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11月16日(金) 北方領土をめぐる日ロ交渉について安倍政権がついた3つの嘘 [国際]

 一昨日の14日、シンガポールで安倍首相とロシアのプーチン大統領による首脳会談が行われました。そこで両首脳は1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速させることで合意しました。
 この56年宣言は平和条約締結後に歯舞群島と色丹島の2島を引き渡すと明記しています。従来、日本政府は国後と択捉の2島も含めた四島の一括返還を求めていましたが、安倍首相はこれを変更し、2島先行返還論に転換したように見えます。
 この方針転換と日露両首脳の合意は北方領土問題を前に進めたのでしょうか。それとも後退させてしまったのでしょうか。

 第1に、安倍首相の提案がこれまでの日本政府の方針を大きく転換したものであることは明らかです。15日に記者会見した菅官房長官は「実際の返還時期、態様、条件に付いて柔軟に対応する方針を堅持してきた」と述べ、国後と択捉が「後回し」になったとしても、従来の方針とは変わっていないと説明していますが、これは嘘です。
 今回の合意で安倍首相は「4島の帰属」については言及せず、北方4島の名前を列記し、その帰属問題を解決して平和条約を結ぶことを約束した93年の「東京宣言」も、4島の帰属の問題を解決して平和条約を締結することを確認した2001年の「イルクーツク声明」も無視されてしまいました。「1956年の共同宣言を基礎として、平和条約交渉を加速させる。本日そのことでプーチン大統領と合意した」ということですから、93年や01年の合意から56年の合意へと後退してしまったことになります。
 元外務次官の竹内行夫氏は、『朝日新聞』11月16日付の談話で「今回の合意は、日本の外交努力や成果を後戻りさせるものだ」と指摘している通りです。安倍首相が行ったのは「新たな提案」ではなく「古い提案」であり、領土問題についての合意を大きく後退させてしまったのです。

 第2に、これは「2島先行返還」論であり、しかもそれは「2島+α」だと説明されています。これも嘘で、「2島先行」に引き続いてさらに残された2島が返還されることはあり得ません。
 実際には「2島限定」の返還であり、場合によっては「2島上限」の返還ということになるでしょう。前掲の『朝日新聞』に「2島先行ではない。『2島ぽっきり』だ。首相もちゃんとわかっている」という「日ロ関係筋」の見方が紹介されている通り、残りの2島が返ってくる可能性は、今回の合意によってほぼ潰えたと言って良いのではないでしょうか。
 また、プーチン大統領は「56年宣言はすべてが明確なわけではない。2島を引き渡すが、どちらの主権になるのかは触れていない」と強調しています。「主権」抜きの「引き渡し」もあり得るということであり、そうなれば「2島+α」ではなく「2島-α」ということになります。

 第3に、安倍首相は歯舞と色丹の2島が日本に引き渡された後にも、日米安保条約に基づいて米軍基地を島に置くことはないと伝えていたそうです。これも嘘になるでしょう。
 外務省は日米安保条約や地位協定について、「米軍はどこにでも基地を置くことを求められるが、日本が同意するかどうかは別だ」(幹部)と解釈しているそうですが(前掲『朝日新聞』)、その解釈に基づいて断ることができるのでしょうか。もし、そうできるのであれば、沖縄の辺野古での米軍新基地建設も断ることができたはずではありませんか。
 沖縄ではできないのに北方領土ではできる、というダブルスタンダードでごまかそうとしているのが安倍政権です。沖縄県民がこぞって反対している辺野古での新基地建設すら断れない日本政府が、米軍基地を島に置くことはないという約束を守れるはずがありません。

 このような問題があるにもかかわらず、すぐに分かるような嘘までついて、安倍首相はなぜ今回のような提案を行ったのでしょうか。それは残された任期中に大きな業績を残したいと焦っているためだと思われます。
 北方領土返還と拉致問題の解決は、改憲とともに、歴史に名を残す格好のテーマです。あと3年の任期内に、これらの問題の一つでも決着させて大きな業績を残したいと焦っているのではないでしょうか。
 領土問題では、来年1月の訪ロと6月のG20サミットでの日ロ首相会談を通じて成果らしきものをあげ、国民に幻想を与えたうえで衆参同日選挙に打って出るということを考えているのかもしれません。

 この安倍首相の焦りと目論見にプーチン大統領が付け込んだのが、今回の合意だったのではないでしょうか。そのことを国民に知られないようにするために大きな嘘をついているということなるでしょう。
 「思い出づくり」ならぬ「業績づくり」のために、憲法や領土、拉致問題などが利用されるようなことを許してはなりません。安倍首相の個人的な野望の犠牲となって苦しむのは国民であり、当事者たちなのですから。

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11月14日(水) 『日刊ゲンダイ』11月10日付巻頭特集「入管法改正紛糾 極右の首相が“移民”旗振りのいかがわしさ」へのコメントと若干の補足 [コメント]

 〔以下のコメントは、『日刊ゲンダイ』11月10日付巻頭特集「入管法改正紛糾 極右の首相が“移民”旗振りのいかがわしさ」内に掲載されたものです。〕

 「政府は来年4月から施行させたいと時限を区切り、今国会で必ず成立させる方針です。なぜ、そんなに急ぐ必要があるのか。まずは時間をかけて、外国人労働者の受け入れ体制を整備するべきです。すでに、技能実習生や留学生として来日し、就労している外国人労働者数は128万人に達していますが、その待遇はひどく、毎年、数千人の技能実習生が失踪している。こういう問題を放置したまま、新たな受け入れ制度を設けて、ダブルスタンダードでやっていくのか。制度設計が生煮えのまま、数の力にモノを言わせて強行採決すれば、将来に禍根を残すだけです」(政治学者の五十嵐仁氏)

 昨日から、改正入管法の審議が始まりました。現在、日本にはすでに実習生などとして働いている外国人が128万人おり、その家族などを含めた在留外国人は2倍の256万人に上ります。
 今後、望むと望まないとにかかわらず、これらの在留外国人は増え続けるでしょう。少子化が進んで日本人社会の縮小が避けられず、人手不足も深刻になるなかで現代の「鎖国」は不可能だからです。
 問題は、これらの人々をどのような形で受け入れ、共生していくかという点にあります。この問題を考えるうえで、さし当り以下のような点が重要ではないでしょうか。

