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6月30日(土) ワールドカップの影で強行された働き方改革関連法案の採決についての『日刊ゲンダイ』でのコメント [労働]

〔以下の私のコメントは、ワールドカップへの熱狂のどさくさに紛れて強行された働き方改革関連法案採決について『日刊ゲンダイ』2018年6月30日付に掲載されたものです。〕

 「労働法制は人の生き死にかかる重要な政策です。過労死を容認するような中身で、多くの問題点が明らかになっているのですから、強行して成立させるような法案ではありません。政府も当初こそ『労働者のため』と言っていましたが、ここへきて経営者の利益が優先されていることも見えてきました。正々堂々と議論できないから、『国民がW杯に気を取られているうちに……』『サーカスに惑わされているうちに……』という姑息なやり方で法案を成立させようとするのでしょう」

 「支持率1%に低迷したままの国民民主は立憲民主とは違うことをして独自性を示したいのでしょうが、与党を利するだけです。『野党の足並みが乱れている』とメディアに報じられ、有権者にも『党利党略』と思われ、結果的に国民民主にとってプラスにならない。支持率も上がりませんよ。どうしてそういうことが分からないのでしょう」(五十嵐仁氏=前出)

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6月29日(金) 憲法の理念を活かした外交・安全保障はどうあるべきなのか [憲法]

 6月27日のブログで、私は「拉致問題を解決するためにも安倍首相を引きずり降ろさなければならない」と書きました。これは私の勝手な思い込みだというわけではありません。
 安倍首相では拉致問題は解決できないという意見は、世論の多数になっているからです。毎日新聞が6月23、24両日に実施した全国世論調査で、安倍首相が意欲を示している日朝首脳会談による日本人拉致問題の解決に「期待できる」は18%にとどまり、「期待できない」が66%に上りました。
 7割近くの国民は、安倍さんに期待できないと考えているわけです。そうであるなら、安倍さん以外の方に首相となって拉致問題の解決に取り組んでいただく以外にないでしょう。

 そもそも、安倍首相は憲法の理念を活かした外交・安全保障政策には全く関心がなく、その逆の道を歩んできました。憲法に自衛隊の存在を書き込む改憲案を提起しているだけでなく、首相就任以来、「戦争する国」「戦争できる国」をめざした好戦的政策を具体化し、軍事大国に向けて暴走を続けてきたからです。
 野党や世論の反対を押し切って特定秘密保護法、安保法制、共謀罪法などを制定し、防衛費も毎年の増額によって1兆2000億円も増やし、長距離巡航ミサイルなどの攻撃的兵器を導入し、オスプレイの購入などによる装備と自衛隊基地の増強、沖縄の辺野古での米軍新基地建設、教育での道徳の教科化や愛国心教育の強化などを強行してきました。いずれも、軍事的対応による安全保障をめざしたもので、軍事力によらない安全保障を志向する憲法の理念に反するものばかりです。
 憲法は、その前文で「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と謳い、9条には「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と書かれています。つまり、国民の「安全と生存」は「平和を愛する諸国民の公正と信義」への信頼によって「保持」されるべきで、「国際紛争」も戦争、武力の「威嚇」や「行使」によって「解決」されてはならないというのが憲法の要請なのです。

 北朝鮮危機、核やミサイルの問題を軍事力で解決することもいとわない姿勢を示していた安倍首相は、このような憲法の要請に完全に反していました。憲法上の制約を受ける日本の首相は、アメリカのトランプ大統領と一致するような対応を取ってはならなかったのです。
 トランプ大統領が、軍事的なオプションを含めてあらゆる選択肢がテーブルの上にあると言った時、安倍首相が100%共にあると言うことは許されず、軍機的な選択肢を外しなさいと諫言するべきでした。それが、平和憲法を順守するべき日本の首相としてのあるべき姿だったのです。
 今後の朝鮮半島での緊張緩和、ミサイルと核問題の解決に当たっても同様です。戦争や軍事力に訴えるのではなく、非軍事的な手段によって非核化への道を具体化していくのが日本としての取るべき道にほかなりません。

 これについて、昨日の『朝日新聞』の「論壇時評」に示唆的な論攷が掲載されていました。小熊英二さんの「ゲーム依存と核 関係性の歪み 北朝鮮にも」という記事です。
 小熊さんは、ゲーム依存について、「依存症とは、社会関係の歪みから生じる病なのだ。関係の歪みから依存になると、関係がますます歪み、さらに依存が深まる。強制して一時的にやめさせても、当人の社会関係が変わらないとすぐ依存が再発する。周囲の人がやるべきことは、説教や恫喝ではなく、社会関係の再構築を助けることだ」とし、北朝鮮の核問題も同様だと指摘するのです。つまり、「猜疑心や敵対心、相互不信がつのると、核兵器が増加する。逆にいえば、猜疑心や相互不信に満ちた関係を作り変えることなしに、核兵器をなくすのは難しいのだ」と指摘し、「猜疑心や相互不信に満ちた関係を作り変えること」が大切だと主張しています。
 日本についても、「日本はなぜ核武装しないのか。それは、そうしなくてもよい国際関係があるからだ。また核武装したら、その国際関係が破綻するからだ」とし、「いちど核依存になった国は、圧力だけかけても効果は薄い。北朝鮮も同様だ。全面戦争で双方に大量の犠牲者を出したいのでなければ、関係を再構築していくほかない。その具体策を考える際には、日本自身が、安全保障上の不安をやわらげる国際関係なしには核武装をあきらめなかったことを念頭におくべきだ」「力で恫喝すれば何でも解決すると考えるのは非現実的であり、幼稚である。外交とはすなわち、国際関係を再構築する努力にほかならないはずだ」というのが、小熊さんの結論です。

