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12月20日(火) 出でよ、「鼠小僧」! [消費税]

「鼠小僧」と言っても、皆さんよくご存知の、あの盗人のことではありません。最近、話題になっている「ロビンフッド税制」のことです。
 「ロビンフッド」は、日本で言えば、さしずめ「鼠小僧」でしょう。ということで、これは「鼠小僧税制」のことになります。

 昨日書いたように、消費税の税率を引き上げても、税収は増えないどころか減る可能性の方が大きいのです。社会保障の財源を確保し財政破綻を阻むためには、消費税を高くしてはならないというのが歴史の教えるところでした。
 それでは、税収を増やすためには、どうしたら良いのでしょうか。昨日紹介した三橋さんはGDPを増やすために積極的な公共投資を行うべきだと主張しています。
 同時に、「デフレで雇用不安や社会不安が継続する以上、ほとんどは貯蓄に流れてしまう」として、「子ども手当のような巨額な所得移転は即刻中止すべきだ」と書いています(三橋貴明『増税のウソ』145頁)。そうでしょうか。

 私は、富めるものから貧しいものへの再分配政策による「巨額な所得移転」こそが、今の日本では最も必要なのではないかと思っています。そうしても、「ほとんどは貯蓄に流れてしまう」ことはなく、消費に回って国内需要を高め、景気回復に結びつくと思うからです。
 年収200万円以下の人が5年連続で1000万人を超え、生活保護受給者が205万人で過去最多という現状では、収入が増えても貯蓄に回す余裕がありません。現に、「家計に一銭の蓄えもない」貯蓄ゼロの世帯は2005年に25%にまで上昇し、今では3割くらいになっていると見られています。
 「デフレで雇用不安や社会不安が継続する以上、ほとんどは貯蓄に流れてしまう」という三橋さんの現状認識は甘い、と言わざるを得ません。将来への備えより現在の必要を充たす方を優先せざるを得ないほどに、日本の貧困化が進んでいるからです。

 このような「巨額な所得移転」のためには、富めるものから徴収し、貧しいものへと分け与える「鼠小僧」のような税制が必要とされます。その一つが、投機目的の国際通貨取引に対して課税を強化するトービン税(ロビンフッド税)で、イギリスでは税率を平均0.05%とすれば年間2500億ポンド(日本円で約36兆円)の税収が見込めるとされています。 国内の株売買などの金融取引にも課税を強め、所得税の累進課税の強化、資産家への贈与税の増税、旧物品税のような贅沢品への課税強化、大企業への減税の取りやめと各種優遇税制の廃止、内部留保への課税などの税制改革と組み合わせれば、巨額な税収増を図ることができます。これを低所得者や中小企業の支援と減税に回せば内需を拡大することができ、社会保障財政の財源確保や財政再建に差し向けることもできるようになるでしょう。
 可処分所得を増やし、外需依存ではなく内需の拡大を図り、景気を良くすることこそ、税収増に結びつき、経済と社会を立て直し、国家財政の破綻を防ぐ最善の道ではないでしょうか。「鼠小僧税制」は、そのための重要な手段となるにちがいありません。

 金持ちが豊かになればそのおこぼれが巡り巡って社会全体の底上げに繋がるというトリクル・ダウン理論は、新自由主義の猛威によって惨めに破産してしまいました。その結果、格差が拡大したために日本の「億万長者は10年前の3倍に」(『週刊金曜日』2011.11.18、26頁)なっているそうですから、「鼠小僧」が活躍する余地は充分にあるのではないでしょうか。

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12月19日(月) 3度目の「リフォーム(改革)詐欺」にまたもや騙されるのか [消費税]

 少し古い話になって恐縮ですが、一昔前に「リフォーム詐欺」というものがありました。「奥さん、ここ少しガタが来ていますね。安くしておきますから、リフォームしたらどうですか」と、言葉巧みにもちかけて必要でもない工事を行って大金をだまし取るという犯罪です。
 詐欺の一種ですが、「リフォーム」という言葉に騙されてしまうようです。少しでも良くなるなら、お金をかけても良いかと思ってしまうのでしょう。

 このような「リフォーム(改革)」を掲げて言葉巧みに国民を騙し、必要でもない施策を実行することで権力とお金をかすめ取るということは、政治の世界にもあるようです。しかも、一度ならず、二度、三度と。
 「改革」を掲げて国民を騙した最初の詐欺は、「政治改革」でした。これによって選挙制度を変え、二大政党制を実現して保守政治の安泰が図られましたが、政治は劣化し機能不全に陥りました。
 二度目の詐欺は「構造改革」です。これによって規制緩和が進められ、大企業の利益が図られましたが、貧困化と格差の拡大が進行し日本社会は「ぶっ壊れ」ました。

 そして、今また、三度目の詐欺が画策されています。「一体改革」という名の「リフォーム(改革)詐欺」です。
 社会保障と税のあり方を一体として見直し、改革するという触れ込みで消費税の税率を引き上げることが狙われています。「国民の皆さん、社会保障はガタが来ていますよ。多少税金が上がっても、一緒にリフォームしなければもちませんよ」というわけです。
 これも政治的な詐欺の一種ですが、「改革」という言葉に騙されてしまうようです。社会保障サービスが少しでも良くなるなら、消費税が上がっても良いかと思ってしまうのでしょう。

