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7月30日(木) 李下に冠を正して実をもぎ取った竹中平蔵元経財相 [規制緩和]

 やっぱり、こういうことだったんですね。郵政民営化でかんぽの宿などの「改革利権」を手に入れたオリックスの宮内さんに次いで、竹中さんも労働の規制緩和による人材派遣業の拡大で「改革利権」の果実をしっかりともぎ取ったようです。

 今日の『朝日新聞』10面の「経済」面を見ていたら、見慣れた顔の写真が出ていました。竹中平蔵さんの写真です。
 「おや、珍しいな」と思って、記事を読んで驚きました。「竹中元経財相がパソナ取締役に」という見出しで、次のように書かれていたからです。

 人材派遣大手のパソナグループは29日、小泉内閣で経済財政担当相や総務相などを務めた竹中平蔵慶大教授(58)を8月26日付で取締役に迎えると発表した。任期は1年。社外取締役ではなく、より会社の中に入り、経営や事業について助言してもらうという。
 竹中氏は01~06年に閣僚を歴任し、07年からは同社の特別顧問や取締役の諮問機関であるアドバイザリーボードの一員を務めてきた。

 竹中さんが、06年に総務大臣兼郵政民営化担当大臣を辞め、参院議員も辞職していたことは知っていました。その後は、慶応大学の先生をしていただけでなく、人材派遣大手の会社の「特別顧問や取締役の諮問機関であるアドバイザリーボードの一員を務め」ていたというわけです。
 そして、今回、「もう良かろう」ということで、晴れて「取締役」に昇進というわけでしょうか。それも、「社外取締役ではなく、より会社の中に入り、経営や事業について助言」するような形で……。

 「李下に冠を正さず」ということわざがあります。李 ( すもも ) の木の下で冠をかぶり直せば、手を伸ばして 李の実を盗んで隠したと誤解されるから、そのようなことをしてはならないという戒めです。
 宮内さんや竹中さんは、もちろん、このことわざをご存知でしょう。それにもかかわらず、実がタップリとなるのを待ってから、堂々ともぎ取ってしまいました。
 というより、このような形で実をとれるようにするため、せっせと周りの垣根を外していたのです。それが、構造改革の掛け声の下に推進された規制緩和の本質でした。

 「一将功成りて万骨枯る」ということわざもあります。一人の将軍が輝かしい功名を立てた陰には、戦場に屍(しかばね)をさらす多くの兵士の犠牲があったという意味です。
 規制緩和で日本をズタズタにし、「改革利権」によって旨い汁を吸ったのは、宮内さんと竹中さんの2人です。さしずめ、「二将功成って万骨枯る」というところでしょうか。


6月20日(土) タクシー業界でも明らかになった再規制の動き [規制緩和]

 「ワシントン・コンセンサスは終わった」
 09年4月2日にロンドンで開かれた20ヵ国地域(G20)首脳会合(金融サミット)の終了後、ホスト国だったイギリスのブラウン首相は、こう語ったそうです。
 このとき、参加各国の首脳の耳に、新自由主義の弔鐘の音が聞こえたでしょうか。国際的な反転は、このブラウン首相の言葉に集約されていると言って良いでしょう。

 日本の国内でも、新自由主義的な規制緩和からの反転は着実に進んでいます。時には、小泉一派による巻き返しもありますが、もはや規制緩和の見直しと再規制の方向は明らかです。
 とはいえ、「労働再規制」に向けての動きは、法改正という形ではそれほど進んでいるわけではありません。中心的な課題であった労働者派遣法の改正案が国会に出されましたが、その内容は「薬」よりも「毒」が多く、棚晒し状態になっています。
 このような中で、注目すべき動きがありました。そえは、タクシー参入規制強化法の成立です。

 昨日(19日)の参院本会議で、タクシー事業への規制を強化する特別措置法案が可決・成立しました。「タクシーが多すぎる」と国土交通省が指定した地域では、新規参入や増車が難しくなるほか、タクシー会社が共同で台数を減らせるようになります。
 国交省は現在でも仙台など109の地域で新規参入や増車を制限しています。この法律の成立で、さらに幅広く規制をかけられるようになります。
 この問題については、以前、タクシーの業界紙『交通界』の取材を受けました。その時のインタビュー記事をアップするのを忘れていたようです。

 このタクシー参入規制強化法の成立と、深く関わっているように思われます。明日、アップさせていただくことにしましょう。


4月23日(木) 経済財政諮問会議が格差を問題にしたのは生き残りを図るため? [規制緩和]

 20日(月)にレイバーネット日本の4月例会で話をしてきました。その時の様子が、レイバーネット日本のホームページhttp://www.labornetjp.org/に出ています。

このとき、昨年末の日本のGDPの落ち込みがアメリカやユーロ圏よりも大きかったことを指摘し、リーマン・ショックが起き金融危機を引き起こした「本家」のアメリカよりも日本経済が大きな打撃を被ったのは、規制緩和や市場原理主義の猛威によって、それ以前から日本の経済・社会がズタズタにされていたからだと話しました。
 今日のニュースで、IMFの予測では今年の世界経済は戦後初めてのマイナスとなること、その中でも日本は先進7ヵ国中、最悪の落ち込みになることを報じていました。
 早く、小泉構造改革によって被った傷を癒さなければならないということでしょう。小泉さんの手によって灰燼に帰した経済と社会を立て直さなければ、日本の未来はありません。