 力による「恫喝」ではなく、「国際関係を再構築する努力」こそが必要であり、それこそが「外交」だというのです。それには「猜疑心や相互不信に満ちた関係を作り変える」知恵も忍耐力も必要で、相手を納得させるような道理に立脚した説得力も不可欠でしょう。
 憲法の前文にある「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼」することによって、このような道理や説得力を手にすることができたはずです。それを安倍首相は投げ捨て、相手の猜疑心や不信を高めてきたというのが、「戦争する国」に向けての好戦的政策実施のプロセスにほかなりませんでした。
 憲法に反した暴走の連続だったというだけではありません。「平和憲法」を持つ国であるからこそ実現できたはずの紛争解決への道を閉ざし、国際社会で享受できたはずの「名誉ある地位」を踏み外してしまったと言うべきではないでしょうか。

 この日の『毎日新聞』一面下のコラム「余録」にも、注目すべき文章が書かれていました。「武器効果」という用語についての指摘です。
 「心理学に『武器効果』という用語がある。胸にわだかまるイライラや欲求不満が、時に他人への攻撃衝動に変わることがあるのは人の悲しい一面である。それを結びつけるものの一つが『武器』の存在という▲ストレスを与えられた人に銃を見せると攻撃的になるという心理実験があるそうだ。銃などの武器が人の心にひそむ攻撃のイメージや記憶を呼び覚まし、欲求不満などによる怒りを攻撃衝動へと結びつけてしまうのだといわれている」
 武器の存在こそが、人々のイライラや欲求不満、ストレスを攻撃衝動に変えてしまうのだというのです。逆にえば、イライラや欲求不満などによる怒りなどがあっても、武器がなければ簡単には攻撃衝動に結びつかないということになります。

 国家や国家指導者についても、同じことが言えるのではないでしょうか。核やミサイルなどの武器があるからこそ、攻撃衝動へと結びつくのだと。
 「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と宣言したことの深い含意を、ここから汲み取ることができるように思われます。安倍首相がめざしてきた軍事力依存の「積極的平和主義」や軍事大国路線こそが攻撃衝動を高める極めて危険な道だったということも、同じように学び取ることができるのではないでしょうか。

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6月28日(木) 米朝首脳会談が切り開いた「対決から対話へ」の歴史的転換 [国際]

 国際政治を動かすベクトルが逆転したということではないでしょうか。米朝首脳会談の歴史的な意義はそこにあると言うべきでしょう。
 この意味を理解せず、その大転換を前提としないどのような議論も、国際政治の行く末を論ずることや見通すことはできません。それほど大きな激変が、6月12日にシンガポールで起きたということです。

 朝鮮半島を舞台にした戦争の危機が回避されただけでも大きな成果でした。アメリカと北朝鮮の「どちらが勝ったのか」などという議論がありますが、どちらも戦争を望んでいなかったというのであれば、「どちらも勝った」ということになります。
 戦争で大もうけを狙っていた一部の軍産複合体という「戦争屋」どもを除けば、平和的な解決を望んでいたのは朝鮮半島やその周囲の人々だけでなく世界の大多数の人々でした。戦争ではなく平和的な交渉による問題解決への道が開かれたのですから、これらの人々も「勝者」だったと言えます。
 もし、「敗者」がいるとすれば、それは日本の安倍首相でしょう。「圧力」一辺倒で首脳会談実現の足を引っ張ったあげく、トランプ米大統領には貿易面で裏切られ、ロシアのプーチン大統領にも領土問題で騙され、北朝鮮の金正恩委員長からは相手にされず、韓国の文在寅大統領とはギクシャクしたままで、中国の習近平主席からも適当にあしらわれるという醜態を演じ、「蚊帳の外ではない」と叫びながら蚊帳の外で飛び回っている一匹の蚊のようになってしまったのですから。

 特に、北朝鮮との関係では先方の厳しい対応が際立っています。これまでの拉致問題をめぐる日朝交渉で北朝鮮は日本への強い不満を抱き不信感を高めてきたからです。
 しかも、その中心に居て、時にはアメリカの背後で軍事的な対応さえほのめかし、常に圧力のみを主張し続けてきたのが安倍首相でした。このような安倍首相への嫌悪と反感は、米朝首脳会談後も払しょくされていないようです。
 なかでも最悪だったのが、1月16日に河野太郎外相がカナダ・バンクーバーで開催された北朝鮮問題を話し合う関係国の外相会合で、北朝鮮との外交関係の断絶や北朝鮮労働者の送還を呼びかけた声明でした。平昌での冬季オリンピックへの北朝鮮代表団の参加などが予定され、米朝首脳会談に結びつく動きが始まっていた段階でのこのような呼びかけは、日本政府がいかに事態の進展を見誤っていたかを象徴的に示すものだったと言って良いでしょう。

