)15時 長岡市社会福祉センター:長岡市平和・民主交流会
3月17日(土)10時 八王子労政会館:八王子憲法共同センター
3月17日(土)13時30分 足立ギャラクシティー:足立革新懇
3月18日(日)14時 さいたま市尾間木公民館:戦争法廃止を求めるオール緑区の会
3月31日(土)13時30分 多久市中央公民館:佐賀県革新懇

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2月21日(水) 裁量労働のフェイク(偽)データへの安倍首相の謝罪について『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメントと若干の補足 [労働]

 〔以下の私のコメントは、最近の『日刊ゲンダイ』に掲載されたものです。参考のために、アップさせていただきます。〕

 「時間管理の緩い裁量労働制が長時間労働を助長するのは常識です。難航する法案審議への焦りやイラ立ちが荒っぽい答弁につながったのでしょうが、それにしてもデータの怪しさに疑問を抱かなかったのはお粗末すぎます」(2018年2月16日付)

 「少子高齢化による人手不足が深刻化する中、労働者を使い潰せば、労働力を失う。そんなことは分かりきっているのに、目先の利益しか頭にない財界もどうかしている。まさに今だけ、カネだけ、自分だけですよ。合法的なブラック労働の助長で労災申請のハードルが上がり、認定を争う裁判で雇用者側が敗訴する可能性も懸念されます」(2018年2月17日付)

 この問題で昨日、衆院予算委員会の集中審議が開かれました。そこで安倍首相は、「私や私のスタッフから指示をしたことはない」と述べて、データ作成についての首相官邸の関与を否定しました。しかし、担当部局が政権の意向を忖度してデータをねつ造したのではないかとの疑惑は残ります。
 森友・加計学園疑惑と同様に、直接的な指示がなくとも官僚の忖度が働いたのかもしれません。その結果、都合の良いデータが作成され、それに基づいて国会での答弁がなされたということであれば、議会での審議まで安倍首相に私物化され、議会制民主主義が破壊されたことになります。
 裁量労働制で働く人の方が一般労働者より労働時間が長いという調査結果を知りながら答弁では触れなかったこと、一般労働者の方が長いという調査は答弁で使用したもの以外にはなかったことも明らかになりました。自分にとって都合の良いものだけを使っていたわけで、極めて恣意的にデータが用いられていたことになります。

 働き方改革の主眼は長時間労働を是正してブラック労働や過労死・過労自殺を防ぐことにあります。そのために提出しようとしている法案に含まれている裁量労働制が長時間労働を助長することは調査からも明らかです。
 そうなった以上、このような制度の拡大そのものを中止するべきでしょう。安倍首相は間違ったデータに基づいて答弁したことを陳謝して撤回しましたが、本来、撤回されるべきは間違った答弁だけではありません。このようなデータに基づいて作成された制度の導入や法案の提出それ自体も、断念し撤回されるべきなのです。



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2月18日(日) 裁量労働に関する答弁を撤回するだけでなく法案の提出そのものを断念するべきだ [労働]

 前回のブログで、次のように書きました。その実例が、裁量労働制をめぐる国会審議でまたもや明らかになりました。

 「安倍政権は長期政権で飽きられ、安倍首相は国会対応で呆れられているというのが、今の姿です。『一強多弱』の下で長期政権化が進むなかで次第に内外政策が行き詰まってきていること、行く手に暗雲が広がり始めていることに、安倍首相は気が付いているのでしょうか。
 華々しく展開され国民の注目を集めている平昌オリンピックの影で安倍政権の陰りが広がりつつあり、それにつれて安倍首相の焦りといら立ちも募ってきているようです。オリンピックの開会式での孤立した姿や野党の質問にまともに答えようとしない国会答弁のあり方などに、それが如実に表れてきているように思うのは私だけでしょうか。」

 まさに「国会答弁のあり方」が重大な疑問と批判にさらされ、安倍首相は自らの答弁を撤回してお詫びしました。これは先のブログをアップしたその日のことです。
 14日午前の衆院予算委員会で、安倍首相は「精査が必要なデータをもとにした答弁は撤回しおわびしたい」と述べて陳謝しました。首相が撤回したのは1月29日の衆院予算委員会での答弁で、裁量労働制で働く人の労働時間についいて「平均的な方で比べれば、一般労働者よりも短いというデータもある」と答えたからです。
 首相が答弁の根拠にしたのは厚生労働省が2013年度に公表した調査で、全国の1万1575事業所の「平均的な人」の労働時間を調べたものですが、裁量労働制で働く人は一般の労働者の労働時間より約20分短かったといいます。しかし、一般の労働者の労働時間は裁量労働制と算出方法も異なり、残業を含めて1日23時間も働いている人がいるなど、データ自体の信ぴょう性が疑わしいものでした。