 しかし、社会保障改革として提案されているメニューは年金額の削減や介護保険利用者の負担増など、サービスの向上や給付の増大ではなく切り下げや利用者負担の増大です。「改革」として実行されようとしている施策が国民のためにならないという点では、前の2回と同様です。
 しかも、消費税率が3%から5%に引き上げられた97年の場合、9兆円の負担増が景気を悪化させ、所得税と法人税収入の激減によって翌98年の国税収入は全体として4兆円も減少してしまいました。税収増のための消費増税が結果として税収減を招いたというわけで、日本の税収はこれ以降、一度も97年を上回っていません(三橋貴明『増税のウソ』36~37頁)。
 穴が空いているといって屋根の修理をしてもらったら、さらに穴が大きくなってしまったリフォーム詐欺そのものではありませんか。深刻なデフレの下で、消費増税など12.5兆円の負担増になるという試算もある現状では、屋根の穴はさらに大きなものになるでしょう。

 国民は、前2回と同様に、またもや「リフォーム(改革)詐欺」に騙されてしまうのでしょうか。「2度あることは3度ある」ということになるのか、それとも「3度目の正直」ということで、今回こそは目を覚ますのか。
 ぜひ、後者であって欲しいと願っているのですが、果たして……。


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1月24日(木) TPP参加と消費税増税は許されざる政治的詐欺だ [消費税]

 TPPへの参加問題に続いて、消費税増税に向けての動きが強まってきています。政府の行政刷新会議による4日間の「提言型政策仕分け」が終わりましたが、これ自体、消費税増税がやむをえないことを国民に納得してもらうための政治的なパフォーマンスではないかと見られています。
 TPP参加も消費税増税についても、野田首相は総理に就任してからにわかに意欲を高めたように見えます。しかも、国民をあざむくような詐欺的な手法を用いながら……。

 すでに、このブログでも指摘したように、TPPへの参加問題で、野田首相は首相官邸での記者会見では「協議に入る」と言いながら、ハワイのホノルルで行われた日米首脳会談ではオバマ米大統領に「参加する」かのような説明を行い、「全ての物品、サービスを貿易自由化交渉のテーブルに乗せる」と述べたとされています。つまり、国内と国外とで「2枚舌」を使い分け、国民を欺いたわけです。
 また、消費税の増税でも、国内では増税を明確にしていないのに、フランス・カンヌで開かれた主要20カ国・地域(G20)首脳会議で、「消費税率を10%まで引き上げる」と明言して「国際公約」と受け取られました。ここでも、野田首相は国内と国外とで「2枚舌」を使い分けていたことになります。
 国内とは違った約束を国外で行い、それを「外圧」として利用しながら国内の反対論を押し切り政治的な目的を達成しようというやり方は、自民党などによってもしばしば用いられてきました。この点でも野田首相の自民党化は明らかですが、それは国民を無視した「売国的」な手法であり、許されるものではありません。

 しかも、野田政権は「税と社会保障の一体改革」という看板によっても、国民を欺いています。税制をどうするかということと社会保障をどう改革するかということとは本来別々の課題であるはずですが、それを「一体化」して論ずることによって「社会保障の改革のためには消費税の増税もやむを得ない」と国民に思わせようとしているからです。
 しかし、「提言型政策仕分け」でも出されたように、「年金の特例水準の解消」という形での年金額の削減や介護職員の待遇改善交付金の廃止など、「社会保障の改革」は必ずしもその充実を意味していません。さらに、消費税増税分の5%のうち、社会保障の機能強化に回るのは1%にすぎないとされています。
 これまでの消費税の導入や税率の引き上げに際しても、それは社会保障の充実のためであると説明されていました。もし、それが本当なら、今日のような社会保障の危機は生じなかったはずです。

 すでに、私たちは政治改革や構造改革という改革(リフォーム)詐欺に騙されてきました。原発の「安全神話」にも騙されたため、大きな代償を払わされるはめに陥っています。
 これらの政治的詐欺こそが、今日の政治と社会の惨状を生み出してきた要因ではありませんか。もはや再び、このような政治的詐欺に騙されてはなりません。
 そもそも、マニフェストで民主党は、消費税については増税しないと約束し、TPPについては参加どころか触れてもいませんでした。その結果としての政権交代であり、民主党政権の誕生だったはずです。

 反自民を装って政権を奪い、その時の約束を覆して自民党以上の悪政に突き進んでいるのが、今日の民主党の姿です。このままでは、政権交代自体が最大の政治的詐欺だったということになりかねません。


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8月6日(金) 官僚も財界もこれまでの失敗の責任を取り蟄居・謹慎すべきではないか [消費税]

 今日の『東京新聞』の一面に、「大卒就職率 下げ幅最大」とありました。「7.6ポイント減60.8% 中・高は最低」という見出しが続いています。
 その横に、「小中不登校 12万人超」という記事も出ています。さらに、その左には、「国民年金保険料 納付率 初の60%割れ」「09年度 不況で最低を更新」という記事があります。

 学校に行かない行けない、学校を卒業しても就職できない、年金の保険料を払わない払えないという人たちが増えているというわけです。国民年金保険料を払わない人びとの中には、保険料を払いたくても払えないという人びとも沢山いるでしょう。
 「自営業者向けとされる国民年金だが、現在では非正規労働者や無職者が加入者全体の約7割を占めており、不況により保険料を支払えなくなっていることが響いた」というのが、『東京新聞』の解説です。お金がなくて、保険料を払えないというわけです。
 消費税率の引き上げで、この人達の生活費がさらに高くなれば、保険料の支払いがもっと低くなるにちがいありません。8月4日のブログで書いたように、「このように貧困が拡大しているときに、消費税の税率を引き上げて低所得者層の負担を増やそうなどというのは、全く逆転した発想だ」ということは明らかでしょう。

