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8月13日(火) 自民敗北 原動力は共闘 [論攷]

〔以下のインタビュー記事は、『しんぶん赤旗日曜版』8月11日・18日合併号に掲載されたものです。〕

 参院選の結果をどう見るか―政治学者の五十嵐仁さん(法政大学名誉教授)にききました。

 参院選の結果をマスメディア、とくに「読売」などは「与党勝利」などと報じましたが、自民党は「負けた」と私は思います。
 自民党は改選前より9議席減。比例代表の得票は240万票減です。有権者全体に占める絶対得票率は16・7%。この数字は安倍晋三首相が政権に復帰した2012年以来最低の水準です。
 議席を減らし、得票数を減らし、有権者比の得票率も減らした。三拍子そろっています。これを「敗北」と言わない方がどうかしていますよ。
 自民党は単独過半数割れとなりました。これまでだったら新聞に「自民敗北」という見出しが出てもおかしくありません。
 改憲をめざす安倍首相にとって重大なのは、改憲勢力が発議に必要な「参院の3分の2」を割り込んだことです。これまでならやれたことが、これからはできなくなったのですから。
 安倍首相は参院選で、「憲法を議論する政党か、議論しない政党か」と、これまでになく改憲問題を前面に押し出して演説しました。それへの回答が「3分の2」割れです。〝改憲はだめだ〟という国民の答が出たわけです。
 この結果を生み出した原動力は、市民と野党の共闘です。東北を中心に定数1の10選挙区で野党統一候補が勝利しました。
 3年前の参院選で野党統一候補が勝ったのは11です。その時に勝利した野党統一候補の多くは現職でした。今回はほとんどが新人。決まったのも選挙直前で、圧倒的に不利な中でのたたかいで、改選2議席の5倍です。
 「毎日」(7月6日付)の序盤の情勢分析では、自民優勢21、野党優勢5、接戦6です。接戦6のうち5を野党が制しましたから、終盤にかけて追い付き、追い越したことを示しています。
 とくに、元大臣、元副大臣、元首相補佐官など与党のベテラン議員に競り勝った意義は大きい。この逆転があったからこそ、「3分の2」も崩れたし、自民党の9議席減も起こったのです。
 今回の野党共闘の勝利を「一定の成果」としか評価しないメディアもあります。しかし、私は「画期的成果」「大勝利」といっていいと思います。

 共通政策も前進

 野党が合意した共通政策は今回、幅も数も、作成のプロセスも大きく前進しました。3年前の参院選での野党の共通政策は、政策的には安保法制の廃止だけでした。17年総選挙は7項目。
 今回の共通政策は13項目で、ほぼ倍増しました。「原発ゼロ」や「米軍新基建設の中止」、「10月からの消費税増税中止」、「LGBTsへの差別解消」など国政の重要問題はほぼ入っています。しかも共通政策は市民連合のみなさんが原案をつくり野党間で協議し、合意したものです。
 「本気の共闘」という点でも前回とは大きく変わりました。立憲民主党の枝野幸男代表は、共産党公認候補が野党統一候補となっている福井にも応援に入りました。
 野党統一候補の得票は、32の1人区のうち29で、共闘した野党の比例票の総計を上回りました。共闘効果は実証されています。

 共産党善戦、政治不満示す「れいわ」支持
 希望ある未来の扉開く

 日本共産党は低投票率の中、比例は1議席減らしました。しかし、足りなかったのはあと17万票ほどでもう少しです。複数選挙区では現有3議席を確保する善戦でした。
 安倍政権は、消費税10%増税でも、外交問題でも行き詰っています。れいわ新選組(山本太郎代表)が比例228万票で2議席を獲得したのは、政治の現状に対して不満や批判がいかにうっ積しているかを示しています。
 共産党には今後も野党共闘の推進力として頑張ってもらいたい。政策の方向性は同じですから新党の「れいわ」とも連携を強め、連立政権を実現してほしいと思います。選挙結果は総じて、希望ある未来への扉を開いたのではないでしょうか。

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8月11日(日) 改憲3分の2議席阻止に確信を持ち、総選挙で革新共闘の勝利を [論攷]

〔以下の論攷は、日本科学者会議の『東京支部つうしん』No.622、2019年8月10日号、に掲載されたものです。〕

 参院選の投開票日翌日の朝刊には、「与党勝利」(読売)、「自公改選過半数」「改憲勢力2/3は届かず」「野党共闘1人区10勝」(朝日)などの見出しが躍っていました。果たして与党は勝利したのでしょうか。
 自公両党で改選と参院の過半数を確保したのは事実です。しかし、自民党は9議席減らし、比例の得票は240万票の減、絶対得票率(有権者に占める割合)は18.9%で2割以下となり、単独過半数を維持できませんでした。これで「勝利」と言えるのでしょうか。
 しかも、自民・公明・維新の合計議席で、改憲発議に必要な3分の2に4議席足りません。選挙戦で安倍首相は「改憲」を「議論」にすり替えて支持を訴えましたが、それでも議席を減らしたのです。有権者は明確に「ノー」を突きつけたことになります。
 この結果は、安倍改憲「ノー」を訴えてきた人びとにとっては3度目の勝利ということになります。昨年の国会で改憲発議を阻み、3000万人署名で世論を変え、発議に必要な議席を割り込ませたのですから。
 このような勝利を可能にした要因は、市民と野党の共闘によって1人区で10勝したことにあります。改選2議席を5倍にしての8議席増ですから、自民党の9議席減の大半を1人区で実現しました。そのほとんどは新人候補で知名度に劣り、出遅れがあったにもかかわらず、平均27%増という「共闘効果」によって勝利することができました。
 参院での1人区は32ですが、衆院では小選挙区289すべてが1人区です。野党共闘を深化・発展させ、政策合意を基に相互の連携と支援を強めれば、さらに大きな成果を上げることができます。2年以内に総選挙は確実ですから、今から準備を始めなければなりません。
 野党では、立憲民主党が改選9から17へほぼ倍増、国民民主党が改選8から6へ2減、共産党は改選8から7へ1減、維新は2増の10、社民党は改選1を維持しました。比例代表での議席は与党26対野党24ですが、得票率では与党48.42%対野党50.12%と野党の方が多くなっています。
 「れいわ新選組」が2議席、「NHKから国民を守る党」が1議席獲得するなど、新しい動きもありました。政治の現状や既成政党への不満や批判が鬱積していることの表れです。れいわを糾合しつつ解散・総選挙を実現し、勝利することがこれからの課題です。
 与党は参院の過半数を確保したものの自民党単独では法案を通せなくなりました。ホルムズ海峡での「有志連合」への参加、米中貿易摩擦の影響、日米貿易交渉でのトランプ政権からの攻勢、日韓関係の悪化、イギリスのEU離脱など国際情勢は波乱含みです。
 景気が低迷している下での消費税10%への引き上げや「アベノミクス」の「出口戦略」による国債暴落などによる経済破たんのリスクもあります。疾風怒濤が渦巻く中での船出で政治の安定は難しく、レームダック化が避けられない安倍首相に乗り切れるのでしょうか。

