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6月16日(土) 戦後政治をぶっこわしてしまった安倍政権の5年間(その3) [論攷]

〔以下の論攷は、全農協労連の機関誌『労農のなかま』No.572、2018年5月号、に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

 官僚を堕落させ議会政治の土台を掘り崩してきた

 このように、安倍政権のもとで、防衛省、文科省、内閣府、厚生労働省、財務省と、相次いで公文書や内部文書の隠蔽や改ざんが明らかになりました。それについて、政府は各省庁に責任転嫁しようとしています。しかし、政府の知らないところでこのような隠蔽や改ざんが行われていたとしたら、そちらの方がもっと大きな問題です。自衛隊という実力組織や官僚が勝手に暴走していたということになるのですから。
 この政権は同じようなことをくり返してきました。権力の座にしがみつくための隠蔽や偽りが横行し、存在しない、廃棄したと言っていた文書が次々に見つかっています。ばれなきゃ良いとでも思っているのでしょうか。
 とにかく、いったん決めたら世論による批判も国会での審議も一切無視し、立憲主義なんかクソ食らえと言わんばかりに暴走してきたのが安倍政権です。その結果、市場経済も官僚機構も立憲主義も議会制民主主義も、戦後政治が築き上げてきた土台がすべてくつがえされてしまいました。
 政治家は理念や理想を見失って保身に汲々とし、昨年の総選挙では野党第一党が自壊して生き残りを最優先に信義なき再編が行われました。自民党はスキャンダル続出で、政権党としての責任を忘れ、安倍「一強体制」の下で多くの与党議員は口をつぐんできました。
 官僚は国を支えているという矜持を失い、無責任な「ヒラメ集団」に変わってしまいました。官邸主導で「お友だち」を集めた有識者会議などが政策の大枠を決めて各省庁に丸投げされ、省庁はその「下請け機関」となったばかりか、不都合な公文書を隠蔽しつじつまを合わせるためにデータをねつ造した疑いさえあります。
 そのうえ、自民党議員と文科省による名古屋市の中学校での前川前文科次官の授業への圧力、放送法4条の廃止によるテレビへの介入の動き、おまけに、福田財務事務次官のセクハラ・スキャンダルの発覚と辞任などもありました。議員会館近くで現職の幹部自衛官が民進党の参院議員に「おまえは国民の敵だ」と繰り返し罵倒するという事件まで起きています。地獄の釜のふたが開いたような不祥事の連続です。このような惨状を生み出した張本人こそ、安倍首相その人なのです。

 破綻が明らかになったアベノミクス

 鳴り物入りで安倍首相が始めた「アベノミクス」でした。しかし、そのために市場経済は瓦解寸前になっています。「2年で2%」という物価上昇率を掲げて異次元の大規模金融緩和という「黒田バズーカ」が発射され、年間60兆円をメドに国債が買われてきました。しかし、この目標達成は6回も延期され、いまだに実現していません。
 安倍政権になってから実質賃金の低下が4年連続で止まっていません。「物価が上がれば賃金が上がる」と言っていたのに、実質賃金は第2次安倍政権誕生以前の年間391万円から377万円と14万円も減っています。円安で輸出大企業が儲けて史上最高益を更新していますが、実質賃金は低下し続け、持てる者と持たざる者との分断が強まり、貧困化と格差は拡大し続けています。大企業の利益は内部留保に向かうばかりで、若干の賃上げがあっても下請けや孫請けの中小企業までには回ってきていません。
 この失敗を隠すために、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も動員して年間6兆円規模のETF(上場投資信託)購入を続け、「官製相場」によって株高を演出してきました。しかし、実体経済との乖離は拡大し、米国の利上げやトランプ大統領による鉄鋼・アルミニウムへの関税実施方針などもあって株価は乱高下しています。
 また、2015年の個人消費は実質国内総生産(GDP)ベースで306.5兆円と、安倍内閣が発足した12年の308.0兆円から1.5兆円縮小しました。2年連続で個人消費がマイナスになったわけですが、これは戦後初めてのことです。
 家計消費は15カ月連続のマイナスで、比較可能な2001年以降で過去最長を更新しました。内需は停滞し少子化は止まず、「残業代ゼロ」の高度プロフェッショナル制度の導入などを含む「働き方改革」によって過労死増のリスクが高まろうとしています。安倍政権の愚策によって、日本の経済と生活、労働も大きな危機にさらされているのです。

 むすび

 この5年間、安倍政権は強権的な手法によって経済と国民生活、民主主義をぶっ壊し、政治と行政を歪めてきました。その結果、日本を「戦争できる国」に変え、貧困と経済格差を広げることになりました。この罪は極めて大きく、その責任を取ってもらわなければなりません。
 得意としてきた外交でも破たんが明らかになってきました。日本周辺の国際環境が急変し、南北会談や米朝会談が決まって北朝鮮と中国との首脳会談が行われるなど、朝鮮半島情勢は緊張緩和と非核化、和解と協力の方向にかじを切りつつあります。
 この間、安倍政権は蚊帳の外に置かれたばかりか、頼りにしていたトランプ米大統領によって鉄鋼・アルミの輸入制限措置を課されました。4月の日米首脳会談でも二国間協議を呑まされるなど、蜜月は幕を閉じ「安倍外交」は漂流を始めています。
 通常国会では、過去5年間のうちに蓄積されてきた膿が一気に噴出しました。まるで、底なし沼に落ち込んだような不祥事の連続です。過去の不祥事との違いは、不都合な真実や公文書の隠蔽・改ざん・ねつ造・圧力など、政治がよって立つべき土台が腐ったことによって生じたという点にあります。この土台を取り換えなければ、その上にはどのような建物も建てられません。
 しかも、森友・加計学園疑惑の中心には、安倍首相夫妻が位置しています。この点も、これまでの不祥事とは大きく異なっている特徴です。政治改革による小選挙区制の導入、行政改革による内閣人事局の創設、構造改革による構造改革特区や国家戦略特区の設置など、首相官邸や総理総裁の権限を強化する制度改革が進められてきました。強権的な人格をもつ安倍首相と奔放で暴走する昭恵氏がその中心に座り5年間の長期政権となったために忖度と私物化が横行し、政治の堕落と腐敗が極まってしまいました。
 日本の政治を立て直すために、安倍夫妻にはきちんとした責任を取ってもらわなければなりません。その罪を償うために、安倍首相に大きな代償を払わせる必要があります。そのための最善の策とは何でしょうか。安倍政権の総辞職こそが、その答えにほかなりません。

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6月15日(金) 戦後政治をぶっこわしてしまった安倍政権の5年間(その2) [論攷]

〔以下の論攷は、全農協労連の機関誌『労農のなかま』No.572、2018年5月号、に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

 「戦争できる国」に向けての暴走の連続

 安倍政権によってぶっ壊されてきたのは政治への信頼だけではありません。「専守防衛」という国是にもとづく「平和国家」としてのあり方も掘り崩されてきました。特定秘密保護法の強行成立から始まり、武器輸出を認める「防衛装備移転三原則」の閣議決定、歴代の自民党政権が「憲法違反」としてきた集団的自衛権の一部行使容認、多くの憲法学者や国民の反対を押し切った安保法=戦争法の強行成立などが相次いできました。
 安倍首相がめざす「戦争できる国」を作るためには、システム・ハード・ソフトの各レベルにおける整備が必要とされます。システムというのは戦争準備と遂行のための法律や制度であり、一連の違憲立法とともに日本版NSC(国家安全保障会議)や安全保障局の設置などによっても実施されてきました。9条改憲はこのシステム整備の中核をなし、総仕上げの意味を持っています。
 ハードの整備とは戦争遂行のための「実力組織」の拡充であり、米国との軍事同盟の強化と軍備の増強などがその内容になります。沖縄での地元の意向を無視した辺野古新基地建設の強行や過去最高となった防衛費の増大、オスプレイや巡行ミサイルの購入、ヘリ空母「いづも」の攻撃型空母への改修計画など、他国に脅威を与える敵基地攻撃能力の確保の動きが強まりました。
 ソフトの整備とは「戦争できる国」を支える人材の育成と社会意識の形成を指しています。すでに第1次安倍政権で教育基本法と関連する学校教育法など3法が変えられ、第2次政権になってから教育改革実行会議による道徳の教科化や学習指導要領の改訂、教育への管理・統制の強化、マスメディアに対する懐柔や恫喝による情報の操作などが進められてきました。
 このような「戦争できる国」作りへの動きに対して、これまで憲法は抵抗の拠点であり、異議申し立てのための武器となってきました。しかし、安倍首相がめざす9条改憲によって自衛隊の存在が明記され、憲法上の位置づけが与えられ正当化されれば、その意味は大きく変わるでしょう。抵抗のための武器から戦争へと動員する手段になってしまいます。