 このような中で、昨日、日本経団連と民主党が、経済運営について意見交換する政策対話を行いました。席上、日本経団連の米倉会長は、「税財政・社会保障制度の一体改革は、日本の将来を左右する問題だ。超党派で協議する仕組みを考えてほしい」と求めたそうです。
 これに対して、民主党の枝野幹事長は「財政安定のための改革に努める」と答えました。玄葉政調会長も、「消費税の論議自体が否定されたわけではない。秋口から議論を開始したい」と応じています。
 日本経団連は、「税財政・社会保障制度の一体改革」として、消費税率の引き上げについて「超党派で協議する仕組み」を求めたわけです。これに対して民主党は、「消費税の論議自体が否定されたわけではない」という理屈で、消費税率引き上げに向けての決意を示しています。

 「消費税10%」構想を撤回したとされている菅直人首相も、国会での答弁では、「財政状況はどなたが総理や政権を担っても、政治家として回避できない」と指摘し、財政再建に向けての決意を繰り返しています。財務官僚による「教育」が、これほどにも徹底していたのかと感心させられるばかりです。
 でも、この「教育」には、欠陥があったと言わざるを得ません。消費税率を引き上げれば、財政再建どころが、いっそう財政状況を悪化させる可能性のあることが充分に教えられていないからです。

 消費税が引き上げられれば、商品やサービスの価格に転嫁されます。5%アップすれば、5%分高くなると考えるのが普通です。
 しかし、値段を上げれば売り上げが落ちる小・零細企業などでは、消費税が上がったからといって値段を上げることはできません。今日のような値下げ競争が展開されているときにそんなことをすれば、いっぺんに売り上げが落ちてしまうことは明らかでしょう。
 となると、我慢をして値段を据え置くことになり、上がった消費税分は自分で負担しなければなりません。売り上げが同じだとすれば、引き上げられた消費税分の赤字が生じます。これが斉藤貴男さんの指摘する「損税」です。

 もちろん、体力のある中堅以上の企業は消費税分を価格に転嫁するかもしれません。そうすれば、値段が上がります。
 今のような経済状態で物価が上がれば、消費者の買い控えが生じます。やはり売り上げは落ちるでしょう。
 売り上げが落ちれば、利益は少なくなります。当然、景気は悪くなります。

 つまり、消費税の引き上げ分を価格に転嫁できないところも、転嫁できるところも、経営状態は悪化するにちがいありません。景気が悪くなれば、所得は少なくなり、所得税収は低下します。
 消費税によって税収増をはかっても、それによって消費不況に陥ったり、企業業績が悪化したりすれば、所得税や法人税などの直接税は減収になります。1997年の「9兆円の負担増」によって生じたと同じような不況が再来するかもしれません。
 この可能性を、財務官僚は菅首相に教えたのでしょうか。そもそも財務官僚は、かつて自ら犯した失敗の経験からきちんと学んでいるのでしょうか。

 97年以降の失敗の経験ということで言えば、財務官僚だけではありません。日本の官僚組織全体が、構造改革の波に呑み込まれて大きな失敗を犯しました。
 これについての労働分野における反省の書が、先ほど出された『労働経済白書』です。医療の崩壊を招いた厚生官僚、教育の荒廃によって不登校を増大させてきた教育官僚、公共事業付けで財政破綻を引き起こした国交官僚も、大きな反省が必要でしょう。
 コスト・イデオロギーにとらわれて非正規化を進め、ワーキングプアーを生み出した企業経営者も、重大な失敗を犯しました。日本経団連などの財界も、大間違いをしてしまったのです。

 この間、政治的な失敗を犯した自民党は、その責任を取らされました。しかし、この自民党を、ある時には支え、ある時には圧力をかけて、政策を押し付けたり誘導したりしてきたのは、官僚と財界ではありませんか。
 これらの人びとも大きな失敗を犯してしまいました。その結果が、「大貧困社会」と格差の拡大であり、少子化と人口減によって持続可能性を失いつつある日本の姿なのです。
 しかし、これらの人びとは自己の責任をほとんど自覚せず、十分な反省をしていません。日本経団連が消費税率の引き上げに向けて民主党に圧力をかけたように、いまだに大きな顔をして、誤った政策を押し付けたり誘導したりしようとしているのです。

 官僚の「教え」に騙されてはなりません。これまで間違ってきた人びとに教えられても、現在の苦境から抜け出せるはずがありませんから……。
 財界の圧力に屈してはなりません。そのことによって日本の進路を歪め、社会を崩壊させてきたのは彼らなのですから……。
 官僚も財界も、これまでの大失敗の責任を取り、せめてしばらくの間は蟄居・謹慎すべきではないでしょうか。

8月5日(木) 安井孝之朝日新聞編集委員の「記者有論」で述べられている正当な主張 [消費税]

 先ず、次の一文を読んでみてください。

 消費税率を10%に引き上げれば、間接税比率はおそらく主要国のなかでトップクラスになるだろう。主要国の消費税の税率はすでに10%以上の例が多いのに、なぜこんなことになるのだろうか。
 景気の低迷で主要な直接税である所得税、法人税がピークに比べて半分以下に減ってしまったことが大きな理由だ。そうした要因に加えて、消費税が導入され、3%から5%に引き上げられる過程で実施された、さまざまな税制改革の影響もある。
 例えば、所得税では中低所得者も04年までは軽減されたが、高所得者も最高税率が引き下げられるなど累進構造は見直され、負担が軽減された。法人税も減税された。法人の7割が赤字で、法人税を払う企業は少ないという日本固有の事情もある。
 また、相続税はバブルで不動産の価格が高くなったとして、負担軽減のために基礎控除額が引き上げられた。94年からは5千万円が定額で控除され、税率も緩和、その結果、相続税を払う人は、遺産相続をした人の4%余りまで減った。ピーク時は相続した純資産の22%を納税したが、最近は11%台に落ちている。
 消費税は低所得者に悪影響を与える。一方、消費税導入後の税制改革は高所得者や多額の遺産相続をした人に優しかった。税制改革の論議を消費税をどうデザインするかにとどめてはならない。所得の再分配機能を回復するため、所得税や相続税など直接税も議論すべきである。

