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1月29日(火) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

 〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』に掲載されたものです。〕

*1月27日付巻頭特集「底なし「統計不正」の深刻 消費増税はご破算が当たり前」
 この期に及び、不適切処理が発覚した22統計の所管大臣は「前例に疑問を抱かず整合性のチェックを怠っていた」(石井啓一国交相)、「事務的な確認不足」(柴山昌彦文科相)と全てを役人の怠慢のせいにして問題の矮小化に躍起だが、冗談ではない。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言った。
 「昨年の森友文書の改ざんに続き、これだけ多くの基幹統計の不正が明るみに出たのです。公文書も政府統計も信用できない国は、もはや先進国ではない。国際社会の信頼を失い、海外投資家だって信用のおけない国として投資をためらうでしょう。安倍首相がアベノミクスの成果と称する株高が、それこそ吹っ飛びかねない非常事態です。それなのに、この政権は官僚に全責任を押しつけ、トカゲのしっぽ切りで幕引きを図ろうとする。毎度おなじみのパターンで、政治家は誰ひとり責任を取らない。不正統計のお手盛り報告も、組織的隠蔽のさらなる隠蔽で、この政権では隠す、ゴマカす、平気で嘘をつくのが常態化し、もはや何を信じていいのか分からない。国の土台が揺らぎ、地面が割れるような感覚で、震源地は安倍官邸の政治的大震災です」

 「昨年以来、安倍政権は改ざん、隠蔽、不正、捏造のオンパレード。今回のアベノミクス偽装がトドメで、政治の信頼回復には内閣総辞職以外に道はありません」(五十嵐仁氏=前出)

*1月29日付巻頭特集「「統計不正」など朝飯前 バレなきゃ何でもやる安倍政権」
 ハッキリ分かったのは、この政権は「バレなければなんでもやる」ということだ。法大名誉教授の五十嵐仁氏が言う。
 「安倍政権の政策づくりはアベコベです。本来は、実態を調べ、データを分析し、事実に即して政策をつくるものです。ところが、安倍政権の場合、まずやりたい政策が先にあり、その方針に合うデータを無理やり用意している。『裁量労働制の拡大』は典型です。厚労省が所管する団体が行った調査では“裁量労働制の労働者の労働時間は長い”となっていたのに、そのデータは採用せず、数字を加工してまで“裁量労働制の労働者の労働時間は短い”というデータをつくり上げている。自分がやりたい政策を実現させるために、数字までいじっているのだからヒド過ぎます」

 「安倍首相の最大の問題は、ファクトに対して謙虚な姿勢がまったくないことです。恐らく、大切なのはファクトではなく、自分の主観なのでしょう。しかし、事実を事実として受け止め、事実に基づいて政治をやらないと、どんな政策もうまくいかない。アベノミクスが失敗し、外交が成果ゼロに終わっているのも、事実を見ずに勝手な思い込みだけで政治をやっているからでしょう。誰が見たって、安倍首相はプーチン大統領に手玉に取られ、カネだけむしり取られているのに、本人は25回も会談したプーチン大統領との友情を信じ込み、北方領土が返還されると思い込んでいる。心配なのは、統計などの事実をネジ曲げると、国が崩壊する危険があることです。旧ソ連だけではありません。戦前の日本が、まさにそうでした。正確な数字に基づいて戦略を立てようとせず、勝てない戦争を続け、国が滅びた。公文書を改ざんするような安倍政権は、非常に心配です」(五十嵐仁氏=前出)

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1月28日(月) 戦前の「ポスト真実の日本」を取り戻してしまった安倍首相 [首相]

 毎月勤労統計の不正調査、誤魔化しが発覚し、大きな批判を招いています。しかし、これは「氷山の一角」にすぎません。
 安倍政権では、事実の軽視、情報の秘匿、ウソと誤魔化しが横行しているからです。とりわけ安倍首相の場合、「隠す、誤魔化す、嘘をつく」と三拍子そろった「騙しのテクニック」が多用されていることに注意しなければなりません。

 沖縄での県民投票でも、このような「騙しのテクニック」が用いられようとしています。県民投票での選択が「賛成」「反対」の2択から、「どちらでもない」を加えた3択に変えられたからです。
 この変更によって協力を拒んでいた5市が参加することになり、全県での実施が決まりました。それは良かったと思いますし、3択にしたのは全県での投票実施を実現するためのやむを得ざる譲歩だったと思います。
 しかし、新たに加わった「どちらでもない」という選択肢が多数になった場合、県知事は辺野古での基地建設に反対できなくなるかもしれません。「反対」の意見が多数になった時にだけ、デニー知事はこれまでと同様に新基地建設阻止の行動をとり続けることができるからです。

 つまり、新たな選択肢は3つではありません。「賛成」と「どちらでもない」は新基地の建設に反対ではなく、現状を維持または容認するという点で同じだからです。
 ここには選択肢が2つではなく3つであるように見せかけ、反対意見を少数にするためのカラクリが仕込まれているのです。見事な誤魔化しではありませんか。
 投票に当たっては、このようなカラクリや誤魔化しを県民の皆さんにきちんと説明しなければなりません。実際には3択ではなく2択であるということ、「どちらでもない」は第3の選択肢のように見えるけれど事実上は土砂投入の現実を容認し、基地建設への「反対」を止めさせる意味を持っているということを。