 ここでの問題は二つあります。一つは、どうしてこのようないかがわしい調査を根拠にしてしまったのかということであり、もう一つは、法案提出に向けての準備が労働の実態を踏まえたものではなかったということです。
 裁量労働とは労働時間の管理を自己の裁量に任せ、どれほど働いてもあらかじめ決めた「みなし労働時間」によって判断するという制度です。このよう形で時間管理を行わなければ、いくら残業しても残業代にカウントされませんから使用者にとってはコスト削減となりますが、働く側からすれば残業代なしで働く時間が長くなる恐れがあります。
 普通に考えれば、時間管理をなくした働き方の方が短くなるなどということはあり得ません。実際、安倍首相が答弁で紹介したいかがわしいもの以外に、そのような調査はなかったのです。

 それなのに、安倍首相はどうしてこのような調査を信じ、国会で答弁してしまったのでしょうか。それは、これから提出しようとしている法案を正当化するうえで都合の良いデータだったからです。
 ここに大きな落とし穴があったというべきでしょう。人は自分の見たいものを見ようとするからです。
 安倍首相も自分の見たい「フェイク(偽)・データ」を見て、これに飛びついてしまったというわけです。ここには、ちょっと考えれば「おかしいな、本当だろうか」と思われるような数字であっても、自分の都合に良ければ安易に信じ込み、騙されてしまうという「ポスト真実の時代」における思考スタイルの問題点が如実に示されています。

 しかも、このような誤った「フェイク・データ」が、これから提出される法案の根拠とされていました。それは「働き方改革」の美名のもとに、法律となれば働く人々を縛ることになるでしょう。
 そうなれば、労働時間規制を強めて過労死を減らすために「改革」するはずなのに、逆に労働時間規制を弱めて過労死を増やすことになってしまいます。今でも裁量労働で働く人の方が一般の人よりも労働時間が長いというデータが、このような未来をはっきりと示しているではありませんか。
 このような実態を踏まえない「フェイク」を基にした「フェイク法案」の提出は許されません。国会への法案の提出そのものをきっぱりと断念するべきです。

 今回の「働き方改革」関連法案は、労働時間の規制緩和と規制強化とが抱き合わせになっているという問題もあります。「毒」と「薬」を一緒にして飲ませようというやり方自体が大きな問題です。
 「薬」であるはずの規制強化にしても、労働基準法36条で許される時間は繁忙期には100時間未満という内容です。過労死ラインを越える労働時間が正当化されることになり、過労死して裁判で訴えても労基法で許されているということで敗訴する可能性があります。
 「毒」となる規制緩和では、裁量労働制と同様に時間規制を外す高度プロフェッショナル制度(残業代ゼロ法案)が導入されようとしています。これでは労働時間の長さを是正することはできず、過労死はなくなりません。

 「働き方改革」は、長い労働時間で健康を害したり過労死したりする現状を是正し、人間的な働き方の実現へと「改革」するものでなければなりません。労働力は人材であり、その疲弊と枯渇は使用者側にとっても大きな問題であるはずです。
 目先の利益にとらわれず、長期的な視野を持った「働き方改革」こそが求められています。働く人々が虐げられ「大企業栄えて民滅ぶ」ような社会では、企業もまた存続し「栄える」ことはできないのですから……。

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1月6日(土) 真の「働き方改革」のためには「毒」をやめて「薬」を飲ませなければならない [労働]

 安倍首相は4日の記者会見で、憲法問題とともに労働問題にも言及しています。22日に召集される通常国会では労働時間規制の強化と緩和を抱き合わせた労働基準法改正案などが提出されるからです。
 これについて首相は、この国会を「働き方改革国会」と名付け、関連法案の成立に意欲を示しました。この問題も通常国会での焦点の一つになります。

 ここで注目されるのは、不十分とはいえ残業時間の絶対的制限を導入する労働時間規制の強化と、残業時間規制から外す高度プロフェッショナル制度(残業代ゼロ法案)の導入という労働時間規制の緩和が抱き合わせという形で提案されていることです。
 先ず、このような提案の仕方が問題です。一方に賛成して他方に反対する場合、賛成したら良いのでしょうか、反対するべきなのでしょうか。
 労働時間規制の強化に賛成する労働側は残業代ゼロ法案に反対で、他方の使用者側は逆の立場です。どちらにしても、一緒に出されたら困るでしょう。