 これは、私が書いたものではありません。しかし、私がこれまで書いてきたことと、極めて似通った主張です。
 これは何と、『朝日新聞』の編集委員が書いたものです。全文をお読みになりたい方は、「税制改革 議論、消費税にとどめるな」と題された安井孝之さんの「記者有論」『朝日新聞』2010年8月3日付をご覧になって下さい。
 まだ、『朝日新聞』も捨てたものではないということでしょうか。それとも、この問題を普通に考えれば、このような主張になるのは当たり前だということでしょうか。

 直接税の比率が下がったのは、景気低迷で「主要な直接税である所得税、法人税がピークに比べて半分以下に減ってしまったことが大きな理由」だといいます。これに加えて、安井さんは極めて重要なことを指摘されています。
 たとえば、「高所得者も最高税率が引き下げられるなど累進構造は見直され、負担が軽減された」こと、「法人税も減税された」こと、「法人の7割が赤字で、法人税を払う企業は少ない」こと、それは「日本固有の事情」であること、「相続税を払う人は、遺産相続をした人の4%余りまで減った」ことなどです。
 「法人の7割が赤字で、法人税を払う企業は少ない」ということなら、法人税率が高かろうが低かろうが関係ないということになりませんか。税金そのものを払っていないのですから……。

 総じて、「消費税導入後の税制改革は高所得者や多額の遺産相続をした人に優しかった」というのが、安井さんの総括です。この「優しさ」が、財政赤字と格差拡大の元凶にほかなりません。
 ここにこそ、強き者に優しく弱き者に厳しい新自由主義的税制改革の本質があります。このような税制改革によって富めるものはますます富み、貧しい者はますます貧しくなって、「大貧困社会」と格差社会が登場したのです。
 こうして、安井編集委員は、税制改革論議を「消費税にとどめるな」、つまり、消費税以外の税制改革についても充分に議論するべきだと主張されるわけです。当然のことでしょう。

 ただし、安井さんは「所得の再分配機能を回復するため、所得税や相続税など直接税も議論すべき」だとしています。つまり、注意深く「法人税」を除いているわけです。ここに、『朝日新聞』の禄をはむ方としての限界があると言うべきでしょうか。
 所得の再分配機能を回復するための税制改革論議から、「法人税」を除外する理由はありません。それどころか、私は大企業に対して特別の課税を行うべきだと思いますが、これについては既にこのブログ(8月3日(火) 「社会保障充実税を大企業から取り立て社会保険料負担の引き上げを実施すべきだ」http://igajin.blog.so-net.ne.jp/2010-08-03)で書きましたので、ここでは繰り返しません。
 この点では、菅首相が所得税の最高税率を引き上げる可能性に言及したのは、大きな前進だと思います。次に俎上に上らせるべきは相続税でしょう。

 安井さんは、直接税に分類される様々な税を引き下げてきたために、もし、消費税を10%にすれば「間接税比率はおそらく主要国のなかでトップクラスになるだろう」と指摘されています。つまり、消費税だけを引き上げれば税構造が歪むということです。
 かつて、「直間比率」が問題になりました。日本の税収構造において、直接税の比率が間接税と比べて高すぎると批判されたのです。
 今また、「直間比率」が問題になろうとしています。消費税が10%になれば間接税の比率が高くなりすぎるという、かつてとは全く逆の意味で……。


8月2日(月) 消費税率のアップと企業減税は再分配政策の逆転だ [消費税]

 消費税についての好著が出ました。斉藤貴男さんの書かれた『消費税のカラクリ』(講談社現代新書)という本です。

 斉藤さんとは、一度、東京土建主催の講演会でご一緒し、言葉を交わしたことがあります。大活躍中のジャーナリストで、この本も消費税の問題点を余すところなく明らかにしています。
 その主張は、「これ以上の税率引き上げは自営業者の廃業や自殺を加速させ、失業者の倍増を招くことが必定だ。社会保障費の大幅な膨張を求める税制を、同時にその財源にもしようなどというのは、趣味の悪すぎる冗談ではないか」(133頁)という一文に尽きていると言っていいでしょう。この意味が理解できない方は、斉藤さんの著書を読まれるか、『東京新聞』7月30日付の「こちら特報部」をお読み下さい。
 「消費税2ケタ 衝撃の予測本」という見出しが付いたこの『東京新聞』の記事には、「しわ寄せは中小業者」「失業率10%、年自殺5万人超」「『控除』で非正規雇用加速」「輸出戻し税 大企業“丸もうけ”」「所得税率見直せば増収」などの中味出しも付いてます。これだけでも、大体の中味が分かるでしょう。