 第1に、すでに受け入れてきた技能実習生の賃金や労働条件の改善です。野党による技能実習生を対象にした合同ヒアリングでは低賃金や長時間労働への不満が続出しました。
 この実態解明や待遇改善が、まず優先的になされる必要があります。すでに受け入れている労働者の待遇が貧弱なまま新たに多くの労働者を受け入れれば、問題や不満が拡大するばかりです。
 野党は審議の前提として、すでに就労している実習生や失踪した実習生の実態調査結果を示すよう求めていますが、それは当然の要求です。今回の改正内容が、これまで受け入れてこなかった、いわゆる単純労働者も対象としていますから、なおさら待遇改善に向けての具体的な方策が求められることになります。

 第2に、外国人労働者との共生に向けての制度設計が必要です。外国からやってくる労働者は人間であり、地域社会に居住し生活する構成員となるからです。
 日本で生活するための医療や年金、日本語教育や住環境の整備なども必要になります。入管法をちょっと直して、少し受け入れ枠を拡大するだけだから「移民」ではないと問題を矮小化することで、このような制度設計を回避しようとしてはなりません。
 拙速であってはならないというのは、このような制度設計をきちんと行わないで受け入れてはならないからです。これまでは受け入れ環境の整備を地方自治体やNPO法人などに丸投げしてきましたが、受け入れを大きく拡大する以上、各省庁の対策を総動員して国が責任を負う体制をきちんと整備しなければなりません。

 第3に、ヘイトスピーチやヘイトアクションなどに示されている排外主義の克服です。一方で外国人労働者の受け入れを拡大しながら、他方で「外国人は出ていけ」と叫ぶデモや集会を放置することは許されません。
 多くの外国人を隣人として受け入れ、共に人間とし尊重し助け合うことのできる多文化共生の開かれた社会になっていくことが必要です。そのために、政治がリーダーシップを取らなければなりません。
 ヘイトスピーチやヘイトアクションを取り締まるための法制度の整備だけでなく、排除ではなく共生や多様性を大切にする社会づくりに努力しなければなりません。民族や人種、宗教や文化の違いを尊重し、外国人を敵視したり排斥したりすることのない社会にならなければ、外国の人びとに選ばれる国になることは不可能なのですから。

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11月12日(月) 安倍異常政権の深層を衝く―3選されても嵐の中の船出となった安倍首相(その3) [論攷]

 〔以下の論攷は、治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟が発行している『治安維持法と現代』2018年秋季号、に掲載されたものです。3回に分けて、アップさせていただきます。〕

3、安倍首相の野望を打ち砕く力はどこに

 自民党総裁選の真実

 安倍首相が総裁選挙で3選されたのは事実ですが、必ずしも安定した支持によって支えられているわけではありません。自民党総裁選挙の中身を子細に分析すれば、「安倍一強」の脆弱性が明らかになります。
 総裁選で石破氏の254票に対して安倍首相は553票を獲得し、圧勝したように見えます。しかし、「党員票」の状況を見れば、全く違った光景に出会います。安倍首相の得票は55%で、石破氏の得票は45%と肉薄していたからです。7割を獲得するという安倍首相陣営の目標からすれば驚愕する結果であり、石破氏が善戦したことは疑いありません。
 しかも、総裁選の有権者である自民党員の中には、かつて犬や猫の名前まであり代理投票などもありました。選挙自体も公職選挙法の規制を受けず、金をばらまいたり飲ませたり食わせたり、何でもありです。今回の選挙の途中でも、石破支持の地方議員や国会議員に圧力がかけられていたことが明らかになりました。
 そのような懐柔や締め付けが横行する下での選挙結果でも、石破氏は半分近い支持を集めました。投票率が62%でしたから、安倍首相の55%という得票は自民党員の34%にすぎません。つまり、安倍首相は自民党員の3分の1にしか支持されていないということになります。これが、総裁選で示された真実だったのです。

 内閣改造と暗雲漂う臨時国会

 10月2日に自民党役員と内閣の改造が行われ、第4次安倍改造内閣が発足しました。安倍異常政権にふさわしい、最低最悪で異常な内閣になっています。「土台」とされている菅官房長官や麻生太郎副総理兼財務相は留任し、その周りを側近や「お友達」の議員が固め、過去最多となった新入閣者は派閥均衡・滞貨一掃の古手がほとんどという顔ぶれです。
 唯一の女性となった片山さつき地方創生担当相は西日本豪雨災害の最中に「赤坂自民亭」で宴会をしていた様子や貧困家庭の子どもを中傷するようなツィートをして問題になりました。原田義明環境相は学歴詐称問題で副文科相を辞任したり、「南京大虐殺」についての政府見解の見直しを求めたりしたことがあります。桜田義孝五輪担当相も「慰安婦はビジネスだ」との発言を批判されて撤回した過去がありました。
 失言や暴言のリスクが高い「ガラクタ」ばかりをかき集めたようなものです。早速、柴山昌彦文科相が教育勅語を評価するような発言をして批判を浴びました。しかも、公明党出身の石井国交相を除く19人の閣僚全員が改憲右翼団体と連携する「神道政治連盟国会議員懇談会」に所属し、「日本会議国会議員懇談会」にも14人が加盟しています。
 改憲・右翼的志向の強さは、自民党役員人事で一層明瞭になっています。憲法改正推進本部長に下村博文氏、総務会長に加藤勝信氏、選対委員長に甘利明氏、筆頭副幹事長に稲田朋美氏など安倍首相の盟友や側近が起用され、露骨な「改憲シフト」が敷かれました。臨時国会で改憲発議をゴリ押しする狙いが明瞭です。
 しかし、改憲に向けての視界は不明瞭で、このような前のめり人事は逆効果になりかねません。安倍首相が改憲発議に本腰を入れようとしているのも成算があってのことではなく、求心力を維持して「死に体(レームダック)」化を避けるために改憲を振りかざさざるを得ないからです。
 秋の臨時国会では日米貿易協議や消費税の10%への再引き上げ問題などの難問が待ち構えています。安倍首相が最重要課題としている改憲問題では、石破氏など自民党内でさえ慎重論があり、公明党の消極姿勢や立憲野党の反対、急ぐべきではないという世論などの「壁」があります。
 公文書改ざんやセクハラ問題、暴言などでとっくの昔に辞任していなければならないのに無理やり続投させた麻生氏、政治とカネの問題を抱えている甘利氏や下村氏、岩屋氏など、野党の追及や世論の批判によっていつ爆発するか知れない「地雷」を組み込んだ新体制で、このような暗雲漂う臨時国会を乗り切れるのでしょうか。