 隠され続けてきた「戦場の真実」

 このような形で「戦争できる国」になれば、自衛隊は海外に派兵され「戦闘」に巻き込まれることになります。イラクへの自衛隊の派遣や南スーダンPKOでの自衛隊の活動の実態は、このような「戦場の真実」を赤裸々に示すものでした。それを国民に知られたくないからこそ、日報が隠蔽され続けてきたのではないでしょうか。
 南スーダンPKOの日報問題で「無い」と言っていた陸上自衛隊のイラク派遣時の活動報告(日報)が「発見」されました。イラクに派遣された陸上自衛隊の現地部隊が報告した日報も見つかりましたが2004年から06年にかけてのもので45%にすぎず、ミサイルが撃ち込まれるなど「戦闘」が激化したときのものは見つかっていません。しかも、イラク派遣関連文書にも改ざんの疑いがあります。
 この日報の隠蔽と発見は、この間の安倍政権による情報の隠蔽や改ざんという一連の事案と共通の背景を持っています。知られたくない不都合な情報を廃棄し、隠し、改ざんする。逃れられなくなると渋々存在を確認し公表するというやり方が繰り返されてきました。
 とりわけ、自衛隊の日報隠蔽は知られたくない文書を隠していただけでなく、そのことが防衛大臣に報告されず、事態を全く把握できていませんでした。シビリアンコントロール(文民統制)は機能せず、現場が独走して戦争へと突き進んで行った戦前の過ちや、終戦に当たって公文書を焼き尽くしてしまった間違いが繰り返されているということになります。
 イラク関連の日報隠蔽は「非戦闘地域」に反する実態を隠すためであり、南スーダンでのPKO関連の日報隠蔽は「駆けつけ警護」など戦争法による新任務の付与に影響を与えないためだったのではないかと疑われています。戦争法案はうその説明の下に強行採決されたことになり、これらの日報が当時から明らかになっていればイラクや南スーダンへの自衛隊派兵の正当性の根拠が崩れ、法案が成立しなかったかもしれません。


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6月14日(木) 戦後政治をぶっこわしてしまった安倍政権の5年間(その1) [論攷]

〔以下の論攷は、全農協労連の機関誌『労農のなかま』No.572、2018年5月号、に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

 はじめに

 最近の政治・行政の姿を見て、「全般的危機」という言葉を思い出しました。国有財産の不当廉売と国の根幹を揺るがせるような公文書改竄、「お友達」の優遇と行政の私物化、文民統制に反する自衛隊の日報隠蔽、女性の人権を踏みにじるセクハラ・スキャンダルと財務次官の辞任。これらの大罪を嘘で誤魔化し、言い逃れようとする醜態の数々。
 政治の土台がひび割れてしまったのです。政治への信頼が崩れ、行政の前提となる土台は亀裂だらけになってしまいました。戦後最低最悪の安倍首相が発する毒が、少しずつしみ込んで政治の土壌を汚染させてきたということでもあります。
 森友・加計学園疑惑など安倍夫妻をめぐる疑惑やスキャンダルよりも重要な問題があるのではないか、国会はもっと法案や政策の議論をするべきではないかという意見があります。しかし、土台が安定していなければ、その上にどんな家を建てても崩れてしまいます。土壌が毒に汚染されていれば、どのような作物や花を植えても育ちません。
 国政の重要問題を議論するためには、その土台となっている信頼を取り戻す必要があります。政策という作物を植えるためには、土壌を改良しなければなりません。丈夫に育てて花を咲かせ実らせるためには、まず土から毒を取り除き、立憲主義や民主主義という肥料をやらなければならないのです。
 振り返ってみれば、安倍政権の5年間は憲法を踏みにじる暴走政治の連続でした。「石流れ木の葉沈む」理不尽な日々がつづき、行き着いた先が安倍首相夫妻による政治の私物化であり、それを取り巻く政治家や官僚、「お友達」などによる「忖度政治」でした。世論を恐れず反知性と非常識が大手を振るような時代になってしまいました。
 安倍首相は「戦後レジームからの脱却」を唱え、「日本を取り戻す」というスローガンを掲げてきました。その主張通り、安倍暴走政治の5年間は、平和憲法に基づく軽武装国家としての「戦後レジーム」を掘り崩し、戦前の「日本を取り戻す」歩みにほかならなかったのではないでしょうか。

 暴走政治の害悪を象徴する森友・加計学園疑惑

 安倍暴走政治の害悪を象徴するのが、森友・加計学園疑惑です。安倍首相だけでなくその妻である昭恵氏の関与が疑われ、首相夫妻の意向を忖度して政治が歪められ私物化されたのではないかとの不信を招きました。これに対して「おかしい」と異議を唱えれば、前川喜平前文科次官のように私生活をリークされ授業にまで介入されてしまいます。
 森友学園疑惑は籠池泰典前理事長の時代錯誤な教育理念と、教育勅語を園児に暗唱させるような国粋主義的な愛国教育の実践に安倍首相夫人の昭恵氏が共感し感銘したことが発端でした。森友学園の小学校新設を応援しようとして100万円を寄付するとともに設立認可と土地取得、建設費用の融資に便宜を図ったというのが真相だったのではないでしょうか。
 2017年2月17日の「私や妻が関係していたら首相も議員も辞める」という安倍答弁の3日後の20日に「口裏合わせ」の電話があり、その2日後の2月22日に、官邸側の関与を全面的に否定している佐川宣寿前理財局長と太田充現局長(当時財務省大臣官房総括審議官)が菅義偉官房長官から官邸に呼ばれ、国有地売却の経緯などについて説明していたこと、ここには国土交通省航空局次長も出席し、国有地から出たごみの撤去処分費用の見積もりなどを説明したことが判明しています。当然、この場でも決裁文書の改ざんなどの善後策が相談されたものと思われます。
 こうして、森友学園への破格の安値での国有地売却、その経緯を書いた決裁文書の改ざんという前代未聞の「国家犯罪」が実行されたのです。その背後には安倍夫妻の存在があり、とりわけ森友学園が経営する塚本幼稚園で3回も講演し、ホームページに推薦文を書き、一時は新設予定の小学校の「名誉校長」まで引き受けていた昭恵氏の関りは極めて大きなものだったと思われます。
 その後、当時の佐川理財局長が「ない」と答弁していた財務省と森友学園との交渉記録が500ページ以上も残っていたことが新たに分かりました。なかには昭恵氏と密接に連絡を取り合っていた記録も残っています。
 昭恵氏の存在と働きかけがなければ、「良い土地ですから進めてください」と昭恵氏が言ったなどと護池氏が圧力をかけることも、建設予定地前で撮った写真を見せることも、それを見た官僚が籠池氏のために便宜を図ることも、慌てて公文書を改ざんすることもなかったはずです。安倍首相夫妻が「関係」していたことは明らかであり、安倍首相は自らの言葉に従って首相も国会議員も辞任するべきでしょう。