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8月9日(金) 共闘の力、政権に「黄信号」  [論攷]

〔以下のインタビュー記事は、『東京民報』第2096号、2019年8月4日付、に掲載されたものです。〕

 日本の未来を問う選挙戦となった参院選(7月21日投開票)が終わりました。自民、公明、維新の改憲勢力が参院の3分の2を失う一方、安倍首相は「与党で過半数を維持した」と勝利を強調しています。結果をどうみるか、政治学者の五十嵐仁さん(法政大学名誉教授)に聞きました。

 自民党の「4つの敗北」

 ―安倍政権は、参院選で「国民の信任を得た」と語っています。

 投票率1%分で、約100万票が動くので、投票率が上がれば、与党敗北の大きな雪崩(なだれ)が起きると期待していました。残念ながら投票率は下がってしまいましたが、それでも「表層雪崩」は起きたと思います。
 その結果、自民党は4つの敗北を喫しています。一つは、改選前から9議席減ったこと。二つ目に、比例得票数を前回16年比240万票も減らしたこと。三つ目に、自民党単独過半数を参院で割ったこと。さらに、4つ目の敗北が、改憲勢力3分の2を失ったことです。
 4つも負ければ、十分でしょう(笑)。最初から「与党で過半数維持」という低い勝敗ラインを設定していたから、印象操作で「勝利した」と言っているだけです。

 次につながる健闘

 ―野党の結果は。

 野党共闘について、マスコミは「一定の効果」と書いていますが、実際は「大きな効果」です。1人区での野党勝利が、改選2議席から10議席に増えたことが、自民党敗北の大きな要因です。
 3年前の参院選での野党統一候補の勝利が11で、今回は10と横ばいだと指摘されます。数を見るとそうですが、中身が大きく違います。
 2016年選挙では、32の一人区のうち、野党の現・前・元職が11人いました。それが今回は前1、元1だけで、後は全て新人候補です。
 新人候補は知名度の点で、大きく出遅れていました。選挙戦を10メートル後ろからスタートするようなものです。それが新聞各紙の序盤情勢予測での野党候補の厳しさに現れました。
 その状況から追いつき、ゴール手前で追い越して10人が当選した。共闘効果なしには、生まれなかった成果です。

 ―共産党は7人の当選でした。

 比例選挙で改選から1減らしたのは残念でした。ただ、2017年の総選挙に比べて比例票を伸ばしていますし、2016年の参院選では比例と選挙区合わせた当選が6人だったのを、今回は埼玉で新たに議席を得るなど7人当選させたことも、重要な点です。全体として、次につながる健闘だったといえます。
 東京では、吉良さんがすばらしい選挙戦を繰り広げました。ブラック企業問題をはじめ、この6年間の実績に大きな期待が寄せられました。

 ―低投票率については、どう見ていますか。

 マスメディアで、選挙戦をほとんど報じない傾向が強まったことが大きな要因でしょう。政権側も、予算員会を開かず、改元フィーバーや米大統領来日などを政治利用して、参院選に関心が向かないように仕向けました。
 選挙後、メディアで低投票率が問題だと報道されていますが、だったら論戦をもっと伝え、選挙の関心を高めて投票率を上げるべきでした。

 充実した共通政策

 ―総選挙での野党共闘が、次の大きな課題です。

 今回の野党の共通政策は、量の面でも質の面でも非常に充実しました。
 野党の共通政策は、16年参院選での4項目の「5党合意」が始まりです。このときは、政策的な内容は「安保法制廃止」の1項目だけで、他は選挙での協力などでした。17年総選挙では、市民連合からの提案を各党が合意する形で、7項目に増えました。
 今回の合意は項目が13に増えて、内容の面でも、1カ月ほどかけて各党が原案をもとに練り上げて充実させました。
 参院の1人区は32でしたが、衆院は全国289の小選挙区がすべて1人区です。ここでしっかりとした相互支援、相互協力の共闘をつくり、共通政策も練り上げれば大きな成果が出るでしょう。

 ―「政治の安定こそ争点」として参院選をたたかった安倍政権の今後をどう見ていますか。

 参院で単独過半数を失い、自民党だけで法案を通すことは不可能になり、安倍政権の「安定」には黄信号がともっています。
 世界を見れば、日韓関係の悪化、日米貿易交渉でのトランプ大統領からの要求、米中貿易摩擦、ホルムズ海峡への「有志連合」派遣、イギリスのEU離脱など、世界と日本の政治・経済に大混乱をもたらしかねない要因が積み重なっています。
 しかも、経済の冷え込みが明らかにもかかわらず、消費税増税に突き進もうとしている。「アベノミクス」の異次元金融緩和からの「出口戦略」もいずれ必要になり、国債暴落など経済のメルトダウンも大きな心配です。
 「安定」どころか、疾風怒濤が渦巻く大揺れの中での船出で、前途多難というべきです。

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8月5日(月) 野党共闘の威力が示された参院選 改憲勢力は3分の2を割る [論攷]

〔以下の論攷は、『東京革新懇ニュース』第444号、2019年8月5日号、に掲載されたものです。〕

 参院選の結果が出ました。自民党が57となって改選66議席を下回り、公明党は改選11を3上回る14議席で、与党は71議席です。
 野党は立憲民主党が改選9を上回り17、日本維新の会が改選7を上回って10、共産党は改選8を下回る7、国民民主党も改選8を下回って6、社民党は改選議席と同じ1、れいわ新選組は2でした。賛同団体の共産党は比例で1減となりましたが、3年前を1議席上回り、17年総選挙より得票数・率で前進しています。
 自民党は9減で単独過半数を失い、与党は改選前の147から141議席になりました。野党は改選前の89を103議席に14も伸ばしています。勝利したのは、与党ではなく野党です。