 私は以前、「消費税の税率を高めれば、庶民の家計も中小企業の営業も、ひいては、景気も日本経済も大打撃を受けることは火を見るよりも明らかなのです」(税制改革とは逆累進性を反転させ「秘密の花園」で溜め込まれた「蜜」を国民に分け与えることだhttp://igajin.blog.so-net.ne.jp/2010-03-07)と書きましたが、斉藤さんの著書は、このことを具体的に例証しています。とくに、消費税を価格に転嫁できず、今でも消費税分を自己負担(「益税」ならぬ「損税」)している小・零細の自営業者が壊滅的な打撃を受けるだろうと主張されています。
 その通りだと思います。これに私が付け加えるとすれば、次の点です。
 つまり、金持ちや大企業から取るべき税金を大まけにまけて、そのあげく借金がかさんで赤字が増えてしまったために、広く庶民の懐に手を突っ込んでむしり取ろうというのが、消費税率引き上げ問題の本質だということです。新自由主義という過った政策思想にとらわれず、金持ちや大企業から取るべき税金をきちんと取っていれば、借金がかさむことも赤字が増えることもなく、消費税率のアップも問題にはならなかったはずです。

 しかも、驚くべきことに、消費税率のアップと一緒に企業減税をやろうというのが、参院選で示された菅さんの構想でした。これについても、斉藤さん同様、「趣味の悪すぎる冗談ではないか」と言いたくなります。
 大企業から取るべき税金を取らなかったために生じた赤字です。それを穴埋めするために消費税を引き上げてかき集めたお金を、さらに大企業の税金を負けるために注ぎ込もうというわけですから……。
 金持ちや大企業から取るべき税金をまけすぎたために生じた赤字です。それを埋めるためなら、累進課税や株による儲けへの税率を元に戻す、企業優遇の税制や補助金などを改めるという形で、税金をきちんと取るようにすれば良いではありませんか。

 消費税率アップは、「ギリシアのようにならないため」に必要だと、菅首相は言っていました。先に紹介した『東京新聞』には、社会保障財源としての消費税率アップを主張する橘木俊詔同志社大教授や神野直彦東大名誉教授の発言が紹介されています。
 つまり、消費税の引き上げで得られる新たな財源を当てにして、3つの財布が口を開けているというわけです。1つは、企業減税の穴埋めであり、2つ目は、財政赤字への補填であり、3つ目は、社会保障のための原資です。
 この3つの財布の全てに入れられるほど、消費税で増収を図ることは不可能です。どれを優先するかという問題が出てきますが、結局は、企業減税の穴埋めに使われることになるでしょう。

 お金に名前が書いてあるわけではありません。税収が変わらないとすれば、企業減税で生じた赤字は借金でまかなわなければならず、その分を消費税で穴埋めしても借金そのものが減るわけではありません。
 福祉目的税化して社会保障の経費を消費税でまかなっても、そこで浮いたお金を企業減税で生じた赤字を埋める方にまわせば、借金の返済に充てることはできません。やはり、財政赤字は減りません。
 それでは、消費税率アップによる増収を全部、借金返済に充てたらどうでしょうか。その場合、企業減税による税収減はどう補填するのか、増え続ける社会保障費をどう負担するのか、という問題が生じます。

 本当は、もし税収増があれば直ちに注ぎ込まなければならない第4の財布があるはずなのですが、誰もそのことを口にしません。政治家も官僚も、そしてマスコミも、これについては完全に忘れてしまっています。
 それは、貧困と格差の是正という財布です。お金があるなら、いや、たとえなくても、今すぐにお金を注ぎ込まなければならないのは、この第4の財布ではありませんか。
 生活が立ち行かなくなっている貧しい人びとを救うための施策、ワーキングプアや働く場を失っている人びとへの対策に、何よりも先ず、お金を注ぎ込むべきでしょう。

 生活苦に陥っている庶民や経営難に直面している中小・零細企業を救おうとするどころか、これらの人びとも含む「幅広い層」から、もっと多くの消費税を取ろうというのが税率アップの構想でした。貧しい人びとに税金を注ぎ込もうとするのではなく、逆にむしり取ろうというのですから、何という転倒でしょうか。
 富めるものから税金を取り、貧しい者に分け与える施策を再分配政策といいます。その逆に、貧しい者から「幅広く」税金をかき集めて、富めるものに分け与える政策を、何と呼んだら良いのでしょうか。


7月2日(金) だから言ったじゃないの、消費税は「劇薬」だって [消費税]

 今日の『日経新聞』に、菅首相に対するアメリカからの「援護射撃」が掲載されていました。射撃に加わったのは、ジョセフ・ナイ米ハーバード大学教授です。
 「民主党の参院選マニフェスト(政権公約)は現実的、合理的だ。菅氏は主義主張の人ではないようだ。好印象を抱いている」というのが、ナイ教授の発言です。手放しでのベタ褒め、というところでしょうか。

 「民主、1人区に危機感 首相の『還付』発言で」という記事も出ていました。『毎日新聞』7月1日付です。「経済が疲弊する地方の1人区で民主党離れが加速しかねないとの危機感がある」と言います。
 民主党内も分裂気味です。小沢さんと枝野さんの新旧幹事長がやり合っているとの報道がありました。
 一方が「約束してきたことをちゃんと実行しないと駄目だ」と言えば、他方は「無責任な行動は政権党としてすべきではない」と反論する。民主党内の内ゲバだと騒がれています。

 どれも、背景は一つです。菅首相が消費税の増税を打ち出したからです。
 しかも、首相の発言は揺れています。「10%への引き上げ」は公約なのか、使途は何なのか、どのような軽減措置をとるのかなど、一向にはっきりしません。低所得層に還付するのかという点では、年収は「200万円とか300万円より少ない人」「300万円とか350万円以下の人」「400万円以下」と、発言がブレまくっています。
 1998年の参院選での橋本首相のことを思い出しました。あのときも、橋本首相の定率減税についての発言が二転三転し、自民党は大敗して橋本さんは首相を辞任しました。