 決定的な証拠が出てきた加計学園疑惑

 加計学園疑惑についても決定的な証拠が出てきて、国家戦略特区での獣医学部の新設計画は最初から「加計学園ありき」だったことが明確になりました。というより、安倍首相の親友である加計考太郎氏が経営する岡山理科大に獣医学部を新設するために国家戦略特区が利用され様々な便宜が図られたというのが真相であると思われます。
 愛媛県や今治市の職員、加計学園事務局長らが2015年4月2日に首相官邸で柳瀬唯夫首相秘書官(当時)と面会したとする文書には、内閣府の藤原豊地方創生推進室次長(当時)とも会ったことが書かれていました。柳瀬氏が「本件は、首相案件」と述べ、藤原氏が「内容は総理官邸から聞いている」「国家戦略特区の手法を使って突破口を開きたい」「かなりチャンスがあると思っていただいてよい」と発言したなどと記されています。
 すでに昨年のうちに、「総理のご意向」や「官邸の最高レベル」という文言のある文書が発見されていました。これらの異なった性質の文書の全てが偽りでない限り、この問題に安倍首相や官邸が深くかかわっていたことは完全に裏付けられたと言えるでしょう。
 4月10日の中村愛媛県知事の記者会見では、もう一つの重要な事実が語られていました。問題の土地にはサッカースタジアムを作るプランだったのに、途中で内閣府から助言があって獣医学部の新設計画を国家戦略特区に申請することになったというのです。岡山理科大に獣医学部を新設する計画は内閣府から持ち込まれたということであり、初めから「首相案件」だったということになります。
 柳瀬元秘書官の参考人聴取でも、首相官邸で加計学園関係者と3回も面会していたこと、特区関係者で面会したのは加計学園だけだったことなど、「加計ありき」を示す新たな事実が明らかになりました。
 加計学園疑惑はクリスマスイヴにワイングラス片手で相談された安倍首相や加計氏による「男たちの悪だくみ」の一つだったと思われます。そのような形で政治・行政を私物化し国会と国民を欺いてきたというのであれば、許されざる背信であり、安倍首相に国政を担当する資格はなく、ただちにその座を去るべきです。

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4月17日(火) 今こそ「水に落ちた安倍は打て」―安倍政権打倒に向けての追撃戦が再開された [論攷]

〔以下の論攷は、日本科学者会議『東京支部つうしん』No.606、2018年4月10日付、に掲載されたものです。〕

 「こんなはずじゃなかった」と、安倍首相は思っているはずです。昨年の夏、支持率が急落して都議選で歴史的な大敗北に陥った危機を、突然の解散・総選挙と野党勢力の分断で乗り切ってきたのですから。今度こそ、改憲実現の時と意気込んで臨んだ通常国会でした。それが、これほど追い込まれてしまうとは夢にも思わなかったにちがいありません。
 通常国会開会の日、安倍首相は自民党両院議員総会で「我が党は結党以来、憲法改正を党是として掲げ、長い間議論を重ねてきた」と述べ、「いよいよ実現する時を迎えている。責任を果たしていこう」とハッパをかけました。「一強体制」を背景に、朝鮮半島危機を利用しながら改憲を実現しようと目論んでいたのです。
 しかし、その後の内外情勢の急変によって、この思惑は音を立ててくずれつつあります。南北会談や米朝会談が決まって北朝鮮と中国との首脳会談が行われるなど、朝鮮半島情勢は緊張緩和と非核化、和解と協力の方向にかじを切ろうとしています。
 この間、安倍政権は蚊帳の外に置かれたばかりか、頼りにしていたトランプ米大統領によって鉄鋼・アルミの輸入制限措置を課され、「彼らはいつもほほ笑みを浮かべている。その微笑の裏には、“こんなに長いこと、米国を利用できたことが信じられない”との思いがあるだろう。しかし、そのような時代はもう終わりだ」と名指しで批判される始末です。蜜月は幕を閉じ、外交的な孤立が深まりました。
 内政でも、「働き方改革国会」と意気込んで臨んだものの裁量労働に関する調査データの不備が判明し、謝罪して関連部分を削除せざるを得なくなっています。関連法案の国会への提出は4月にずれ込みました。
 昨年から大きな問題になってきた森友学園への国有地の格安売却についても、決裁文書の改ざんが発覚しました。健全な民主主義の基礎となり、国民の知る権利を保障するべき公文書が改ざんされ、それに基づいて1年以上も国会での審議が行われてきたという前代未聞の事態が生じていたのです。
 森友学園事件は、籠池前理事長の国粋主義的な教育理念に共鳴した「安倍夫妻と不愉快な仲間たち」の関与と忖度によって小学校用地の取得に便宜が図られ、それを隠蔽するために公文書が改ざんされたということではないでしょうか。
 安倍「一強体制」による「毒」が官僚機構にも及び、政治と行政の私物化によって国政が歪められたということにほかなりません。戦後最低で最悪、異常で劣悪な政権によって、国政の土台がぶっ壊されてしまいました。これを立て直して立憲主義と民主主義を回復し、憲法を守り憲法に基づく政治を再生しなければなりません。
 そのためには、安倍政権を打倒することが必要です。昨年の夏、「水に落ちた安倍は打て」と書いて、私は政治危機に陥った安倍政権への追撃を呼びかけました。いま再び、政治危機に陥った安倍政権への追撃を、次のように呼びかけたいと思います。
 今こそ「水に落ちた安倍は打て」と。

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3月6日(火) 裁量労働のデータ偽装問題と森友問題について『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメントと若干の補足 [論攷]

 〔以下の私のコメントは、最近の『日刊ゲンダイ』に掲載されたものです。参考のために、アップさせていただきます。〕

 裁量労働のデータ偽装問題についてのコメント
 「安保法など独断専行の安倍政権はこれまでも散々、国民を騙すような手法を繰り返してきましたが、今回もそれが表れた。最も責任があるのは安倍首相なのに、ウソがばれても何の反省もなく、押し通そうとしているから言語道断です。今回の問題は働く人の命にかかわる。こんな強権的で非民主的なやり方を認めてはいけません」(2018年2月27日付)

 森友問題についてのコメント
 「本来、この国会はもっと注目されていいはずです。なにしろ、森友疑惑はクライマックスにさしかかっている。サスペンスドラマだったら、犯人が崖の上に追いつめられた状態です。誰が考えても、佐川長官の虚偽答弁は明らかですからね。佐川長官の虚偽答弁が証明されたら、いよいよ次は昭恵夫人にターゲットが移る。ところが、国会に対する国民の関心が予想以上に低い。理由は、大手メディアが詳細を伝えないからですよ」(2018年2月19日付)

 「財務省は交渉関連の文書を廃棄したと国会で答弁してきましたが、朝日新聞の報道の通り文書を改ざんしていたとすれば、悪質さの次元が違ってくる。
 誰かを守るため、あるいは何かを隠すために、財務官僚が犯罪に手を染めたわけです。文書廃棄どころの問題ではない。にわかには信じがたい話で、そんなことを一官僚が独断でやれるわけがありません。忖度か圧力なのか分かりませんが、背後によほど大きな力があったことは間違いないでしょう」
 「佐川氏の『事前の価格交渉は行っていない』という国会答弁とのつじつま合わせのために決裁文書を改ざんしたのか。安倍昭恵夫人が、森友学園が設立予定だった小学校の名誉校長に就任していたことが『特例的』で『特殊』だったことを隠蔽するために決裁文書から削除したのか。どちらにしても国家の犯罪です。国有地売却の不透明な経緯というレベルの話ではなく、国のあり方が問題になってくる。真実を解明するためには、佐川長官と昭恵夫人の証人喚問をやらざるを得ません」(2018年3月3日付)

 今日の午前、財務省の富山一成理財局次長は参院予算委員会理事会で、財務省の決裁文書が書き換えられたとされる疑惑について「(大阪地検の)捜査の対象になっており、すべての文書を直ちに確認できない状況だ」と報告したそうです。理事会で野党は「捜査結果が出るまで時間稼ぎをしようとしている」(民進党の川合孝典氏)と批判し、富山氏は「捜査に全面的に協力している」と述べ、当事者の財務省理財局や近畿財務局以外の職員も含めて「全省を挙げて調査を進めていきたい」と理解を求めました。
 一方で「事実関係の確認は裏付けを取るなど慎重に行う必要がある」として、詳細の把握には時間がかかるとの認識を示したといいます。地検に提出した決裁文書の原本と、国会に昨年開示した文書が同一かどうかは明らかにしなかったそうです。

 笑っちゃいますね。茶番もいいところで、単なる時間稼ぎにすぎません。
 書き換えられる前の決済文書がないというのなら、朝日新聞社に行ってコピーを取らせてもらえばいいじゃありませんか。朝日には「地検に提出した決裁文書の原本」も、「国会に昨年開示した文書」も、両方あるはずですから。
 今日の朝日新聞には、「森友要望の記述なくなる 答弁に沿う内容に」という見出しの記事が出ていました。このような記事は、両方の文書を突き合わせて比べてみなければ書けないものです。