 21日(火)は、終日、『日本労働年鑑』の初校ゲラの点検です。年鑑の編集作業は、まだまだ続きます。
 夜にも所用があり、都心まで出かけました。強い雨の降る中、家に帰り着いたのは遅くなってからです。

 22日(水)は、午前中に研究員会議、午後は月例研究会での報告です。私が報告する順番でしたので、「労働の規制緩和と再規制」というテーマで話をしました。報告の課題は、「新自由主義的な労働の規制緩和が、いつから、どのようにして、「反転」していったのか、その背景と要因を分析し、労働の規制緩和から労働再規制に向けての動きを検討する」というものです。
 報告は、いずれ、何らかの形で活字になると思います。質疑応答の大要も、そのうち、『大原社会問題研究所雑誌』に掲載されます。

 この報告では、経済財政諮問会議の地盤沈下についても触れました。昨日の同じ頃、その経済財政諮問会議が開かれていたようです。
 この会議では、初めてリストラや非正規社員の増加などによる格差問題が議論されたそうです。今頃になってから初めて議論するとは何事か、と言いたくなります。
 この辺にも、経済財政諮問会議の無用論が生ずる根拠があります。そして、その会議が格差問題をテーマにしたのは、そのような批判を回避して生き残りを図るためでしょう。

 会議では、民間議員から、所得の低い非正規労働者が増えていることや、親の所得が子どもの進学に強く影響することなどで「格差の固定化・再生産」につながっているとのリポートが提出されました。今後、これを踏まえてセーフティーネットなど社会の「安心」を確保するための格差対策を、経済成長戦略とともに検討していくそうです。
 ここでの検討内容も「骨太の方針」に反映させるということのようです。それが、今後の非正規問題の解決や格差の解消に結びつくのであれば結構でしょう。
 しかし、先日できた「安心社会実現会議」との関係はどうなるのでしょうか。違った結論が出れば、どちらを優先するのかという問題が出てくるでしょうし、同じ結論が出れば、どうして二つも会議が必要なのかという問題も出てくるでしょう。

 昨日は、夕方から新しい研究員や職員の歓迎会が開かれました。結局、3日連続で帰宅が遅くなり、ウェッブを更新する余裕がありません。これからも、しばらく夜遅くまでの外出が続きます。連休前にかたづけなければならない用事も山盛りです。
 ということで、このHPにまとまったことを書く余裕がありません。更新の方も、切れ切れにならざるを得ないと思いますが、ご了承いただければ幸いです。

1月31日(土) 規制改革会議と経済財政諮問会議は廃止すべきだ [規制緩和]

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 拙著『労働再規制-反転の構図を読みとく』(ちくま新書)刊行中。240頁、本体740円+税。
 ご注文はhttp://tinyurl.com/4moya8またはhttp://tinyurl.com/3fevcqまで。
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 激しい雨の中を、名古屋まで行ってきました。「ああ、やっぱり俺は雨男なんだ」と、思い知らされたような雨の降り方でした。

 愛知はトヨタの「城下町」です。そこでの「派遣切り」はすさまじく、職を失った派遣労働者の数は日本最大で、2位の長野県の3倍以上になっています。
 お目にかかった労働相談センターの所長さんは、労働相談が急増していると仰っていました。派遣会社の社員からも、「会社の方針だけれど、『派遣切り』をやりたくない。どうしたらよいか」というような相談があるといいます。その社員自身も、いつまで仕事があるかわからないような状況だそうです。
 名古屋のホテルで手に入れた今日の『読売新聞』の一面には、「非正規 失職12万4800人」という見出しが踊っていました。その7面には、「非正規失職 東海3県2万9000人」「トヨタ11工場平日休業」という記事も出ていました。

 その同じ『読売新聞』には、「自民党の尾辻参院議員が30日の参院本会議で、政府批判を含む“過激”な代表質問を行い、与野党に波紋を広げた」という記事も出ています。とうとう、規制改革会議と経済財政諮問会議がやり玉にあげられたというのです。しかも、野党ではなく、与党である自民党の尾辻秀久参院議員によって……。
 拙著『労働再規制』で規制改革会議について「このような会議の存在こそ、税金の無駄遣いにほかなりません。歳出削減努力の手始めとして、早急に廃止するべきではないでしょうか」(224頁)と書いた私としては、まさに「わが意を得たり」というところです。しかし、その鉾先が規制改革会議だけでなく経済財政諮問会議にまで向かうというのは、想定外でした。
 もっとも、この規制改革会議と経済財政諮問会議は共に構造改革の「二つの『エンジン』」でしたから、「両会議は廃止すべきだ」と言われても不思議ではありません。ちなみに、尾辻議員の質問は次のようなものでした。

 政府の規制改革会議は、派遣労働の対象業務原則自由化などの答申で、労働者派遣法を変えてきた。(不況で)派遣の大量打ち切りとなり、多くの人を失業に追い込んだ。答申をとりまとめたのは一企業の経営者だ。結果責任を取らなければならない。(日本郵政の保養宿泊施設)「かんぽの宿」(の一括譲渡問題)でも疑惑が持たれている。経済財政諮問会議は市場原理主義を唱えてきたが、間違いだったことは世界の不況が証明している。その責任は重い。両会議は廃止すべきだ。