 だから、言ったじゃありませんか。「消費税は気楽に手を出してはならない『劇薬』だ」(4月19日付「『秘密の花園』と『大きな落とし穴』-税制改革における消費税増税論の陥穽」)と……。
 ところが、民主党や内閣支持率のV字回復に気をよくした菅首相は、突然、自民党が参院選公約に盛り込んだ消費税の10%を「参考にさせていただきたい」と発言したのです。直後の支持率は低下し始め、慌てた民主党と菅首相は、右往左往し始めたというわけです。
 自民党の「口車」に乗ってしまったわけです。支持率急落の坂道が待っているというのに……。

 しかも、民主党は企業減税も打ち出しています。一方で企業の税金を減らし、他方で消費税率を引き上げるというわけです。
 増収になった税金は、企業減税によって生じた穴埋めに使われることになります。たとえ、消費税を目的税化して社会保障だけに使うということにしても、事情は変わりません。
 そのうえ、低所得層への還付をやるというのですから、そのための財源が必要になります。全体としての税収が増えなければ、増加する社会保障の財源をまかなうことはできず、まして、財政赤字を補填することなどできるはずがありません。

 98年の橋本内閣の時と同じように、民主党は苦戦する可能性が高まってきました。しかし、一人区や二人区で、民主党に代わって当選する可能性があるのは自民党で、その自民党も消費税率の引き上げを主張しています。
 第一党の与党と第二党の野党が、消費税率の引き上げで足並みを揃えてしまいました。まさに、小選挙区制と「二大政党制」の害悪が典型的に示される例となっています。
 参院選は不毛の選択となってしまったということでしょうか。消費税率の引き上げに反対する民意は、代表されずに終わるのでしょうか。

 そうなっては、日本の民主主義は死んでしまいます。選挙制度の不備を明らかにし、民意をはっきりと示すために、消費税率の引き上げに反対する政党に投票することが必要でしょう。
 たとえ、小選挙区での当選が難しくとも、民意を示すことはできます。小選挙区でなければ当選の可能性は出てきますし、比例代表区なら投票は無駄になりません。
 橋本辞任は、消費税率が引き上げられた後でした。今度の選挙は、引き上げを決める前に実施されるという点が重要でしょう。引き上げが決まってからでは、後の祭りですから……。

3月7日(日) 税制改革とは逆累進性を反転させ「秘密の花園」で溜め込まれた「蜜」を国民に分け与えることだ [消費税]

 今日の『朝日新聞』に、「悪夢『20××年日本破綻』」という記事が出ていました。今、消費税を上げなければ、将来、とんでもないことになるということを言いたいような記事です。
 バカなことを言っちゃいけません。消費税を上げたら、そっちの方がとんでもないことになり、「悪夢」が現実になってしまいます。

 私は税制の専門家ではありませんが、それでも分かることがいくつかあります。
 一つは、今日の日本において、税制改革は避けられないということです。税のあり方は大きく歪んでしまいましたから、それを是正することが必要です。
 第2に、増税に反対だというわけではありません。今の財政赤字は放置できず、将来への借金を減らすためには、増税が不可避であるということは、私にも分かります。
 第3に、しかし、税は政治の手段ですから、ただ単に税収が増えればよいというわけにはいきません。どのような理念や目的のもとに、どこから取るのか、その影響や効果はどうなのかということも、同時に考える必要があります。

 税制改革が必要であり、増税は不可避であるとすれば、問題はどこから取るのか、ということです。その影響や効果が、貧困の増大や格差の拡大という今日の日本が抱えている最大の問題を解決するうえで、役に立つのかどうかということも、同時に考えなければなりません。
 「どこから取るのか」と問われれば、「お金のあるところから取るべきだ」と答えるしかありません。「そのお金はどこにあるのか」と問われれば、「大企業や資産家のところにある」ということになります。
 「それが貧困の増大や格差の拡大を解決するために役立つのか」と問われれば、「その通り」と答えることができます。貧困層に再分配したり減税したりすれば、貧困や格差の解消に大いに役立つに違いありません。

 先日のブログで、大企業や資産家・富裕層は「秘密の花園」だと書きました。この「花園」には、タップリと「蜜」が蓄えられています。
 新自由主義的な政策の下で、税制における逆累進性が強まってきたためです。その結果、富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなり、税制が大きく歪んでしまいました。
 貧困の増大と格差の拡大にとって、このような税制の歪みも大きな要因だったのです。その歪みを正すためには、「秘密」にされてきた「花園」に足を踏み入れ、溜め込まれた「蜜」を取り上げるのが正解です。

 このような形で逆累進性が強まったのは、新自由主義特有の過ったイデオロギーが税制にも及んでいたからです。それは、自己責任論とトリクルダウン理論という二つの間違った理論でした。
 自己責任論によって、国民の多くは、「貧しさや格差も全て自分自身の責任だ」と思い込まされてしまいました。その結果、税の徴収による行政サービスの充実や富の再分配に対する政治や行政の責任放棄を許してしまったのです。
 トリクルダウン理論によって、大企業や金持ちが豊かになれば、「滴がしたたり落ちる(トルクルダウン)ように」、いずれは庶民の懐も豊かになると思い込まされました。その結果、大企業や金持ちへの優遇を黙認してしまったのです。
 しかし、どちらも真っ赤な嘘でした。「秘密の花園」で甘い「蜜」に群がった人々が我が世の春を謳歌していたとき、その外ではワーキングプアが増大し、非正規労働者が職と住を失って彷徨っていたのです。