 野党共闘の威力と「亥年現象」

 第4次安倍改造内閣の前途には、もう一つ大きな試練が待っています。それは選挙です。2019年は春に統一地方選挙があり、夏に参院選があります。「選挙の顔」として勝ち抜くことができなければ、安倍首相には未来がありません。
 安倍政権が選挙で勝ち続けてきたのは確かですが、有権者内での得票率(絶対得票率)はそれほど高くありません。参院選の選挙区や衆院選の小選挙区での絶対得票率は25%前後で、比例代表での絶対得票率は16~17%ほどにすぎません。それなのに自民党が勝利してきた秘密は、野党の分断と投票率の低さにあります。
 逆に言えば、現状のままでも、野党が共闘してまとまり投票率が1割ほど高くなって野党に入れば勝つことができます。そのためには、何としても野党共闘を実現しなければなりません。共闘できれば勝利の展望が見えてきます。諦めていた有権者も、投票所に足を運んで野党候補を後押しする可能性が高まります。
 しかも、来年の参院選挙は統一地方選挙と一緒に戦われます。この12年に一度の亥年の参院選では自民党が苦戦するという「亥年現象」が繰り返されてきました。1959年を唯一の例外にして、71年、83年、95年の参院選では自民党が議席を減らしています。
 とりわけ、前回の2007年参院選は第1次安倍政権の下で実施され、自民党の獲得議席は37議席と89年参院選以来の歴史的惨敗となり、60議席を獲得した民主党に初めて参院第1党の座を明け渡しました。ちなみに、この選挙では公明党も大敗し、神奈川県、埼玉県、愛知県の選挙区で現職議員が落ちています。
 市民と野党との共闘によって、この07年参院選を再現させることができれば、安倍政権を打倒することができます。そうすれば、解散・総選挙に向けての展望を切り開くことも可能になるでしょう。

 むすび―国賠同盟・運動への期待

 安倍政権はすでに「賞味期限」が切れています。安倍首相が掲げてきた「3本の矢」「地方創生」「女性活躍」「一億総活躍社会」「人づくり革命」「働き方改革」などの目玉政策もスローガン倒れに終わっています。歴代自民党政権が取り組んで来た「政治改革」「行政改革」「構造改革」「雇用改革」「教育改革」「大学改革」「司法改革」「税と社会保障の一体改革」「農業改革」などの「改革」路線も失敗の連続です。
 それなのに安倍首相は自民党総裁として3選され、さらに3年間続投することになりました。国政選挙で連勝し、内閣支持率も上下しながらそれなりに安定しているからです。その背景と要因は、小選挙区制を導入した政治改革や官邸支配を強化して官僚の人事権を握った行政改革など、制度「改革」の一部が国会と自民党内での「一強」を生み出す点で有利に働いたからです。
 教育とマスメディアに対する支配と統制の強化も、安倍内閣を支える装置となりました。社会や国民意識の変容と右傾化は安倍内閣支持を安定させる背景の一つでした。安倍長期政権の深層には、右傾化する日本社会の存在があったのです。
 安倍首相は「(戦前の)日本を取り戻す」という野望を実現するために、このような社会の変容を促進するとともに政治的に利用してきました。ときには、意識的なフェイク(虚偽)情報を流すことさえためらいませんでした。こうして、安倍政権は社会の底辺で蘇生しつつある草の根の「戦前」によって支えられてきたのです。
 フェイク(虚偽)にはファクト(事実)で対抗しなければなりません。戦前の日本社会の実像を明らかにし、そのおぞましさと恐ろしさをいつまでも伝え続けていかなければ、いつかは忘れられてしまいます。忘却こそ、戦前回帰への始まりなのです。
 治安維持法という戦前最悪の弾圧法の実態を明らかにし、その被害者を救済することによって国の責任を問うことは、忘却への最善の抵抗手段にほかなりません。安倍政権が社会の底辺に蘇りつつある草の根の「戦前」によって支えられている以上、それを草の根で掘り崩す国賠同盟の存在と運動は、いつまでも現代的な意義を失うことはないでしょう。

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11月11日(日) 安倍異常政権の深層を衝く―3選されても嵐の中の船出となった安倍首相(その2) [論攷]

 〔以下の論攷は、治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟が発行している『治安維持法と現代』2018年秋季号、に掲載されたものです。3回に分けて、アップさせていただきます。〕

2、「安倍一強」を生み出した背景と要因

 制度改革の「成功」と「失敗」

 安倍政権の異常性はますます明瞭になり、日本が取り組んで解決すべき課題とのミスマッチは拡大し、民意との乖離も増大しています。それなのに国政選挙で勝利し続け、内閣支持率は上下しながらも急落することを免れています。それは何故でしょうか。
 そこには「安倍一強」を生み出した背景と要因があるからです。制度改革の「成功」と「失敗」、支配装置としての教育とマスコミ、社会や国民意識の変容と右傾化という3つの側面から、これについて検討してみることにしましょう。
 まず、歴史的に取り組まれてきた各種の「改革」によって生じた政治的な機能について指摘する必要があります。とりわけ、「一強」体制を生み出した要因として「政治改革」「行政改革」「構造改革」が重要です。
 第一の政治改革によって小選挙区制が導入され、自民党は選挙区で4割台の得票率で7割台の議席を占め、国会内で「一強」体制を確立しました。自民党内でも派閥が力を弱めて多元的な柔構造が失われ、候補者の擁立や資金の分配などに関する権限を執行部が握り、党の中央集権化がすすみます。
 2つ目の行政改革では、2001年の省庁の再編によって内閣府が登場し、官邸機能や首相権限が強められました。2014年には内閣人事局が発足し、官僚に対する官邸の支配力が格段に強化されています。
 3つ目は構造改革です。法形成のルールを緩めて国会を通さずに「政治主導」を貫くことをめざして経済財政諮問会議や規制改革会議、ワーキンググループなどが設置されました。加計学園問題では、国家戦略特区諮問会議によって岡山理科大学の獣医学部新設が認められています。このような仕組みこそ、政治や行政の私物化、忖度が蔓延する状況を生み出す制度的な背景にほかなりません。
 これ以外にも、安倍政権が取り組んで来た「改革」は「やってる感」を国民に与え、内閣支持率の安定に寄与してきました。しかし、実際には効果を上げていません。「安倍一強」を生み出したという点では「成功」したかもしれませんが、日本が直面している問題を解決して状況を改善するという点では完全に「失敗」に終わっています。
 詳述する余裕はありませんが、非正規労働者を増大させた「雇用改革」、教育と教科書の内容に介入し管理・統制を強めて現場を荒廃させてきた「教育改革」、予算を減らして研究能力を低下させてきた「大学改革」、弁護士の数を増やして処遇を低下させた「司法改革」、社会保障サービスを切り捨てて消費税を引き上げるための口実にすぎなかった「税と社会保障の一体改革」など、惨憺たるものです。これに、前述した「農業改革」を加えれば、死屍累々たる姿が浮かび上がります。まさに「改革」失敗のオンパレードではありませんか。