 米朝首脳会談では、アメリカによる体制保障と北朝鮮の非核化が約束されました。同じようなことはこれまでも約束され、北朝鮮によって破棄され覆られるという歴史が繰り返されています。
 このような経過もあって、北朝鮮は信用できない、今回の合意も抽象的で具体性に欠けており、裏切られるにちがいないという悲観的な見方が支配的です。しかし、このような見方は今回の首脳会談の歴史的な意義を十分に理解していない誤ったものだと思います。
 米朝両国における外交・安全保障政策のベクトルが大きく変化したことは誰にも否定できない事実だからです。非核化に向けて揺れ戻しや紆余曲折はあるでしょうし、一直線には進まず時間はかかるでしょうが、この方向でしか問題の解決はあり得ず、それをどう確実なものにするのかという立場から対応すべきではないでしょうか。

 これまでとの違いを言えば、今回の合意は米朝両国の最高指導者によってなされたものだという点が重要です。担当者や実務者レベルの約束ではなく、史上初めての米朝首脳会談による合意であり、簡単に覆されるようなものではありません。
 また。米朝首脳会談に関連して、南北朝鮮の首脳会談、北朝鮮と中国との首脳会談など、関連するトップ同士での合意が積み重ねられているという点も重要です。なかでも、中国との間では3回もの首脳会談が行われ、シンガポールへの往来のために特別機まで中国から提供されました。
 このように、今回の米朝合意の後ろ盾になっているのが中国だという点も重要です。アメリカや日本が軍事的なオプションを含めた圧力路線を主張していた時にも、朝鮮半島での戦争に反対し非核化を望んでいた中国とロシアはあくまでも対話による問題の解決を主張していたからです。

 決定的に重要なのは、対話と交渉の道が開かれ、朝鮮半島における緊張の緩和と信頼の醸成に向けての具体的な措置が次々に実施されているということです。その結果、日本に対する脅威も大きく減少しました。
 『朝日新聞』6月27日付の社説「ミサイル防衛 陸上イージスは再考を」が「安全保障分野で脅威とは、相手の『能力』と『意図』のかけ算とされる。北朝鮮にミサイルがあることは事実だが、対話局面に転じた情勢を無視して、『脅威は変わらない』と強弁し続けるのは無理がある」と指摘しているように、北朝鮮の「意図」が大きく変化しました。小野寺防衛相が「北朝鮮の脅威はなにも変わっていない」と繰り返しているのは、このような安全保障のイロハを理解していないからです。
 もちろん、非核化とミサイルの削減によって攻撃「能力」を減らしていくことが必要です。同時に、緊張緩和と信頼醸成による攻撃「意図」の縮小も大きな意味を持ち、この点ではすでに多くの具体的な措置が取られているということに注目する必要があります。

 6月25日に、韓国と北朝鮮は朝鮮戦争の開戦68周年を迎えましたが、南北は軍の通信回線を復旧させる実務協議を行い、今は1回線しかない回線を過去に最大で9回線あった状態まで復旧させることで合意しました。韓国統一省は、26日に鉄道連結、28日に道路連結、7月4日に北朝鮮の荒廃した山林復旧の実務協議を板門店などで行うという新たな対話の日程を明らかにしました。
 韓国の各地では記念式典も開かれましたが、李洛淵(イナギョン)首相は、ソウル市内で開かれた式典で、「(南北の軍事境界線近くに展開する)長距離砲を後方に移すことが議論されている」と明らかにしています。他方、朝鮮通信によれば、北朝鮮の労働新聞(電子版)は25日付で、朝鮮戦争に関する7件の記事を載せましたが、米国を名指しで非難せず「米帝」の表現も使いませんでした。
 すでに米朝首脳会談前に、拘束されていた3人のアメリカ人が帰国し、首脳会談直後には米韓軍事演習の中止も発表されています。訪ロした文韓国大統領とロシアのプーチン大統領との間でシベリア横断鉄道と朝鮮半島を横断する鉄道の連結についても協調していく方針で一致し、プサン発ロンドン行きのユーラシア大陸横断鉄道も夢ではなくなっています。

 新しい歴史的な局面に向けての扉が、東アジアで開かれようとしているということです。朝鮮戦争の終結が宣言され、最後まで残った「冷戦」が終わろうとしているように思われます。
 「対決」から「対話」へとベクトルが逆転し、国際関係を律する原則が大きく方向を転じました。日本国憲法前文と9条が本格的に活かされ、その本領を発揮するような「活憲の時代」が、今こそ幕を開けようとしているのではないでしょうか。

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6月27日(水) 拉致問題などの諸懸案を解決するためにも安倍首相を引きずり降ろさなければならない [国際]