 このような安倍政権によるウソと誤魔化し、事実の軽視、情報の秘匿は、第2次政権が発足して以来、ずっと続いてきました。その最初の例は特定秘密保護法だったのではないでしょうか。
 国民の共有財産である特定の情報を、法律によって堂々と隠すことができるようにしてしまいました。「隠す」ということで言えば、イラクや南スーダンへの自衛隊派遣に関わる日報隠蔽問題が典型です。
 ウソをつくのも平気で、最高裁の判決を歪曲して集団的自衛権の一部容認を閣議決定し、そのまま安全保障関連法として成立させてしまいました。憲法についても、自衛隊の存在を書き込むだけで自衛隊の役割や機能は何も変わらないとウソをついています。辺野古の埋め立て予定地への土砂投入についてのサンゴ移植発言もウソでした。
 
 安倍政権には、事実を尊重し情報を公開して国民の判断を仰ごうとする態度も、国会での質疑に真摯に対応し丁寧に説明して与野党の合意を図ろうとする姿勢も全く見られません。虚偽をまき散らすトランプ流の「フェイク病」に感染し、「ポスト真実の時代」に特有なねつ造と誤魔化しに終始しています。
 森友学園疑惑では公文書の隠ぺいと改ざん、加計学園問題では情報の秘匿と誤魔化し、裁量労働制に関するデータの捏造、障害者雇用率での数字の誤魔化し、外国人技能実習生からの聞き取り調査のずさんさ、そして今回の毎月勤労統計での調査捏造、おまけに外部有識者による課長・局長級職員への聞き取り調査に定塚由美子官房長が同席して質問もしていたことが隠蔽されていました。基幹統計についても56のうち22で問題があったと報告されています。
 このような問題が次々に明らかになってきたのに、政治家は誰一人として責任を取っていません。処分されたのは「トカゲの尻尾」である官僚だけです。

 統計法は嘘とデタラメの数字や情報によって国民の目を欺いた戦前の間違いを深く反省するところから制定されました。政治的な決定や政策の立案は、厳格な事実と正確な情報に基づかなければ取り返しのつかない過ちを犯してしまうからです。
 そのことを私たちは、戦前・戦中の歴史を通じて痛いほど体験したはずです。それが再び、安倍政権によって繰り返されてきました。
 「日本を取り戻す」と言っていた安倍首相は、「ポスト真実の時代」の原型ともいうべき戦前の日本を取り戻してしまったようです。事実を隠し国民を騙して大きな過ちを犯し、滅亡の淵にまで国を導いてしまった「戦前の日本」を。

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1月26日(土) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

 〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』に掲載されたものです。〕

*1月17日付記事「百八十度転換経団連・中西会長 原発「ドンドン再稼動すべきだ」」
 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)が言う。
 「好意的に見れば、国民に一石を投じようとしたのかも知れません。コソコソと再稼働を進めるのではななくて、正面から〝原発賛成か〟〝原発反対か〟を公開討論すればいいと考えたのかも知れない。ひょっとして原発村の住民である本人は、〝原発賛成〟の方が多いと思っているのかも。しかし、これは自爆行為ですよ。恐らく、〝原発反対〟〝自然エネルギー〟が多いはずです」

*1月25日付巻頭特集「「統計不正」驚くべき幕引き 国民が知りたい景気の実相」
 「監察委は『統計不正に組織的関与はなかった』と結論付けましたが、22人も処分されたのに組織的ではないなんて、理屈が通りません。本来なら、大臣が責任を取って辞めるべき事態です。しかし、安倍政権下では政治家が責任を取らず、官僚に詰め腹を切らせて事件にフタをすることが当たり前になっている。モリカケ疑惑もそうでした。公文書改ざんというあり得ない問題が起きても、麻生財務相は辞めずにデカイ顔をし続けているのです。昨年から今年にかけ、障害者雇用や裁量労働に関するデータ、技能実習生の実態調査、防衛省の日報隠蔽など基本的な情報の不正や捏造が次から次へと発覚していますが、この政権では都合の悪いことは隠す・ゴマカす・ウソをつくが常態化し、もはや何を信用していいのか分からない。日本は完全に虚偽にまみれた“ポスト真実”の世界になってしまいました」(政治学者の五十嵐仁氏)

 「毎月勤労統計はあらゆる経済分析や政策形成の土台になる基幹統計です。それが改ざんされ、04年から11年分までについては元データもないのでは、評価も検証もできない。よく数字は嘘をつかないと言いますが、学者やエコノミストがこれまで毎月勤労統計を参考にして書いてきた論文も、基の数字が嘘ではどうしようもありません。こういうデタラメなデータを前提にして、『賃金が上がっている』『景気がいい』とアベノミクスの成果が喧伝されてきたのです。アベノミクス成功を装うために数字を捏造した疑惑さえある。嘘の数字を前提に、『景気がいいから』と決めた消費税の再増税も、再考する必要があるでしょう」(五十嵐仁氏=前出)