 支配装置としての教育とマスメディア

 安倍内閣への支持調達においてとりわけ重要な役割を果たしているのは、教育とマスメディアです。安倍首相にとっては「(戦前の)日本を取り戻す」ための社会的な仕組みだと言っても良いでしょう。特に、若者の内閣支持率を高めるうえで大きな役割を担っています。
 戦後民主教育と日教組に対する敵視と介入は、自民党の伝統的な施策の一つでした。それをバージョンアップしたのが安倍首相です。第1次安倍内閣で教育基本法と関連3法を改定して愛国心という言葉を盛り込み、内閣府直属の教育再生会議を舞台に教育への介入を強めようとしました。
 第2次安倍内閣もこの流れを引き継ぎ、教育再生実行会議を発足させて教育への介入と管理を強めてきました。教科書検定の強化と内容への介入、道徳の教科化と愛国心教育の重視、労働強化による先生の疲弊と教師集団の分断、教職員会議の形骸化、労組攻撃による教職員組合の組織率低下など、教育内容と教育現場の荒廃が急速に進んでいます。
 その結果、正しい歴史認識を持たず、権力に従順で空気を読みすぎる過剰な同調性を身に着けた若者が生まれました。若者と高齢者との政治・社会意識の対立は世代間の格差ではなく、戦後民主教育で育った高齢者と安倍教育改革によって取り込まれた若者との違いから生じています。
 自民党による長年の日教組や全教への攻撃と安倍教育改革による介入と管理強化は、森友学園でなされていた教育勅語を暗唱させるような国粋主義的戦前教育の復活をめざしていました。だからこそ、それを目にした安倍首相夫人の昭恵氏が感激し、森友学園の小学校用地取得のために一肌脱ごうとしたのではないでしょうか。
 戦前の軍国主義教育によって多くの若者が洗脳され自ら進んで戦地に赴きました。今また、教育の変質によってある種のマインドコントロールがなされ、希望や展望をもたない若者は変革への意欲を失い、現状は変わらないものと思い込んで諦めてしまっているように見えます。
 戦前において猛威を振るった教育の恐ろしさはよく分かっていたはずです。安倍首相も教育の持つ力を十分に理解していたのでしょう。だからこそ、「(戦前の)日本を取り戻す」方策の手始めとして教育改革に取り組み、今になってその「成果」が徐々に出てきたということではないでしょうか。
 もう一つの安倍内閣への支持調達の手段は、マスメディアに対する懐柔と統制です。その結果、新聞やテレビ報道は大きく変容してしまいました。一部の報道は権力への監視や批判というジャーナリズムの役割を忘れ、安倍首相の御用新聞、御用チャンネルになっています。
 事実がきちんと報道されない、安倍首相が過度に美化されている、政権に不利になるような報道は手控えるというような忖度や配慮が日常的に行われています。大手全国紙のスタンスは「親安倍」と「反安倍」に分かれ、テレビではNHKの政権寄りの姿勢が目立つようになりました。その結果、政権にとって不利にならないような情報環境が拡大してきています。
 しかも、若者はこのような新聞やテレビさえ視聴している人が減っています。情報入手の手段はインターネットやSNSで、フェイスブックやツイッターによる場合が大半です。そして、このような手段を通じて流布されるものには、多くのフェイクニュース(虚偽情報)も含まれています。
 フェイク(虚偽)に打ち勝つ力はファクト(事実)です。情報を見極める「リテラシー(読解力)」が必要であり、そのような力は教育によって培われます。現場での教員の奮闘が求められますが、それを包み込むような父母による運動や安倍「教育改革」を阻止する政策転換を急がなければなりません。

 社会や国民意識の変容と右傾化

 社会や国民意識の変容と右傾化も内閣支持を安定させている背景の一つです。いわば、社会の底辺で蘇生しつつある草の根の「戦前」が、安倍首相を支えているということになります。このことを、最近話題になっている『新潮45』の休刊問題を例に考えてみることにしましょう。
 『新潮45』は8月号に杉田水脈衆院議員の「『LGBT』支援の度が過ぎる」という論文を掲載し、批判が殺到すると10月号で特別企画「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」を組み、さらに大きな批判を招いて休刊に追い込まれました。その背景には出版不況があり、「炎上」も辞さない覚悟で「右寄り」の紙面づくりを行ったと言います。つまり、「右寄り」にすれば売れるという判断があったことになります。
 「LGBTは生産性がない」という差別論文や「偏見と認識不足に満ちた」(佐藤隆信新潮社社長)反論特集であっても、読者を増やすことができると考えたわけです。実際、中高年向けの雑誌は「右寄り」のものが売れているようです。「安倍晋三圧勝の秘密」「中国を叩き潰せ」などという記事を載せている『WiLL』11月号や「安倍総理 新たなるたたかいへ」「朝日新聞は国民の敵だ」などの記事がある『月刊HANADA』は、全国紙に大きな広告を出し書店で平積みされています。
 この両誌に登場しているケント・ギルバート弁護士は『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』という本を講談社という大手出版社から出して47万部も売れました。昨年の新書・ノンフィクション部門で最多の発行部数となり、2月には続編も出ています。中韓の人について「『禽獣以下』の社会道徳」などと差別的な記述のある本が売れているということは、それを歓迎する読者がいるということです。
 これらは一例にすぎませんが、ここに日本社会の醜い一面が示されています。安倍首相を持ち上げ、気に入らない対象を侮蔑し卑下することによって留飲を下げようとする人々が確実に存在するという事実です。これらの人々が、強固な支持者となって安倍政権を支えていることは明らかです。
 しかも、これらの右翼的な意識を持つ人々と安倍首相は同じ側に立ち、ある面では繋がっています。「安倍さんがやっぱりね、『杉田さんは素晴らしい!』って言うので、萩生田(光一・自民党副幹事長)さんが一生懸命になってお誘いして、もうちゃんと話をして、(杉田氏は)『自民党、このしっかりした政党から出たい』と」と、櫻井よしこ氏が語っているように、杉田氏を自民党の候補者として衆院中国ブロック名簿の上位に押し込んだ経緯に安倍首相が深くかかわっていました。だから、安倍首相は杉田氏を批判できないのです。
 反論特集に登場し杉田論文を擁護して大きな批判を浴びた自称文芸評論家の小川榮太郎氏も安倍首相と深いかかわりがあります。小川氏は安倍首相のブレーンである長谷川三千子埼玉大学名誉教授の弟子にあたり、2012年に『約束の日 安倍晋三試論』(幻冬舎)という本でデビューした人です。
 この本は最初から安倍氏を再び総理大臣にしようという運動のなかで出版されたもので、2012年の自民党総裁選の直前、「安倍晋三総理大臣を求める民間人有志の会」の事務局的な役割をしていた小川氏が評論家の三宅久之氏の指導で執筆し、安倍応援団の見城徹社長の幻冬舎から出されました。それがベストセラーになって売り切れになったりしたために話題になりましたが、それは安倍氏の資金管理団体「晋和会」が700万円以上も出して4000部も購入したからです。