 改憲発議「3分の2」議席の阻止

 自民・公明に維新を加えても改憲発議に必要な85議席には届かず、参院の3分の2議席を下回りました。改憲勢力も負けたのです。この結果、さし当り安倍首相の改憲暴走にはブレーキがかかりました。
 とはいえ、安倍首相は引き続き、改憲に向けての攻勢を強めようとしています。21日夜のテレビ番組で、発議と国民投票について「任期中に何とか実現したい」と語り、「国会で議論が進んでいくことを期待したい」「国民民主党の中にも議論を進めていくべきだ、という方はたくさんいると思う」と述べ、野党を分断し一部を巻き込む意図を明らかにしました。安倍9条改憲をめぐる攻防は、これからも続くことになります。
 今回の選挙には、社会の右傾化とマスメディア、とりわけテレビの報道姿勢の変化が大きく影響しました。選挙報道は少なく、NHKテレビは政権寄りの報道に終始し、選挙への関心は盛り上がらず、投票率は戦後2番目に低い48.8%になりました。
 政治への不満や批判はれいわ新選組への支持などに示されましたが、広く報道されませんでした。予算員委員会を開かず、野党の出番が奪われました。「改元フィーバー」や天皇代替わり、トランプおもてなし外交などもありました。与党の過半数維持は、その結果だったと言えます。

 効果を上げた野党共闘

 野党の側の対抗策として注目を集めたのが32ある1人区です。ここでは野党の統一候補が10勝し、改選2から5倍に大躍進しました。
 数的には11勝した前回並みですが、13項目の共通政策で合意し、本気の共闘へと質的に大きく発展しています。2選挙区以外は新人ばかりで知名度に大きな差があり、出遅れや運動期間の短さなどにもかかわらず現職に競り勝つ劇的大逆転の連続でした。
 野党共闘でなければ、これだけの成果を上げることは不可能でした。この経験に学び、もっと幅広く、早い段階から市民と野党との共闘を実現し、連携を強めることが必要です。
 総選挙になれば、選挙区は全て1人区です。参院選以上に市民と野党との共闘と連携、統一候補の擁立が大きな意味を持ちます。この間の経験を生かし、今から準備を始めなければなりません。「共闘の砦」を守るために献身的な努力をし、野党共闘の土台を支えてきた共産党と革新懇の役割はさらに大きなものとなるでしょう。

 解散・総選挙に向けて

 選挙の結果、与党は政権の「安定」を確保しましたが、問題は山積しています。外交は波乱含みで、日韓関係の悪化、北方領土交渉や拉致問題の行き詰まり、日米貿易交渉や武器の爆買い、ホルムズ海峡での「有志連合」などトランプ政権からの無理難題も一挙に押し寄せてくるでしょう。
 消費税の10%への引き上げは確実となり、年金不安や消費不況、軽減税率やポイント還元などをめぐる大混乱は避けられません。米中貿易摩擦による下振れリスク、アベノミクスからの「出口戦略」による国債暴落と経済のメルトダウンも懸念されます。
 国民生活の「安定」には程遠い疾風怒濤の航海への船出です。解散・総選挙は2年以内に確実にやってきます。それに向けて、さらなる共闘の進化を。


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7月11日(木) 決戦・参院選―安倍改憲に終止符を(その3) [論攷]

〔下記の論攷は、社会主義協会が発行する『研究資料』No.43、2019年7月号、に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます〕

3、野党共闘こそ選挙勝利のカギ

 自民党の現状維持は至難の業

 自民党の甘利明選対委員長は5月16日のテレビ番組の収録で、夏の参院選で自民党が単独過半数を維持することは「不可能だ」と語り、今回改選される13年参院選で獲得した65議席について「これ以上、取れないぐらいの数字だ」と指摘し、「不謹慎な言い方だが、どこまでの議席減で食い止めるかだ」と述べました。改選される124議席の過半数に当たる63議席の確保も「至難の業」だと言っています。
 つまり、自民党が今度の選挙で6年前の成績を再現することは不可能で、実際にはどれだけ「減るのを減らす」かが課題だということなのです。7月の参院選では自公が議席を減らし、自民党が過半数を割ってしまう可能性が十分にあります。改憲勢力は非改選77、改選87議席と3分の2の164議席ちょうどですから、それを下回る可能性も小さくありません。
 今回、改選されるのは6年前の2013年に当選した議員です。この時は自民党が現行制度下で最多の65議席を獲得して6年ぶりに参院第1党に復帰し、公明党は11議席でした。この結果、与党は76議席で非改選の59議席と合わせて過半数を上回る135議席となりました。とりわけ31あった1人区では、岩手と沖縄を除く29選挙区で議席を獲得しています。
 参院での改選議席を維持するためには、この6年前の選挙を再現しなければならず、極めて困難です。甘利選対委員長は3年前に獲得した56議席以上という目標を掲げていますが、それでも大きな議席減になります。
 2年前の17年衆院選の比例代表では、立民・旧希望・共産・社民の合計は約2610万票で、自民・公明両党を約60万票上回りました。これを見ても、与党の現状維持は至難の業であることは明らかでしょう。

 スピードアップした野党共闘

 統一地方選挙が実施された4月の段階では、野党共闘の動きはそれほど進んでいませんでした。野党第一党の立憲民主党の枝野代表が地方組織の再建を優先し、統一地方選挙での県議などの当選に力を入れたからです。
 しかし、統一地方選挙での旧民主党の県議の当選者は、立憲民主党(118議席)と国民民主党(83議席)の両者を合計しても201議席で、63議席も減ってしまいました。これが枝野代表の危機感を高めたのではないでしょうか。
 統一地方選挙後半戦が終わった段階で、枝野代表が野党各党に共闘の申し入れを行ったのはそのためだと思われます。国民民主党の玉木代表が自由党との合流を決め、小沢氏を受け入れたのも同様の危機感からだったでしょう。
 こうして、5月の連休後に野党共闘に向けての話し合いがスピードアップしました。野党への牽制として流され始めた「ダブル選挙」の噂も危機感を強め、かえって共闘に向けての追い風になったように見えます。
 参院での立候補を予定していた候補者が辞退する際、代わりに衆院での立候補を視野に入れて譲歩するという例も生まれました。鹿児島で社民党の候補者が辞退して国民民主党に譲るとき、社民党は衆院鹿児島4区での立候補に配慮することを条件としたからです。
 統一のために立候補を取りやめた共産党候補が衆院の小選挙区に回るという例も生まれました。このような形で、ダブル選挙になった方が野党共闘を促進する面もありました。