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1月23日(水) 八方ふさがりどころか十方ふさがり以上に陥ってしまった安倍首相 [首相]

 1月20~21日、箱根に行ってきました。全国革新懇の都道府県革新懇事務室(局)長合宿交流会が開かれたからです。
 私は特に出席を要請されたわけではありませんが、講演などでお世話になっている皆さんにお礼を述べる良い機会であり、しかも選挙イヤーである今年初めの会議の重要性を考え、顔を出させていただくことにしました。

 この会議の様子は『しんぶん赤旗』や全国革新懇FAX ニュース『革新の風』などで伝えられました。その中で、私の発言につても、次のように報じられています。
 「全国革新懇の五十嵐仁代表世話人は、統計不正問題や消費税増税、原発、日ロ領土交渉などを挙げ、安倍政権は『八方ふさがりになっている』と指摘。
『情勢は大きく流動化し、大変動のきざしが表れている。私たちの取り組み次第では、大きな政治的転換を生み出す面白い状況が、参院選に向けて進んでいくのではないか』と語りました」(『しんぶん赤旗』1月22日付)
 「政治学者の五十嵐仁全国革新懇代表世話人は、統計不正問題、沖縄、 消費税など8分野での破たんをあげ、『安倍首相は八方ふさがり』の情勢について発言。参院選で本気の共闘で大激変大激動を起こそう、「安倍よアバよ」と“五十嵐節”で会場を沸かせました」(『革新の風』718号、2019年 1月 22日付)

 ここで書かれているように、私は今の情勢の特徴、改憲をめぐる状況、参院選の捉え方の3点について発言しました。そのなかで特に強調したのは、昨年末から安倍首相が八方ふさがりの状況に陥っているということです。
 もっと言えば、「八方」どころか「十方ふさがり」以上と言っても良いかもしれません。それほど難問山積の状況に安倍首相が追い込まれているのが現在の情勢の特徴です。
 国内外ともに情勢は流動化し、予測不能になっています。「激変の兆しあり」というところですが、私たちの運動次第で大きな政治転換を起こすことができる「面白い」情勢でもあります。

 「十方ふさがり」というのは、毎月勤労統計での不正調査、辺野古新基地建設をめぐる県民投票、「火だるま」となっている消費税再増税、破綻してしまった原発輸出、見通しの立たない改憲、森友学園への値引きの根拠の崩壊、国際情勢に逆行する大軍拡、日米貿易摩擦や北方領土問題、日韓関係などで不透明さを増す外交の八つに加え、日産をめぐるゴーン前会長の不正と起訴、五輪招致のための裏金贈賄事件の表面化を指しています。昨年の臨時国会で成立した改定入管法につても4月施行に向けて多くの課題が指摘されており、年金カットなどの福祉削減、医師や教師の「働き方改革」をめぐっても批判が高まり、年末から年始にかけては株価も乱高下しながら下がってきています。
 まさに天下大乱の兆しありというところで、実際には「十方」以上のふさがり方だと言って良いでしょう。しかし、直近の世論調査では内閣支持率が微増して40%台を維持し、不支持率を上回っています。
 これほどの閉塞状況で問題山積でありながら、内閣支持率低下に結びついていないのは何故でしょうか。高知新聞社が実施した県政世論調査で内閣支持率が26.8%だったという報道がありましたが、全国的にそうなってもおかしくありません。

 そうなっていないのは、この現実がメディアなどによって十分に国民に知らされていないからです。同時に、内政の行き詰まりに追い詰められた安倍首相が外政に逃げ込んでいることも大きいように思われます。
 これまで安倍首相は、3本の矢、新3本の矢、地方創生、女性活躍、一億総活躍社会、人づくり革命、働き方改革など、次々に新しいスローガンを打ち出して国民に期待を持たせ幻想を振りまいてきました。しかし、それらはいずれも「目くらまし」にすぎず、看板倒れに終わっています。
 その結果、「タネ」が尽きてしまい、今年は「戦後外交の総決算」を打ちだしました。「内政がダメなら外政があるさ」というわけです。

 その外政では、対外的な緊張と対立を煽り立てて支持率拡大に利用するというのが、これまでの安倍首相の常套手段でした。そのようなやり方は、今も最大限に駆使されています。
 これまでは北朝鮮の核開発とミサイル発射実験が、このような緊張と対立を煽り立てる手段として利用されてきました。しかし、米朝会談と南北和解の実現以降、このような手段は使えなくなりました。
 その代わりに登場してきているのが、韓国との緊張と対立の激化です。「北がダメなら南があるさ」というわけです。

 内閣支持率の微増には、このような日韓関係を利用した安倍首相の危機煽りが影響しているのではないでしょうか。徴用工問題やレーダー照射をめぐる韓国との対立を利用して反発と危機感を煽り立てることで、国民の支持をつなぎとめようとしている可能性があります。
 このような危機煽りや対立感情に巻き込まれて、安倍首相に騙されてはいけません。きちんと現実を直視する必要があります。
 NHKなど首相の意向に巻き込まれ忖度報道を繰り返しているメデイアの報道をうのみにしてはなりません。何が事実なのか、真実を見極める目を持つ重要性がますます高まっています。