 それなのに、どうして抱き合わせているのでしょうか。それは、一方を餌にして他方を釣り上げ、両方を一括して通してしまおうとしているからです。
 しかし、両者は互いに矛盾しています。なぜ、このような矛盾した法案を成立させようとしているのでしょうか。
 安倍政権は新自由主義的な規制緩和政策と社会民主主義的な分配政策を混在させているからです。その背景には、これまでの規制緩和によるマイナス面が拡大しすぎたため、一定の手直しが必要になり労働再規制を打ち出さざるを得なくなったという事情があります。

 新自由主義的な規制緩和によって働き方が大きく変容し、非正規化の拡大と労働現場の荒廃、長時間労働による過労死や過労自殺、技能の低下や経験の継承困難、個々の労働者のモチベーションの弱まり、実質賃金の減少と購買力の低下などが生じてきました。その結果、貧困化と格差の拡大、中間層の衰退、国内市場の縮小、出生率の低下による少子化問題の深刻化などが大きな問題となっています。
 こうして、これまでの新自由主義的政策を継続することが難しくなってきました。安倍首相が「地方創生」「一億総活躍社会」「人づくり革命」などのスローガンを打ち出し、「再分配」や女性の活躍、「働き方改革」などに言及せざるを得なくなってきたのは、そのためです。労働時間の規制強化を打ち出さなければならなくなったのも、過労死や過労自殺に対する世論の批判を弱め、少子化問題の解決に向けて役立てたいと考えてのことでしょう。
 それなら、規制緩和をやめて規制強化に転ずればよいわけですが、他方で、そうできない事情があります。政治献金などスポンサーとして金づるを握られている財界の意向を無視できないという「弱み」があるからです。

 このために、病状が悪化してきているにもかかわらず、治療するための「薬」と一緒に、これまでと同じ「毒」を飲ませ続けなければならないというわけです。これでは病気が治るわけがありません。
 ブレーキを踏んで事故を防がなければならない時に、一緒にアクセルを踏もうとしているわけです。これでは事故を防げないだけでなく、かえって危険です。
 実は、このような「毒」は働く人や日本社会、国民経済にとってマイナスであるだけでなく、企業活動にとっても大きなマイナスを生み出しています。それに気が付いているまともな経営者は労働時間の短縮や賃上げなどの手を打ち、独自の対策に取り組み始めています。

 安倍政権もそうすれば良いのに、財界の顔色をうかがい、その財界を構成している大企業の経営者が無能ときています。規制緩和の旗を振り、法の網の目をくぐることばかりに専心してコンプライアンスを無視し、社会的な責任への自覚を失って企業利益ばかりに目を奪われてきました。
 この間に明らかになった、東芝や神戸製鋼、東レ、JR西日本、ゼネコン大手4社など日本を代表する大企業の不正や不祥事は、このような企業経営者が生み出してきた問題の「氷山の一角」にすぎません。しかも、これらの企業経営者は経済財政諮問会議や規制改革会議などの戦略的政策形成機関のメンバーとなって国政に関与し、それを歪めて安倍首相夫妻による国政私物化の仕組みづくりにも加担してきました。
 日本経済の地盤沈下とともに経営者の能力が弱まり、財界の衰退が始まっているのではないでしょうか。政官財の全てが公的な立場を忘れて倫理観を失い、私的利益を優先し、多少は持っていた矜持すら投げ捨て、極右・従米という矛盾に満ちた安倍首相による改憲・戦争志向の軍事大国化路線に迎合し、日本の政治と社会だけでなく経済をもぶち壊そうとしています。

 「働き方改革国会」で問われなければならないのは、労働時間規制にかかわる労働基準法の改正問題だけではありません。「毒」と「薬」を同時に飲ませるような処方や、アクセルを踏み続けたままブレーキを踏むような危険な運転を、これからも続けていくのかという問題です。
 それを避けるためには、「毒」ではなく「薬」だけを服用し、アクセルから足を話してブレーキを踏まなければなりません。安倍首相という藪医者を辞めさせること、運転手を交代させることこそが、その大前提であることは言うまでもないでしょう。

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7月14日(金) 「残業代ゼロ法案」の条件付き容認に転じた連合は労働者を守る気がないのか [労働]