 当たり前になりバージョンアップされた

 3年前に比べれば、市民と野党の共闘は特別なことではなく、当たり前になったのも大きな前進です。この共闘で市民連合が大きな役割を果たし、共産党が含まれるのも当たり前の光景になりました。
 その共産党の候補者が統一候補になるのも、3年前には香川の1選挙区だけでしたが、今回は、福井、徳島・高知、鳥取・島根の3選挙区になっています。しかも、後の二つ選挙区では、衆院補選の大阪12区での「宮本方式」を踏襲して無所属で立候補することになりました。
 前述のように政策合意も項目が増えて幅が広がり内容が豊かになっただけでなく、作成のプロセスも大きく前進しました。これを基に、それぞれの選挙区でさらに内容を発展させ豊かにした政策協定を結ぶ動きが続いています。
 3年前の参院選での野党共闘は初めての試みでした。市民と野党、野党各党の間でも初対面であったり、初めてメール・アドレスを交換したりということで、しっくりこない場面も多かったと思います。
 しかし、それから3年の間に、共同行動や連携は当たり前のことになりました。衆院小選挙区レベルで市民連合が結成されたり、集会で相互のあいさつやエールの交換がなされたりする中で、顔見知りになって仲良くなり、人間関係ができて信頼も強まるなど、草の根での共闘は大きく発展しています。
 市民と野党の共闘は、人間的なコミュニケーションとネットワークの形成という大きな成果に支えられて成長してきました。草の根での実績を積み重ねてきたのです。これが3年前との大きな違いであり、このような経験の蓄積こそが、市民と野党の共闘がバージョンアップされたということの意味にほかなりません。

 むすび

 5月末に「潮目」が変わりました。それまで吹いていた安倍政権への「追い風」は逆風に転じ、内閣支持率も軒並み低下を始めています。その頃から「解散風」がやみ始めましたが、その理由は大きく変わりました。「ダブルでなくても勝てる」から、「ダブルで負けるかもしれない」へと。
 いずれにしても、間もなく選挙がやってきます。結局、ダブルはできず改憲発議に失敗し、内閣支持層でさえ46%と半数近くが反対している(『朝日新聞』5月調査)10%への消費増税を掲げ、年金問題などの逆風の中で選挙を闘わざるを得なくなりました。野党の側からすれば、大きなチャンスです。
 安倍政権の暴走政治は、その暴走のひどさゆえに市民と野党の共闘を生み出し、鍛え育てる役割を果たしてきました。このようにして成長した野党共闘がどれほどの威力を発揮できるのか、目にものを見せるチャンスでもあります。
 7月の参院選は、歴史を変えた「関ケ原の闘い」にも匹敵する大きな決戦の場となるにちがいありません。安倍首相に痛打を与え、改憲の野望を打ち砕く最終決戦とするべく勝利をめざしましょう。
 難しいことではありません。この選挙で、怒りを込めて一票を投じさえすればよいのです。怒りの「受け皿」として、市民と野党の共闘、立憲野党が国民に認知されれば、自公の与党や改憲勢力を敗北させることは十分に可能なのですから。

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7月10日(水) 決戦・参院選―安倍改憲に終止符を(その2) [論攷]

〔下記の論攷は、社会主義協会が発行する『研究資料』No.43、2019年7月号、に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます〕

2、参院選をめぐる情勢と対決点

 風向きが変わった

 5月26日、安倍首相は来日したトランプ米大統領をもてなし、ゴルフ、大相撲観戦、炉端焼きの会食と「TOKYOの休日」を満喫しました。ゴルフ場で撮られたと思われる、満面の笑みを浮かべたツーショットの写真もネットに公開されています。このときが、安倍首相にとって得意の絶頂期だったと思われます。
 令和という新しい元号による「改元フィーバー」、天皇の代替わりを利用した「奉祝ムード」の盛り上げ、初の国賓としてトランプ米大統領を招いての接待攻勢などを利用し、6月末のG20首脳会議で外交成果を上げて参院選になだれ込むというのが、安倍首相の作戦だったと思われます。それは、この時まで順調に推移していました。
 だからこそ安倍首相は5月30日、経団連の定時総会で「風という言葉に今、永田町も大変敏感だ」「風は気まぐれで、誰かがコントロールできるようなものではない」と発言したのです。夏の参院選とのダブルとなる衆院の「解散風」にかこつけて軽口をたたき、野党を牽制する余裕があったということでしょう。
 しかし、すでにこのとき「気まぐれな風」は「追い風」から「向かい風」へと変わり始めていました。逆風に転じつつあった風向きの変化に、安倍首相は気がついていたでしょうか。
 5月27日の日米首脳会談終了後の共同記者会見で、トランプ大統領は「8月には両国にとって良い発表ができるだろう」と発言し、日米貿易交渉をめぐって「密約」が交わされたことをほのめかしました。日本の選挙が終わるまで待つから、その代わりに言うことを聞いてもらえそうだと。
 この時、安倍首相にイランとの仲介役を依頼したとも言われています。その口車に乗って安倍首相はイランに出かけ、思いもかけぬタンカー攻撃を受けてアメリカとイランの板挟みという窮地に陥りました。トランプ大統領のような、信ずるに値しない人物を信用してしまった安倍首相の「身から出た錆」というべきでしょうか。

