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12月11日(火) 臨時国会と安倍改憲阻止の展望と課題(その3) [論攷]

 〔以下の論攷は、北海道憲法改悪反対共同センター学習交流集会での講演の記録で、北海道経済研究所発行の『北海道経済』No.592、2018年11月号、に掲載されました。かなり長いので、6回に分けてアップさせていただきます。〕

 2 憲法を語る資格も改憲の必要性もない

 安倍首相の場合、憲法を語る資格がない。憲法を変える必要もありませんけれども、語る資格がない。自衛隊の幹部の前で改憲を呼びかける。自衛隊というのは実力組織で、中立的な国の機関ですね。こういう人たち、幹部を集めて会同を開く、あるいは観閲式をやるというときに、あいさつの中で「憲法を変える」という表明をおこなう。あるいは国会に出て国会議員に改憲を呼びかけるということを何回もおこなっている。
 行政府の長が立法府のあり方や審議の仕方にたいして関与し介入することは抑制的でなければならない。三権分立ですからね。立法府と行政府は違うんだから。安倍さんは行政府の長であって、立法府の長じゃない。しかし、本人はどうもそこのところがよくわかってないんですね。ときどき言うんです、「立法府の長」だと。この前も言いましたよね。3回目ですよ。安倍さん、そんなに立法府の長になりたいんだったら、早く行政府の長をやめて、国会の議長にでもなればいい。
 しかし、行政府の長ですから、立法府の審議の仕方は立法府の人たちに任せればいい。ところが、国会に出て行って改憲を国会議員にたきつけている。
 これに対して、野党はもとより国民の中でも警戒感が高まっている。安倍首相によって憲法がいじられると危ないんじゃないかと。いままで戦争する国、戦争できる国に向けていろんなことを安倍さんはやってきた。日本版の国家安全保障会議をつくったり、日本版海兵隊というような新しい部隊を編成したり、法律ということで言えば特定秘密保護法、平和安全法制を成立させる。共謀罪法も。こういう法制度を整備する。それだけじゃない。軍事費を1兆2000億円、安倍内閣になってから増やした。いまアメリカ製の武器を次から次へと買い込んでいる。ローンで買っていますから、後年度負担というかたちの支払い、たいへんな額に上るんじゃないかと思います。
 そればかりじゃありません。教育を変え、マスコミに介入し、若い人たちに愛国心を植え付けている。国のために命を懸けて戦うことを誇りとし、それを望むような若者をつくろうとしています。着々と手を打ってきたわけです。その最後の仕上げとして憲法に手を付けようとしている。これが安倍改憲の本質であり、危険性だといっていいと思います。
 しかし、それにたいしては国民多数が反対している。毎日(賛成19%:反対65%)朝日(36:42)読売(40:47)産経の世論調査、みんな反対のほうが多いですね。読売新聞や産経新聞だって反対が多いんだから。世論調査は基本的には中立的なものでなければなりませんから、同じような数字が出てきて当然ですけれども。
 しかし、読売新聞は改憲に向けて安倍さんのインタビューを掲載して、「詳しいことは読売新聞を読んでくれ」と、安倍さんは言っていましたからね。安倍首相の機関紙みたいなものです。そういう新聞でも、反対が多くなっている。産経だって42・9対48・3。毎日新聞だと賛成は19%です。こういう国民の声をしっかり聞く必要があるんじゃないか。
 そういう中で安倍首相は誤算を積み重ね、焦りを強めている。だからいま一生懸命に呼び掛けているんです。どういう誤算があったか。総裁選挙で国会議員票では8割ぐらいとったんですけれども、党員票では55%しかなかった。半分以上だと思うかもしれませんけれども、投票率62%ですから、実際上党員の中で安倍さんを支持した人は34%ぐらいしかいない。飲ませ、食わせ、握らせ、何でもあり。公職選挙法は適用されませんから違反なんかいくらでもやれる。
 これは安倍さんにとっては予想外。なぜ地方で支持されなかったかというと、安倍さんで選挙をたたかえるのかと、地方議員はみんな心配している。来年の春4月に自分の選挙がありますから。こういう誤算があってうまくいかない。
 うまくいかなかったのはもう1つ。第4次安倍改造内閣ということで、スタートダッシュを決め支持率を上げて改憲に突き進もうとしたのが、改造してふたを開けてみたら支持率が下がっちゃった。横ばいか低下で上がったところはどこもない。新しい内閣をつくるとご祝儀相場というのがありまして、だいたい10ポイントぐらいは上がるのが普通です。今回は下がっちゃった。スタートダッシュに失敗しました。
 それだけじゃない。沖縄で3連敗。県知事選挙で8万票の差がついた。那覇市長選挙ではほとんどダブルスコアですから。こういう結果が県民の意思として示された。