 労働組合関係者の間に衝撃が走っています。労働組合最大のナショナルセンターである連合の神津会長が安倍首相と官邸で会談し、「企画業務型裁量労働制」と「高度プロフェッショナル制度」につて修正を求め、要請が受け入れられれば容認に転ずる姿勢を明らかにしたからです。
 これらの制度は長時間労働を助長して過労死などの危険性を高める「残業代ゼロ法案」だとして、連合も強く反対してきたものです。一定の手直しを前提としつつ条件付きでそれを認めるというのですから、連合は労働者を守る気がないのかと強い批判と憤りが吹き上がるのも当然でしょう。

 連合は制度の修正を求めていますが、今日の『東京新聞』のQ&Aでは、「これで働きすぎは防げますか」という問いに、「そうとも限りません」「過労死の可能性は消えていません」と答え、「導入されれば会社から過大な成果や仕事を求められる心配がありますし、経済界には対象拡大のため年収要件を下げるべきだとの声があります」と指摘しています。
 修正されてもほとんど実効性がなく、過労死対策には効果がないというわけです。電通の過労死問題を契機に世論の関心が高まり、過労死をなくすためのチャンスが訪れているのに、それに逆行するような修正を労働組合の側から提案することに強い批判が寄せられるのは当然でしょう。
 しかも、安倍内閣支持率が急落し、都議選での歴史的惨敗もあって安倍首相は追いこまれています。そのような時に、連合の側から安倍首相に救いの手を差し伸べるようなものではありませんか。

 しかも、この方針転換の経緯は極めて不透明であり、非民主的なものです。今日の『朝日新聞』は、「傘下の労働組合の意見を聞かず、支援する民進党への根回しも十分にしないまま、執行部の一部が『方針転換』を決めていた」と報じています。
 実は、執行部の側は「3月の末から事務レベル」で働きかけており、それを「転換」ではないとして「組織内での議論や了承は必要ない」と強弁しているようです。「水面下の交渉」に当たってきたのは「逢見直人事務局長、村上洋子総合労働局長ら執行部の一部メンバー」で、「神津氏も直前まで具体的な内容を把握していなかったようだという」のも問題でしょう。
 神津会長は10月の連合大会で退任し、後任には逢見事務局長の名前が挙がっています。今回の修正容認の表明は、逢見さんの連合会長就任に当たっての安倍首相への「手土産」ということなのでしょうか。

 労働者の生命と生活、労働条件を守る労働組合のあり方からすれば、まさに変質であり、裏切りにほかなりません。連合組織内からも公然と強い批判の声が出てくるのは当たり前です。
 派遣社員や管理職などでつくる連合傘下の「全国ユニオン」は、鈴木剛会長名で下記のような反対声明を出しました。その批判にどう答えるのでしょうか。
 連合は労働組合として労働者を守る気があるのかないのか。働く者の代表としての存在意義が問われています。
 以下に、「全国ユニオン」が鈴木剛会長名で出した反対声明の一部を紹介しておきましょう。