 強まり続ける逆風

 『毎日新聞』6月13日付の記事の見出しに目が留まりました。「逆風三重苦」と書いてあったからです。「逆風」が吹き始めていることが初めて指摘された記事でした。そのリードは次のようになっています。
 「夏の参院選を控え、にわかに巻き起こった三つの『逆風』に政府・与党が警戒感を強めている。夫婦の老後資金として公的年金以外に『30年間で2000万円が必要』とした金融庁の審議会の試算への批判と並行して、秋田市での設置を目指す陸上配備型迎撃ミサイルシステム『イージス・アショア』を巡る防衛省の不手際や、国家戦略特区ワーキンググループ(WG)の不透明さが次々に発覚し、『三重苦』の様相だ。」
 なかでも、強烈な突風として吹き付けたのは年金問題の急浮上でした。金融庁審議会の報告書はそれまで政府や自民党、閣僚などが言ってきたことと変わりませんが、選挙前というタイミングで「不都合な真実」が突きつけられたことに慌てたのでしょう。麻生副総理兼金融担当大臣は報告書の受け取りを拒否し、森山自民党国対委員長も「なくなっているわけですから。予算委員会にはなじまないと思います」と居直りました。
 安倍政権が年金問題についてこれほど過敏になっているのは、大きなトラウマが残っているからです。第1次安倍政権のときの12年前の参院選で「消えた年金」が大問題になり、37議席と第一党の座を民主党に奪われる歴史的惨敗を喫し、その後の退陣につながりました。亥年には自民党苦戦のジンクスがあり、「鬼門」とされている年金問題が持ち上がったために安倍首相が慌てたのです。
 加えて、イージス・アショア配備をめぐる防衛省の不手際、加計学園問題と同様の国家戦略特区WGの不透明さなどが明らかになりました。そのうえ、日米貿易交渉についての「密約」が暴露され、農産品で打撃を受ける農村票が離反する恐れがあります。
 3年前の参院選ではTPPへの怒りが巻き起こり、東北や甲信越の1人区で自民党が敗北しました。農村部には選挙に行く高齢者が多く、今回は「年金問題」も影響すると見られています。消費税の再増税もあり、自民党が強いはずの西日本の1人区にも逆風が吹くのではないでしょうか。

 鮮明になった対立軸

 5月29日、市民連合の要望を受け、立憲・国民・共産・社民・「社会保障を立て直す国民会議」の5野党・会派が「共通政策」に合意し、署名しました。6月13日には、この5党・会派の幹事長・書記局長会談が開かれ、32の1人区すべてで一本化が完了したことが確認されました。これで参院選に向けて、本格的なスタートが切られたことになります。
 このような市民連合と立憲野党との政策合意の出発点は、2016年の「5党合意」でした。これは7月の参院選に向けて結ばれたものです。この時の合意は4項目で、政策的には「安保法制の廃止」だけが掲げられていました。
 その翌年の2017年9月26日、総選挙を前にして市民連合は「野党の戦い方と政策に関する要望」を提出しました。それは、①9条改憲反対、②特定秘密保護法、安保法制、共謀罪法などの白紙撤回、③原発再稼働を認めない、④森友・加計学園、南スーダン日報隠蔽の疑惑を徹底究明、⑤保育、教育、雇用に関する政策の拡充、⑥働くルール実現、生活を底上げする経済、社会保障政策の確立、⑦LGBT(性的マイノリティー)への差別解消、女性への雇用差別や賃金格差の撤廃という7項目です。
 今回の「共通政策」は13項目となり、政策合意の幅はさらに拡大しました。新たに加わったのは、①防衛予算、防衛装備の精査、②沖縄県新基地建設中止、③東アジアにおける平和の創出と非核化の推進、拉致問題解決などに向けた対話再開、④情報の操作、捏造の究明、⑤消費税率引き上げ中止、⑥国民の知る権利確保、報道の自由の徹底の6項目です。
 項目が約2倍になっただけではありません。内容的にも、改憲発議阻止や日米地位協定の改定、原発ゼロの実現、税制の公平化、最低賃金「1500円」、公営住宅の拡充、選択的夫婦別姓や議員間男女同数化(パリティ)の実現、内閣人事局のあり方の再検討、新たな放送法制の構築など、充実が図られています。
 作成過程も前回とは異なっています。作成に加わった共産党の笠井亮政策委員長は「市民連合から政策の原案が提起され、5野党・会派で協議して練り上げ、市民連合に提起するという1カ月間にわたるキャッチボールがあり、そのうえで最終的な調印となりました」と証言しています。
 他方、自民党は6月7日に参院選に向けての公約を発表しました。重点項目で「早期の憲法改正を目指します」「本年10月に消費税率を10%に引き上げます」と明記し、重点項目の6つの柱の第一を「外交・防衛」として「防衛力の質と量を抜本的に拡充・強化」することを掲げ、沖縄の「普天間飛行場の辺野古移設」についても「着実に進める」ことを打ち出しています。原発についても再稼働を進めることを明記しました。
 自民党の参院選公約と5野党・会派が合意した「共通政策」の内容は、真っ向から対立しています。参院選に向けての対立軸はより鮮明になり、野党の共通政策は安倍政治を転換した後の方向性も示しました。単なる数合わせの「野合」どころか、自公政権後の新たな野党連立政権樹立に向けての政策的な基盤をつくり出すものだったのです。


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7月9日(火) 決戦・参院選―安倍改憲に終止符を(その1) [論攷]

〔以下の論攷は、社会主義協会が発行する『研究資料』No.43、2019年7月号、に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます〕

 はじめに

 4月1日に新しい元号「令和」が発表され、5月1日には新天皇が即位しました。あたかも新しい時代が始まったかのような「奉祝ムード」が醸し出され、「改元・代替わりフィーバー」がはやし立てられました。「新時代」が始まったのだと。
 しかし、政治のあり方も私たちの生活も、何も変わっていません。確かに元号と天皇は変わりました。この際、一緒に総理大臣も変えようじゃありませんか。安倍首相が引っ込めば、それは大いにめでたい。政治のあり方も私たちの生活も大きく変わるにちがいありません。
 その道筋をつけるチャンスがすぐにやってきます。それが参院選です。この選挙で自民党を過半数以下に追い込み、自民・公明・維新・希望の改憲4党の合計議席が3分の2を下回るようにすれば、安倍首相の改憲への野望を打ち砕くことができます。
 すでに、3000万人署名運動によって、今日まで改憲発議を阻止するという大きな成果を上げてきました。追い込まれた安倍首相は参院選で改憲議席を維持し、その後の国会で改憲発議を狙うという長期戦略に転換せざるを得なくなっています。安倍改憲論に終止符を打てるかどうかは、選挙結果にかかっています。
 いよいよ決戦の時が迫ってきました。日本の政治の将来と私たちの生活の行く末を左右する選挙です。民主主義を踏みにじり、ファッショ化を進めて政治を私物化する安倍首相に引導を渡すために、選挙による「一票革命」を起こそうではありませんか。