 財務省の決裁文書の原本のコピーは朝日新聞にあるはずです。必要なら、朝日新聞社に問い合わせれば良いじゃありませんか。
 グズグズしていると、全文を新聞紙上で公表するにちがいありません。どこが削除されたかをゴチックにして明示する形で。
 今、そのタイミングを見計らっているところでしょう。最も効果的なタイミングを。

 この原本を入手しただけでなく、関係者の証言も集めているはずです。もう、安倍首相は逃れられません。
 第1次内閣での安倍対朝日という「第1次AA戦争」で安倍首相は退陣に追い込まれました。今回の「第2次AA戦争」でも、安倍首相の敗色は濃厚です。
 とっとと「白旗」を掲げて降伏した方が良いのではないでしょうか。財務省決裁文書の全文公開という「爆弾」を落とされる前に。

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2月8日(木) 野党や働き方改革、沖縄の状況などについての『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [論攷]

 〔以下の私のコメントは、1月13日以降の『日刊ゲンダイ』に掲載されたものです。参考のために、アップさせていただきます。〕

 「野党3党の統一会派結成は、安倍首相を喜ばせるだけですよ。まず、『理念、政策が違うのに一緒になるのは野合だ』とカサにかかって責めたててくるでしょう。野党3党は、政策をスリ合わせるだけでも相当なエネルギーを取られますよ。とくに、今年は〝改憲〟が一大テーマになる。安倍首相が、野党3党の違いに目を付け、手を突っ込み、揺さぶってくるのは間違いない。最悪なのは、希望の党の議員は、細野豪志や長島昭久などのチャーターメンバーを中心に安倍首相の考え方と極めて近いことです。党統一会派を組んだら、野党全体が彼らに引っ張られかねない。統一会派を組んだら、どうしたって他党に気を使わなくてはならなくなりますからね。立憲民主が『安倍首相による危険には反対だ』と訴えても、希望の党が『いや、改憲の是非を国民に聴くべきだ』と異議を唱えることは目に見えています」
 「やはり野党が選挙に勝つためには共闘が不可欠です。異分子を排除したうえで、可能な限り手を結んだ方がいい。たとえば、希望の党のなかにも、大串博志など、立憲民主と考え方が近い議員が何人もいます。同じ考え方の議員がまとまり、安倍自民党と対峙すべきです。自民党と対決するリベラル勢力が1つに結集すれば、共産党も選挙協力をしやすくなるでしょう。前原誠司や細野豪志たちは、維新の会と一緒になればいい。自民党の補完勢力が一緒になれば、祐江kン社にもわかりやすくなります」(2018年1月15日付)

 「安倍政権が掲げる働き方改革は、労働環境の改善とは程遠い。全身に毒が回った重症者に薬と毒を一緒に処方するようなものです。100時間残業の合法化はブラック労働の助長につながるでしょう。労災申請のハードルが上がり、認定を争う裁判で雇用者側が敗訴する可能性も懸念されます。安倍首相が目指すのは世界一、企業が活躍しやすい国。国民生活の破壊を許し続ければ、大企業が栄えて民滅ぶ。そうした事態を招きかねません」(2018年1月19日付)

 「いくらなんでも、安倍政権はアメリカに対して弱腰すぎます。米軍は約束を破ったのに、なぜ安倍首相と河野外相は抗議声明を出さないのか。これは重大な外交問題ですよ。もし中国や韓国が約束を破ったら、鬼の首を取ったように騒ぎ立てたはずです。本来なら、米軍機の全面飛行停止と地位協定の見直しを申し入れるのが当たり前です。驚いたのは、安倍政権の政務三役は誰ひとり、現地を視察していないことです。コトが大きくならないように、アメリカに気を使っているのは明らかです。菅官房長官は、2月4日に行われる名護市長選のために沖縄入りしているのに、小学校には足を運ぼうともしない。安倍政権の価値基準は完全に狂っています」
 「安倍政権の沖縄潰しは常軌を逸しています。2月4日に投開票される名護市長選のために、官房長官を筆頭に閣僚、党幹部が次々に現地入りしている。一地方選に権力が総力をあげている。辺野古基地の新設に反対している稲嶺市長を叩き潰すつもりです。政権に楯突く者、とくにアメリカの政策を邪魔する者は、絶対に許さないという態度。この政権の異常さがよくわかります」(2018年1月22日付)

 「新自由主義的な規制緩和によって強者をより強く、儲かるものをもっと儲けさせようという安倍政治の延長線上にあるのがアベノミクスです。『働き方改革』も『生産性革命』も少子高齢化対策の間違った治療法で、毒にしかなりません。昔の自民党は、保守本流のハト派の野中さんみたいな人がいて、もっとマトモな政党でした。しかし、今はそうじゃない。弱者に対する感覚が薄い人ばかり。安倍首相を中心にタカ派の傍流派閥が発言力を増し、肩を怒らせている。それに対し、誰も文句を言わず、安倍独裁で一色に染まってしまっているのが現状です」(2018年1月30日付)

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2月5日(月) 2017衆院選の分析と今後のたたかい(その3) [論攷]

〔以下の論攷は、『月刊全労連』No252、2018年2月号、に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

3、 今後の闘い―その課題と展望

 〇安倍9条改憲をめぐる激突

 総選挙後の特別国会での所信表明演説で、安倍首相は改憲論議の加速化を呼びかけた。「与野党の枠を超えて、建設的な政策論議」を行う努力の中で、「憲法改正の議論も前に進むことができる」と表明したのである。
 与党が3分の2を越え、「改憲勢力」が8割を突破したとされる総選挙での結果を受けて、安倍首相が9条改憲に本腰を入れ、その動きをスピードアップしたいと考えていることは間違いない。しかし、事態はそう簡単ではない。「改憲勢力」とは言っても、その中身はバラバラだからである。
 まず、安倍首相の掲げる自衛隊の明記など4項目の改正案について、自民党内が一致していない。12年自民党改憲草案のように9条2項を削除して自衛隊を国防軍とするべきだという意見が14%ある。
 自衛隊明記については、与党の公明党も反対しており、「改憲勢力」とされている希望の党や維新の会も積極的ではない。希望の党の玉木雄一郎代表は特別国会での代表質問で安倍首相の改憲案について「違和感を禁じ得ない」と述べ、「平和主義や専守防衛の立場から、どこまで自衛権が認められるのかをしっかり議論すべきだ。立憲主義にのっとって、憲法の議論を正しくリードしたい」と語っている(『毎日新聞』11月22日付)。
 野党第一党の立憲民主党の枝野幸男代表も代表質問で、安保法を「立憲主義の観点から決して許されない」と批判し、改憲については「今ある憲法を守ってから言え、それがまっとうな順序だ」と、対決姿勢を鮮明にした。もちろん、共産党と社民党は改憲に反対する立場で一貫している。
 9条改憲について安倍首相は、11月21日の参院本会議で、「合憲の自衛隊を書き加えることで何が変わるのか」という民進党の大塚耕平代表の質問に答えて、「自衛隊の任務や権限に変更が生じることはない」と述べるとともに、「自衛隊員に『君たちは憲法違反かもしれないが、何かあれば命を張ってくれ』というのはあまりにも無責任だ。そうした議論が行われる余地をなくしていくことが私たちの世代の責任ではないか」と改めて表明した。
 9条改憲によって何も変わらない、自衛隊が違憲だと言われなくなるだけだというのである。つまり、「違憲」の2文字を消すための改憲である。そうすれば、自衛隊員は「何かあれば命を張ってくれ」、気持ち良く死んでいってくれるとでもいうのだろうか。そのために、改憲発議と国民投票に政治的エネルギーを費やし、何百億円もの国費を投じようというのである。
 そんなことがいま必要なのかが、国民に問われている。政治が力を尽くして緊急に取り組むべき他の課題が別にあるのではないのか。改憲ではなく、国際環境の改善による平和と安全の維持、少子化対策や景気回復こそ、政治が全力を傾けて解決するべき課題なのだということを、国民に理解してもらうことが必要である。
 安倍9条改憲をめぐる激突において、憲法96条で規定されている改憲論一般とは区別し、安倍首相が目指している9条改憲の違憲性と問題点を暴露し孤立させなければならない。そのためにも、国民的な学習運動を組織して安倍9条改憲の狙いを明らかにし、反対世論を広げていくことが重要である。安倍9条改憲NO!市民アクションが提起している3000万人署名を核として国民的な運動を盛り上げ、たとえ国民投票を行っても勝てる見通しを持てなくすることで、改憲策動の息の根を止めなければならない。