 「結果責任」を問うのであれば、この二つの会議だけをやり玉に挙げるのはバランスを欠いています。これらの会議を利用して構造改革の旗を振り、規制緩和を押し進めた「巨悪」を忘れてはなりません。
 それは、小泉純一郎元首相と竹中平蔵元経産相の二人です。この二人こそ、目的意識的にアメリカ・モデルの新自由主義政策を日本に導入した「売国奴」にほかなりません。
 小泉さんの方は、多少、言動を控えているようなそぶりが見えますが、竹中さんには全く反省の色がうかがえません。新自由主義政策の破綻についての結果責任を取って、蟄居謹慎するのが当然ではないでしょうか。

 なお、『週刊金曜日』1月30日号(第736号)に、拙稿「こうして貧困は作られた-派遣法に焦点を当てた労働法制の変遷」が掲載されました。ご笑覧いただければ幸いです。
 また、『朝日新聞』1月30日付の3面の特集記事「雇用に使える?内部留保」に、私の「今にも沈みそうに見せていたけれど、実は船底に大きな浮き袋が隠されていた」という言葉が引用されています。下の方に、「経営者には説明責任あり」という大竹文雄大阪大教授の談話が出ていてビックリしました。

 さらに、『読売新聞』1月28日付夕刊に、拙著『労働再規制』の紹介が出ていました。本の表紙がカラーで印刷されています。
 紹介文がいささか反官僚に偏っているような気がしましたが、それでも構うもんですか。色々な読み方をしてもらえばいいんです。
 取り上げていただいただけでも、御の字なのですから……。

1月15日(木) 官僚の謝罪と政治家の反省 [規制緩和]

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 拙著『労働再規制-反転の構図を読みとく』(ちくま新書)刊行中。240頁、本体740円+税。
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 消費税の3年後の引き上げを税制関連法案の付則に明記するかどうかが、再び、大きな争点として浮上してきました。渡辺さんの離党、松浪さんの採決棄権に続いて、鴻池官房副長官の女性スキャンダルの発覚と、麻生政権は末期症状を呈し始めています。

 このような中で、過去の規制緩和についての官僚の謝罪発言があり、話題を呼んでいます。厚生労働省広島労働局の落合淳一局長の発言です。
 落合さんは6日、連合広島の旗開きの来賓あいさつで、製造業への労働者派遣が解禁されることになった03年の労働者派遣法改正について、「制度を作ったのはだれか、といわれると、内心忸怩(じくじ)たる思いがある。(厚生労働)大臣が見直しに言及しているので、私がここで言ってもクビにならないと思う」と前置きし、「私はもともと問題がある制度だと思っている。しかし、市場原理主義が全面的に出たあの時期に、労働行政のだれか一人でも、職を辞して止めることができなかったか、ということには、私は小輩、軽輩であるが、謝りたいと思っている」と述べました。
 また、「派遣労働者は同じ職場の仲間と認識すべきだ。(雇用を)中途解除してはいけない。中途解除と期間満了とは異なる、と声を大にして指導したい」と語り、解雇された派遣労働者の住居確保などについて連合広島にも協力を求めました。その後の取材に対して、法改正当時は(厚労省の)賃金時間課長で改正には関与していないとしつつ、発言の意図について「大臣に代わって大言壮語しようとは思わないが、今日の(派遣労働者の解雇や住宅問題の)一因が役所にあると、役所の誰かが認めなければいけないと思った」と説明したそうです。

 厚生労働行政における「反転」がここまで進んできたということでしょうか。これは地方における一局長の個人的な発言というレベルのものではないように思われます。
 製造業における派遣禁止を表明した舛添厚労相の発言と軌を一にするものだと言って良いでしょう。03年改正については、厚労相の役人の中でも「問題がある制度だ」と考えていた人がいたというのは重要な事実です。
 しかも、「職を辞して止めることができなかったか」とまで言っているわけですから、問題意識は鮮明です。このような認識が共有されるようになれば、経団連に派遣切りを自制するよう求めたり、派遣についての労働再規制を進めたりという動きはさらに強まることでしょう。

 また、この間の新自由主義的政策による格差の拡大に対する政治家の反省や批判も表明されるようになっています。たとえば、与謝野馨経済財政担当相は9日の衆院予算委員会で、企業の株主配当や内部留保が増加する一方で従業員給与が伸び悩む状況について「『人を安く使おう』という傾向が企業にみられるのは残念だ。同一労働でありながら、正規社員と非正規に格差が生じている。正義の問題として取り上げねばならないと思っている」と述べました。雇用形態による格差是正に対して、政府としても取り組む必要があるとの認識を示したわけです。
 また、与謝野さんは14日、日本BS放送の番組収録で、正規・非正規労働者間の賃金格差について、「同じ職場で、同じ時間、同じ労働をして、賃金がこんなに違うのは社会的に正しくない」と語り、ワークシェアリングの導入には「同一労働、同一賃金」の議論が必要になるとの考えを示しました。
 与謝野さんについては、拙著『労働再規制』の中でも、新自由主義や市場原理主義に対する批判的な発言を紹介しています。このような方が、現政権の中枢にいるということは重要でしょう。今後も、その言動に注目したいと思います。

 ただし、与謝野さんは、一方では、新自由主義的市場原理主義に対する厳しい批判者ではありますが、他方では、麻生首相とともに消費税引き上げ論の急先鋒でもあります。国民の立場からすれば単純に評価することはできず、所詮、自民党政治家としての限界を免れることはできないということでしょう。