1、ファッショ化と腐敗が進む安倍政権

 安倍政権の異質のあくどさ

 安倍政権の最大の特徴は、過去の自民党政権とは異なる異質のあくどさにあります。この点で、安倍首相は戦後最低で最悪の首相です。とりわけ、従米・軍拡と改憲志向、国会審議での嘘とごまかし、政治・行政の私物化と公私混同が際立っています。
 憲法と議会制民主主義の破壊も、過去のどの政権よりもひどいものでした。審議打ち切りによって強行採決された法案には、特定秘密保護法、安全保障関連法、共謀罪法などの違憲立法がありました。いずれも世論調査では7~8割が反対しています。これ以外にも、TPP関連法、働き方改革法、カジノ法、改正入管法、水道民営化法、改正漁業法などが強行可決されています。
 どの法案も世論調査では半数以上が反対していました。その世論を無視して審議を打ち切り、採決を強行したのです。安倍政権のファッショ化を如実に示す事例だと言えるでしょう。
 審議内容や政策の中身で与野党が対抗するというのが議会政治の基本です。そのために、野党の質問に真摯に対応し誠実に答え、公文書などの資料を提出する必要があります。立案と検証のためのデータなども正確でなければなりません。
 ところが、森友・加計学園疑惑や自衛隊日報隠蔽問題、裁量労働のデータ改ざん、統計不正、年金問題などで示されたのは全く逆の姿でした。安倍首相や麻生副総理は野党の質問にまともに答えず、公文書を隠したり改ざん・ねつ造したり、データが誤りだったりしました。沖縄の辺野古では県民の意向を無視して基地建設工事が強行されています。
 強行に次ぐ強行で民主主義の基本が歪み、土台が腐ってきているのです。政治と行政への信頼がこれほど失われたことがあったでしょうか。2年前には憲法の手続きに従って野党が求めた臨時国会召集を無視して解散・総選挙を強行し、今度は予算委員会開催の要求を放置しています。憲法や法律を無視し国会審議から逃げ回る姿は醜悪で、断じて許されるものではありません。

 「情報戦」による内閣支持率の維持

 安倍内閣の強みは内閣支持率の安定にあります。一時的に下がっても、また回復するという形で一定の水準を維持してきました。この安定感は歴代政権の中でも際立っており、憲政史上3位という長期政権を生み出した要因はここにあります。それは何故でしょうか。
 端的に言えば、「情報戦」において安倍首相が勝ちを収めているということです。グラムシは革命闘争の形態を「機動戦」や「陣地戦」という概念を用いてとらえていました。今日では「機動戦」から「陣地戦」へ、さらには「情報戦」へと変化してきています。情報をめぐる階級間の闘いに勝利したものが革命闘争においても優位に立つのです。
 もともと権力を持つ者は「情報戦」においても有利な立場にあります。安倍首相は第1次政権の失敗の教訓から、情報の発信と操作に腐心するようになりました。「ポスト真実の時代」になり、フェイクニュース(虚偽情報)があふれているような時代状況も首相に有利に働いています。
 権力による情報の支配・統制が強まり、教育とメディアへの介入も目立ちます。ジャーナリストの一部が変質しメディアが2分化して政権支持の風潮が生まれ、政権の応援団が形成されました。ジャーナリズムの一部は権力の批判・監視から迎合・追従へと変容しています。
 若者は新聞やテレビよりインターネットやSNSによって情報を入手する傾向があります。それに対応するために、ネットでの書き込みを監視する「自民党ネットサポーターズクラブ(J-NSC)」などが暗躍しています。こうして報道の自由や発言の自由が抑制され、社会と若者の右傾化が進みました。
 国際NGOの「国境なき記者団」は5月16日に2019年の「報道の自由度ランキング」を発表しました。調査対象の180カ国・地域のうち、日本は前年と同じ67位です。「記者団」は日本では「メディアの多様性が尊重」されているものの、沖縄の米軍基地など「非愛国的な話題」を取材するジャーナリストがSNSで攻撃を受けていると指摘しています。
 菅官房長官が記者会見で、東京新聞の望月衣塑子記者の質問に対して「あなたに答える必要はない」と拒絶するなどの例も生まれています。特定の記者の質問を妨害したり答えなかったりするなど、従来は考えられなかったような異常事態です。政権が不都合な情報の発信や伝達をいかに恐れているかを示す好例だと言えるでしょう。

 政権の行き詰まりと腐敗

 情報の統制と操作による「虚偽環境」をつくり出すことによって国民を欺くというのが、情報戦における安倍首相の常套手段です。「隠す、ごまかす、嘘をつく」というのが、その「3原則」でした。これに、最近では「受け取らず」が付け加わったようです。しかし、そのようなやり方も現実によって裏切られ、いよいよ政権の行き詰まりが明らかになってきました。
 第1は、外交政策の破たんです。その象徴的な出来事が安倍首相のイラン訪問時のタンカー襲撃事件でした。アメリカはイランによるものだと主張していますが、真相は不明です。安倍首相のイラン訪問による「仲介外交」は失敗し、かえってアメリカとイランとの関係は悪化しました。
 韓国との関係は冷え切って北朝鮮とは接触できず、ロシアとの北方領土問題でも打開のめどは立たっていません。中国との関係では、一方で友好関係強化へと舵を切ったにもかかわらず、他方で「仮想敵」として軍備増強の口実にするというチグハグぶりです。
 第2は、国会審議での答弁や公文書、政策立案の土台となる数字やデータの誤り、隠蔽、改ざんやねつ造などの問題です。これらの問題は、すでに森友・加計学園疑惑で明らかになりました。前述のように、その後も不正や捏造が明らかになっています。
 通常国会では毎月勤労統計(毎勤)や家計調査などの政府基幹統計の誤りも発覚しました。アベノミクスの評価に関わる数字が変えられ、それに官邸が関与している疑いもあり、「アベノミクス偽装」ではないかとの批判を招いています。
 第3は、政治家や官僚の劣化です。安倍首相や麻生副総理の暴言や失言は言うに及ばず、塚田一郎国土交通副大臣と桜田義孝五輪担当大臣が辞任に追い込まれました。塚田氏は下関北九州道路について「私が忖度した」、桜田氏は「復興以上に大事なのは高橋さんです」という発言が問題とされました。いずれも失言というより本心を語ったのではないでしょうか。
 このような暴言は自民党だけではありません。維新の会の丸山穂高衆院議員は北方領土について「戦争しないとどうしようもなくないですか」等という発言によって国会初の糾弾決議を挙げられ、参院選比例区に立候補を予定していた維新の会の長谷川豊氏も被差別部落をめぐる差別発言によって公認停止の処分を受けました。
 このほか、経産省と文科省のキャリア官僚が覚せい剤を省内で使用していたことが発覚して逮捕されています。このような形での汚染や腐敗が高級官僚にまで広がっていたとは、まことに驚くべきことというほかありません。