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11月10日(土) 安倍異常政権の深層を衝く―3選されても嵐の中の船出となった安倍首相(その1) [論攷]

 〔以下の論攷は、治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟が発行している『治安維持法と現代』2018年秋季号、に掲載されたものです。3回に分けて、アップさせていただきます。〕

 はじめに

 これほど異常な政権が、かつてあったでしょうか。右派的な改憲志向の政権はありました。中曽根康弘政権などはその一例です。しかし、改憲をスケジュールに上らせことはありませんでした。
 総理大臣の犯罪が断罪されたことはありました。ロッキード事件で逮捕された田中角栄元首相がそうでした。しかし、首相の夫人までが疑惑をもたれ、公文書を書き換えて証拠隠滅を図ろうとしたことはありませんでした。
 中曽根元首相は「きれいなタカ」だったと言えるかもしれません。田中元首相は「汚いハト」と呼ばれることがありました。「きれいなハト」は三木武夫元首相でしょうか。
 これらの先輩に比べても、安倍晋三首相は異例であり異常です。自民党政権でも、これまでに存在することのなかった「汚いタカ」だからです。スキャンダルまみれで改憲志向の首相は稀有だと言うべきでしょう。
 この点で、安倍首相は戦後最悪で最低の首相です。その安倍首相は自民党の規約を変えてまで3選され、第4次安倍改造内閣を発足させました。内閣改造によって支持率は上がるどころか下がり、嵐の中での船出となったようです。
 同時に、内閣支持率は一定の水準を維持しており、ここに安倍政権の強みもあります。その秘密がどこにあるのかを、考えてみたいと思います。3年の任期をまっとうすれば憲政史上最長になる可能性のある長期政権が、最低最悪の安倍首相によって、どうして実現されようとしているのでしょうか。
 その背景と要因は何か。安倍異常政権の深層を探り、それを阻止するにはどうすれば良いのか。これらを検討し明らかにするのが、本稿の課題です。

1、「賞味期限」が切れた安倍政権

 自分でやらなければならなくなった「後始末」

 9月20日に自民党の総裁選挙が実施され、安倍晋三総裁が3選されました。でも、安倍首相は3選されない方が良かったのではないでしょうか。2期6年で首相の座を去っていた方が、「有終の美」を飾れたはずです。
 しかし、憲政史上最長の政権を実現したいという野望には打ち勝てなかったと見えます。わざわざ3選禁止の自民党規約を変え、総裁選挙で当選し9年の長期政権を視野に入れることになりました。とはいえ、その任期を全うできるという保障はどこにもありません。すでに、「賞味期限」が切れているのですから。
 安倍首相が2期6年で政権の座を去っていれば、過去6年にわたって続いてきた失政の後始末は、次の首相に任せることができました。自らがかかわり疑惑をもたれてきたスキャンダルからも逃げおおせて、知らん顔ができたかもしれません。
 しかし、まだ3年間も首相の座にとどまることになりました。そのため、「安倍首相夫妻と不愉快な仲間たち」によって引き起こされた森友・加計学園疑惑から逃げられなくなったのです。国民の側からすれば、真相解明と責任追及の期間もあと3年保障されたことになります。
 安倍首相にとって支持率を安定させる手段は経済と外交でした。しかし、鳴り物入りで進められてきたアベノミクスは破たんが明らかになっています。日銀の黒田総裁が進めてきた異次元金融緩和は失敗し、2%のインフレ目標の達成時期はあいまいにされました。景気は改善されず、収入は増えていません。
 金融緩和政策は終了するときこそ難しいと言われています。3選されたために、安倍首相自身がその「出口」戦略を担わざるを得なくなりました。総裁選で「トリクルダウンなどと言ったことはない」と弁解していましたが、間接的に失敗を認めたようなものではありませんか。「尻拭い」を自らの手でやらざるを得ないということに、今になって気が付いたのかもしれません。
 「3本の矢」「地方創生」「女性活躍」「一億総活躍社会」「人づくり革命」「働き方改革」など鳴り物入りで始めた「目玉政策」の数々もスローガンだけが先行し、一向に成果は上がっていません。労働者の働き方を改善して過労死や過労自殺を解決するはずの「働き〝過多〟改革」は、働かせ放題で残業代ゼロの「高度プロフェッショナル制度」の導入によって全く逆のものになってしまいました。

 孤立し漂流を始めた外交

 経済がかげりをみせはじめただけでなく、もう一つの外交も漂流を始めています。朝鮮半島の非核化と平和構築に向けて米朝首脳会談が開催されましたが、「圧力一辺倒」の安倍首相は事態の急進展に対応できず、完全に孤立してしまいました。東アジアでの緊張緩和が進むなかで、安倍政権が進めてきた軍事大国化を目指した好戦的政策はほとんど無意味になりつつあります。
 拉致問題や北方領土問題は全く進展せず、個人的な関係を強めてきたプーチン大統領からは、突然、平和条約締結を持ち出されてオロオロするばかりでした。北朝鮮の金正恩委員長からは相手にされず、韓国の文在寅大統領とは相変わらず慰安婦問題などでギクシャクしたままです。成果ゼロではありませんか。「外交の安倍」だなんて、聞いてあきれます。
 「カヤの外で飛び回る一匹の蚊」のようになった安倍首相は、中国の習近平主席に助けを求めてすり寄っています。他方で、極右の反中勢力の反発を抑えるために南シナ海で潜水艦訓練を行ったり、米軍の戦略爆撃機と空自の共同訓練を行ったりというチグハグぶりです。これまで精力を費やしてきた中国敵視政策と「中国包囲網」づくりによって大きなジレンマに追い込まれてしまいました。
 日米関係にも暗雲が漂い始めています。9月に行われた首脳会談で、これまで避けてきた貿易に関する2国間協議を呑まされてしまったからです。「日米物品貿易協定(TAG)」と看板を変えて誤魔化し、「全く異なる」と安倍首相は弁解していますが、基本的な内容は「自由貿易協定(FTA)」と変わりありません。合意文書の翻訳で日本政府が改ざんした疑惑まで生じています。
 合意される関税はTPPの水準を越えないとされていますが、要するに自動車輸出を守るために農産物自由化を受け入れるということにほかなりません。すでに、種子法の廃止で農業生産にとって大切な種子が多国籍企業の餌食とされ、「農業改革」によって中小零細や兼業農家の切り捨てが始まっています。そのうえ、輸入農産物の関税が下げられれば日本の農業と農村は壊滅するでしょう。
 