 昨日のブログで、こう書きました。「トランプ大統領によれば、金正恩委員長は拉致問題について『解決済み』とは言及しなかったとされていますが、論評は北朝鮮が従来の立場を変えていないことを示唆するものでした。その後、この問題についての報道はないようですが、北朝鮮の出方が注目されます。」
 今日の『毎日新聞』には、「この問題についての報道」が新たに掲載されていました。その表題は「拉致問題『ない』 北朝鮮がけん制」となっており、記事は以下のようなものです。

 <北朝鮮の国営ラジオ、平壌放送は26日に伝えた論評で、「日本は今日まで過去の犯罪について謝罪し賠償するどころか、逆にありもしない拉致問題をわめきたてて自らを『拉致被害国』に化けさせようと破廉恥に策動している」と非難した。ラヂオプレス(RP)が伝えた。
 拉致問題の解決に向け日朝首脳会談の実現を目指す安倍政権を改めてけん制した。平壌放送は15日にも、拉致問題は『既に解決された』と主張する論評を伝えていた。>

 ここで言及されている15日の放送については昨日のブログでも紹介し、「米朝首脳会談で事態が大きく動くかのような期待は、またも裏切られるのではないでしょうか」と指摘しました。この記事は、このような指摘をさらに裏付けるものとなっています。
 政府もマスコミも、このような事実をなぜきちんと国民に伝えようとしないのでしょうか。安倍首相によって拉致問題の解決に向けて事態が動き始めているような幻想をまき散らすことはやめるべきです。
 お昼のTVニュースでも、国連軍縮会議で北朝鮮代表は非核化について「日本は首を突っ込むべきではない」と批判したと伝えていました。これらの報道が示しているのは、北朝鮮は米朝首脳会談前から示していた安倍首相に対する厳しい姿勢を、首脳会談後も取り続けているということです。

 これらの経緯を見れば、日朝首脳会談の実現はかなり難しいように思われますが、もし実現したとしても、そこで安倍首相は何を主張するのでしょうか。拉致問題は解決済みだという北朝鮮に対して、これまでと同様の主張を繰り返すだけであれば事態が打開される可能性はほとんどありません。
 打開の道は、日朝平壌宣言が示していた拉致、核・ミサイル、植民地支配など過去の清算という両国間の諸懸案を包括的に解決して国交正常化を目指すという方向しかありません。これらの諸懸案を総合的に議論する中で拉致問題についても解決の道が切り開かれるのではないでしょうか。
 しかし、月刊誌『FACTA』の最新号の記事によれば、北朝鮮を非難して国内の人気を高めるために拉致問題を中途半端な状態にしておくよう安倍首相が外務省に圧力をかけたそうです。そのような安倍首相に、日朝平壌宣言に沿った国交正常化交渉と北東アジアの緊張緩和に向けての包括的で総合的な対話が可能でしょうか。

 拉致問題をはじめとした日朝間の諸懸案を解決することも、北東アジアをめぐる平和体制の構築についても、安倍首相では不可能だと言わなければなりません。「必要なのは対話ではない。圧力だ」と言い続けてきたツケが、今、回ってきているということではないでしょうか。
 安倍政権を打倒することは、これらの問題の解決への展望を開くためにも必要になっています。安倍首相がその座を去ることが早ければ早いほど、外交面でも新たな希望と展望が早まるというのが現時点における北東アジア情勢の大きな特徴にほかなりません。

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6月26日(火) 米朝首脳会談などによる国際情勢の激変についての『日刊ゲンダイ』へのコメントと若干の補足 [国際]

 〔以下の私のコメントは、米朝首脳会談などによる国際情勢の激変についての『日刊ゲンダイ』に掲載されたものです。参考のために、アップさせていただきます。〕

*『日刊ゲンダイ』2018年6月13日付
 「世界のリーダーは、安倍首相に呆れているでしょうね。重要な外交方針を〝圧力〟から〝対話〟にカンタンに変えてしまった。しかも、変更した理由も情けない。ひとつは、トランプ大統領が〝米朝融和〟へカジを切ったから合わせるしかなかった。もうひとつは『このままではバスに乗り遅れる』と慌てて北朝鮮に秋波を送ったのでしょう。関係国の米、中、ロ、韓は北朝鮮との対話に向かっているのに、日本だけは接触できていませんからね。要するに、信念から外交方針を変えたわけではない。国際社会では、口にしたことをころころ変える、こういううトップが一番信用されない。しかも、安倍首相は心の中で米朝会談の〝失敗〟を期待していることも見透かされています。世界のリーダーは、日本の首相を哀れに思っているはずです」(法政大学名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

*『日刊ゲンダイ』2018年6月23日付
 「安倍政権がこの5年間に強引な手法で成立を急いだ特定秘密保護法や安保法、共謀罪などは、いずれも北朝鮮の脅威などを理由にしていましたが、北をとりまく国際情勢が激変した今、エネルギーと時間の無駄遣いだったことがはっきりしました。そして、その間のアベ政治によって、三権分立も民主主義も総崩れになり、経済や外交もメタメタ。アベノミクスは異次元緩和の出口すら見えず、外交では米ロにだまされ、北からは相手にもされず孤立化している。現実に目を向けず、やれW杯だ、東京五輪だと浮かれていると、行き着く先は国民生活の破綻。死屍累々の状況を覚悟した方がいいでしょう」