 今年は統一地方選と参院選が同時に実施される「選挙の年」です。主権行使の絶好のチャンスであり、安倍首相を追い詰め断罪する貴重な機会でもあります。
 有権者として真贋を見極める眼を持つことが、今年ほど重要な年はありません。フェイクニュースや間違い報道に流されないように気を付けていただきたいものです。
 ボーっと生きていたのでは、チコちゃんに叱られます。そうならないためにも、八方ふさがりを越えた十方ふさがり以上の情勢をきちんと見据え、選挙で正しい判断を行いたいものです。

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1月17日(木) 「消えた給付金」は「消えた年金」と同様に安倍政権を追い詰めることになるのか [国会]

 またもや厚生労働省の失態が明らかになりました。毎月勤労統計(毎勤)の元になる調査が不適切になされ、それを根拠にした失業や労災に伴う給付が少なすぎたというのです。
 その影響を受ける人は2000万人で額は500億円を超えました。追加で支給するための予算措置を取るために、来年度予算の組み換えも必要になります。

 毎勤という基幹統計が正しく行われず、いわばねつ造されていました。裁量労働制に関するデータ、障がい者雇用率についての数字、技能実習生からの聴き取り調査などについても、改ざんやねつ造が相次いでいます。
 国会でのごまかし答弁などによって政治への信頼が地に落ちたのに続いて、統計という施策の下になる客観的な数字が誤っていたことで行政に対する信頼も大きく損なわれる結果になりました。
 このような不正がなぜなされてきたのか、どうして長年の間放置されてきたのか、組織的になされたものなのか、などについての真相の解明はこれからのことになります。閉会中審査も行われるようですが、1月28日に開会されるという通常国会での大きなテーマとなることは確実です。

 こうして、夏の参院選を前にした通常国会で「消えた給付金」についての追及がなされることになれば、思い出されるのは2007年の通常国会です。ここでは「消えた年金」が大きな問題になりました。
 松岡利勝農水大臣の「政治とカネ」の問題や自殺まで起きました。第1次安倍政権の時代で、この時も春に統一地方選挙が実施される「亥年の選挙」でした。
 安倍首相は防戦に終始し、夏の参院選では当選が37議席にとどまって当時の民主党に参院第一党の座を譲るという歴史的な惨敗を喫しました。この大敗が、秋の臨時国会冒頭での健康問題を理由にした安倍辞任の遠因になったと見られています。

 同じようなことが生ずるのでしょうか。年の初めから安倍首相が追い詰められるような事態が続発していることは確かですが、NHKの調査では内閣支持率は4割を維持し、不支持率を上回っています。
 しかし、通常国会での野党の追及次第で、情勢は大きく変わる可能性があります。「消えた給付金」だけでなく、10%への消費増税への不安と不満、沖縄辺野古での新基地建設をめぐる理不尽な対応、北方領土問題をめぐるロシアとの食い違い、朝鮮半島情勢の変化と日韓関係の混迷、好戦的な大軍拡という緊張緩和への逆行など、「突っ込みどころ」は満載です。
 これらの問題で追い詰められれば、ますます右翼的な支持層への依存を強めて改憲を声高に叫ばざるを得なくなり、それがかえって安倍政権への警戒心を高めるという悪循環に陥る可能性もあります。このような形で窮地に陥れば、逃げ込む先は一つしかありません。衆参のダブル選挙です。

 これまでダブル選挙は1980年と86年の2回実施され、いずれも自民党の勝利に終わっています。衆参の選挙が同時に実施されれば、野党間の選挙協力を分断し自民党が有利になるからです。
 安倍首相は年頭の会見で「心の片隅にもない」と言っていますが、「隠す、誤魔化す、嘘をつく」安倍首相のことですから、信用できません。安倍首相の大叔父である佐藤栄作元首相も「心の片隅にもない」と言いながら解散・総選挙を実施し、後で「片隅にではなく真ん中にあった」と言いました。
 これは典型的な「ご飯論法」ですが、このような論法を得意とし駆使してきた安倍首相が佐藤元首相を見習うことは十分に考えられます。衆参ダブル選挙で圧勝し、長期政権と改憲に向けての態勢をリセットし盤石なものにしたいと思っているかもしれません。

 通常国会で野党がどこまで安倍政権を追い詰めることができるかにかかっているでしょう。同時に、分断を狙ってダブル選挙を仕掛けてくるのであれば、共闘によって跳ね返さなければなりません。
 ダブルで勝利を狙う与党に対して、ダブルで敗北させれば手間が省けます。安倍首相を退陣させ、一挙に政権交代を実現する可能性も生まれるのですから。
 そのためにも、何としても野党共闘を実現しなければなりません。分断に対する最大の反撃は手を結ぶことなのですから。

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1月11日(金) 安倍首相の「サンゴ移植」発言で注目される3つの論点 [沖縄]

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画に関連して、6日のNHKの番組で行った安倍首相の発言が大きな批判を招いています。この番組では、辺野古沿岸部での土砂投入開始を踏まえて、司会者が「沖縄県民の理解をどう得るか」と質問したのに対し、首相はサンゴの移植に言及しながら、次のように発言しました。