 沖縄県知事選挙の衝撃

 9月30日に、安倍3選後初の大型選挙となった沖縄県知事選挙が実施されました。結果は玉城デニー候補が39万6632票、佐喜真淳候補が31万6458票で、その差は8万174票という圧倒的なものでした。
 前回の翁長候補の得票は36万票でしたから、それより3万票も多くなっています。この玉城候補の得票は過去最高でした。つまり、「辺野古に新基地はいらない」という沖縄県民の民意がこれまでで最も多くの票によって、明確に示されたことになります。
 この選挙では、菅義偉官房長官と小泉進次郎衆院議員が3回も応援に入り、二階俊博幹事長や石破茂元幹事長、小池百合子東京都知事までが沖縄入りしました。前回は自主投票だった公明党が支持に回り創価学会の幹部も応援に入るなど異例の対応を行い、前回下地幹郎候補を立てた維新も佐喜真候補を支持しました。
 安倍政権側は総力戦を展開し、官房機密費などの金をバラマき、基礎票や陣立てとしては圧倒的に有利な態勢で取り組んだのにコテンパンに敗北したのです。それだけ県民の意志は強固で明白だったということになります。政権丸抱えの総力戦がかえって県民の反発を招いたのではないでしょうか。この民意を尊重することこそ民主主義のあるべき姿です。辺野古での新基地建設は直ちにストップするべきです。
 今回の選挙では、辺野古での新基地建設や普天間飛行場の返還問題とともに、民主的な政治制度としての選挙のあり方や与党が編み出した「勝利の方程式」も大きな争点になりました。辺野古での新基地建設という最重要争点についての態度を明らかにしない「争点隠し選挙」が有権者の厳しい審判を受けたことになります。
 安倍政権はカネと利益で誘導し、徹底した組織戦で締め上げながら事前投票で囲い込めば勝てると考えたのでしょう。しかし、このような力づくで屈服させようという強権的な選挙戦術はかえって県民の反発を買い、逆効果だったのではないでしょうか。
 こんなやり方は、もう通用しません。自民党は「根腐れ」してしまったと言うべきです。長期政権の「緩み」や「驕り」が露呈し、自民党も安倍首相も「賞味期限」が切れて腐り始めています。国民が「食中毒」で倒れてしまう前に安倍政権を倒す必要性はますます強まっているのです。

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11月8日(木) トランプ大統領の暴走へのブレーキを生み出した米中間選挙 [国際]

 注目の米中間選挙が終わりました。残念ながら、共和党の地滑り的大敗はありませんでした。
 しかし、トランプ大統領が豪語するような「とてつもない勝利」とはほど遠いものです。「とてつもない敗北」が回避されただけなのですから。

 中間選挙の結果は、上院では共和党の勝利、下院では民主党の勝利となり、痛み分けの形になっています。一勝一敗ですから、「引き分け」のように見えます。
 しかし、そうではありません。同時に実施された州知事選挙でも、民主党は改選前の16州から23州へと増やし巻き返しています。
 上院選挙は定数100で改選は35にすぎず、改選されなかった選挙区では、当然ながら上院議員の選挙は実施されていません。しかも、改選されるべき選挙区の現有議席は共和党9、民主党26で、もともと共和党に有利な形での改選でした。

 その上院で、予想通り共和党は勝利したにすぎません。全選挙区で改選された下院と州知事選挙で巻き返されたわけですから、共和党は1勝2敗です。
 しかも、大統領選挙で勝利した州でも、今回は知事選で敗北しています。これらの州では次の大統領選挙で共和党候補が敗北する可能性があるということになります。
 再選を狙うトランプ大統領にとって、実は上院での勝利より州知事選や下院での敗北の方が気になる結果だったのではないでしょうか。前回の大統領選挙で勝てたところでも、黄色の信号が灯ったことになるのですから。

 このような民主党の勝利を導いた要因は、青年、女性、マイノリティの投票率が上がったことにあります。これらの人々はトランプ大統領の発言や政治手法への危惧や反発から投票所に足を運んだものと見られます。
 初めて投票した有権者の投票先は民主党が61%で共和党が36%、30代以下の若者では民主党に68%、共和党に31%が投票したそうで、タフツ大学の調査でも、若者の投票率は21%から31%へと10ポイントも上昇したそうです。CNNの出口調査では、男性は民主48%、共和51%なのに対し、女性は民主59%、共和39%。白人は民主45%、共和54%、非白人は民主76%、共和22%となっています。
 その結果、女性やイスラム教徒、先住民出身者など、多様な人々の代表が議会に送り込まれました。このような議員を支援する民主党の新しい波こそが、今回のような選挙結果をもたらした最大の要因だったと言えるでしょう。

 このような形で若者や女性、マイノリティの人々を投票所に引き寄せ、その結果、投票率をかつてなく上昇させ、民主党を勝たせたのは、トランプ大統領の「お陰」だったと言えます。大統領がトランプ氏でなければ、この間の暴走が有権者の分断を強めなければこれほど投票率は上がらず、今回のような結果にはならなかったでしょうから。
 その結果、上院は共和党、下院は民主党という形での「ネジレ」が生じました。このような「ネジレ」は決められない政治として否定的に語られます。
 しかし、両院の多数派が同じでは院が二つ存在する意味はなく、その多数派が異なって初めて両院制の意味が出てきます。しかも、これまではアクセルが二つもあってトランプ大統領の暴走を止められませんでしたが、これからは民主党が多数派の下院というブレーキが装備されることになります。

 トランプ大統領はこれまでと同じような暴走を続けられなくなるでしょう、国境の壁の建設、オバマケアの撤廃、富裕層や中間層向けの更なる減税は難しくなりました。
 ロシア疑惑や脱税疑惑などについてのさらなる調査や捜査が行われる可能性が強まります。早速、司法長官が解任されましたが、大統領弾劾を避けるために先手を打ったものと見られます。
 ツイッターでの強気なツブヤキとは裏腹に、選挙結果へのいらだちと今後の政権運営への不安は大きいのではないでしょうか。民主党との連携を呼びかけたのはその表れですが、同時に、政治の停滞が生じた場合の責任を民主党におっかぶせるための布石かもしれません。