1月8日(木) 「平成の政商」宮内義彦が手に入れようとしている新たな「改革利権」 [規制緩和]

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 拙著『労働再規制-反転の構図を読みとく』(ちくま新書)刊行中。240頁、本体740円+税。
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 「郵政民営化」にからむオリックスの暗躍が明るみに出ました。日本郵政が「かんぽの宿」70施設を、オリックスグループに一括譲渡するというのです。
 拙著『労働再規制』での指摘を裏付けるような動きです。まさに、「平成の政商」宮内義彦さんの“面目躍如”というところでしょうか。

 宮内さんについての記述は、拙著『労働再規制』第3章の第2節「『平成の政商』宮内義彦と牛尾治朗の暗躍」に出てきます。そこで私は、宮内さんについて、次のように書きました。

 宮内さんはオリックス株式会社取締役兼代表執行役会長・グループCEOで、プロ野球オリックス・バッファローズのオーナーでもあります。政界と強力なコネクションを持ち、規制改革論者としても知られています。

 宮内は公人と私人(企業人)の立場を実に巧みに使い分ける。公人としては参入障壁が高い分野の扉をこじ開け、企業人としては先頭に立ってその分野に新規参入する。政治家や政府高官との結びつきを利用して経済活動上の利権を得たり、政策を事故に有利な方向に誘導したりする起業家を政商と言う。
 宮内は平成の政商にほかならない。
     (有森隆+グループK『「小泉規制改革」を利権にした男 宮内義彦』20頁)

 このように「平成の政商」とされる宮内さんは、「上からの改革を主導してビジネスチャンスをつくり出し、経済活動の利権を得た」(同前、31頁)とされています。これを「改革利権」と言います。
 ノンフィクション作家の森功さんは、リート(不動産投資信託)への「オリックス不動産投資法人」の上場や不動産事業への参入、「オリックス債権回収」設立によるサービサー(債権回収)事業への参入、高知県での病院経営や兵庫県での住宅型有料老人ホームの開設、株式会社による美容整形クリニック、医療ベンチャー企業「バイオマスター」への出資、車両リースによるタクシー業界への参入などの例を挙げながら、次のように指摘しています。

 かつて単なるリースを生業とするノンバンクに過ぎなかったオリックスは、規制緩和に合わせて業務を拡大させ続けてきた。いまやオリックスグループの基幹事業に発展している不動産事業の成長は、とどまるところを知らない。債権の買い取り総額が4兆3000億円に達したサービサー事業では、前年比5000万円増という驚異的な伸びを示している。
                       (森功『サラリーマン政商』236頁)

 その結果、宮内さんがどれほどの「改革利権」を手に入れたかは定かではありませんが、少なくとも政府関係の審議会の委員や責任者を歴任してきたのは事実です。それは遠く、1991年の海部俊樹内閣にまでさかのぼります。このとき、第3次行政改革推進審議会の「豊かなくらし部会」の委員に就任したからです。
 1994年には細川護煕内閣の下で規制緩和小委員会の委員になっています。その後、村山富市内閣で規制緩和検討委員会の委員、行政改革委員会規制緩和小委員会の参与になりました。
 1996年には規制緩和小委員会の座長となり、以後、規制緩和委員会委員長、規制改革委員会委員長、総合規制改革会議議長、規制改革・民間開放推進会議議長を歴任します。つまり、宮内さんは、1996年から2006年までの10年間、規制緩和を進める政府関係審議会のトップであり続けたということになります。政府の施策に、宮内さんの主張が色濃く反映されるのも当然でしょう。(以上、拙著、75~78頁)

 少し長くなりましたが、宮内さんが規制緩和の先頭に立ち、それによって生じたビジネスチャンスを生かして「改革利権」を手に入れてきたことは明らかです。これを私は、「既得権益」に対して「新得権益」(規制緩和などによって新たに得られた利権や権益)と呼んでいます。
 いままた、宮内さんは小泉元首相が進めた「郵政民営化」によって新しい利権を手に入れようとしているというわけです。それが、オリックスグループによる「かんぽの宿」70施設の取得です。

 これに対して、鳩山邦夫総務相は強い疑義を示し、「正義感を持って対応する。『李下に冠を正さず』ということは大事だ」と述べ、一括譲渡の阻止を求めにきた国民新党の亀井久興久幹事長らに契約撤回に向けて働きかけていく考えを示したそうです。また、記者団に対しても、「オリックスは立派な会社だが、譲渡に国民が納得するか。出来レースと受け取られかねない。率直にまずいと思う」と語りました。
 鳩山さんは、①なぜオリックスなのか、②なぜ一括譲渡なのか、③なぜ不動産価格が急落しているこの時期なのか、の3点について日本郵政に問い合わせたそうですが、納得のいく説明はありませんでした。
 鳩山さんは、国民新党や民主党が国会での追及に向けて動き出したことを知っていたようです。「このまま問題を放置しておけば予算審議は大混乱になる」と判断し、異を唱えるチャンスを狙っていたようだとも報じられています。

 日本郵政は昨年4月、年間約40億円の赤字を出している「かんぽの宿」譲渡に向けて公募を開始しました。これに27社が応じ、財務能力審査や2回の入札を経て、12月26日にオリックス不動産への一括譲渡が決まりました。価格は総額109億円で、帳簿価額123億円を大幅に下回るといいます。
 「オリックス不動産」という名前は、先ほど引用した拙著の記述にも出てきます。なるほど、このようにして“甘い汁”を吸おうというわけですね。