 「土砂を投入していくにあたって、あそこのサンゴは移している。また、絶滅危惧種が砂浜に存在していたが、これは砂をさらってしっかりと別の浜に移していくという環境の負担をなるべく抑える努力もしながら、行っているということだ。」

 しかし、「あそこのサンゴ」は移されていませんでした。沖縄県水産課などによれば、埋め立て予定海域全体では約7万4000群体のサンゴの移植が必要ですが、このうち沖縄防衛局が移植したのは絶滅危惧種のオキナワハマサンゴ9群体だけで、どれも今回の土砂投入区域にあったサンゴではなかったのです。
 この安倍首相の発言に対して、玉城デニー知事がツイッターで「現実はそうなっていない」と批判した通りです。事実とは異なる発言によって、土砂投入を正当化しようとしたことは明らかです。
 この首相の発言について注目すべき論点は、さし当り以下の3点です。

 第1に、この発言は辺野古新基地建設のための土砂投入を正当化するために、安倍首相がまたもやウソをついたということです。意識的についたウソであるかどうかははっきりしませんが、ある種の印象操作を行う結果となったことは明らかです。
 もし、意識的ではなかったとすれば、事実認識の誤りに基づく発言だったということになります。沖縄県民の多くが反対し、その意思が先の県知事選でも明らかにされた新基地建設に対して、安倍首相が状況を正しく認識してないということが、この発言で示されたことになります。
 そのような誤った認識の下で、希少サンゴや絶滅危惧種の破壊に直結する土砂投入が強行されているということです。事実誤認に基づいて強行されている土砂投入に正当性はなく、直ちに中止するべきです。

 第2に、この発言が「沖縄県民の理解をどう得るか」という質問への回答としてなされたという点も注目されます。つまり、安倍首相は土砂投入によって希少サンゴが失われ、環境が破壊されるという県民の危惧や批判を十分に分かっているということです。
 このような危惧や批判は当然だと考えているからこそ、それを払拭するための努力がなされていると強調したかったのでしょう。「あそこのサンゴは移植している」「環境の負担をなるべく抑える努力もしながら、行っている」から、土砂を投入しても心配ないのだと。
 このような保全措置を取っているから問題はないのだと、土砂投入を正当化したかったのではないでしょうか。しかし、そうではなかったのですから、土砂投入は到底「沖縄県民の理解」を得ることはできません。

 第3に、希少サンゴや絶滅危惧種を移植すれば、環境は保全されるのかということです。このような移植によって、希少サンゴが守られ環境の負担が抑えられる保証は全くありません。
 この問題を報じた今日の『毎日新聞』には、サンゴの生態に詳しい東京経済大の大久保奈弥准教授の発言が紹介されています。大久保准教授は「サンゴを移植しても長期生存率は低い。環境保全措置としては不十分だ」と、政府の対応を疑問視しているというのです。
 つまり、移植すれば問題ないように発言している安倍首相の認識はこの点でも誤っています。希少サンゴを守るためには移植ではなくそのままの形で存続させるべきであり、それを不可能にして環境を破壊する土砂投入は直ちに中止するべきです。

 必要でもない新基地建設のために沖縄の貴重な自然が破壊されようとしているということは世界中に知れ渡りつつあります。土砂投入の一時中止を求めるホワイトハウスへの要請署名は必要数の2倍以上に当たる20万筆を越えました。
 他方で、安倍政権の意向を忖度した沖縄県民投票への妨害工作も強まっています。世論の力を背景に県民投票を成功させて辺野古での新基地建設をストップさせることこそ、沖縄の美ら海と希少サンゴを守る唯一の道だということを改めて確認する必要があるでしょう。


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1月9日(水) 安倍首相が改憲に執念をたぎらす3つの背景 [首相]

 安倍首相は臨時国会の最終日に、2020年に新憲法を施行する意志について「その気持ちは変わりがない」と言い切り、1月6日放送のNHK番組でも通常国会で与野党による憲法改正論議の進展に期待を示し、「憲法は国の未来、理想を語るものであり、日本をどのような国にするかとの骨太の議論が国会で求められる。各党が考え方を持ち寄るべきだ」と述べました。安倍9条改憲NO!3000万人署名運動の効果もあって、昨年中の改憲発議という目論見が挫折し改憲スケジュールに大きな狂いが生じていますが、改憲に向けての安倍首相の執念には変わりがないようです。
 しかも、今年の7月には参院選が実施され、ここで改憲勢力が3分の2の議席を失えば、2020年までに改憲発議を行うことはほとんど不可能になります。常識的に考えれば、2020年新憲法施行が実現する可能性はかなり薄まっていると見られますが、それでも安倍首相が改憲に執念をたぎらせているのは何故でしょうか。

 その第1は、安倍首相には個人的な野望があるからです。安保条約の改定を成し遂げた後に改憲を実現したいという祖父・岸信介元首相の望みを受け継いで改憲を達成したいと考えているのでしょう。
 昨年の12月19日に公開された外交文書で、岸信介首相が就任後初の1957年6月の第1次訪米を前に旧安保条約を改定した後、憲法を改正する二段構えの構想を描いていたことが明らかになりました。岸元首相も安保改定だけでなく、改憲にも執念を燃やしていたわけです。
 しかし、安保闘争によって岸内閣は倒れ、改憲どころではなくなりました。安倍首相はこの祖父の執念を受け継ぎ、自分の手で達成したいと考えているにちがいありません。