 ここでも指摘しているように、米朝首脳会談をめぐる安倍首相のトランプ米大統領への追随ぶりは、これまで以上に際立っています。首脳会談を開催すると言えば、「対話のための対話には意味がない」と言い続けてきたこれまでの発言を翻して「支持」を表明し、途中で「開催をやめる」と言った時も直ちにこれを「支持」し、さらにその後、「やめるのをやめる」と言った時にも、安倍首相は直ぐに「支持」を表明しました。
 トランプ大統領のやること、言うことは何でも支持するという無定見ぶりです。どこに、独立国としての判断や主張があるのでしょうか。
 拉致問題でも、首脳会談で取り上げてもらいたいとトランプ大統領にお願いするだけでした。トランプ大統領は首脳会談で拉致問題を取り上げ、北朝鮮の金正恩委員長は「安倍首相と会う可能性がある。オープンだ」と前向きな姿勢を示したと伝えられています。

 しかし、これで拉致問題についての事態が進展するほど、甘くはなかったようです。安倍首相に対する北朝鮮側の評価が厳しく、日朝首脳会談を急ぐ必要はなく、従来の態度を変えたという確証もないからです。
 最近も、北朝鮮の朝鮮中央通信は安倍政権が森友学園の問題をはじめとするスキャンダルで行き詰まるなど安倍政権に批判が集まっていることを紹介しながら、「安倍一味は、彼らに集まる怒りのまなざしをそらして政権の危機を免れるために」 「拉致問題」や「最大の圧力」を持ち出しているなどと主張していました。岡田充共同通信客員論説委員は、北朝鮮との日朝首脳会談の可能性を打診した安倍政権に対し、北朝鮮当局が「一切取り合うな」との指示を出していたことが明らかになったと伝え、4月27日の南北首脳会談と米朝首脳会談など、国際的対話の枠外に置かれる安倍政権は当面、北との対話の契機をつかめないまま孤立を深めることになると報じていました。
 5月12日にも、朝鮮中央通信は安倍政権が「既に解決した拉致問題を再び持ち出して世論を形成している」とし、「朝鮮半島の平和の流れを阻もうとする稚拙で愚かな醜態だ」と非難する論評を配信していました。米朝首脳会談でのやり取りは、このような風向きが変わったのではないかとの期待を高めましたが、そうではなかったようです。

 米朝首脳会談が開かれた2日後の6月14日、外務省の志水史雄アジア大洋州局参事官はモンゴルのウランバートルで開催された国際会議の場で、北朝鮮外務省のシンクタンク、軍縮平和研究所のキム・ヨングク所長と短時間接触し、拉致問題の解決に向けた日本政府の基本的な立場を伝えたと外務省が発表しました。これが首脳会談後の最初の「接触」でした。
 外務省は「非公式に意見交換した」と発表していますが、正式の会談を設定することができず、面と向かっての「意見交換」もできなかったようです。実態は廊下での立ち話、それも行き過ぎる北朝鮮の代表団を追いかけて一方的に話したのではないでしょうか。
 志水氏は、拉致問題は日朝が直接向き合い、解決すべきだとの安倍晋三首相の考えを伝達したとされ、キム氏の発言については明らかにせず、外務省幹部は北朝鮮側の反応について「(従来の姿勢と)大きな変化はなかったようだ」と語っています。モンゴル外務省の関係者によると、北朝鮮代表団の一人は「日本が提起する内容は今の良い流れを阻害しかねない」と語ったということで、拉致問題に対する拒否反応とみられています。

 つまり、これまでと変わらない反応だったということになります。米朝首脳会談で事態が大きく動くかのような期待は、またも裏切られるのではないでしょうか。
 このような見方を裏付けるように、北朝鮮の国営ラジオ「平壌放送」は6月15日に報じた論評で、日本人拉致問題について「既に解決された」と言及しています。トランプ米大統領が米朝首脳会談で拉致問題を提起した後、北朝鮮メディアが拉致問題は解決済みとの従来の主張を表明したのは初めてのことです。
 トランプ大統領によれば、金正恩委員長は拉致問題について「解決済み」とは言及しなかったとされていますが、論評は北朝鮮が従来の立場を変えていないことを示唆するものでした。その後、この問題についての報道はないようですが、北朝鮮の出方が注目されます。

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6月24日(日) 全国革新懇総会での「開会あいさつ」 [挨拶]

〔以下の「開会あいさつ」は、5月19日に開催された全国革新懇総会で行われたものです。全国革新懇第36回総会記録集『安倍政治を終わらせるときがきた』に収録されています。〕