 〇野党共闘の継続と発展

 このような安倍9条改憲NOの運動にとっても、市民と立憲野党の共同が大きな力となるにちがいない。それだけでなく、原発再稼働反対や沖縄の辺野古新基地建設反対、消費税の再増税や偽りの「働き方改革」、全世代にわたる社会保障給付の削減と負担増への反対などの運動においても、市民と野党の共同を追求することが必要である。
 これまでも、国会正門前集会や周辺での抗議行動、各種の集会やデモ、駅頭での演説会などで政党代表があいさつしたりエールを交換したりすることがあった。そのような場を数多く設定するとともに、そこに野党の代表を招き、できるだけ多く市民の声に直接、接する機会を作っていくことが重要である。
 国会議員は、そのような場に身を置くことで変わっていく。そのような場に、国会議員を招くことによって変えることもできる。市民の運動と国会内での審議の連動も可能となるだろう。国会内外の動きを結び付けることによって、議員を鍛え成長させ、国会内の議論を活性化させることも、これからの大衆運動の大きな役割なのである。
 もちろん、選挙への取り組みも忘れてはならない。労働組合の活動や大衆運動において共同の実現という視点を貫くとともに、国政選挙だけでなく各種の地方選挙での市民と野党との共闘を可能な限り実現していく必要がある。
 地方自治体の首長選挙での市民と立憲野党の共闘の実現、各種議員選挙での政策協定、相互推薦や相互支援も検討されるべきだろう。これらの経験を積み重ねながら、2019年4月の統一地方選挙や夏の参院選に向けての野党共闘を、今から準備していかなければならない。
 とりわけ、2019年7月の参院選に向けての取り組みが重要である。この時まで安倍9条改憲の発議を阻止し、改憲勢力を3分の2以下にするだけでなく与党を過半数以下にできれば、安倍内閣を打倒することが可能になる。そのためにも、野党の連携と共闘を何としても実現することが必要である。

 むすび

 総選挙の結果、安倍政権の基盤にはほとんど変化がなかった。選挙中の野党の分裂によって、「一強多弱」と言われるような国会の状況はさらに強まったように見える。安倍首相の驕りは一層高まり、強引な国政運営も強まっていくにちがいない。すでに、国会質問における与野党の時間配分の比率を変え、与党の質問時間を増やそうとしている。
 選挙が終わっても、国政の課題に変化はない。「森友」「加計」学園疑惑は解明されていず、選挙があったからといってウヤムヤにしてはならない。安倍首相夫妻の関与や国政の私物化に対する真相解明と追及は、引き続き重要な課題になっている。
 北朝鮮危機にも変化はなく、国民の不安は解消されていない。トランプ米大統領に追従し、圧力一本やりの安倍首相の対応は問題の解決を遅らせるだけでなく危機を高めている。対話の可能性を探り、軍事力によらない解決の道を模索するしかない。
 安倍首相が選挙中に約束した全世代を対象にした社会保障の組み換えは、全世代を対象にした社会保障の切り下げと負担増に転化しようとしている。教育費の負担軽減と子育て支援の充実は選挙対策のための思い付きにすぎなかった。
 国民の生活と労働を守るたたかいは、さらに大きな意義と役割を担うことになる。アベ暴走政治をストップさせ、日本が直面している危機からの活路は共闘にしかない。バラバラでは勝てないこと、統一して力を合わせてこそ勝利への展望が開かれること――これが今回の総選挙における最大の教訓だった。そのために労働組合と労働運動が大きな役割を果たすことが期待されている。この期待に応えることこそ、来るべき春闘の最大の課題ではないだろうか。
 これまで日本では維新の党や都民ファーストの会などの「右派ポピュリズム」はあっても、今回のような「左派ポピュリズム」の発生はあまりなかった。今回、それが生まれたのだと思う。
 「ポピュリズム」とは既存のエスタブリッシュメントの政治への不信、エリートに政治を任せていられないという人々の自発的な政治参加の波を意味している。それが排外主義に向かえば右派、民主主義を活性化させれば左派ということになる。
 今回の総選挙では、希望の党による「右派ポピュリズム」の発生が抑制され、立憲民主党による「左派ポピュリズム」が生まれた。それは、アメリカ大統領選挙でのサンダース、フランス大統領選挙でのメランション、イギリス総選挙でのコービンなどによる「左派ポピュリズム」旋風と共通するものだったと言える。
 国際的な政治の流れに呼応する新たな市民政治の局面が「左派ポピュリズム」の発生という形で表面化し、立憲主義を守り民主主義を活性化させる新しい展望を切り開いたのではないだろうか。ここにこそ、今回の総選挙が戦後政治においてもっている重要な意味があったように思われる。


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2月4日(日) 2017衆院選の分析と今後のたたかい(その2) [論攷]

〔以下の論攷は、『月刊全労連』No252、2018年2月号、に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

2、野党の混乱と分裂

 〇「小池劇場」の開幕と暗転

 総選挙の直前に野党第一党が姿を消すという、あり得ないはずの事態が勃発した。安倍首相が正式に衆院解散を表明した9月25日、小池知事も記者会見で新党「希望の党」の立ち上げと自らの代表就任を明らかにした。こうして「小池劇場」が幕を開け、やがて民進党の混乱と分裂に結びついていく。
 解散表明の翌26日、市民連合と民進党・共産党・社民党・自由党の4野党は政策合意に調印した。その日の深夜、小池知事と前原誠司民進党代表、連合の神津里季生会長らが帝国ホテルで密談している。『朝日新聞』の「検証 民進分裂」によれば、「民進党を解党したい。民進の衆院議員は、希望の党に公認申請させます」と前原代表が提案し、「それでいきましょう」と小池知事が応じ、同時に「全員(の合流)は困る。私は、憲法と安全保障は絶対に譲れません」と注文を付けたという(同11月19日付)。
 つまり、「全員」の合流という「なだれ込み」路線は、最初からあり得なかったのだ。そのことを知りながら、28日に開かれた両院議員総会で前原代表は事実上の解党と希望の党への合流を提案し、全員一致で承認された。小池人気を頼りに「安倍一強」を打破して生き残りを図ろうという思惑に支配されての結果だったといえる。
 しかし、このような思惑は直ぐに吹き飛んだ。29日の都庁での記者会見で、小池知事は改憲や安保で政策が一致しない民進党出身者について「排除いたします」と明言した。この「排除の論理」によって一挙に舞台は暗転し、それまで吹いていた「追い風」は「逆風」に転じた。
 こうして民進党は混乱のるつぼに投げ込まれ、10月2日には枝野幸男代表代行によって立憲民主党の結成が発表される。結局、民進党は希望の党への合流、立憲民主党への参加、無所属での立候補、そして参院議員などの民進党残留という形で、4つに分裂することになった。
 このような混乱が生じた要因は、民進党が都議選で大敗を喫したことにある。その責任を取って蓮舫代表が辞任し、後任に前原新代表が選出された。代表選挙で対立候補となった枝野氏は共産党を含む野党共闘の継続を訴えたが、前原氏は見直しを主張した。野党共闘に消極的で小池新党との連携に期待を寄せる右派グループに押されて前原氏は新代表に当選する。
 総選挙でも都議選と同様の小池新党ブームが生まれれば民進党は大敗して存亡の危機に陥る。かといって、共産党などとの野党共闘で「勝利」することも前原氏には望ましいことではなかった。周辺には「共産党と組んだら、死んでも死にきれない」(『朝日新聞』11月20日付)と話していた前原氏にとって、それは「望まざる勝利」だったのである。
 こうして、進退窮まった前原氏にとっての唯一の選択肢は、「小池に飛び込む」ことだけになった。これが「なだれ込み」路線である。しかし、民進党を道連れに飛び込んだ前原氏は「排除の論理」に翻弄されておぼれ、「小池劇場」は希望の党の失速という形で幕を引いた。「敗残の将」となった前原氏は希望の党に入り、小池知事はさっさと共同代表を辞任して都知事の椅子に舞い戻ったのである。