 もし、それが可能になれば祖父の願いを実現できるだけなく、戦後初めて改憲を成し遂げた首相として、歴史に名を残すことができます。このような功名心が安倍首相自身にとって大きな野心を生み出す背景の一つではないでしょうか。
 この独りよがりの功名心によって憲法をめぐる国民世論は分断され、大きな対立が持ち込まれる結果になりました。今憲法を変えなければならないと考えている国民は少数なのに、安倍首相の個人的で勝手な思い込みによって大きな混乱が持ち込まれているのが現状です。
 「憲法は国の未来、理想を語るものであり、日本をどのような国にするかとの骨太の議論が国会で求められる」と安倍首相は語っていますが、すでに現行憲法によって平和国家としての「国の未来、理想」は示されており、「日本をどのような国にするか」という民主国家のビジョンも、憲法によって明らかにされています。安倍首相をはじめとした国務大臣や国会議員は、このような憲法を「尊重し擁護する」ことこそが、99条に示された義務であることを再確認する必要があるでしょう。

 第2に、憲法に自衛隊の存在を書き込んで普通の軍隊とし、集団的自衛権の全面的な行使を可能にすることです。安倍首相はすでに安保法制(戦争法)の成立によって「戦争する国」に向けての制約を一部とり払いましたが、それをさらに進めて全面的(フルスペック)な集団的自衛権行使への道を開こうと考えているのです。
 安倍首相は9条をそのままにして自衛隊の存在を書き込んでも、自衛隊の任務や性格には何ら変わりはないと説明しています。しかし、これは真っ赤な嘘です。
 法律には「後法優位の原則」があり、前に制定された条文と後から付け加えられた条文とが矛盾した場合、後から制定された条文の方が優越します。新しい条文の方が法制定者の直近の意志を示しているからです。

 そもそも、変わらないのであれば変える必要はありません。自衛隊の存在を書き加えることによって憲法上の位置づけを与えて正当化すれば、自衛隊の性格も任務の内容も大きく変貌するにちがいありません。
 それは、集団的自衛権を全面的に解禁し、アメリカの要請に応じた海外での武力行使を可能にするでしょう。日本は「戦争する国」となって、自衛隊が戦争に巻き込まれる危険性が高まります。
 しかし、自国第1で脱中東化を進めているトランプ米政権の登場によって、このような必要性があるのかが改めて問われ始めています。韓国や日本からの米軍撤退の可能性も囁かれるなかで、軍事大国化のための改憲自体が東アジアの国際情勢と緊張緩和に逆行する時代錯誤で無用なものになってきている現実を直視するべきでしょう。

 第3は、安倍首相の強固な支持基盤である極右の支持をつなぎ留めておく必要があるからです。そのためには、安倍首相に改憲を期待している日本会議などの極右勢力に寄り添う姿勢を示し続けなければなりません。
 これらの改憲・靖国派の極右勢力にとって、安倍首相は久しぶりに登場した「希望の星」なのです。このチャンスを逃してはならないという思いで、安倍首相の改憲執念に期待をつないでいます。
 たとえ、実現の可能性が小さくても、この改憲願望に応える姿勢を示し続けなければ、極右勢力の支持は失われてしまいます。安倍首相の改憲発言はこれらの勢力へのリップサービスであるとともに、その執念を示すことで極右勢力をつなぎとめることができる「魔法の杖」なのです。

 しかも、最近の安倍首相は、これまでの支持基盤であった極右保守勢力にとって好ましくない政策判断を積み重ね、実行してきました。それに対する反発を弱めるためにも、改憲姿勢を強めざるを得ないのではないでしょうか。
 その一つは、昨年の臨時国会で大きな争点となった改定入管法による外国人労働者の拡大です。安倍首相が盛んに「移民政策ではない」と繰り返していたのは、極右勢力が「移民」の拡大に反対しているからです。
 もう一つは新元号の発表時期で、安倍首相は保守派の反対よりも国民生活への影響の方を優先し、新天皇即位の1カ月前に発表することを正式に決定しました。さらに、北方領土問題でも「2島先行返還」へと舵を切りつつありますが、実際には「2島放棄」になるのではないかとの疑いを保守派は強めています。

 こう見てくると、安倍首相の改憲発言は願望でありポーズにすぎないということが分かります。どれほど実現の見込みが薄くても、このような願望を表明し、そのためのポーズを取り続けなければならない状況に、安倍首相は追い込まれているということになります。
 現在の国会と世論の状況では、かなり無理をしなければ発議できませんが、無理をしすぎたら発議は遠のいてしまいます。たとえ無理をして発議できても、そのこと自体が国民投票での多数獲得の障害になるかもしれません。
 しかも、発議可能な期間は、参院選前までと限られています。小さな土俵の上で難しい取り組みを強いられた安倍首相は、内政で勝負できず外交に活路を求めているようですが、それに成功する保証はどこにもありません。