 「改革利権」による「新得権益」の入手こそ規制緩和の旗を振った財界人の狙いであったということを、この事例はハッキリと示しています。このような「平成の政商」の暗躍は、今もなお続いているということでしょうか。

12月30日(火) 規制改革会議「第3次答申」と厚労省による批判 [規制緩和]

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 拙著『労働再規制-反転の構図を読みとく』(ちくま新書)刊行中。240頁、本体740円+税。
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 このごろ、しみじみ思うんだよ。市場原理の経済は良かったのかと。アメリカ式じゃなく、まろやか、おだやかな世界をつくらないと、東洋的な世界をね。負け組にも入れない国民を生み出す政治はどうにか直さなきゃいかん。そのために政治のかたちを変えなきゃいかんと考えているんだよ

 この人まで、こんなことを言い出すとは思いませんでした。森喜朗元首相です。
 『毎日新聞』12月24日付夕刊の「特集ワイド」のインタビューに、この森さんの発言が掲載されていました。小泉元総理を全面的にバックアップし、出身派閥のボスとして一緒に「構造改革」の旗を振ったのは一体誰だったのか、と言いたくなるような述懐です。
 でも、反省するのは悪いことではありません。責任を取って、構造改革がもたらした負の側面を是正するために努力するのであれば、ですが……。

 マネー・ゲームや金融資本主義の破綻もあって、このところ、新自由主義政策の旗色は悪く、アメリカ的な市場原理主義や行き過ぎた規制緩和についても一定の反省が表明されるようになりました。しかし、まだ、それは不十分なようです。
 そのことは、規制緩和の急先鋒だった規制改革会議に最も当てはまります。逆風の中で守勢に回らざるを得ないが、それでも規制緩和の旗を降ろそうとはしないというかたくなな態度を、依然としてとり続けているからです。

 規制改革会議は12月22日、「規制改革推進のための第3次答申-規制の集中改革プログラム」を発表しました。これについて、新聞では「規制改革会議、自由化路線を修正 労働者保護に軸足」「労働分野で、雇用情勢の急激な悪化を受けてこれまでの路線を修正し、労働者保護や政策評価などに軸足を移すのが特徴」などと報道されましたが、これは正確ではありません。
 労働が扱われているのは、「5 社会基盤」の「(2)労働分野」http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/publication/2008/1222/item081222_18.pdfです。ここには、規制改革会議の守勢と抵抗という二面性が示されており、一方で「近年、非正規労働者の増加、正規と非正規の格差拡大、ニート、フリーターやワーキングプアの増加などが大きな社会問題として指摘されている」ことを認め、「環境変化を意識した労働者保護政策が必要」「現行の一般労働者保護法令の適切な運用」などを主張しながらも、他方で独特の論理による様々な留保と反論を試みています。
 例えば、「問題意識」として述べられている、次のような部分がそれに当たります。

 労働市場における規制を当事者の意思を最大限尊重する観点から見直し、誰にとっても自由で開かれた市場とすることこそが、多様な雇用形態を選択する労働者の保護を可能とし、同時に企業活動の活性化、ひいては我が国経済全体の活性化をも実現することとなる。
 合わせて、労働者と雇用者が十分に情報を共有し、納得した上で、選び取れるような様々な選択肢を確保することにより、「機会の平等」と「公正な待遇」といった労働市場における格差是正と労働者保護が可能となり、結果として企業活動の活性化や我が国経済の活性化が実現することになる。

 要するに、真の労働者保護は規制の強化により達成されるものではなく、むしろ①労働契約に関する労働者と使用者の情報の非対称性を解消すること、②現行の労働契約法(平成19 年法律第128 号)、労働基準法(昭和22 年法律第49 号)、職業安定法、労働安全衛生法(昭和47 年法律第57 号)といった様々な就業形態の労働者を対象とする労働関係法令が適切に遵守される体制を整備すること、③特定の就業形態や特定の労働者属性に係る規制は、差別や不公正を是正する等の合理的なものを除いては見直していくこと、等が重要である。

 規制改革会議の言いたいことは、「真の労働者保護は規制の強化により達成されるものではな」いこと、「特定の就業形態や特定の労働者属性に係る規制は、差別や不公正を是正する等の合理的なものを除いては見直していくこと」という点にあります。依然として、基本的には「規制の強化」ではなく、「見直していく」ことが主張されています。
 しかし、「具体的施策」では、必ずしも明確な方向が示されているわけではありません。ここでも守勢と抵抗という二面性が示されています。
 そのために、「意見もある」「見方もある」「指摘もある」「指摘されている」「表明されている」という語尾が多くなってしまいました。正面から主張して断言する勇気を失い、多様な意見表明という形を借りて自らの主張を盛り込むことによって、責任逃れの卑怯なやり方に逃げ込んだということでしょうか。

 この規制改革会議の「第3次答申」に対して、厚労省は直ちに批判と反論を行いました。それが、12月26日に発表された「規制改革会議『第3次答申』に対する厚生労働省の考え方」http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/12/dl/h1226-12a.pdfです。
 拙著『労働再規制』で詳述した昨年暮れの第2次答申の時と同様のパターンが繰り返されたというわけです。しかし、厚労省の口ぶりは、昨年以上に厳しいものになりました。
 「このようなときに、何を言っているのか」という厚労省のいらだちを読み取ることができます。規制改革会議のさらなる孤立化と無力化は避けられないでしょう。