 〇野党共闘の試練と刷新

 民進党の新代表に選ばれた前原氏は、それまで各選挙区で行われてきた市民連合などの市民団体と共産党など立憲3党との共闘の動きには批判的だった。できれば共産党抜きで1対1の対決構図を作りたいというのが本心だったのではないか。新たに就任した野党第一党の党首が野党共闘に消極的だということも、安倍首相が突然、解散に踏み切る決断をした要因の一つだったと思われる。「前原新代表が就任したばかりの、今がチャンスだ」と。
 この安倍首相の思惑通りに前原氏は市民連合と野党との政策合意を踏みにじり、野党内に大きな混乱を持ち込んだ。しかし、突如として発生した逆流と試練に対して立憲野党は直ちに対応し、それを立て直すとともに刷新に成功した。
 衆院解散と民進党の事実上の解党がなされた9月28日、共産党は社民党との共闘に合意し、翌29日に志位和夫委員長は「安保法制廃止を守って共闘の大義に立って行動しようという方であれば、私たちは共闘を追求したい」と表明した。これらの動きは、民進党の消滅にもかかわらず連携可能な勢力が生まれれば共闘は立て直せるという展望を示す点で、重要な意味を持った。
 そして、それに応える動きが始まる。ネットなどに沸き上がった「枝野立て」という声に押される形で、枝野氏が新党「立憲民主党」を立ち上げた。背景になったのは、2016年2月の「5党合意」以来、積み重ねられてきた市民と野党との共闘である。このような経験と実績がなければ、市民の中から新党結成を求める声は上がらず、枝野氏も確信をもって新党結成に踏み切れなかっただろう。
 この立憲民主党の結成を機に、野党共闘をめぐる状況は一変する。翌10月3日、共産党は中央委員会総会を開いて対応を協議し、新党結成を歓迎するとともに枝野代表の選挙区での候補者擁立の見送りを表明した。候補者調整について都道府県別での協議を開始するとともに一本化に向けて67の小選挙区予定候補を降ろし、多くのところで自主的に支援を行った。
 こうして、立憲民主党は改選15議席を3倍以上も上まわる55議席を獲得して野党第一党となった。市民の強力なバックアップと共産党などの他の立憲野党の支援や協力なしには、このような成果を上げることはできなかったにちがいない。
 野党共闘は大きな試練に直面したが、それによって、その意義や重要性が再確認され市民の財産として再認識されたのである。それを失うまいとして多くの市民が立ち上がり、その力に押されて各政党は連携し、相互の信頼を強め、人間関係を深め、つながりを広めることができた。共闘は単に再建されただけではない。それは刷新され、よりバージョンアップされた形で生まれ変わったのである。
 第1に、共闘の核となるべき野党第一党が明確に共闘推進の立場に立つことになった。安倍9条改憲と安保法に反対するだけでなく、消費増税や原発再稼働への反対でも、民進党より明確な政策を打ち出している。旧民主党からぬぐいがたくこびりついていた負のイメージから脱却することにも成功した。野党第一党は量的に減少したけれども、質的に強化されたのである。
 第2に、この立憲民主党の躍進は市民と野党共闘の成果として達成された。とりわけ小選挙区で当選した議員の多くは、そのことを十分自覚しているにちがいない。このような実感として共闘の意義を理解できる議員が増えたことも、今後の共闘の発展にとって重要な意味を持つだろう。「手を結べば勝てる」ことを知る者が増えれば増えるほど、共闘への期待が高まり逆流は生じにくくなる。
 第3に、立憲民主党の選挙運動において、新たな政治文化が生まれた。インターネットを利用したネット戦略が功を奏し、若者を巻き込んで大きな威力を発揮した。特にツイッターやフェイスブックでは自民党のフォロワー数を抜き、投票日までに19万を超えている。街頭演説も、いかにスマートに格好良く見せるかに留意し、アーティストのプロモーションレベルに高めたという評価もあるほどだった。

 〇「立憲チームの勝利」に貢献した共産党

 野党共闘の立て直しのために力を尽くしたのが、共闘の推進力としての役割を担ってきた共産党だった。共産党は市民と野党の共闘成功を大方針にすえ、10月7日には立憲民主党・社民党とともに市民連合との7項目の政策合意を結び、協力・連携して選挙に取り組んだ。その成果が立憲民主党の躍進として結実し、市民と野党の共闘勢力が全体として大きく議席を増やすことができた。
 しかし、共産党は比例代表選挙を重点として闘ったにもかかわらず、前回の14年総選挙で獲得した20議席(606万票、11.37%)から、11議席(440万票、7.91%)への後退となった。これに沖縄選挙区で当選した1議席を合わせても12議席にすぎない。改選21議席と比べれば9議席減である。
 これは野党共闘全体で前進するための自己犠牲的な献身の結果でもあった。他の野党共闘候補に一本化するために候補者を降ろすという措置を取り、そのために様々な制約を被ることになった。小選挙区での候補者を減らせば、その分だけ政見放送の時間や選挙カーの運行台数などに制約が生ずる。それにもかかわらず候補者を取り下げたマイナスの影響が出たのである。
 また、選挙戦序盤において野党共闘の立て直しのために忙殺され、小選挙区ごとの候補者調整に手間取ったために比例代表を重点とする独自の選挙活動が手薄になったという面もある。選挙公示後、次第に野党共闘の体制が整い、小選挙区での対決構図が固まったころに比例代表への取り組みに力を入れたが、序盤の遅れを取り戻せなったということだろう。
 そして何よりも、これまで共産党に引き寄せられてきた旧民主党や維新の党の支持者や革新無党派層が、今回の選挙では立憲民主党に殺到したということではないだろうか。民主党政権や改革政党として期待をかけた維新の党などに裏切られ、失望した支持者や無党派層は共産党に期待を寄せてきた。これが地力以上の前進を可能にした背景である。
 そのために共産党は、13年の都議選から連勝街道を進み始める。同年7月の参院選、14年12月の衆院選、16年7月の参院選、そして先の都議選と、いわば連戦連勝だった。今回は一歩後退したわけだが、13年以降でみれば5勝1敗の成績になる。しかも、連携の幅は広がり、共産党の威信と信頼は高まった。次に前進できる条件と要因は十分にある。悲観することはない。
 このような選挙結果について、市民連合も以下のような「見解」を明らかにし、「日本共産党の努力を高く評価」している。立憲野党のためのサポ―ト役に徹し、ゴール前へのアシストによって得点を挙げることに貢献した共産党は、チームの勝利のために大きな役割を果たしたのである。

 「立憲民主党が選挙直前に発足し、野党協力の態勢を再構築し、安倍政治を憂える市民にとっての選択肢となったことで野党第一党となり、立憲主義を守る一応の拠点ができたことは一定の成果と言えるでしょう。この結果については、自党の利益を超えて大局的視野から野党協力を進めた日本共産党の努力を高く評価したいと考えます。社会民主党も野党協力の要としての役割を果たしました。
 そして何よりも、立憲野党の前進を実現するために奮闘してきた全国の市民の皆さんのエネルギーなくして、このような結果はあり得ませんでした。昨夏の参議院選挙につづいて、困難な状況のなかで立憲民主主義を守るための野党共闘の構築に粘り強く取り組んだ市民の皆さんに心からエールを送ります。」