 ……7月10日、突如として「『連合中央執行委員会懇談会』の開催について」という書面が届き、出席の呼びかけがありました。開催は翌11日で、議題は「労働基準法改正への対応について」です。
 異例ともいえる「懇談会」で提案された内容は、報道どおり労働基準法改正案に盛り込まれている「企画業務型裁量労働制」と「高度プロフェッショナル制度」を容認することを前提にした修正案を要請書にまとめ内閣総理大臣宛に提出するということでした。
 しかし、連合「2018~2019年度 政策・制度 要求と提言(第75回中央執行委員会確認/2017年6月1日)」では、雇用・労働政策(※長時間労働を是正し、ワーク・ライフ・バランスを実現する。)の項目で「長時間労働につながる高度プロフェッショナル制度の導入や裁量労働制の対象業務の拡大は行わない。」と明言しており、明らかにこれまで議論を進めてきた方針に反するものです。労働政策審議会の建議の際にも明確に反対しました。ところが、逢見事務局長は「これまで指摘してきた問題点を文字にしただけで方針の転換ではない」など説明し、「三役会議や中央執行委員会での議論は必要ない」と語りました。まさに、詭弁以外の何物でもなく、民主的で強固な組織の確立を謳った「連合行動指針」を逸脱した発言と言って過言ではありません。しかも、その理由は「働き方改革法案として、時間外労働時間の上限規制や同一労働同一賃金と一緒に議論されてしまう」「圧倒的多数の与党によって、労働基準法改正案も現在提案されている内容で成立してしまう」ために、修正の要請が必要であるとのことでした。
 直近の時間外労働時間の上限規制を設ける政労使合意の際も、私たちはマスメディアによって内容を知り、その後、修正不能の状況になってから中央執行委員会などの議論の場に提案されるというありさまでした。その時間外労働時間の上限規制と、すでに提出されている高度プロフェッショナル制度に代表される労働時間規制の除外を創設する労働基準法改正案とを取引するような今回の要請書(案)は、労働政策審議会さえ有名無実化しかねず、加えて、連合内部においては修正内容以前に組織的意思決定の経緯及び手続きが非民主的で極めて問題です。また、政府に依存した要請は、連合の存在感を失わせかねません。
 ……
 私たち全国ユニオンは、日々、長時間労働に苦しむ労働者からの相談を受けており、時には過労死の遺族からの相談もあります。過労死・過労自死が蔓延する社会の中、長時間労働を助長する制度を容認する要請書を内閣総理大臣宛に提出するという行為は、働く者の現場感覚とはあまりにもかい離した行為です。加えて、各地で高度プロフェッショナル制度と企画業務型裁量労働制の反対運動を続けてきた構成組織・単組、地方連合会を始め、長時間労働の是正を呼び掛けてきた組合員に対する裏切り行為であり、断じて認めるわけにはいきません。また、このままでは連合は国民・世論の支持を失ってしまうおそれがあります。
 シカゴの血のメーデーを例にとるまでもなく、労働時間規制は先人の血と汗の上に積み上げられてきました。私たち労働組合にかかわる者は、安心して働くことができる社会と職場を後世に伝えていくことが義務であると考えます。今回の政府に対する要請書の提出は、こうした義務を軽視・放棄するものに他なりません。全国ユニオンは、連合の構成組織の一員としても、政府への要請書の提出に強く反対します。
以 上

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2月15日(日) 過労死促進法案による労働時間規制の解除という新たな「逆走」 [労働]

 まだ、懲りないのでしょうか。こんなに過労死が社会問題となってきたのに。
 あらゆる政策課題において安倍政権は民意に反し、問題を解決する方向とは逆に進もうとしています。このような「逆走」が、労働時間規制の分野でも始まりました。

 過労死は過重な労働を長時間続けるところから生じています。それを防止するために必要なことは、労働の負荷を軽減し、働く時間を短くすることです。
 こんなことは誰にでも分かるはずです。しかし、それが全く分かっていない人もいます。だから、このような法案が出てくるのでしょう。
 労働時間の規制をなくして、働いた時間にかかわらず残業代や深夜・休日手当を支払わなくても良いようにするというわけです。残業代を支払わないというところから「残業代ゼロ法案」と言われていますが、本当は「過労死促進法案」と言うべきものでしょう。

 厚生労働省は13日、労働政策審議会がまとめた報告書に新しい働き方を盛り込みました。安倍政権が掲げる成長戦略の目玉の一つで、労働側の反対を押し切ってのとりまとめです。
 安倍首相は12日の施政方針演説で「労働時間に画一的な枠をはめる労働制度、社会の発想を、大きく改めていかなければならない」と語って、「岩盤規制」の一環としての雇用分野の改革に意欲を示しました。新しい労働時間制度の導入は、その岩盤規制に風穴を開ける改革という位置づけになります。
 この制度の創設は「時間ではなく、成果で評価する新たな労働制度を選べるようにする」として、政権の成長戦略に盛り込まれました。同じ様な制度は、第1次安倍政権でも検討されましたが、参院選を前に世論の猛反発にあって断念された経過があり、8年ぶりの再挑戦になります。

 この制度の大枠を決定したのは、経済財政諮問会議や産業競争力会議ですが、そこには労働の代表は参加していません。当事者抜きで「改革」の大枠が決められているのは、農業改革や社会保障改革も同様です。
 専門的な知識がなく、現場の状況も良く知らない財界や産業界の代表が旗を振っているわけですから、働く場の実情や実際に生じている問題を踏まえた解決策にならないことは当然でしょう。しかも、このような「改革」は、長時間の過密労働や過労死など労働現場で生じている大問題を解決するためではなく、あくまでも「成長戦略」の一環として打ち出されています。
 経済の成長と企業のビジネス・チャンスの拡大に役立てるための「改革」であり、そのために邪魔になる「岩盤規制」に穴を開けることが目指されているわけです。その結果、「企業が活躍できる」社会になれば、過労死しようが家庭が崩壊しようが知ったことではないというわけです。