 さらに外交問題。トランプさんと個人的な関係をつくってきても貿易問題では日本も標的になっている。北方領土問題も進展なし。プーチン大統領と22回も会談した。自分の選挙区にプーチンさんを連れて行っていっしょに温泉にまで入った。でも、北方領土は返ってこない、一歩も動いてないどころか、この前のシンポジウムで、プーチンが前提条件なしで平和条約を結ぼう、領土問題を棚上げにして平和条約を結んじゃおうと言ったのに、安倍さんはニタニタするだけで反論できない。
 北朝鮮の拉致問題。これも一歩も動いてない。まったく相手にされていないんです、安倍さんは、金正恩に。金正恩に口きいてもらおうと思って韓国の文在寅大統領をたよりにしようとした。ところが、徴用工問題で韓国の最高裁で判決が出た。もともと侵略戦争と植民地支配からああいう問題が起きているんです。それを政府同士で臭いものにふたをするということで、条約で解決済みにしちゃった。だけど、個人的な請求権は消滅していない。
 「いやあ、植民地支配で苦労をかけた、奴隷労働をさせて申し訳なかった」、これぐらい言ったっていいじゃないですか。慰安婦問題だってそうですよ。金じゃない。気持ちなんです。「悪かった」と一言いえばいいんだよ。安倍さんが韓国に行って、ナヌムの家に行って元慰安婦の人たちをハグすればいいんです。「苦労かけましたね」と、背中をトントンとたたけば問題は解決するんだけれど、そういうことができるような人じゃない。
 モスクワで開かれた韓国と北朝鮮とロシアの3か国の外相会談で、日本を抜きにして5か国協議でやろうという話が出てきている。困っちゃったんです、安倍さんは。それで助けを求めているのが中国の習近平です。中国に日本の首相として7年ぶりに行ったのは、そのためです。でも、これはうまくいくかどうかわかりません。
 なぜなら、いま軍事費を増やしているでしょう。アメリカとの共同演習をやっています。相手はどこですか。「仮想敵国」として考えているのは中国です。一方では握手しながら、他方ではぶったたくための準備をしているんだから。こんなちぐはぐなやり方でうまくいくのか。中国との関係を改善し、緊張を緩和して仲良くするのは結構なことですけれども、しかしそれならばいままで「中国包囲網」形成を言ってきたのはどうするのか。整合的な説明ができるのか。
 あらゆる点で、安倍さんがやっていることはミスマッチばっかりですね。いままで軍事大国化をめざす好戦的政策をやってきましたけれども、日本をめぐる安全保障環境や外交関係は大きく変わっちゃった。去年の今頃は北朝鮮がいつ攻めてくるかわからないという話がまことしやかにされていましたけれども、いまはもうそんなことをいう人は誰もいない。
 非武装地帯を非軍事化して自由に行き来できるようにした。南北の鉄道と道路を結び付ける。南から鉄道で北朝鮮を通って行ける。中国やロシアを通ってヨーロッパまで行ける。釜山からヨーロッパまで。カーフェリーを使えば札幌発ロンドン行きの列車が走るかもしれない。
 だって札幌から博多まで行って、博多から船に乗って釜山まで行き、釜山からずうっとユーラシア大陸、ドーバー海峡のトンネルを通っていけばロンドンまで行けるわけです。私もむかしノルウェーからデンマークまで列車に乗ったまま船に乗りましたからね。こういうフェリーが走れば列車に乗ったまんま、札幌からロンドンに行けるかもしれません。そういうことが将来の夢として語ることができるような新しい時代が始まりつつある。
 そのときになんですか、イージスアショアだとか。ヘリコプター空母を改修してF35Bが離発着できるようにするとか。イージスアショアなんて、完成するのに5年もかかる。何を考えているんだ、といわなければならない。
 日本は軍事力や抑止力、武力による威嚇によって安全を確保する国ではない。憲法前文には、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と書いてある。これは世界に宣言しているわけですよ。どこにも武力で安全を確保するとは書いてないんです。9条では「武力による威嚇」も放棄したんですね。抑止力というのは力によって威嚇し、相手を恐れさせて押さえつける。こういう考え方ですからね。本来抑止力論というのは憲法9条や前文に従って外交政策を立案しなければならない政府にとっては、相いれない考え方です。
 ずうっと間違った対応を取り続けてきた。その日本の外交・安全保障政策を本格的に転換し、武力ではなく対話によって、威圧や抑止ではなくて交渉によって平和と安全を確保できるような新しい時代が始まりつつある。本格的に恒久平和主義が実現する、実現させることができる。
 こういう「活憲」の時代、憲法を政治と生活に活かすことができるような時代が始まった。このような時代においては、いまの憲法を変えるのではなくて、活かすことが必要だということです。

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