 議会運営も困難になりますから、大統領権限で実行可能な分野でのトランプ流はかえって強まると見られています。その最たるものは外交で、日本などの貿易相手国への圧力が強まり、貿易交渉には厳しい姿勢で臨んでくるにちがいありません。
 とりわけ、中国との「貿易戦争」はさらに激しくなると思われます。一方で中国への接近を強め、他方でアメリカとの2国間交渉に臨まなければならない安倍首相にとって、極めて難しい対応が迫られることになります。
 米中間選挙の結果にいらだちと不安を高めているのは、トランプ米大統領だけではないかもしれません。安倍首相にとっても、前途に黒い雲がもう一つ広がってきたということでしょうか。

 アメリカ国民は今回の中間選挙を活用して「ネジレ状態」を生み出し、トランプ大統領の暴走をストップするためのブレーキを手に入れました。次は、私たちの番です。
 来年の参院選が衆参両院の「ネジレ状態」を生み出して安倍暴走政治へのブレーキを手に入れるチャンスです。そのためにも、市民と野党との共闘によって1対1の対決構図を生み出し、若者や女性、マイノリティの投票率を上げれば勝てるという「勝利の方程式」を充分に学ぶ必要があるのではないでしょうか。
 

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11月6日(火) 『日刊ゲンダイ』11月3日付に掲載されたコメント [コメント]

 〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』11月3日付巻頭特集「また居直り、スットボケ連発…全員“札付き”内閣の国民愚弄」に掲載されたものです。〕

 「片山大臣は規制改革担当相を兼務しており、安倍首相に直結する加計学園問題にも対応しなければいけません。週刊文春に新たに『消えた献金200万円』疑惑を報じられると、すぐさま政治資金収支報告書を訂正するなど防戦一方で、疑惑はますます深まるばかり。疑惑弁明の対応に追われ、とても本職の地方創生には手が回らないはずです」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

 前出の五十嵐仁氏が言う。
 「これだけ追及材料に事欠かない閣僚が多いのですから、今後の臨時国会は紛糾必至です。安倍首相も任命責任を問われ続け、閣僚のスキャンダルが続出し、辞任ドミノで内閣崩壊に至った第1次政権に酷似した状況に近づいていく。こんな政権が自衛隊明記の9条改憲の“アベ案”提出で憲法を弄び、庶民に消費増税を押しつけるなんて、もってのほか。安倍首相はレームダック化を避けるため、無理やり背伸びして国内外の“大荷物”を積み込み、求心力を高めたいのでしょうが、新たに元徴用工訴訟の賠償判決で日韓関係に亀裂が生じかねない外交難題も加わり、この政権はオーバーヒート寸前。もはや限界ですよ」

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11月3日(土) 憲法を尊重し擁護する義務はどのようにして果たされるべきか [憲法]

 72年前の今日、日本国憲法は公布されました。それが施行されたのは、半年後の1947年5月3日のことになります。

 安倍首相は今年の通常国会開会に当たっての施政方針演説で、「50年、100年先の未来を見据えた国創りを行う。国の形、理想の姿を語るのは憲法です」と述べて、改憲を呼びかけました。70年以上の生命力を発揮した現行憲法は、まさに自由と民主主義が保障された平和国家の建設という「50年、100年先の未来を見据えた国創りを行う」という「国の形、理想の姿」を示していたのではないでしょうか。
 この事実は安倍首相の誤った憲法観に照らしても、現行憲法は輝きを失わないということを意味しています。すでに「50年」を越えて、日本の政治と社会に定着してきたのですから。
 ちなみに、憲法とは権力者を縛るためのものです。安倍首相のようなトンデモナイ権力者が出て来て強権政治を強行しようとしたとき、国民と社会を守るための武器となるのが憲法なのです。

 それを変えるようにと、国民にたきつけているのが安倍首相です。不都合があれば変えなければならないのは当然です。
 しかし、どのような不都合があるというのでしょうか。共産党の志位委員長の代表質問に対して、安倍首相は「憲法改正について国民的議論を深めるためには、具体的条文案を示す必要がある」と答えています。
 不都合があるから提起したのではなく、改憲議論を深めるために提起したというのですから、自らの提案が改憲そのものを自己目的化したものであったということを、はっきりと告白した答弁にほかなりません。9条に自衛隊の存在を書き込んでも何も変わらないと誤魔化したり、自分のは「条文イメージ」であって自民党案とは異なると言ってみたり、各党に改憲案の提案を求めたりしていることも、端的に「ここが不都合だ」というわけではないことの証拠です。

 不都合などがないから、国民は改憲を求めていません。毎日、朝日、読売、共同、NHK各社の世論調査だけでなく、政府寄りとされている産経の調査でも臨時国会に自民党改憲案を提出することに賛成が42.9%、反対が48.3%と、反対の方が多くなっています。
 安倍首相は「憲法改正や改憲案の本国会提出に賛成する人が一定程度認められる現状で、議論することまでを否定するべきではなく」述べています。「賛成する人が一定程度認められる」ことは事実ですが、それ以上に反対する人が多いのですから多数意見に従うのが民主主義というものでしょう。
 確かに、改憲について議論することまでは「禁止」されているわけではありませんが、それを総理大臣が、自衛隊という中立であるべき実力組織や国会という立法府を前に呼びかけることが、憲法の趣旨からして許されるのかということが問われているのです。憲法99条に「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」と書かれていることは、いくら安倍首相でも知らないはずがありません。

 言うまでもなく、安倍首相は国会議員であるだけでなく国務大臣・公務員であり、そのトップにして国民を代表する立場にあります。二重三重に憲法を尊重し、擁護しなければならない縛りがかけられているのです。
 最近はやりの言い方で言えば、二重三重に重なっている「檻」に入れられている「ライオン」が安倍首相なのです。そのような立場にある者は改憲議論を呼びかけることについても抑制的であるべきだというのが、自民党を含めたこれまでの首相の共通理解でした。
 憲法は最高法規ですからその扱いは慎重でなければならず、三権分立の趣旨からして行政府の長が立法府での議論のあり方に関与・介入するべきではないということも、自民党を含めた国会議員の共通理解であり常識でした。しかし、そのよう共通理解を持たず、常識も通用しないのが安倍首相という人なのです。