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7月7日(日) 統一地方選後の情勢と参院選の展望─「市民と野党の共闘」と憲法闘争の前進にむけて(その2) [論攷]

〔以下の論攷は、2019年・勤労者通信大学・通信『活かそう憲法②』に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 ダブル選挙でも怖くない

 改憲をめぐる決戦が夏の参院選に先送りされる可能性が強まっています。安倍9条改憲を阻止するうえで、夏の選挙の意義はますます大きなものになりました。この選挙が衆参両院のダブル選挙になるかもしれないという報道もあります。
 しかし、消費税の増税を先送りし、改憲を争点としてダブル選挙になったとしても、恐れることはありません。衆参ともに前回の選挙(参院の場合は6年前の改選議席)で自公両党はかなりの好成績を収めており、今度の選挙で再現することはほとんど不可能だからです。実際には「減少幅をどれだけ減らせるか」ということになるでしょう。
 消費税再増税の先延ばしは歓迎すべきことですが、それは「アベノミクス」の失敗を公言することになり、野党の得点になっても与党にとって有利になるとは限りません。増税の準備や景気対策を組み込んだ今年度予算が可決されていますから、安倍政権への批判を招いて逆風となるリスクもあります。
 参院選での改憲の争点化も逆効果になる可能性があります。安倍首相の下での改憲には反対世論の方が多く保守勢力内にも改憲反対論が存在していますから、野党ではなく与党を分断して無党派層の反発を招くかもしれません。
 ダブルにすれば野党共闘を分断できると言われています。しかし、参院選1人区と衆院選小選挙区で与党との間で1対1の構図を作ることになれば、譲り合う選挙区の数が増えますから、かえって共闘に向けての話し合いがやりやすくなるという面もあります。

 カギは市民と野党との共闘

 ダブル選挙は生き残りを模索する安倍首相の自己都合から発していることで、解散の大義はなく二院制の趣旨にも反し、国民にとっては大きな迷惑で解散権の乱用は許されません。しかもダブルなら有利になるかといえば、衆参両院で改憲勢力が3分の2の多数を下回る可能性の方が大きいのです。
 今回、改選されるのは2013年に当選した参院議員です。この時は自民党が現行制度下で最多の65議席を獲得して6年ぶりに参院第1党に復帰し、自公両党は過半数を上回る135議席となりました。31あった1人区では29選挙区で議席を獲得するなど、望みうる最高の成績を収めています。しかし、3年前の参院選では32の1人区で野党統一候補は11人当選しています。
 参院の「会派別」では自民+公明+維新+希望の党で163となって定数242の3分の2を1議席上回っているにすぎません。参院選1人区ではほぼ全選挙区での統一候補の擁立に目途が立ちました。『東京新聞』3月15日付は17年の衆院比例得票を元に「16激戦区、野党一本化なら勝機」と報じています。
 2年前の衆院選は自民党にとって極めて有利な状況の下での選挙となり、選挙前と同じ284議席を獲得しました。衆議院解散前後に野党第一党の民進党が事実上分裂して希望の党と立憲民主党が結成され、野党勢力が分断されたからです。共闘は十分に機能せず、野党の自滅によって自民党が助けられたのです。
 3年前の参院選と2年前の衆院選は大きな教訓を残しています。1人区での統一候補を実現すれば与党を敗北させることができるということであり、分断を防いで市民と野党との共闘を実現すれば改憲勢力3分の2を阻止することは十分に可能だということです。

 ダブルになっても返り討ち

 安倍首相は2016年参院選でもダブル選挙を検討しましたが、決断できませんでした。今回も、最後まで迷うにちがいありません。自民党の現有議席維持の見通しはなく、公明党が抵抗しているからです。
 どうなるかは不明ですが、準備は必要です。奇襲攻撃を許さないためには、油断せず備えなければなりません。野党側が統一候補を擁立して迎え撃つ準備が整えば、安倍首相が決断できなくなる可能性もあります。
 もし、ダブル選挙になったら、堂々と受けて立てばいいんです。ダブルで挑んできたら、ダブルで跳ね返す。衆参両院でいっぺんに自民党を敗北させることができれば、手間が省けていいじゃありませんか。その結果、改憲勢力を3分の2以下に追い込めれば、安倍首相の改憲野望を最終的に打ち破ることができるのですから……。
(いがらし・じん/法政大学名誉教授・勤通大基礎コース階級闘争論教科委員)

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7月6日(土) 統一地方選後の情勢と参院選の展望─「市民と野党の共闘」と憲法闘争の前進にむけて(その1) [論攷]

〔以下の論攷は、2019年・勤労者通信大学・通信『活かそう憲法②』に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 4月1日に新元号「令和」が発表され、5月1日には新天皇の即位がありました。これらを機に「改元・代替わりフィーバー」によるバカ騒ぎが巻き起こり、あたかも新しい時代になったかのような幻想がふりまかれています。
 その張本人は安倍首相です。これに便乗して視聴率を稼ごうとするマスメディアやひと稼ぎを企む商売人などが手を貸しました。「すべての道は選挙に通ず」ということで、安倍首相は夏の参院選に向けて「お祝いムード」を持続させたいと考えているのでしょう。
 改元や新天皇、米国大統領の訪日、大相撲観戦に至るまで、あらゆるものを政治利用する安倍首相のあくどさが際立っています。空騒ぎに巻き込まれて主権在民の本義を忘れることなく、権力を監視し声をあげなければなりません。憲法12条は「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない」と呼びかけているのですから……。