 いよいよ革新懇の出番がやってまいりました。昨年も同じようなことを言ったような気がしますが、その後の総選挙で、小池百合子東京都知事という〝緑のタヌキ〟にたぶらかされた前原民進党の迷走によって大混乱が生じてしまいました。まさに「小池にはまってさあ大変」。野党のオウンゴールに助けられるような形で、安倍政権は一時的に息を吹き返しました。
 しかし今年に入って、森友・加計学園疑惑が新たな展開を見せて、再びソバ屋は大繁盛。内閣支持率は低下し、「安倍おろしソバ」の注文が 全国から殺到しています。国会はうそとデタラメ、柳瀬証言は「やらせ証言」にすぎず、捏造に次ぐ捏造で、安倍晋三は「安倍ネツゾウ」になってしまいました。「安倍夫妻と不愉快な仲間たち」による国政の私物化に国民の怒りは爆発寸前になっております。
 このような民意をすくいあげ、安倍政権の打倒に向けて決意を固めあうのが、本総会の第一の課題にほかなりません。最近、私は『打倒安倍政権―9条改憲阻止のために』という本を出版しましたので、そのための「武器」として活用していただければ幸いです。
 本総会の第二の課題は、安倍首相を打倒して、改憲策動を阻止するために、全国の先進的で豊かな経験と教訓を学びあうことにあります。決意だけでは政権は倒せません。「市民と野党との共闘」こそ勝利の方程式ですが、選挙区や地域の実情にあわせた方程式の「解き方」を互いに学びあい、運動の水準を引き上げることが必要です。
 第三の課題は、この総会を「三段跳び戦略」の跳躍台とすることにあります。安倍首相を引きずり下ろすのがホップ、来年の参議院選挙でねじれ状態をつくり出すのがステップ、そして、来るべき解散・総選挙で勝利するのがジャンプです。
 その出発点こそがきょうの総会ではないでしょうか。もちろん、それ以前に解散・総選挙になる可能性も十分にあります。やれるもんなら、やってみろ! 返り討ちだ! そして、みんなでこう叫ぼうではありませんか。「安倍よ、アバヨ!」
 最後に私事ですが、過去1年間での講演回数は約80回になりました。メール一本、即参上。引き続き皆さんの先頭に立って奮闘する決意を表明するとともに、本総会での最後までの熱心な討論と運営へのご協力をお願いする次第です。
 なお、ご発言にあたっては、これから行われます報告・提案に基づいて、それに沿った発言をよろしくお願いしたいと思います。また、本日の座長を杉井静子さんと伊東達也さんの二人の代表世話人にお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。ご賛同いただいたと思いますので、さっそく議事を座長さんに引き継ぎたいと思います。ありがとうございました。


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6月20日(水) 幕引きを狙ったセレモニーにすぎなかった加計学園理事長の記者会見 [スキャンダル]

 加計学園疑惑の幕引きを狙ったセレモニーにすぎないものでした。加計孝太郎理事長の緊急記者会見です。
 また1人、記憶を失った人が姿を現しただけです。「記憶にも記録にもない」のに安倍首相の関与だけはきっぱりと否定するという点では、これまでの構図と全く同じでした。

 そもそも、この会見の設定自体が極めていかがわしいものです。記者会見の連絡が報道機関に伝えられたのは開催された11時の約2時間前の朝9時でした。
 しかも、本来であれば東京の文科省などで行うべき開催場所は岡山市の学園本部で、出席が許されたのは地元の記者だけでした。スペースの余裕があったのに駆けつけた地元以外の記者は出席を拒まれ、会見の時間も予定の30分を5分ほど早く切り上げています。
 そのうえ、大阪北部での地震災害があった直後でサッカーのワールドカップでの日本とコロンビア戦の直前というタイミングです。なるべく目立たないように、多くの報道陣やこれまで取材してきた記者が参加しにくいように、注目を集めづらいタイミングを選んでアリバイ的に開催された記者会見だったというしかありません。

 しかし、この会見で納得した人はどれだけいたでしょうか。ますます疑惑は深まったのではないでしょうか。
 そもそも、このような不誠実なやり方で会見を開いたということ自体が、真相の解明に背を向けて疑惑を裏付けるような対応だったと言うべきではないでしょうか。いかがわしさが匂い立つようなやり取りでした。
 学園からの面会報告は県職員が文書に記録していたもので、それを裏付けるような文書の一部が文科省にも残っており、この面会を起点に当時の柳瀬唯夫首相秘書官が学園と県、市の担当者に会って獣医学部新設に向けた国家戦略特区の手続きが進んで行ったというのが、これまでに明らかにされた経緯でした。学園側の説明通りこの面会が虚偽だったなら、教育機関である加計学園が認可を得るために地元自治体をだまし、93億円もの巨額のお金をせしめたことになります。
 しかも、加計氏は「記憶にも記録にもない」と一方的に断言しただけで、それを裏付ける明確な根拠も示さず、軽い内部処分とおわびで済ませようというわけです。これをまともな説明だと言えるのでしょうか。

 記者会見で明らかになったのは、加計学園疑惑の真相は記者会見では明らかにならないという事実です。疑惑に対して「嘘はついていない」と釈明するのが普通ですが、この件では「嘘をついた」と嘘をついているように見えます。
 加計氏がきちんと誠実に説明しようとしなかったのですから、国会が真相究明に取り組むしかありません。証人喚問について加計氏は「私が決めることではない。お待ちしております」と述べているのですから与党が拒む理由はなく、安倍首相も自らへの疑惑を払拭するために加計氏の喚問を進んで受け入れるべきでしょう。