 〇民進党の分裂で「また割き状態」に陥った連合

 今回の選挙に当たって、労働組合はどのように対応したのだろうか。全労連は、市民と野党の共闘実現のために力を尽くし、野党統一候補の勝利に向けて要求実現の立場での活動に参加した。傘下の単産や単組も、組合員の政党支持の自由を保障しながら、市民と立憲野党の共闘を後押しする活動に取り組んだ。
 これに対して連合は、神津会長が希望の党への民進党の合流を話し合った9月26日深夜の密談に同席し、「信義なき再編」の旗振り役の一人になっている。しかし、小池都知事の「排除の論理」によって全員の合流は不可能になり、民進党は希望の党・立憲民主党・無所属の3つに分裂した。
 これに伴って、連合の選挙支援も「また裂き状態」に陥った。連合全体として特定の政党を支援するのではなく、傘下の産別組合がそれぞれ個別に民進党系の候補者を支援するという方針を取らざるを得なくなったのである。
 民進党分裂で連合の組織内候補も3分裂した。連合傘下の産別による各候補の支援の状況は、図4(省略)の通りになっている。希望の党に対しては、自動車総連・電機連合・JP労組・情報労連、立憲民主党については運輸労連・JP労組・私鉄総連、無所属の候補者に対しては、UAゼンセン・自治労・全国農団労が、それぞれ支援する形になった。
 連合労組の場合、労働組合として特定の政党や候補者の支持を機関で決定し、組合員に支持を押し付けるという方法が一般的である。今回のように、その支持の対象が分裂したり、動向が不明であったりした場合、組合や組合員の側も振り回されることになる。特定政党支持押し付けの問題点が、より大きな形で浮き彫りになったと言える。
 これに対して、労働組合としての自主性を尊重しつつ、共同行動の実現に向けて努力した例もある。全国一般東京東部労組の地元である東京・葛飾地域の労働組合4団体が10月4日、「今回の総選挙にあたって、私たち4団体は、この間の運動の積み重ねを踏まえて、憲法改悪反対、『戦争法』廃止、『共謀罪』法廃止の世論を盛り上げるために、力を尽くします」という共同アピールを発表した。
 この4団体は、東部労組が加盟している葛飾区労協のほか、葛飾区労連・葛飾区職労・東京土建葛飾支部で、それぞれ連合、全労連、全労協と異なるナショナルセンター(労働組合の中央組織)に所属している。この4団体は、2016年5月に「労働組合の上部組織の違いを超えて、『戦争法の廃止を求める』共同アピールを発表し、その後、共同での駅頭宣伝・署名行動、学習会の開催などを行ってき」たという。
 これは野党共闘を草の根から作り上げていく貴重な例である。今後も、組合員の政党支持の自由を尊重しながら、労働組合として可能な形での共同を進めていくことが求められている。

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2月3日(土) 2017衆院選の分析と今後のたたかい(その1) [論攷]

〔以下の論攷は、『月刊全労連』No252、2018年2月号、に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

 はじめに

 突然の解散・総選挙だった。安倍首相の意向が報じられたのが9月17日で解散が28日、公示は10月10日で投票が22日。稀に見るあわただしい総選挙だった。どうして突然、解散する必要があったのか。その理由は最後まで明確にならなかった。「大義なき解散」と批判されたのも当然である。
 このあわただしさに輪をかけたのが、小池百合子東京都知事による新党「希望の党」の結成表明に始まる野党内での混乱だった。こうして「小池劇場」の幕が開いた。しかし、「排除の論理」によって舞台は暗転し、民進党は分裂、立憲民主党が登場する。「信義なき再編」による混乱が静まる暇もなく、22日の投票日が迎えられた。
 衆院選の結果は、表1(省略)のとおりである。自民党は284議席、公明党は29議席で、与党は313議席と300議席の大台を確保し、安定過半数の維持に成功した。野党は大きく明暗が分かれ、第一党の立憲民主党は55議席に躍進したが、第二党以下の希望の党は50議席、日本共産党は12議席、日本維新の会は11議席に後退し、社会民主党は2議席を維持した。このほか、無所属が22議席になっている(図1=省略)。
 各政党の選挙期間中の勢いの変化を示すために、ここでもう一つの表2(省略)を示したい。中盤の情勢と選挙結果とを比べたものである。この表を見てわかることは、立憲民主党の勢いのすごさだ。この勢いに呑み込まれるような形で、希望(-6)、共産(-3)、自民(-2)、維新(-1)の各党が、予測よりも議席を減らしている。
 選挙戦の中盤から後半にかけて、立憲民主党の「ブーム」が生じたということだろう。強力な「追い風」が吹いて議席が上積みされたことが分かる。
 今回の選挙では、新たに結成された立憲民主党と無所属だけが議席を増やした。予測との比較を見ても、その勢いを知ることができる。選挙の勝敗ということで言えば、立憲民主党こそが唯一の勝者だった。ここに、今回の総選挙の最も大きな特徴が示されている。
 このような結果をどう見たらよいのか、「劇場型選挙」の舞台の上で何が演じられ、その幕の影でどのような動きがあったのか。その内容と意味を明らかにし、選挙後の課題についても若干の検討を行うことにしたい。

1、 与党は「勝った」のか

 〇自民党の延命と「勝因」

 選挙後の新聞各紙の見出しには、「自民圧勝」「自民大勝」の文字が躍った。自民党は単独で過半数を制し、与党でも3分の2の多数を維持している。政権基盤の安定という当初の目標を達成したのだから、負けたわけではない。しかし、選挙後の安倍首相の表情には、勝利感や高揚感が意外なほど感じられなかった。それは、自民党が支持を増やして「勝った」わけではないからである。
 図2(省略)は、衆院選での自民党の獲得議席数と絶対得票率を示している。これを見ればすぐに分かるように、自民党の獲得議席は2005年の小泉郵政選挙での296議席がピークだった。その後、政権を失った09年総選挙で119議席と惨敗する。12年総選挙で政権に復帰したが、獲得議席は293議席で05年総選挙に及んでいない。
 その後も、14年総選挙では291議席で2議席減、今回の17年総選挙では284議席と7議席減になっている。過去3回の総選挙で、自民党の獲得議席は増えていない。今回は定数が10議席削減されたので単純な比較はできないが、ほぼ現状維持にすぎなかった。
 なお、今回の自民党の獲得議席のうち、比例代表・東海ブロックでの1議席は立憲民主党の候補者が足りなかったために当選したもので、本来であれば自民党の獲得議席は283であった。
 小選挙区での自民党の得票数を有権者総数で割った絶対得票率の変動でも、ピークは05年になっている。政権を失った09年総選挙で大きく減らしているが、政権に復帰した12年総選挙でもさらに減っている点が注目される。自民党は議席を回復したが、有権者内での支持の割合は減っていたのである。この割合は12年総選挙で横ばい、今回の17年総選挙で多少上向いているが、大きな変化ではない。過去3回の総選挙での絶対得票率はほぼ25%で、有権者の4人に1人しか自民党に投票していない。
 それなのに「圧勝」「大勝」などと報じられるような成績が残せたのは、大政党に圧倒的に有利な小選挙区制のためである。この選挙制度のカラクリと恩恵は、対抗する野党が分裂しているときに増大し、統一しているときには減少する。与野党の対決構図が1対1になれば、小選挙区制の害悪を減らすことができる。だからこそ、このような対決構図を作ろうとして市民と野党は共闘をめざしたのである。
 しかし、このような共闘体制は十分に構築できなかった。今回の総選挙でまたもや自民党が「大勝」した根本的な要因はこの点にある。