 安倍改憲をめぐる攻防

 統一地方選後の情勢において、焦点の一つとして浮上したのが改憲問題です。安倍首相が5月3日の憲法記念日の改憲派の集会にビデオメッセージを寄せ、2020年の新憲法施行について「今もその気持ちに変わりはない」と述べて執念を示したからです。同じ日、江東区でひらかれた安倍改憲に反対する集会には6万5000人が集まりました。
 自民党は衆院小選挙区での改憲本部の設置や草の根での運動の強化を打ち出しています。3000万人署名で追い詰められた結果です。安倍首相は夏の参院選で憲法改正を訴えるべきだとの考えを示し、参院選の公約案でも「憲法改正原案を国会に提案・発議し、国民投票を行い、早期の憲法改正を目指す」と明記する方針です。
 しかし、憲法審査会での議論は進んでいません。5月30日の衆院憲法審査会の幹事懇談会では国民投票でのCM規制などをめぐる国民投票法改正案の取り扱いを巡って協議しましたが折り合わず、成立には黄信号がともりました。
 自民党は改憲4項目(下記参照)の説明という「頭出し」だけでも行おうとしており、今後も予断を許しません。しかし、今国会の会期は1ヵ月を切り、衆参のダブル選もささやかれるなか与野党の対立は深まっています。安倍首相の執念と強気の姿勢はかえって野党の反発を強め、「数の力」で採決を強行すれば選挙での「逆風」を招きかねず、見通しは立っていません。

*自民党の「改憲4項目」とは?
 2017年12月20日、自民党憲法推進本部は、「憲法改正に関する取りまとめ」として「改憲4項目」をかかげました。「4項目」とは、①自衛隊について、②緊急事態について、③合区解消・地方公共団体について、④教育充実について、です。詳細は、改憲問題対策法律家6団体連絡会による『自民党改憲草案推進本部作成改憲案(4項目)「Q&A 」徹底批判』を参照してください。PDF版が以下のアドレスからダウンロードできます。http:// kaikenno.com/?p=1010 .




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6月10日(月) 労働資料館の役割を考える(その2) [論攷]

〔以下のインタビュー記事は、日本鉄道福祉事業協会・労働資料館が発行する『労働資料館ニュース』No.2、2019年6月号、に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

●戦災を越えて残す努力

 私はハーバード大学に留学した後、海外の労働関係資料館を訪問して『この目で見てきた世界のレイバー・アーカイヴス――地球一周:労働組合と労働資料館を訪ねる旅』(法律文化社, 2004年)という本にまとめました。それは私の勤務していた大原社会問題研究所が労働史研究機関国際協会(IALHI)という団体に入っていたからです。日本で加盟しているのは大原研究所だけですから、そういう意味で日本の資料館事業は不十分だと感じました。特に、ナショナルセンターや労働組合の本部が意識的に自分たちの資料を残していくという点では、海外の方が進んでいると思います。
 アメリカではシステムを整えて系統的に収集・保存しています。私の訪問したジョージ・ミーニー・センターは、AFL-CIO(アメリカ労働総同盟・産別会議)直轄の資料館でした。AFL-CIOの会長だった人の名前を冠した資料館で、各産業別組合が大会資料などをそこに送るように義務付けられています。日本の連合にあたるところですが、連合は各単産の資料を系統的に集めているのでしょうか。
 それぞれの単産でも、大会資料などは残していますが、県本部や下部組織の資料まで残すということはしていないでしょう。場所、金、人、時間などの制約があるからです。
 大原社会問題研究所は、戦前から社会・労働問題関係資料を収集しており、これは世界に誇れる水準にあると思います。戦前からやっているところは国際的に見ても多くありません。欧州では戦争もありましたし、ナチスによる迫害や焚書もありました。
 その中で、オランダの国際社会史研究所は、ナチスの弾圧を逃れるためにドイツをはじめオーストリア、スペインなどから資料を受け容れ、社会・労働関係資料を守り抜きました。そういう歴史が欧州にあるのです。
 大原研究所でも戦前の貴重な資料は土蔵にしまってありました。偶然ではなく火災から守ろうと考えたのだと思います。そのため、1945年5月の「山の手大空襲」を受けた時に、火災に強い土蔵の中で貴重な戦前の資料が燃え残りました。

●資料を有効に生かすネットワーク

 日本政府についていうと、公文書を残すための公文書館をきちんと位置づける公文書館法を作ろうという動きが出てきたのは福田康夫内閣の時です。法律は2009年に成立しました。日本の政府や公的機関も資料を公的財産だと位置づけて組織的に残すという考え方が外国より弱いと思います。
 昔の資料は正倉院などで一定程度残っていますが、歴代天皇が公的な決定などを行った際の文書は公的機関が残してきたわけではありません。冷泉家のような公家が代わりにやっていただけです。徳川幕府に関してもそれなりに資料が残っていますが、地方の行政文書は庄屋の蔵やお寺など私的な場所に残っている場合が多いのです。
 欧州では書記が重要な役割を担っており、その長である「書記長」が最高権力を持つ例が見られます。エジプトにも書記の像があります。書記という記録を残す仕事は大切なものだというこだわりがあったのではないでしょうか。
 また、日本ではアジア・太平洋戦争が終わった時、軍部が資料の多くを燃やしてしまいました。自分たちは悪くないと弁解するための資料まで燃やしてしまったのです。それに比べて、ソ連が崩壊した後にも悪逆非道な粛清の記録まですべて残されています。資料を大切にして後世に判断を仰ごうという意識の表れではないでしょうか。
 皆さんの労働資料館の資料は、正しい歴史を知り過去を検証する上で重要な意味を持っています。何があったのかを記録に残し、その意味を検証できるようにしておくことです。それは主として研究者の役割だと思いますが、過ちを繰り返さないための教訓を引き出していく上でも役に立つでしょう。あるいは、今後の進路を検討するための材料にもなると思います。
 皆さんのところには国鉄動力車労働組合(動労)の資料があると聞いていますが、大原研究所にも国鉄関係の資料がたくさんあります。主に国鉄労働組合(国労)からのもので、相互に補完しあう関係にあると思います。動労と国労の両方の資料を突き合わせることで、国鉄労働運動史の全景が浮かびあがってくるのではないでしょうか。
 先ほども言いましたが、どの資料館もスペースや資金、人材などの制約に悩んでいます。したがって、資料の収集や保管などを有効に生かすためには相互に連携するネットワークが必要になります。1986年に設立された社会・労働関係資料センター連絡協議会(労働資料協)がそういう役割を果たしつつあり、その存在は重要です。

 追記 日本鉄道福祉事業協会・労働資料館は2019年4月、「労働資料協」に正式加盟しました。

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