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6月16日(土) 戦後政治をぶっこわしてしまった安倍政権の5年間(その3) [論攷]

〔以下の論攷は、全農協労連の機関誌『労農のなかま』No.572、2018年5月号、に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

 官僚を堕落させ議会政治の土台を掘り崩してきた

 このように、安倍政権のもとで、防衛省、文科省、内閣府、厚生労働省、財務省と、相次いで公文書や内部文書の隠蔽や改ざんが明らかになりました。それについて、政府は各省庁に責任転嫁しようとしています。しかし、政府の知らないところでこのような隠蔽や改ざんが行われていたとしたら、そちらの方がもっと大きな問題です。自衛隊という実力組織や官僚が勝手に暴走していたということになるのですから。
 この政権は同じようなことをくり返してきました。権力の座にしがみつくための隠蔽や偽りが横行し、存在しない、廃棄したと言っていた文書が次々に見つかっています。ばれなきゃ良いとでも思っているのでしょうか。
 とにかく、いったん決めたら世論による批判も国会での審議も一切無視し、立憲主義なんかクソ食らえと言わんばかりに暴走してきたのが安倍政権です。その結果、市場経済も官僚機構も立憲主義も議会制民主主義も、戦後政治が築き上げてきた土台がすべてくつがえされてしまいました。
 政治家は理念や理想を見失って保身に汲々とし、昨年の総選挙では野党第一党が自壊して生き残りを最優先に信義なき再編が行われました。自民党はスキャンダル続出で、政権党としての責任を忘れ、安倍「一強体制」の下で多くの与党議員は口をつぐんできました。
 官僚は国を支えているという矜持を失い、無責任な「ヒラメ集団」に変わってしまいました。官邸主導で「お友だち」を集めた有識者会議などが政策の大枠を決めて各省庁に丸投げされ、省庁はその「下請け機関」となったばかりか、不都合な公文書を隠蔽しつじつまを合わせるためにデータをねつ造した疑いさえあります。
 そのうえ、自民党議員と文科省による名古屋市の中学校での前川前文科次官の授業への圧力、放送法4条の廃止によるテレビへの介入の動き、おまけに、福田財務事務次官のセクハラ・スキャンダルの発覚と辞任などもありました。議員会館近くで現職の幹部自衛官が民進党の参院議員に「おまえは国民の敵だ」と繰り返し罵倒するという事件まで起きています。地獄の釜のふたが開いたような不祥事の連続です。このような惨状を生み出した張本人こそ、安倍首相その人なのです。

 破綻が明らかになったアベノミクス

 鳴り物入りで安倍首相が始めた「アベノミクス」でした。しかし、そのために市場経済は瓦解寸前になっています。「2年で2%」という物価上昇率を掲げて異次元の大規模金融緩和という「黒田バズーカ」が発射され、年間60兆円をメドに国債が買われてきました。しかし、この目標達成は6回も延期され、いまだに実現していません。
 安倍政権になってから実質賃金の低下が4年連続で止まっていません。「物価が上がれば賃金が上がる」と言っていたのに、実質賃金は第2次安倍政権誕生以前の年間391万円から377万円と14万円も減っています。円安で輸出大企業が儲けて史上最高益を更新していますが、実質賃金は低下し続け、持てる者と持たざる者との分断が強まり、貧困化と格差は拡大し続けています。大企業の利益は内部留保に向かうばかりで、若干の賃上げがあっても下請けや孫請けの中小企業までには回ってきていません。
 この失敗を隠すために、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も動員して年間6兆円規模のETF(上場投資信託)購入を続け、「官製相場」によって株高を演出してきました。しかし、実体経済との乖離は拡大し、米国の利上げやトランプ大統領による鉄鋼・アルミニウムへの関税実施方針などもあって株価は乱高下しています。
 また、2015年の個人消費は実質国内総生産(GDP)ベースで306.5兆円と、安倍内閣が発足した12年の308.0兆円から1.5兆円縮小しました。2年連続で個人消費がマイナスになったわけですが、これは戦後初めてのことです。
 家計消費は15カ月連続のマイナスで、比較可能な2001年以降で過去最長を更新しました。内需は停滞し少子化は止まず、「残業代ゼロ」の高度プロフェッショナル制度の導入などを含む「働き方改革」によって過労死増のリスクが高まろうとしています。安倍政権の愚策によって、日本の経済と生活、労働も大きな危機にさらされているのです。