 臨時国会は難題山積で期間も短く改憲など提起する余裕があるのか、しかも、与党の公明党まで腰が引けているから発議は相当困難なのではではないか、という見方は常識的なものです。しかし、このような常識も安倍首相には通用しません。
 国会での答弁に示されているように、安倍首相は今もなお改憲の野望と執念を持ち続け、スキあらば改憲発議に持ち込みたい、少なくとも憲法審査会での議論の俎上に乗せたいと考えているはずです。
 安倍首相は説明だけでもさせて欲しいとトーンダウンしたと言われていますが、維新の会などの「援軍」を利用し、国民投票法で野党を分断して国民民主党を引き込み、何とか足掛かりを見出したいと考えているにちがいありません。

 首相の狙いは、臨時国会でまず改憲案を憲法審査会に提示し、通常国会への継続も視野に入れて時間をかけたという実績を作り、チャンスがあれば発議に持ち込むということにあります。野党の側としては、国会での追及によって安倍政権を防戦一方に追い込んで改憲論議の余裕を与えないという「水際阻止作戦」に取り組むべきであり、それこそが99条に規定された憲法尊重擁護義務を果たす最善の道にほかなりません。

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11月2日(金) 『日刊ゲンダイ』10月31日付に掲載されたコメント [コメント]

 〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』10月31日付巻頭特集「逆回転の官邸主導 安倍政権は臨時国会を乗りきれるのか」に掲載されたものです。〕

 「国会での議論をできるだけ避け、官邸が通したい法案を優先して成立させるという安倍首相の意向をくんだものでしょうが、立法府の役割を何だと思っているのか。猛反発を招くのは当たり前です。それを承知で強気の姿勢に出てきたのは、焦りの裏返しでしょう。会期の短い臨時国会にあれこれ詰め込んで、強行突破でやろうとした。しかし、いきなり腰砕けで、冒頭から国会運営に暗雲が漂っています」(政治学者の五十嵐仁氏)

 「臨時国会は会期も短い。党内にも異論がある改憲案や、外国人労働者受け入れのための入管法改定案をゴリ押しするだけの力が今の安倍官邸にあるのでしょうか。総裁選で圧勝できず、その後の地方選挙でも負けが込んでいることで、求心力の低下は著しい。そんな中で、求心力を高めるために強行突破をしようとすれば、与党内にも反発が広がります。安倍改憲には世論の支持もない。推進力なき船が風雲の中を独り善がりに進もうとしても、難破する可能性が高いと思います」(五十嵐仁氏=前出)


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11月1日(木) 植民地支配への反省と被害者救済こそが問題の本質ではないのか [国際]

 元徴用工の訴えに対する損害賠償を認める韓国最高裁の判決が大きな波紋を呼んでいます。1965年に結ばれた日韓条約(日韓請求権協定)によって問題は最終かつ完全に解決されたと理解されてきたからです。
 日本政府は韓国政府に対して、この立場から対応し善処することを求めています。日韓関係を悪化させたくない韓国政府も最高裁の判決を尊重しつつ外交問題ではなく国内問題として解決する姿勢を示しています。

 しかし、日本政府としても日韓条約は国家間の請求権問題を決着させただけで個人の財産・請求権そのものを消滅させるものではないと受け取れる余地のある認識を示したこともありました。1991年12月の参議院予算委員会における柳井俊二外務省条約局長の答弁がそれです。
 ここで柳井局長は、「いわゆる日韓請求権協定におきまして両国間の請求権の問題は最終かつ完全に解決したわけでございます」としながら、「その意味するところでございますが、日韓両国間において存在しておりましたそれぞれの国民の請求権を含めて解決したということでございますけれども、これは日韓両国が国家として持っております外交保護権を相互に放棄したということでございます。したがいまして、いわゆる個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではございません。日韓両国間で政府としてこれを外交保護権の行使として取り上げることはできない、こういう意味でございます」と答えています。
 この答弁をどう解釈するのか。誰でも持っている一般的な「個人の請求権」は消滅していないというにすぎないのか、日韓条約で「最終かつ完全に解決した」とされている請求権も個人のレベルでは消滅していないと言っているのかが問題になります。日韓両政府の立場は前者で、韓国最高裁の立場は後者に近いということでしょう。

 しかし、問題の本質はそこにあるのでしょうか。かつて韓国が日本の植民地であり、韓国の人々が日本の支配下で苦難の生活を強いられ、アジア・太平洋戦争中に日本製鉄(現新日鐵住金)で強制連行・奴隷労働をさせられたことは事実ではありませんか。
 このような植民地支配と強制連行・奴隷労働への反省や補償が不十分なまま、日韓条約が締結されたこと自体に大きな問題があったのです。従軍慰安婦の問題を含めて、侵略戦争と植民地支配の過去に対する戦後処理が不十分であったため、今もなおこのような問題が繰り返され、日韓両国にとっての「棘」となっている点に最大の問題があるのではないでしょうか。
 歴代の自民党政権が戦争責任に誠実に対応してこなかったツケが、このような形で回ってきたというべきです。日韓条約で解決済みだと突っぱねて解決を韓国政府に委ねるような強硬な対応は、今もなお日本が過去を反省していないのではないかという疑念と憤りを強め、さらなる訴訟を誘発して混乱を拡大するだけでしょう。

 韓国政府がどう対応するかを見守るだけでなく、日本政府としても被害者の救済に向けて協力する姿勢を示すべきではないでしょうか。原因を生み出したのは日本の企業なのですから。
 いずれにしても、安倍政権は新たな難問を抱え込むことになりました。文在寅大統領の年内訪日が難しくなって日韓両国の接近にブレーキがかかるだけでなく、同様の問題を抱えている中国にも波及する可能性があります。
 非核・平和構築に向けた朝鮮半島の緊張緩和に日本が関与しにくくなり、日朝首脳会談の開催や拉致問題の解決に向けて韓国の仲介も期待できなくなるでしょう。臨時国会が始まったばかりなのに、安倍政権はかじ取りの難しい新たな外交的困難に直面することになりました。

 なお、今月も以下のような講演が予定されています。お近くの方や関係者の方に沢山おいでいただければ幸いです。

11月4日(日)10時30分 全日通霞が関ビル:憲法共同センター
11月5日(月)18時30分 札幌エルプラザ:北海道憲法共同センター
11月10日(土)15時 大和市桜丘学習センター:大和市革新懇
11月17日(土)14時 守山生涯学習センター:名古屋市守山革新懇
11月18日(日)14時 豊田産業文化センター:豊田革新懇
11月25日(日)13時30分 大江山農村環境改善センター:新潟市大江山革新懇

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