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1月6日(日) 『日刊ゲンダイ』2018年12月26日付に掲載されたコメント [コメント]

 〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』12月26日付巻頭特集「ゴーンは獄中でも巨悪は眠っている 地検特捜への国民感情」に掲載されたものです。〕

 「特捜部に期待されているのは、権力者の犯罪にメスを入れることです。ところが、1強の安倍政権を恐れているのか、安倍政権に関わる疑惑には触れようとしない。モリカケ事件だけでなく、自民党の甘利明元経済再生相が大臣室で50万円を受け取った事件も、斡旋収賄の疑いがあったのに、逮捕も起訴もしなかった。多くの国民が、『なぜ』と疑問に思ったはずです」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

 「安倍政権の特徴は、犯罪にならなければ、なにをやったって構わないという態度が露骨なことです。『このくらい大丈夫だろう』と完全にタカをくくっている。恐らく、権力を握ったゴーン容疑者も、『このくらいは大丈夫だろう』とタカをくくっていたのだと思う。タカをくくった結果、逮捕された。安倍政権とゴーン容疑者は、よく似ています」(五十嵐仁氏=前出)

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1月5日(土) 「平成」時代の総括とこれからの日本(その2) [論攷]

 〔以下の論攷は、東京土建一般労働組合『けんせつ』第2268号、2019年1月1日付、に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 深まる貧困と格差拡大 アベノミクスは破たん

 「平成」時代はバブル経済の絶頂期に始まりました。その後バブルははじけて長期低迷が続き、深刻なデフレ不況に陥ります。日本経済は浮き沈みしましたが、2012年12月からは景気拡大期間が続き、「いざなぎ景気」(1965~70年)を超えたそうです。
 しかし、そんな実感は全くありません。一貫して成長してきたのは大企業ばかりです。その結果、過去最高の利益を積み上げ、企業の内部留保は446兆円になっています。
 他方、労働分配率は低下して人件費は低いままに抑えられてきました。個人消費は低迷が続き、マイナス金利などで金利収入はほぼ消滅し、消費不況は深刻なままです。実質国民総生産(GDP)はほとんど増加せず、富んだのは大企業と富裕層だけでした。
 デフレ不況から脱出するために打ち出されたのが「アベノミクス」です。しかし、それは成功せず、消費不況は深刻なままで貧困化が増大し、生活保護受給者は3.6倍に増え、富める者と貧しい者、勝ち組と負け組、大企業と中小零細企業との格差が拡大しました。大企業や富裕層が富めばその富が低所得層に「滴り落ち」て国民全体に利益が及ぶとする「トリクルダウン理論」は完全に破たんしています。
 働く人々の処遇は悪化し、労働の質が劣化しました。「新時代の日本的経営」という日経連の提案が具体化され、雇用環境が大きく転換されたからです。その結果、正規労働者が減少し非正規労働者は2割から4割へ2倍になっています。
 2011年の東日本大震災と東電福島第1原発の事故は日本の経済と社会にとって激震を与えました。同時に、核に頼らないエネルギー構想が生まれる大きな契機にもなり、自然エネルギーと結合した地域循環型の経済再生への展望が生じているのは大きな希望です。

 価値観変質と右傾化 デモなど社会運動は復権

 「平成」時代には社会も大きく変わりました。量的には、少子化によって日本社会の縮小再生産が始まりました。総人口は2004年をピークに減り始め、生産年齢人口も1997年から減少を続けています。高齢化も進み、高齢者の半数が貧困状態に陥っています。
 質的な面でも激しい変容が見られます。競争の激化と短期的な成果主義、自己責任、排外主義、能力主義などの社会意識が浸透し、法に触れなければ何でも許されるという米国流の考え方も広まり、協調性やある程度の平等性の尊重、相互の信頼感や助け合いなどの日本的な価値観や道徳観が変質しました。
 また、社会の右傾化や若者などの保守化が目立つようになったのも、質的な社会変容として注目されます。世界的にも「ポスト真実の時代」や「フェイクニュース」が注目されていますが、日本の場合、メデイアコントロールの強化や権力による表現規制が強まっており、ジャーナリズムの衰退も著しいものがあります。
 このようななかで、デモや集会などの社会運動が復権してきました。派遣村や3.11原発事故などを契機に異議申し立てや反原発の運動などが再生し、特定秘密保護法や平和安全法制(戦争法)に反対する運動、安倍9条改憲阻止の3000万人署名運動など多様な運動へ受け継がれています。

 次の時代の幕開け 政治を動かすのは市民

 「平成」時代における変化には著しいものがありました。その「失われた30年」を取り戻すことは可能なのでしょうか。
 第1に、新自由主義的「改革」が失敗に終わり、その末路が明らかになってきました。政治・経済・社会への公的権力の適度な介入による持続的成長をめざしたのが戦後第1段階だったとすれば、第2段階は官から民への移行であり、規制緩和がめざされました。その最後の局面が訪れ、次の時代への過渡期が始まっているのではないでしょうか。
 第2に、次の時代に向けての新しい可能性が芽生えてきています。政治・経済・社会の変革に向けての新たな芽が生まれ、デモや集会、異議申し立ての運動などが復権して変革主体が形成され、生活不安や国会の機能不全への怒りが日常的に示されるようになりました。
 第3に、活路への絶好の機会が訪れようとしています。統一地方選と参院選は、「平成」時代に生じた「破壊」を修復し、憲法が尊重されその理念が活かされる新しい「活憲の時代」の扉を開く政治戦になります。
 この政治戦の帰趨は、日本の将来を左右するにちがいありません。民主国家において政治を動かすのは市民です。その市民の力を発揮して野党との共闘を実現し、日本社会の成熟度と国民の力を示して「平成」の次の時代の幕を開こうではありませんか。