 〇安倍首相による「疑似餌」と野党の「敵失」

 「衆院選の結果には驚きませんでした。自民党が勝ちましたが、それは他の政党のオウンゴールが原因。野党同士がまるで共食いをしているようでした。」
 日本外国特派員協会(FCCJ)会長でシリア出身のカルドン・アズハリ氏は、こう言っている。多くの日本人の報道関係者の感想も似たようなものだろう。政府寄りの『産経新聞』の石橋文登編集局次長兼政治部長も、次のように指摘している。
 「事前調査では、民進、共産両党が共闘すれば自民党は50議席超を失う公算が大きかった。そうなれば憲法改正は水泡に帰す。それどころか総裁3選に黄信号が灯(とも)り、政権運営もおぼつかなくなる。……ところが、9月25日の首相の解散表明に合わせて、小池百合子東京都知事が『希望の党』を旗揚げした。28日には民進党が希望への合流を決めた。……小池氏が『排除の論理』を唱えたことにより、民進党は希望の党、立憲民主党、無所属の3つに分裂。期せずして自民党が『無敵』となる枠組みが生まれたのだ。しかも小池氏は出馬を見送り、希望の勢いは急速に衰えた。……振り返ってみれば敵失による勝利といえなくもないが、政権与党が圧倒的な勢力を得た意義は大きい。」(『産経新聞』2017年10月23日付)
 このように小選挙区における自民党の「勝因」は明らかだ。それは小池都知事による希望の党の結成と「排除の論理」をきっかけにした野党の分断にあった。このような「敵失」によって、小選挙区制が持っているカラクリと恩恵が増幅させられたからである。
 しかし、自民党は比例代表でも1856万票を獲得し、90万票も増やすなど健闘している。その要因として考えられるのは、第1に、客観的な背景としての北朝鮮危機と経済状態である。北朝鮮の金正恩政権による核開発とミサイル発射実験に国民は不安を高めていたうえに安倍首相はそれを煽りたてた。また、景気の状況も「いざなぎ超え」がささやかれるような一定の回復状態にあり、株価も「官製相場」による高進を続けていた。国民の実感を伴うものではなかったとはいえ、安倍首相が数字を挙げて「景気回復」を強弁できる程度の経済状態だったことは事実である。
 第2に、このような客観的背景を利用して、安倍首相は「疑似餌」をまいた。一定の有権者はこれに食いついて釣り上げられたのである。解散の「大義」として北朝鮮危機への対応や消費増税による増収分の使途変更を打ち出し、若者の教育と子育て支援に力を入れ、高齢者重視から全世代型に社会保障のあり方を変えると約束した。これがある程度、青年層や若いママの期待を集めたのである。
 第3に、「小池劇場」によって混乱に陥った野党の状況は、小選挙区だけでなく比例代表の得票にも微妙な影響を与えた。北朝鮮危機に不安を高めた国民は「信義なき再編」に嫌気がさし、離合集散を繰り返す野党よりも安定した政権の方がましだという意識を強めたのではないだろうか。そこに安倍首相は付け込み、北朝鮮の脅威を煽って政権安定のメリットを強調した。
 他方で、選挙直前に大きな問題となっていた「森友」「加計」学園疑惑には口をつぐんで「丁寧な説明」を回避し、「政治の私物化」という批判を無視した。9条改憲についても、選挙公約の重要項目に掲げたものの街頭演説で触れることはほとんどなかった。重要な争点を隠しての選挙戦術に徹したのである。このような「争点隠し選挙」も、自民党の「勝因」の一つだったと思われる。

 〇「全勝神話」が崩れて「敗北」した公明党

 現状維持に成功した自民党と比べて、公明党の状況は厳しいものだった。公明党は改選前の34議席から5議席減となって29議席にとどまったからだ。総選挙が公示される直前の10月3日、樋口尚也前衆院議員が女性問題で離党して公認を辞退しているから、実際には6議席減になる。
 小選挙区では神奈川6区に立候補した当選7回の前職が敗れて議席を失った。政権交代を実現した2012年選挙以来の小選挙区での全勝がストップするという思いもかけない結果だった。「全勝神話」の崩壊である。
 図3(省略)は公明党の比例票と議席数の推移を示している。これを見れば、今回の結果がいかに大きな「敗北」であったかが分かる。比例代表では前回731万票だった得票数が今回は698万票となり、700万票を下回った。これは自民党と選挙協力を始めた2000年衆院選以降、初めてのことで、13回にわたる衆院選と参院選での最低である。
 獲得議席数でも、民主党ブームによって与党の座を失った09年選挙の21議席に次ぐ少なさになっている。この2回以外、30議席を下回ったことは一度もなかった。これは公明党にとって大きなショックだったにちがいない。
 この結果について、公明党は総選挙総括の原案で、安倍首相を強く支持する姿勢や憲法論議での対応が支持者の不信感や混乱を招いたと指摘していた。斉藤鉄夫選対委員長は、①準備時間の不足、②野党再編で公明党の存在感が埋没した、③当時の現職2人に女性問題が相次いで発覚したことなどを敗因に挙げている。
 党内や創価学会には、特定秘密保護法や安保法の制定、共謀罪の新設などをめぐって「平和の党」を掲げる公明党が安倍首相サイドに押し込まれてきたという不満があるようだ。衆院選で立憲民主党が注目され、「中道やリベラルな政策に期待した無党派層が流れた」(創価学会関係者)という見方も出ており、公明党関係者は「自民に引きずられ続けると、いずれ党内や支持者の不満が爆発しかねない」と指摘している(『毎日新聞』2017年11月11日付)。
 ただし、自民党との距離の取り方は簡単ではない。小選挙区で自民党を応援する見返りに、比例は公明党に投票してもらうように求めているからだ。今回の結果についても、都議選で小池都知事の都民ファーストの会と選挙協力したために自民党側にわだかまりが残り、衆院選に尾を引いたという見方もある。
 安倍首相は自衛隊の存在を明記する改憲を提案しており、公明党は慎重な構えを崩していない。今回の選挙結果は、安倍9条改憲に対する公明党の対応についても微妙な影響を与える。態勢の立て直しを目指す公明党の指導部にとっては、これが大きな試金石になるにちがいない。

 〇小選挙区制の問題点と克服への道

 今回の総選挙では、改めて小選挙区制の問題点が浮上した。そのカラクリと恩恵によって自民党が「勝利」したことは、すでに指摘した通りである。これに関連して、さし当り2点指摘しておきたい。
 その一つは、得票数と議席数の大きなかい離である。今回の選挙での自民党の得票率は小選挙区で47.82%、比例代表では33.28%であった。しかし、議席占有率は小選挙区で74.4%へと跳ね上がり、30ポイント近くの増である。比例代表の場合には37.5%で、4ポイントほどしか増えていない。
 小選挙区の場合、4割台の得票率で7割台の議席を獲得している。この結果、莫大な「死票」が生まれ、大政党の議席が膨れ上がり、有権者の投票行動が歪められ議席に反映されなくなる。このような歪みが選挙への信頼を失わせ、投票率の低下を招いているのではないだろうか。
 もう一つの問題は、今回新たに明らかになった選挙区割りの混乱である。一票の価値の平等を実現するために選挙区割りの変更がなされ、行政区画や生活圏とは無関係に線引きが行われたために大きな混乱を招いた。しかも、今回は突然の解散でもあったために、この混乱に拍車がかかったように見える。
 このような投票価値の平等を実現するための区割りの変更は、今後も繰り返されるにちがいない。選挙区の人口は固定されず、その流動化と人口構成の変化は避けられないからである。一票の価値の平等を保障する点でも、小選挙区制は極めて不合理で不適格な制度なのだ。
 このような問題を解決するためには、制度を変えなければならない。得票率に獲得議席が連動する比例代表制に変えれば、このような問題は解決する。さし当り、全国11ブロックの比例代表はそのままに、小選挙区を廃止してその定数をそれぞれのブロックの比例代表定数に加算すればよい。
 もし、現行の制度が変わらないとすれば、得票数と議席数の大きなかい離によって自民党が常に優位に立つ状況の方を変えなければならない。そのために、唯一有効な方法は野党間の選挙協力である。小選挙区で与党と野党が1対1で対峙するような状況を作ることができれば、圧倒的に与党が有利になる現行制度の欠陥を一定程度是正することが可能になる。
 しかし、その場合でも選挙区割りの見直しと、それに伴う混乱は解決できない。今後、人口減少が進み、さらに人口分布は変化するにちがいない。その影響を最小限にとどめるための選挙制度の変更、すなわち小選挙区制の廃止はいずれ避けて通れなくなるだろう。

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1月30日(火) 国民世論を恐れる首相 [論攷]

〔以下の談話は、『しんぶん赤旗』日曜版1月28日号、に掲載されたものです。〕

 安倍首相は自民党の会合で「いよいよ(改憲を)実現する時を迎えている」と改憲に踏み込みました。
 国会では抽象的な言い方をし、自民党議員の前ではむき出しの本音を語る―。これは安倍首相の常とう手段です。特定秘密保護法、安保法の時も、首相は国会では美辞麗句を並べ立て、国民に本音を隠したまま悪法の成立を強行してきました。
 国民に本音を語れないのは自信がないことの現れでもあります。
 世論調査で「安倍改憲」に反対は賛成を上回っています。急ぎたいけれど無理強いしたら反発を強めてしまうかもしれない。首相と与党は改憲発議できる数を国会で握りながら、このジレンマを抱えています。
 施政方針演説で首相は「50年先、100年先を見据えた」「国の形、理想の姿を語るのが憲法」だと言いました。そう言うならば、現行憲法こそ「戦争なき世界」の「平和国家」という「理想の姿」を70年以上も前に先進的に語ったものではないでしょうか。この理想を根底から破壊する安倍改憲は許されません。

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