 例えば、「最近における派遣労働、最低賃金などをめぐる立法政策の流れは、こうした職業選択の自由の理念の軽視と労働者保護理念の偏重を特徴とするといった指摘もある」という記述に対しては、「労働者派遣法の改正は、……職業選択の理念と労働者保護の両面に留意しつつ行われてきたもの」で、「最低賃金法の改正は、就業形態の多様化等が進展する中で、賃金の低廉な労働者の労働条件の下支えをすることを目的としており、『職業選択の自由の理念の軽視と労働者保護理念の偏重を特徴』としているものではない」と反論しています。

 また、「労働者派遣法をこれまでのように派遣を臨時的、一時的な需給調整制度として例外視する法律から、我が国労働市場の環境変化に合わせて、真に派遣労働者を保護し、派遣が有効に活用されるための法律へ転換していくべきであるとの見方もある」という部分については、「労働者派遣制度が臨時的・一時的な働き方であることは、公労使の三者構成からなる審議会の場においても確認されており、政府としても国会の場において、その旨を総理大臣より答弁しているところ」だと反論しています。「今更何を言っているんだ。総理もそう答弁しているじゃないか」というわけです。

 さらに、「実際にグループ企業内派遣を行っている事業者から、グループ企業内派遣と一般の派遣(グループ企業外派遣)のビジネスモデルは全く別物であり、新たにグループ企業外派遣を増やすことによって、『グループ企業内派遣の割合を100 分の80 以下とする』ことは簡単ではなく、企業に無用の負担を負わせることになるとの意見も表明されている」という点については、「グループ外派遣を増やすことが、企業に『無用』の負担を負わせるという指摘は、法の趣旨からして不適当」と、アッサリ批判しています。

 このほか、以下のように「不適切」「不適当」「適当でない」と、規制改革会議の主張をバッサバッサ切り捨てています。その切り口の鋭いこと……。
 矢印の前が規制改革会議の第3次答申で、後が厚労省の見解です。

*我が国労働市場が急速に萎縮している昨今、最長3年とする派遣可能期間制限を見直さなければ、雇止めや派遣契約の中途解約等が増大する懸念があり、むしろ、時限的にでも派遣可能期間制限を見直し、雇用を確保していくことが必要であるとの意見もある。
→製造業に限って脱法行為を救済するかのような結論にいたる記述は不適切。

*当会議のヒアリングにおいても、事業者からは直接雇用は解雇権濫用法理や労務管理費用の問題からなるべく回避したい一方で、他方、既に指摘したように、37 号告示を基準として是正措置が強化されたため、法令違反とされることを恐れて請負事業に移行することも躊躇せざるを得ないことから、場合によっては、生産拠点の海外シフト等を検討せざるを得ないとの懸念も指摘されている。
→「派遣可能期間制限を見直さなければ、雇止めや派遣契約の中途解除等が増大する」との御指摘は、実態に合わないものであり不適当。

*「結果として「発注者の指導」と取られかねない請負業者と発注者の協業やコミュニケーションが著しく制限されることとなり、請負労働者の現場の実態と乖離した規制と化しているとの意見もある。
→「事業活動を制約している等の事業主側のみの主張を根拠に、当該告示が「現場の実態と乖離した規制と化している」との主張は不適切。

*「自己の責任と負担で準備し、調達する機械、設備若しくは器材(中略)又は材料若しくは資材により、業務を処理すること」を請負であるための選択的な要件としているが、現場実態に合わず、本来、派遣法で想定される「指揮命令」とは言いがたい不合理な運用がなされているという意見が寄せられている。
→労働者派遣と請負のいずれに該当するかについても、個々の現場の実態に即して総合的に判断する必要があるところ、断片的な情報のみをもって「不合理な運用」とする主張は不適切。

*解雇権濫用法理等の見直しについては、昨年の規制改革推進のための第2次答申の【問題意識】においても当会議として問題提起してきたところである。
→「社会通念上相当と認められない解雇は権利の濫用であるとして無効とする」旨の現在の制度を改めることは、多くの失業者を生じさせるおそれがあり、適当でない。

 「反転」の構図は、今もなお続いているというべきでしょう。規制改革会議は逆風にさらされ、一定の譲歩をしながらも、なお抵抗しようとしています。
 これに対して、厚労省の攻勢はさらに強まり、規制改革会議に対する批判が厳しさを増しているというのが、現段階です。規制改革会議「第3次答申」に対する厚労省による態度表明は、このことを明瞭に示しています。
 このような厳しい対応を取るに至った背景に、もし、拙著『労働再規制』での記述が役立っていたとしたら、これも嬉しいことです。そういうことがあったのかどうか、私としては確かめる術はありませんが……。

 しかし、かつてない金融・経済危機の下で雇用環境は急速に悪化し、このような厚労省の対応でさえ不十分なものだと言わざるを得ません。労働者派遣法の抜本的な改正など、労働再規制の強化による労働者保護は待ったなしの課題になっています。
 もっともっと強い力で、厚労省の背中を押さなければなりません。日本の労働者が陥っている困窮と絶望のスパイラルから抜け出すために……。

2月19日(金) まだ、こんなことを言っているのか [規制緩和]