 だから、労働政策審議会でこの制度の導入を求めたのが使用者側で、反対したのが労働者側でした。13日の労政審では、連合の新谷信幸総合労働局長が「労働者の健康と命を守る規制を外し、長時間労働をまねく」と反対しましたが、司会の岩村正彦東大大学院教授は報告書をまとめることを宣言し、昨年9月から10回を超えた労政審での議論は2時間足らずで終わったそうです。
 労働側が反対しても決定を強行するというのでは3者構成になっている意味がありません。公益委員となっている研究者がそのお先棒を担いだというのも残念です。
 この制度については様々な評価がありますが、少なくとも当事者である労働側の納得が得られるようなものでなければならないというのは最低限の条件でしょう。その下で働かされ、過労死や健康被害のリスクを負わされる当事者なのですから。

 長時間労働への新たなゴーサインが出されたということになります。そうなれば、当事者の健康が破壊されるだけではありません。
 家庭生活が阻害され、女性の社会進出の新たな障害が生まれ、少子化が促進されることにもなり、社会全体にも大きな影響を与えることになります。日本社会の将来にとっては、まさに「逆走」というしかない愚策にほかなりません。

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7月29日(火) 全労連大会を傍聴して実感した労働運動の新たな息吹 [労働]

 西日本の旅から帰ってきた翌日から、東京・新宿で開かれた全労連の大会を傍聴しました。大会は3日間で今日の昼まで続いていますが、私は所用があって傍聴は昨日までです。
 大会での報告と発言を聞いた感想は、労働運動の新しい息吹を実感することができたということです。発言はどれも興味深いもので、労働の現場と運動の現状を理解するうえで大いに参考になりました。

 実は、全労連の大会を傍聴するのは、今回が初めてのことです。もう一つのナショナルセンターである連合の大会は何回か傍聴したことがあります。
 連合の方が大会の規模は大きく、マスコミの注目度が高いと言えます。連合の方が参加組織と組合員の数が多いわけですから、それも当然です。
 しかし、連合大会は2日間で発言者の数があまりにも少なく、ほとんど労働現場や組合運動の実情を反映するものにはなっていません。福島原発事故後の連合のエネルギー方針や電力総連の対応が大会で問題にされず、反省も表明されなかったことには大いに驚き、失望したものでした。
 それに比べれば、全労連の大会は3日間と長く、私が聞いた発言者だけでも63人に上ります。全労連大会の代議員は産別だけなく地方組織からも出ていますので全国各地からの発言があり、それぞれの地方での運動の状況や働く人々の息遣いまで感じられるような臨場感あふれるものでした。

 会場の正面には、「許すな! 「戦争する国」づくり 労働者使い捨て社会 つくりあげよう たたかいの砦 「150万全労連」」というスローガンが掲げられています。今回は「第27回定期大会」ですが、1989年の全労連結成から25周年という節目の大会でもありました。
 私は民間連合の結成大会を傍聴しています。全労連の結成大会も傍聴したかったのですが、ぎっくり腰が再発して身動きがとれなかったという苦い思い出があります。
 それから25年も経ったということになります。4半世紀の間、「階級的ナショナルセンター」の旗を掲げる全国的な労働組合組織が存続し活動してきたという事実は大変貴重なものだと思います。

 今回の大会では異例なことが二つあったのではないでしょうか。一つは議案への修正提案が出されたことであり、もう一つは議長選挙に対立候補が立ったことです。
 どちらも普通のことのように思いますが、少なくとも対立候補の登場はこれまでありませんでした。いずれも神奈川県労連によるもので、先進的な活動を活発に行っている地方組織からすれば現執行部の方針と人事には物足りないものを感じたということかもしれません。
 途中で執行部の見解表明があって修正提案は基本的に受け入れられ、代議員の発言でも団結維持のための立候補辞退が呼びかけられました。その結果どうなるかは現在進行中の本日の大会で明らかになるわけですが、「団結にヒビが入ってはまずい」ということで異論の提起を控えたり対立候補の擁立を自主規制したりというような配慮が必要ないほどに、全労連の活動が定着し団結が盤石になっている現れであると、私は理解しました。

