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8月2日(木) 今日の政党・政治運動―ポピュリズムとの関連をめぐって(その1) [論攷]

〔以下の論攷は、2017年11月11日に開催された労働者教育協会の基礎理論研究会での報告に加筆・修正したもので、同協会の会報『季刊 労働者教育』No.161 、2018年7月号、に掲載されました。5回に分けて、アップさせていただきます。〕

 はじめに

 総選挙が終わりました。それとの関連を含め、今日の政党・政治運動をどう見るかということについてお話しさせていただきたいと思います。
 選挙は骨が折れるものだと知ってはおりましたが、まさか本当に骨が折れるとは思いもよりませんでした。9月29日(公示の翌日)に木の根っこに躓いて転び、左腕を骨折してしまいました。私は木の根っこに躓いたわけですが、民進党の前原さんは小池百合子という「根っこ」に躓いて、民進党は複雑骨折しました。私の骨折は1ヵ月以上経ちましたのでほぼ治ってきました。ご心配をおかけしましたが、若干痛みが残っている程度です。しかし、民進党の複雑骨折は、どうもくっつかないようです。
 総選挙の内容・経過については、みなさん十分ご存知だと思います。総選挙が終わった後の新しい局面をどう捉えるのかが、今日の報告の中心的なテーマになります。市民と立憲野党の共闘の新たな段階が生まれたというのが、その結論です。
 この共闘は、「1歩後退2歩前進」になったと思います。市民と立憲野党の共闘の推進力になってきた共産党が、選挙前の21議席から12議席に後退した。がっかりされている方も多いようですが、共産党の場合は「1歩後退2歩前進」ではなく、「5歩前進1歩後退」でした。それほどがっかりしなくていいだろうと思います。
 5歩前進というのは、2013年の都議選での前進、同じ年の参議院選挙、翌14年の衆議院選挙、さらに16年の参議院選挙、そして17年の都議選と議席を伸ばし、前進してきたことを指しています。今回は議席を減らしましたが、これはいわば「立憲野党チーム」の勝利のために、「犠牲バント」ばかりやって自分で得点をあげることができなかったからです。サッカーでいえば「アシスト」に徹したということです。立憲民主党がゴール前で待っているところへボールを蹴り上げ、立憲民主党が得点をあげるというかたちになりました。チーム全体としては得点をあげて、良い成績を残したと思います。
 こうした点も含めて、今日の政党・政治運動の特徴について、ポピュリズムとの関連、歴史的な流れや国際的な背景も視野に入れながら検討してみたいと思います。

 1、「ポピュリズムの時代」なのか?

 私は、ポピュリズムという概念を中立的なものとして捉えています。ポピュリズムは、ある種の政治現象を指す用語です。一般に、日本語では「大衆迎合主義」と訳されますが、「人民主義」「大衆主義」という言い方の方が正確だろうと思います。
 既存の政治、エスタブリッシュメントやエリートなど、これまで主として政治・経済・行政・社会を主導的な立場でリーダーシップを発揮してきた階層や人々に対する不信が増大する。その結果、既存の政治の外部から大衆的な参入がおこなわれ、行動力が一挙に高まって政治を変えていくという現象を指しています。
 選挙でいえば「追い風」が吹くという現象です。大衆運動でも急速に熱狂的な行動力が示される。ある種の「ブーム」が発生し、特定の政党や指導者への「追い風」が生ずる。支持者の期待と熱気が急速に高まるということになります。このような現象には、「右派ポピュリズム」と「左派ポピュリズム」の両方があります。
 右派ポピュリズムの場合には、現状に対する大衆の反感と憤激があります。既存の政治や従来の政治主導者に対する反感と失望、政治の現状に対する憤激が示され、運動の方向や要求の対象が排外主義的なものになっていく。ナショナリズムや民族の誇りなどに動かされ、とりわけ欧米の場合には難民の排斥、あるいはマイノリティ(少数者)の排除という傾向を持ちます。少数者の排除やヘイトスピーチという点では、日本でも右派ポピュリズムの現象が一定程度生じているといえます。
 左派ポピュリズムも従来のエリートや既存政治の枠組みの外側から生じ、新しい政治潮流や新しい政治主導者に対する大衆の賛同や期待が高まるという点では共通しています。同時に、格差是正と再分配などを要求し、反ヘイトアクションなどが主張され、民主主義を活性化するという特徴があります。
 海外では、この右派ポピュリズムと左派ポピュリズムの両方の現象が生じていると言って良いでしょう。右派ポピュリズムはアメリカのトランプ大統領選出に際しての熱狂的な支持の現れ、左派ポピュリズムはこれに対抗する民主党内での民主的社会主義者を自称したサンダース候補に対する、若者を中心とするこれも熱狂的な支持の盛り上がりがありました。
 フランスでは、右派のペロン候補と左派のメランション候補との対抗が生じました。イギリス労働党のコービン党首も、先の総選挙では当初の予想に反して健闘し、前進しました。ここにも左派ポピュリズムの現れがあります。
 これらの点から、ポピュリズムの時代なのかという問題設定に対しては、「イエス」と答えたいと思います。右派・左派ともにポピュリズム的な政治現象をともなって、既存政治に対する新しい政治的な枠組み、政治勢力がオルタナティブ(もう一つの選択肢)として登場しつつあるということです。それが大きな政治的な「ブーム」を生み出したと言えるのではないかと思います。

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