 02年から07年まで戦後最長の景気回復があったことを覚えておいででしょうか。大企業は過去最高益を更新し続け、大儲けしていたのです。
 しかし、その儲けは、労働者に全く還元されませんでした。というより、労働者に支払うべき賃金を出し渋ったために、大企業の内部に貯まってしまったのです。それが、内部留保です。
 98年から08年までの間、大企業の内部留保は210兆円から429兆円へと219兆円も増えて約2倍強になったのに、賞与を含む年間給与の平均は32.5万円減少してしまいました。富める者が富み、貧しき者が貧しくなった姿が、ここに象徴されているではありませんか。

 いや、大企業のほかに、もう一つあります。それは、株で大儲けした人々です。
 ここにもあるんです、甘い「蜜」を溜め込んだ「秘密の花園」が……。
 『週刊金曜日』に浦野広明立正大学教授が書かれた「庶民・小企業増税 資産家・大企業減税か!」という記事は、次のような驚くべき事実を紹介しています。

 『プレジデント』誌が自社株配当長者ランキングを報じている(07年12月3日号)。それによれば、年間に山内溥(任天堂相談役)は98億円、柳井正(ファーストリテイリング会長)は63億円、福田古孝(アイフル社長)は60億円の配当があるという。かりに山内溥氏の配当益98億円を74年当時の総合課税で計算すると所得税・住民税は91億円(98億円×93%。実際には超過累進課税の適用となるので若干下回る)となる。それが現行証券税制の下では9億8000万円(配当額の10%)であるから81億3400万円の減税となっている(『週刊金曜日』2010.1.29(784号)、15頁)。

 年間の配当金が98億円!! それに対する税金はたったの1割!! 74年当時からすれば81億円の減税!!
 べらぼうじゃ、ありませんか。74年の時の税制が維持されていれば、当然、国庫に入り行政サービスの原資となったはずの81億円が、個人の資産として貯め込まれているのですから……。
 これが、「秘密の花園」に溜まっている「蜜」の正体なのです。いつまでも、「秘密」にしておきたいと思うのも良く分かります。
 2月17日の鳩山首相との党首会談で、共産党の志位委員長が軍事費と大企業・大資産家優遇税制という「二つの聖域」にメスを入れて財源を確保することを提起し、「大企業の過度な内部留保を国民の暮らしに還元させる政策が必要だ」と求めたのは、あまりにも当然ではありませんか。今の政党の中で、「秘密の花園」に足を踏み入れる勇気と力を持っている政党は、共産党くらいしかないということでしょうか。

 今、必要な税制改革は、このような形で進められてきた逆累進性を反転させることです。そして、「秘密の花園」で溜め込まれた「蜜」を国民に分け与えることこそ、必要にして可能な改革にほかなりません。
 消費税の増税がこのような方向に逆行することは明らかです。逆累進性があり、すでに貧しくなっている庶民の懐に手を突っ込んで、さらに税金をむしり取ろうなんて、とんでもないことです。
 消費税の増税は、富の再分配という政策理念にもそぐわず、格差の解消にも全く役立ちません。現在の日本が直面している最大の課題を解決できないだけでなく、その解決を遅らせるだけです。

 江戸時代の昔、鼠小僧次郎吉は、富める者から金品を盗み、貧しい者にばらまいたといいます。盗むことは間違いですが、富を豊かなものから貧しい者に再分配しようとする志は見習うべきでしょう。
 政治権力があれば、盗む必要はありません。合法的に、富者から貧者へと再分配することが可能です。それこそが、政治と行政の役割ではありませんか。
 民主党は、せっかく政治権力を握ったのですから、どうしてそれを活用しようとしないのでしょう。政治権力を用いて、富の再分配を行うべきではありませんか。

 今の日本に必要なのは、富める者から貧しい者へと富を再分配する「鼠小僧」税制なのです。新自由主義の下で強まった逆累進性を反転させ、貧困と格差の拡大を押しとどめ、公平で平等な社会を実現するための税制改革こそが求められているのです。
 そのためには、消費税に頼ってはなりません。消費税の税率を高めれば、庶民の家計も中小企業の営業も、ひいては、景気も日本経済も大打撃を受けることは火を見るよりも明らかなのですから……。

3月5日(金) 「劇薬」としての消費税 [消費税]

 超繁忙期に突入しています。『日本労働年鑑』の執筆・編集作業が佳境に入り、合わせて、各種の講演が目白押しだからです。

 昨日は、来週の金曜日(12日)に予定されている重税反対各界代表者集会での記念講演のレジュメを作成し、夜は全国一般南部での春闘学習会で講演してきました。
 会場の南部労政会館には、昨年も同じ学習会に呼ばれて来たことがありましたが、また迷ってしまいました。大崎駅に隣接していて大変便利なのですが、とても分かりにくい場所で往生します。
 今日は、これから神戸に向かい、今晩、神戸ワーカーズユニオンの春闘学習会で講演して一泊した後、明日は東京に戻ってきて立川での三多摩革新懇の総会で講演する予定です。今、神戸に向かう車中で、これを書いています。

 先日のブログで、消費税について書きました。来週金曜日の講演の準備の副産物です。
 この間、色々と調べて、あることに気づきました。消費税は、とんでもない「劇薬」だということです。
 先日のブログで自民党の「たくらみ」について書いた後、私は「このようなたくらみに、民主党は気がついているのでしょうか。自民党が誘う消費税増税論の先には、「大きな落とし穴」が待っていることを知っているのでしょうか」と指摘しました。その「大きな落とし穴」は、皆さんが想像している以上に大きくて危険なものなのです。