 大会での発言では、全体として、労働と生活の隅々にわたって「キメ細かい」攻撃がかけられてきているという実態が鮮明になったように思います。それに対して、どこでも反撃が始まり、世論の支持を集めるようになって一定の成果を生み出しているという印象を受けました。
 会場でも何人かの知り合いに会って感想を聞きましたが、これまでの大会よりも元気で積極的な発言が目立つということでした。特に、春闘での賃上げ、最賃闘争の重要性、公契約運動への取り組み、公務員賃金の切り下げ、電機リストラ、派遣切り裁判での勝利和解、集団的自衛権行使容認・オスプレイ配備・原発再稼働などへの反対運動、震災復興、滋賀や長野、沖縄の県知事選、異なったナショナルセンターの傘下組合での共同の発展、組織拡大の経験と教訓、産別と地域労連の連携、地域での共闘の推進など、目まぐるしいほどに豊富な運動実態が次々に報告されました。
 比較的若い人や女性の発言者が目立ったというのも、未来に希望が持てる新たな息吹でしょう。争議の原告団からの発言なども含めて、連合大会との大きな違いを感じたものです。

 一方では「新しく募集をかけなければならなくなるので、辞めるなら求人広告代を出せ」と言ってなかなか辞めさせてもらえない。他方では「女性労働者の『鮮度』を保つため」と言って一定期間で雇い止めをするなどということもあるそうです。
 なかでも会場が最もどよめいたのは、「来年は給料なしで働いてもらえませんか」という申し出があったという発言でした。こんな冗談のような申し出を本気でするような経営者が出てきたというのですから驚いてしまいます。
 日本の経営者は腐り始めているということでしょうか。政府とその先頭に立つ総理大臣が最も腐っているのですから、それも当然かもしれません。

 いつもの大会以上に積極的で元気な発言が目立ったようですが、その背景には情勢の変化と運動の蓄積があるように思います。労働運動にとっては「待ったなしの出番」というべき新たな情勢変化が生じていますし、それに応えるべき運動経験が25年にわたって積み上げられてきたという実績があります。
 そこから生まれつつある新たな芽吹きに期待したいと思います。元気の良さを大会での発言にとどめることなく、実際の運動の発展によって日本を変えてもらいたいものです。
 今よりもずっとましな日本にするために……。働く人々が人間として尊重され、希望をもって働き、生活できるような明日のために……。

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3月6日(木) 労働者に実質賃金低下を強いる経営者団体~日本経団連『経営労働政策委員会報告』批判―その2 [労働]

〔以下のインタビュー記事は、『自然と人間』2014年3月号に掲載されたものです。2回に分けてアップします。〕

さらなる長時間労働が強いられる

 労働時間については、「健康確保に十分に配慮することを前提に、企画業務型裁量労働制の対象業務、対象労働者の範囲拡大を行う」と言っています。この新しい日本型裁量労働制も規制改革会議の中で出てきたもので、「高度な裁量をもって働く一部事務職や研究職を対象に、健康確保措置を強化し、労働時間・深夜労働の規制の適用を除外する制度を創設すべき」だと書いてあります。
 その一方で、「これまで以上に過重労働防止に向けて取り組む必要」とか「やむを得ず月100時間以上の時間外・休日労働が発生した場合には、一定要件のもと、労働者に医師の面接指導を受けることを徹底すべきである」「一定日数の年休を付与する仕組みの導入」なども提案されています。
 これは、過重労働による健康被害が生まれているという現実を日本経団連も認めざるを得ないということを示しています。しかし、彼らには、その結果として生じている過労死、過労自殺やメンテルヘルス不全などが企業のパフォーマンスに大きな悪影響を与えているという認識は稀薄です。
 裁量労働制の拡大と手続の簡素化はさらなる健康被害を生むでしょう。また、労働時間規制の適用を除外する制度を創設するというのは、すでに否定された「ホワイトカラーイグゼンプション」の再版を意味しています。
 月100時間以上の時間外労働を論じること自体がべらぼうなことであって、過労死ラインとされている月80時間以上の残業は一刻も早く法的に禁止すべき性質のものです。年休の完全取得は当然必要なことですが、それだけでなくインターバル休息11時間の確保も、健康を守るという点では重要です。
 現状でも多くの健康被害が出ているのです。それを超える長時間過重労働の合法化を行えば健康被害をさらに増大させ、ひいては企業と産業の基盤を掘り崩すことになるでしょう。

ライフサイクルが維持できない!