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 拙著『労働再規制-反転の構図を読みとく』(ちくま新書)刊行中。240頁、本体740円+税。
 ご注文はhttp://tinyurl.com/4moya8またはhttp://tinyurl.com/3fevcqまで。
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 まだ、こんなことを言っているんですね。「過労死は自己責任」発言で有名になった奥谷禮子さんです。
 今日の『朝日新聞』に登場して、次のように発言されています。

 派遣は雇用の創出に寄与している。日本では事業主の解雇規制が強すぎるので、正社員の採用には二の足を踏んでしまう。景気の悪化に伴って派遣社員の解雇が問題視されているが、派遣という働き方があったから雇用が創出されてきた。いま法規制を強めれば、1日単位の派遣でどうにか暮らせていた人までが失業状態に追い込まれてしまう。
 働く側の意識が多様化する中で、多くの人は自分のライフスタイルに合わせて働き方を選んでいる。本当にどうしようもない働き方ならば、派遣社員がこれほど増えるはずはない。「日雇いや短期派遣は禁止せよ」「登録型もダメだ」と非難するのは誤りだ。

 驚きましたね。奥谷さんが、これほど派遣の実状をご存じないとは……。
確かに、派遣は雇用を創出しましたが、問題はその質にあります。雇用の数は増えても、それはワーキングプアを生み出す劣悪雇用ばかりだったというところに根本的な問題があります。
 これは、労働問題に関わっている人であれば、誰でも知っていることです。しかし、奥谷さんは、「派遣という働き方があったから雇用が創出されてきた」と仰るだけで、その内実を全く問題にしていません。

 「派遣社員の解雇が問題視されている」ことはご存じのようですが、それがどうしてなのかについては語っていません。「派遣という働き方」だから、簡単に解雇されているのではありませんか。
 「いま法規制を強めれば、1日単位の派遣でどうにか暮らせていた人までが失業状態に追い込まれてしまう」というに至っては、開いた口がふさがりません。「1日単位の派遣」ではまともに暮らせないからワーキングプアが生まれているのでしょう。
 これらの人々の仕事は安定せず、「半失業状態」にあります。法規制を強めることで不安定な働き方を禁止し、安心して働けるようにすることこそ、今求められていることではありませんか。

 「多くの人は自分のライフスタイルに合わせて働き方を選んでいる。本当にどうしようもない働き方ならば、派遣社員がこれほど増えるはずはない」と仰っています。とんでもありません。派遣は自由な選択の結果なのでしょうか。
 正社員と派遣という働き方のどちらも選べるのに、「多くの人は自分のライフスタイルに合わせて」派遣という働き方を選択したというのでしょうか。「本当にどうしようもない働き方」でも、他に適当な仕事がないから、やむを得ず、このような働き方を選ばなければならなかったのでしょう。
 そもそも、正規雇用の数を減らして派遣などの非正規雇用に置き換えてきたのは経営者の都合によるものです。労働者の側の自由な選択の結果として非正規雇用が増えてきたのではありません。

 奥谷さんは、規制緩和の波に乗って人材コンサルタント会社「ザ・アール」を設立し、雇用の流動化をビジネスチャンスとして新たに権益を手に入れてきました。この「新得権益」による事業の拡大があったからこそ、経済同友会初の女性会員となり、今では幹事にまでのし上がったのではありませんか。
 そのために、使い捨てしやすい派遣労働者を大量に生み出し、「派遣切り」の横行を招いてしまったことをどう考えているのでしょうか。年収200万円以下のワーキングプアは1000万人を突破し、ネットカフェ難民やホームレスが社会問題化しています。
 ご本人は女性経営者として成功したかもしれませんが、死屍累々ではありませんか。その結果、日本を貧困社会に変えてしまったことに、少しも責任を感じていないのでしょうか。

 このような奥谷さんには、次の言葉を贈りたいと思います。
 一将 功成って 万骨枯る

10月4日(土) 経済財政諮問会議民間議員交代の意味するもの [規制緩和]

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 拙著『労働再規制-反転の構図を読みとく』ちくま新書で10月10日刊行予定。
 240頁、本体740円+税。ご注文は筑摩書房http://www.chikumashobo.co.jp/まで。
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 八代さんが姿を消しました。労働の規制緩和から労働再規制への反転は、もはや決定的になったと言って良いでしょう。

 政府は麻生首相が議長を務める経済財政諮問会議の新しい民間議員4人を内定しました。経済界から、日本経団連副会長の張富士夫(トヨタ自動車会長)と三村明夫(新日本製鉄会長)、エコノミストとして岩田一政・内閣府経済社会総合研究所長と吉川洋・東大大学院教授が選ばれています。
 福田内閣は、安倍内閣のときの民間議員をそのまま再任しました。新自由主義的な構造改革と労働の規制緩和に積極的だった八代さんなどエコノミストの2人はそのまま残っていたわけです。

 今回、この2人を含めて、民間議員の全員が交代しました。その顔ぶれについて、『朝日新聞』は、次のように解説しています。

 エコノミストのうち、岩田氏は旧経済企画庁(現内閣府)勤務後、東大教授、日本銀行副総裁を歴任した。吉川氏は現在、政府の社会保障国民会議の座長で、同会議の議論を諮問会議につなげる狙いがあると見られる。
 両氏の起用は「経済対策と金融危機への対応」「社会保障制度と税財政」という今後の諮問会議の重要テーマをにらんだものといえそうだ。
 経済界からの民間議員については、中小企業の声を反映させるため、日本商工会議所などから選ぶべきだとの意見も関係者の間にあったというが、結局、トヨタと新日鉄という日本を代表する大手メーカーからの起用となった。
 顔ぶれについて、「首相と全く同じ路線の4人をそろえたとは言えない」(経済官庁幹部)との声が上がる。ただ、運営を仕切る与謝野経済財政相は、政策決定について与党との関係を重視する立場だ。諮問会議を「政策決定の場」ではなく「議論の場」と位置づける。

