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8月5日(日) 今日の政党・政治運動―ポピュリズムとの関連をめぐって(その4) [論攷]

 〔以下の論攷は、2017年11月11日に開催された労働者教育協会の基礎理論研究会での報告に加筆・修正したもので、同協会の会報『季刊 労働者教育』No.161 、2018年7月号、に掲載されました。5回に分けて、アップさせていただきます。〕

 4、日本における「改革」の成功と失敗―国内的背景

 しかし、日本においても新自由義的な「改革」がとりくまれ、第2段階の最終局面に差しかかっているという点では、国際的な背景と共通するものがあります。これまでとりくまれてきた改革は、それなりの制度的実態を生み出すという点で一定の「成果」を収めましたが、同時に、その結果、さまざまな問題を生み出した、あるいは意図せざる困難を生み出すというかたちで失敗しています。諸改革の実行は、体制への支持と安定を図るという点では必ずしも成功していません。
 この第2段階における「改革」は、具体的には臨調・行革路線、新自由主義的な規制緩和政策の採用、政治改革、行政改革、構造改革という諸改革としてとりくまれてきました。まず政治改革ですが、これは小選挙区制の導入というかたちで日本の政党状況に大きな影響を及ぼしています。この選挙制度のカラクリによって、自民党は選挙区で4割台の得票率で7割台の議席を占めることができ、「一強体制」を生み出す制度的要因になっています。
 この制度によって自民党支配体制の安定化を図るという目的は、ある程度成功しました。しかし同時に、自民党内部では派閥が力を弱め、多元的な柔構造が失われるという問題も生まれています。以前のように派閥が議員候補者をリクルートしたり、教育・訓練したりするという機能も弱まりました。いまでは派閥によるリクルートだけでなく、選挙区で候補者を募集し、応募した人が議員候補になるというかたちも増えています。資質に大きな問題を抱えているにも関わらず候補者になり、当選後に女性スキャンダルや暴力行為が表面化するという問題もあります。議員の劣化を生んでいると言って良いでしょう。
 安倍「一強体制」と言われるように、現在も派閥は存在していますが、安倍首相を選出している細田派以外の派閥の発言力は非常に弱まっています。小選挙区の候補者擁立に関する権限や政治資金の配布などに関する権限を自民党の執行部が握っている。これによって、党の中央集権化もすすみました。その結果、自民党が持っていた多極的な柔構造が蝕まれ、消滅しつつあります。
 それまで自民党内ではさまざまな傾向の派閥が総理候補者を擁して「疑似政権交代」を演出するということがなされてきました。自民党内では、右から左へ、ダークからクリーンへ、あるいはクリーンからダークへなどと「振り子」が触れる。これによって国民の不満を抑えて長期政権を維持するという「振り子の論理」が働いていました。しかし、次第に自民党内で振り子が振れなくなっています。
 しかし、現におこなわれている政治や行政への不満や批判がなくなったわけではありません。時にはそれが高まり、これがある種のモメンタムを生み出して振り子を動かすわけですが、それは自民党内にとどまらず外に飛び出してしまう。振り子の外部化のような現象が生じます。これが2009年に民主党・国民新党・社民党の連立政権への政権交代が生じた要因だったと思います。
 このように、政治改革は小選挙区制を導入することによって大政党有利な選挙を実現し、自民党の「一強体制」を生み出すという点では成功しましたが、党の多元的な柔構造を失わせて政権交代のリスクを高めるという失敗ももたらしました。
 2つ目の行政改革という点では、2001年の省庁の再編によって内閣府という巨大官庁が登場します。あるいは首相補佐官の導入などによる官邸機能の強化、首相権限の強化などのかたちで行政制度の変更がおこなわれました。もっとも大きな意味を持ったものとして注目されているのが、2014年に発足した内閣人事局です。このトップに官房副長官が座ることによって官僚に対する官邸の支配力が格段に強化されたと言われています。
 このような行政改革によって、「独裁」とも言われるほど首相官邸の支配力が強まりました。その中核に安倍首相というとりわけ権力主義的志向の強い総理大臣が座ってしまったために、この制度的条件を最大限利用するかたちで安倍「一強体制」が確立しました。これが行政の私物化を生み出す必要十分条件だったと思われます。
 3つ目は構造改革です。これはある種の規制緩和で、法形成のルールを緩め国会を通さずに議員の審議・決定を経ることなく「政治主導」を貫くことをめざすものです。国会での決定をバイパスするために国会の外に戦略的政策形成機関が設置され、大いに利用されてきました。
 典型的なのは経済財政諮問会議です。そのもとに規制改革会議やさまざまなワーキンググループが設置され、そこでの決定が国会でほとんど変更されることなく通過していくことになります。いま問題になっている加計学園疑惑では、岡山理科大学の獣医学部新設が認められました。
 これは国家戦略特区諮問会議での決定によるもので、国会をバイパスした特別措置になります。それ以前にも構造改革特区がありましたが、それを引き継ぐかたちで国家戦略特区がつくられ、同じような手法が取られています。このような「政治主導」の仕組みこそ、政治や行政の私物化、忖度が蔓延する状況を生み出す制度的な背景にほかなりません。
 政治改革・行政改革・構造改革ということで、当初の目標は制度的に実施され、具体化されてきました。これらの点では確かに「成功」したわけですが、そのことによって大きな弊害や意図せざる失敗を生み出すことになりました。官邸・首相支配の強化、派閥政治から縁故政治への政治の内容の変化、自民党議員と官僚の質的な劣化、自民党の現状対応能力の衰退などが生じ、国民の不満や要求を受け止め、柔軟に取り込んで対応するような体制維持能力は次第に枯渇してきています。
 小選挙区制は大政党に有利であり、4割台の得票で7割台の議席を獲得できるというカラクリがはめ込まれていました。それは野党が分立・分断されている限りにおいて効果が生ずるわけです。そこから抜け出そうとすれば、野党は共闘し、相互に連携せざるを得ません。このことは誰が見ても明らかです。
 その点で、小選挙区制は野党共闘を促進する装置にもなり得るということです。このような側面への対応は、長い間放置されてきました。しかし、2016年の参議院選挙での1人区、あるいは首長選挙での一定の経験を経て、次第に共闘への動きが強まってきました。バラバラでは勝てない、野党間の連携が不可欠であるということが理解されるようになってきたということです。共産党との共闘を見直そうとしていた前原さんでも、安倍一強体制打倒のためには1対1の構造をつくることが必要だというところまでは認めていました。
 このような共闘は、これまでの試行の段階から本格的実施へと移ってきています。参議院選挙での1人区、首長などの地方選挙、そして今回の政権を争う衆議院選挙でも一定の実績が生まれ、その効果が試されています。連携が不可欠だという認識が深まり野党共闘が促進され、効果をあげている。これらの経験を生かして、今後は本格的な実施へとすすんでいく段階になるのではないかと思います。

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