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1月4日(金) 「平成」時代の総括とこれからの日本(その1) [論攷]

 〔以下の論攷は、東京土建一般労働組合『けんせつ』第2268号、2019年1月1日付、に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 失われた30年取り戻し 「活憲の時代」が開かれる

 平成の世を振り返り希望はあるのか。五十嵐仁法政大学名誉教授に寄稿してもらいました。(見出しは編集部)

 「平成」時代は、1989年から始まります。この年は中国の天安門事件、ドイツのベルリンの壁崩壊、米ソ首脳のマルタ会談による冷戦の終結宣言など世界的な大事件が続き、日本ではバブルがピークに達しました。それからの30年間に、日本はどう変わってきたのでしょうか。
 端的に言えば、「改革」の美名の下で「破壊」が続いてきた「失われた30年」でした。新自由主義と規制緩和、民営化などによってそれまでの秩序や制度が次々に打ち壊されてきたからです。
 その結果、問題が解決され新たな希望が生まれたかというと、大きな声で「ノー」と答えざるを得ません。日本が直面してきた問題は解決されるどころか、先送りされたり新たな問題が生じたりしたのですから。
  
 「改革」は逆の結果に

 「平成」時代の歴代政府は数多くの「改革」に取り組んできました。思いつくままに挙げれば、政治改革、行政改革、構造改革、雇用改革、教育改革、大学改革、司法改革、農業改革、税と社会保障の一体改革などです。
 これらの「改革」は、意図された構想を具体化し制度化したという点では確かに「成功」したかもしれません。しかし、国民生活を向上させて自由や民主主義、人権の拡大、平和の増進、国際社会での地位向上などに寄与したかというと、全く逆の結果になっています。
 政治改革、行政改革、構造改革は政治と行政の土台を掘り崩して私物化をもたらし、雇用改革は非正規労働者を増大させました。教育改革は教育と教科書の内容に介入し管理・統制を強めて現場を荒廃させ、大学改革は予算を減らして研究能力をガタ落ちさせ、司法改革は弁護士を増やしすぎて処遇を悪化させ、農業改革は家族経営の中小零細や兼業農家を切り捨てるものでした。
 税と社会保障の一体改革も社会保障サービスを切り下げて消費税を引き上げるための口実にすぎません。まさに惨憺たるもので、死屍累々たる姿が浮かび上がります。「改革」失敗のオンパレードではありませんか。
 とりわけ、安倍政権になってからの空回りは顕著です。「3本の矢」「地方創生」「女性活躍」「一億総活躍社会」「人づくり革命」「働き方改革」など鳴り物入りで始めた「目玉政策」の数々はスローガン倒れに終わり、一向に成果は上がっていません。
 しかし、このような「改革」の偽りと限界、問題点が明らかになってきたことは一歩前進です。これらの偽「改革」に代わる新たな選択肢の必要性が明確になってきたのですから。このような共通認識こそ、新自由主義と規制緩和、民営化などによる「破壊」を是正する第一歩にほかなりません。

 政治の土台崩れる 市民と立憲野党共闘へ

 「平成」時代の終焉に際して、政治の土台も崩れようとしています。政治改革によって小選挙区制や政党助成制度が導入され、民意を歪めて「死に票」を増やし、大政党の「独裁」を生み出しました。自民党内でも派閥が力を弱めて多元的な柔構造が失われ、候補者の擁立や資金の分配などに関する権限を執行部が握り、中央集権化が進んでいます。
 本来、政治改革は政党本位で政策を争うような選挙を実現し、金権政治を一掃するという目的を持っていました。しかし、政党・政策本位の選挙は実現せず、政党助成が導入されたにもかかわらず企業・団体献金の禁止は先送りされ、「政治とカネ」の問題は解決されていません。
 公的な情報の隠ぺい、公文書の改ざん、権力者への忖度、偽りの国会答弁などが蔓延し、議会審議の土台が崩れ、強行採決が横行して議会制民主主義は崩壊の危機に瀕しています。その結果、政治が私物化され、政治への信頼は大きく損なわれました。
 このようななかで、安全保障関連法反対運動などを契機に「野党は共闘」という声が高まりました。その結果、長年にわたって続いてきた「共産党を除く」という枠組みが崩れ、新たに市民と立憲野党の共闘が生み出されています。
 これは国会内での共闘や参院選などでの野党共闘に受け継がれようとしています。こうして野党連合政府の樹立を含め、新たな政治変革に向けての希望が生じたのは、30年前にはなかった巨大な政治的変化だと言えます。

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