 変わったのは、顔ぶれだけではありません。その位置づけも明確に転換しています。
 諮問会議は、「『政策決定の場』ではなく『議論の場』」になったのです。このような変化は、すでに06年から始まっていました。
 今回の交代は、諮問会議の変質を決定的にするものです。名前は同じでも、内実は大きく変容していくでしょう。

 このような変化は、麻生さんよりも与謝野さんによって主導されたにちがいありません。その背景と理由については、間もなく書店に並ぶ拙著『労働再規制』に詳しく書かれていますので、お買い求めいただければ幸いです。

 ところで、今日の『毎日新聞』を高く評価したいと思います。憲法にかかわる記事が二つ出ていたからです。
 3面の「ひと」欄には、「一人で『9条』署名1万4700を集めた箕輪喜作さん」が紹介されています。「黙々とやり続ける人間がいること。それが世の中を変えていくんだなと思っています」という言葉とともに。
 また、23面の「多摩」版には「日本国憲法イラストで分かりやすく」「絵本作家・野村さんが刊行」という記事も掲載されています。野村さんは、「主体は市民。憲法で私たちの自由や人権を支える。そんな思いを込めた」と語っているそうです。

 この国のトップは腐りきっています。しかし、草の根にはみずみずしい新しい芽が顔を出し始めているということでしょう。
 このような芽が社会の至る所で生まれ、育つことを願っています。そうなれば、きっとこの国も生まれ変わることができるにちがいありません。
 マスコミも、このような記事をもっとたくさん報道して欲しいものです。そうすれば、「マスゴミ」などと批判されることもなくなると思うのですが……。


9月17日(水) 新自由主義幻想の破綻 [規制緩和]

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 拙著『労働再規制-反転の構図を読みとく』ちくま新書で10月10日刊行予定。
 240頁、本体740円+税。ご注文は筑摩書房http://www.chikumashobo.co.jp/まで。
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 出来レースの総裁選で、お祭り騒ぎなんかやっている場合でしょうか。もっとも、「お祭り」には程遠いようで、巷では「まだ、やっているのか」などという声もあるようですが……。

 アメリカで第4位の証券会社であるリーマン・ブラザーズが経営破綻しました。「1世紀に1度の危機」だといいますから大変です。
 金融市場の混乱は世界に広がり、日米欧の金融当局は協調して計約36兆円にのぼる大規模な資金供給に踏み切りました。日銀は計3兆円の資金供給を行うと発表し、15日から始まった大量資金供給は39兆円規模に上ります。
 アメリカ経済は大混乱に陥っています。日本も、株安、円高、不況進行のトリプルパンチに見舞われることになりました。

 とうとう自殺者まで出てしまいました。三笠フーズなどによる事故米の転売事件です。 奈良県の米穀販売会社社長が自宅の寝室で掃除機の電気コードで首をつっているのが発見され、その後死亡が確認されました。
 同社は三笠フーズの事故米を扱っていた仲介業者の一つです。農林水産省によって社名が公表され、社長は家族に「死にたい」「病院に行きたい」などと漏らしていたそうです。
 問題はさらに拡大し、事故米がどこまで行き渡っていたか、未だに判然としません。農林水産省がどう関与していたのか、政治家の介在はなかったのか、気になるところです。

 リーマン・ブラザーズの経営破綻と事故米転売による被害の拡大。このどちらも、問題の根源は新自由主義政策にあります。
 「ワシントン・コンセンサス」と構造改革の問題点が、このような劇的な形で表面化したと言って良いでしょう。市場による調整は働かず、04年4月の改正食糧法施行によって米の流通が野放しになったからです。
 規制をなくして市場に任せれば全て上手くいく、という新自由主義の幻想は破綻しました。それは、根拠のない神話にすぎなかったのです。

 それにしても、小沢さん、なかなかやるじゃありませんか。やはり、選挙に関しては「策士」でしたね。
 自分の選挙区をはじめ自民党や公明党の有力議員の選挙区を空白にしておいて、相手を疑心暗鬼に追い込む。民主党と国民新党との合併を提案する。どうなるか、マスコミも注目するでしょう。
 長崎2区の現職の久間章生元防衛相には薬害肝炎九州訴訟原告の福田衣里子さんをぶつけ、東京11区の下村博文元内閣官房副長官には、新党日本から出る予定の有田芳生さんを推薦する。少しずつ、「逆刺客」を送り込んで注目を集め、マスコミに話題を提供しようというわけです。

 新党日本代表の田中康夫代表の衆院への鞍替えの可能性もあるといいます。これからも、自民党や公明党の有力者の選挙区から意外な人が立候補を表明するかもしれません。
 与党は戦々恐々でしょう。そうでなければ、いけません。
 これからも、小沢さんの“本気度”が見えるような構えと仕掛けが登場するでしょう。「敵失」を待つのではなく、剛腕らしく力ずくで自公政権を引っ繰り返してもらいたいものです。