 私たちは、消費税について2回の経験を持っています。1回目は1989年で2回目は1997年ですが、最初は3%の消費税が初めて導入され、次に、この税率は5%に引き上げられます。
 この2回の経験は、私たちに何を教えているでしょうか。私たちは、歴史の教訓として何を学ぶべきでしょうか。
 旅行中ですので、細かく論ずる余裕はありません。しかし、少なくとも次のことは指摘しておく必要があるでしょう。

 第一に、消費税を導入した与党・自民党は、その直後の国政選挙で敗北していたという事実です。消費税が導入された89年夏に参院選が行われましたが、この選挙で自民党は大敗し、初めて過半数を割ります。
 消費税が3%から5%に引き上げられた97年の翌年、98年の夏にも参院選が行われました。この選挙でも、自民党は大敗しています。

 第二に、このように、いずれの参院選でも自民党は敗北しますが、その結果について最高責任者が責任をとらされました。89年の場合には宇野宗佑首相が、98年の場合には橋本龍太郎首相が、選挙敗北の責任をとって辞任することになります。
 つまり、消費税の導入や引き上げは、それを実行した最高責任者の首をはねる結果になったということです。宇野さんの場合には「3点セット」といわれたように、女性スキャンダルや牛肉・オレンジの輸入自由化問題があり、橋本さんの場合にも減税を巡る発言の迷走がありましたが、いずれの場合にも、消費税が大きな敗北要因の一つであったことは明らかでしょう。

 第三に、このような消費税のマイナスの影響は、時の政権に対してだけでなく、その後の日本経済・社会にも及んだということを忘れてはなりません。それは、長期にわたる不況の引き金を引き、経済と社会を混乱に陥れました。
 89年の場合には、翌年にバブル経済が崩壊したこともあって、その後、「失われた20年」が続くことになります。その途中、ようやく景気回復の兆しが見え始めたとき、それを挫いたのが97年の橋本内閣による「9兆円の負担増」であり、この年に起きた北海道拓殖銀行や山一証券の経営破綻でした。

 このような歴史的な経緯を振り返って痛感されるのは、消費税というものは気楽に手を出してはならない「劇薬」だということです。、消費税増税論の先には「大きな落とし穴」が待っていると書きましたが、その穴の底には、国政選挙で与党を敗北させ、最高責任者を血祭りにあげる鋭利な刃物が牙をむいているようです。
 もちろん、消費税に対する国民の考え方や諸般の事情には変化があり、また、税率の引き上げが打ち出されても、おそらく選挙のマニフェストに掲げられるだけであって、実施までには間があるだろうという点では、これまでの経験と今回とでは違いがあります。しかし、それが「取扱注意」のラベルが貼られた「劇薬」であるという点においては、今もなお変わりないように思われますが、いかがでしょうか。

 なお、これは神戸の三宮ターミナルホテルでアップしたものです。ここには無線ランの設備があってインターネットに接続することができました。

3月3日(水) 「秘密の花園」と「大きな落とし穴」 [消費税]

 2010年度予算案が衆院を通過しました。今日から参院での審議が始まりましたが、それがどうなるにせよ、30日後には成立しますので、10年度予算の年度内成立は確実です。
 この予算の一般会計総額は92兆2992億円で、新規国債は44.3兆円、国債依存度は48%と過去最高になります。安定した財源の確保が今後の大きな課題となるでしょう。

 2月24日、政府は税制調査会の専門家委員会の初会合を開催し、税制改革論議を開始しました。新聞は、この改革論議が「消費税を含む」ことを強調しています。
 税制改革に向けての論議は必要であり、現行税制は改革されなければなりません。しかし、それが消費税の増税に結びつくものであってはなりません。
 このような税制改革論議については、次のような二つの領域があります。

 一つは、大企業や金持ちへの増税であり、いわば立ち入られては困る「秘密の花園」です。これは、税収増を図り、格差是正にも資することができ、国民の反対も少ない現実的な道です。
 しかし、ここに立ち入ってもらっては困る人たちがいます。それは、これまで優遇され、減税の恩恵を受けてきた大企業や資産家です。
 これらの人々に支援されている自民党も、この「花園」を秘密にしておきたいと考えているでしょう。もともと、自民党はここに立ち入るつもりはなく、また、立ち入ることのできない聖域としてきたからです。

 もう一は、消費税の増税であり、いわば平坦な地面で偽装された「大きな落とし穴」です。これは、安定した税収にはなりますが、景気が回復しても増収には結びつきにくく、逆累進性がありますから格差の是正には役立たず、国民の中に根強い反対のある困難な道です。
 しかし、民主党をこの場所に誘導し、落とし穴に突き落とそうと狙っている勢力がいます。消費税の増税論を執拗に働きかけている自民党やマスコミです。
 とりわけ自民党は、消費税の増税に向けての茨の道を民主党に切り開いてもらい、あわよくば、選挙の公約に掲げさせて足をすくおうと考えているようです。消費税の増税を掲げた民主党が選挙で負ければ、それで良し。よしんば勝ったとしても、企業・資産家増税を回避して消費税の増税に着手させれば、それはそれでまた良し、というわけです。

 つまり、自民党が民主党に消費税の増税をたきつけている狙いは、第1に、自らが作り出した膨大な財政赤字の尻ぬぐいをさせること、第2に、大企業や金持ちへの増税を回避すること、第3に、民主党を政権の座から引きずり下ろすための武器として活用することです。
 このようなたくらみに、民主党は気がついているのでしょうか。自民党が誘う消費税増税論の先には、「大きな落とし穴」が待っていることを知っているのでしょうか。