 社会保障の問題では、「重点化・効率化」と言いながら、福祉のサービスの範囲を限定し給付の低下を迫っています。ここには年齢に伴って必要となるライフサイクルの必要経費を、誰がどのように保障するのかという問題があります。
 すでに一定の企業では、年功に応じて賃金が上がる右肩上がりの賃金制度ではなくなってきています。年齢間で賃金に差のないフラットな賃金制度のもとにある労働者が増えてきているにもかかわらず、それを補う公的給付を充実させないなら、ライフサイクルに応じて必要になる経費が得られなくなります。
 結婚して家庭をもち、子どもを産み、その子どもを育てて教育を受けさせ、親が高齢になって介護が必要になる。自分も体力が劣え、病院にかかることが多くなる。このように、若い人が年を取っていくにつれて必要な経費は増えるわけです。
 これを今までは年功賃金によって保障してきたわけですが、そういうシステムによってカバーされる労働者が減ってきています。だから、公的な責任で何とか代替、負担しなければなりません。
 それを限定し削減せよというわけです。労働者は一体どうしたら良いのでしょうか。極めて無責任な主張です。要するに、企業が社会保険の負担を増やしたくないというだけの話なのです。
 人材の活用ということでは、「女性従業員の育成、適切な処遇」には「意識改革が必要」と言っています。しかし、セクハラやマタハラなど女性に対するさまざま差別についてはまったく言及されていません。当然、それをどうなくすのかについても、「意識改革」だけで具体的な方策にはまったく触れられていません。
 若者の雇用をめぐっても、離職率の高い企業についての問題意識がありません。世間で問題にされ大きな批判を浴びている「ブラック企業」については、厚労省も対策を立てつつありますが、この『報告』では「ブラック企業」という言葉さえ出てきません。

原発政策をめぐる資本の対立

 『報告』では、「原発の再稼働プロセスを加速化していくべき」だという方針を出しています。これは政府が掲げているエネルギー政策以上の原発推進論です。
 しかし、原発が企業活動にとっても大きなリスクを生み出すことは、福島第一原発の事故で明らかになりました。今の政府・自民党でさえ、将来的には原発に依存しない方向をめざすと一応言っています。
 この『報告』に見られる日本経団連の主張は、必ずしも総資本の意志ではないでしょう。楽天の三木谷浩史社長が日本経団連から飛び出し、新経済連盟を立ち上げています。主要な理由は、原発政策など電力事業をめぐる意見の食い違いにありました。
 IT産業やベンチャー企業などがこれに参加していますが、ソフトバンクの孫正義氏も同様のスタンスです。「原発には死ぬまで反対」「原発に代わる発電手段として再生可能エネルギーを増やさなければいけない。政府の成長戦略に位置づけられるべきだ」などと主張しています。
 だから、この『報告』での原発推進論は総資本の意志というより、従来型の重厚長大型製造業を中心とした古い資本の利害を代表したものです。新たなビジネスチャンスを模索する潮流は、このような方針に必ずしも同意していないのではないでしょうか。

日本の産業を荒廃させる道だ

 『報告』に書かれなかったことに、安倍政権のタカ派路線と日本経済との関連という問題があります。産業や企業の活動に、安倍カラーが大きな阻害要因になっているからです。この点について、日本経団連が沈黙を守ることは許されません。
 安倍首相に苦言を呈するぐらいのことがあってもいいはずです。堂々と文句を言えばいいじゃありませんか。
 安倍首相の言動が日本の孤立化を招き、特に周辺諸国との関係を悪化させています。中国や韓国との関係悪化で、貿易、投資、観光などに大きなマイナスが生じていることは否定できない事実です。被害を被っている企業は決して少なくない。安倍首相の軍国主義的なタカ派政策は、中国や韓国の「カントリーリスク」を高める元凶です。
 さらに、武器輸出三原則を緩和しようとしています。最近、日本経団連の防衛生産委員会もそれを求める提言を自民党に出しました。これは、これまでの経済発展の原動力であった「9条の配当」を無にするもので、民生主体の平和経済から軍需依存の「死の商人」経済への転換を生み出すことになります。日本の企業と産業の総体にとって、大きなマイナスとなることでしょう。
 これに加えて、『報告』に見られる日本経団連が進もうとしている道は、三つの破壊を進行させるだけです。
 一つは健康・生命の破壊で、過労死や過労自殺、メンタルヘルス不全などを増大させます。二つめは家庭・未来の破壊で、少子化を進めて労働力の再生産を困難にし、日本社会の縮小と活力の低下をもたらします。三つめは家計・生活の破壊で、内需を冷やしデフレ不況からの脱却を阻害することになります。
 総じて、日本の企業と産業、経済の破壊に帰着するものです。『報告』は、自分の企業や産業の目先の利害にとらわれ、長期的で大局的な見地を忘れた近視眼的な発想に陥っていると言わざるをえません。

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