 むすび

 この5年間、安倍政権は強権的な手法によって経済と国民生活、民主主義をぶっ壊し、政治と行政を歪めてきました。その結果、日本を「戦争できる国」に変え、貧困と経済格差を広げることになりました。この罪は極めて大きく、その責任を取ってもらわなければなりません。
 得意としてきた外交でも破たんが明らかになってきました。日本周辺の国際環境が急変し、南北会談や米朝会談が決まって北朝鮮と中国との首脳会談が行われるなど、朝鮮半島情勢は緊張緩和と非核化、和解と協力の方向にかじを切りつつあります。
 この間、安倍政権は蚊帳の外に置かれたばかりか、頼りにしていたトランプ米大統領によって鉄鋼・アルミの輸入制限措置を課されました。4月の日米首脳会談でも二国間協議を呑まされるなど、蜜月は幕を閉じ「安倍外交」は漂流を始めています。
 通常国会では、過去5年間のうちに蓄積されてきた膿が一気に噴出しました。まるで、底なし沼に落ち込んだような不祥事の連続です。過去の不祥事との違いは、不都合な真実や公文書の隠蔽・改ざん・ねつ造・圧力など、政治がよって立つべき土台が腐ったことによって生じたという点にあります。この土台を取り換えなければ、その上にはどのような建物も建てられません。
 しかも、森友・加計学園疑惑の中心には、安倍首相夫妻が位置しています。この点も、これまでの不祥事とは大きく異なっている特徴です。政治改革による小選挙区制の導入、行政改革による内閣人事局の創設、構造改革による構造改革特区や国家戦略特区の設置など、首相官邸や総理総裁の権限を強化する制度改革が進められてきました。強権的な人格をもつ安倍首相と奔放で暴走する昭恵氏がその中心に座り5年間の長期政権となったために忖度と私物化が横行し、政治の堕落と腐敗が極まってしまいました。
 日本の政治を立て直すために、安倍夫妻にはきちんとした責任を取ってもらわなければなりません。その罪を償うために、安倍首相に大きな代償を払わせる必要があります。そのための最善の策とは何でしょうか。安倍政権の総辞職こそが、その答えにほかなりません。

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6月15日(金) 戦後政治をぶっこわしてしまった安倍政権の5年間(その2) [論攷]

〔以下の論攷は、全農協労連の機関誌『労農のなかま』No.572、2018年5月号、に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

 「戦争できる国」に向けての暴走の連続

 安倍政権によってぶっ壊されてきたのは政治への信頼だけではありません。「専守防衛」という国是にもとづく「平和国家」としてのあり方も掘り崩されてきました。特定秘密保護法の強行成立から始まり、武器輸出を認める「防衛装備移転三原則」の閣議決定、歴代の自民党政権が「憲法違反」としてきた集団的自衛権の一部行使容認、多くの憲法学者や国民の反対を押し切った安保法=戦争法の強行成立などが相次いできました。
 安倍首相がめざす「戦争できる国」を作るためには、システム・ハード・ソフトの各レベルにおける整備が必要とされます。システムというのは戦争準備と遂行のための法律や制度であり、一連の違憲立法とともに日本版NSC(国家安全保障会議)や安全保障局の設置などによっても実施されてきました。9条改憲はこのシステム整備の中核をなし、総仕上げの意味を持っています。
 ハードの整備とは戦争遂行のための「実力組織」の拡充であり、米国との軍事同盟の強化と軍備の増強などがその内容になります。沖縄での地元の意向を無視した辺野古新基地建設の強行や過去最高となった防衛費の増大、オスプレイや巡行ミサイルの購入、ヘリ空母「いづも」の攻撃型空母への改修計画など、他国に脅威を与える敵基地攻撃能力の確保の動きが強まりました。
 ソフトの整備とは「戦争できる国」を支える人材の育成と社会意識の形成を指しています。すでに第1次安倍政権で教育基本法と関連する学校教育法など3法が変えられ、第2次政権になってから教育改革実行会議による道徳の教科化や学習指導要領の改訂、教育への管理・統制の強化、マスメディアに対する懐柔や恫喝による情報の操作などが進められてきました。
 このような「戦争できる国」作りへの動きに対して、これまで憲法は抵抗の拠点であり、異議申し立てのための武器となってきました。しかし、安倍首相がめざす9条改憲によって自衛隊の存在が明記され、憲法上の位置づけが与えられ正当化されれば、その意味は大きく変わるでしょう。抵抗のための武器から戦争へと動員する手段になってしまいます。

 隠され続けてきた「戦場の真実」

 このような形で「戦争できる国」になれば、自衛隊は海外に派兵され「戦闘」に巻き込まれることになります。イラクへの自衛隊の派遣や南スーダンPKOでの自衛隊の活動の実態は、このような「戦場の真実」を赤裸々に示すものでした。それを国民に知られたくないからこそ、日報が隠蔽され続けてきたのではないでしょうか。
 南スーダンPKOの日報問題で「無い」と言っていた陸上自衛隊のイラク派遣時の活動報告(日報)が「発見」されました。イラクに派遣された陸上自衛隊の現地部隊が報告した日報も見つかりましたが2004年から06年にかけてのもので45%にすぎず、ミサイルが撃ち込まれるなど「戦闘」が激化したときのものは見つかっていません。しかも、イラク派遣関連文書にも改ざんの疑いがあります。
 この日報の隠蔽と発見は、この間の安倍政権による情報の隠蔽や改ざんという一連の事案と共通の背景を持っています。知られたくない不都合な情報を廃棄し、隠し、改ざんする。逃れられなくなると渋々存在を確認し公表するというやり方が繰り返されてきました。
 とりわけ、自衛隊の日報隠蔽は知られたくない文書を隠していただけでなく、そのことが防衛大臣に報告されず、事態を全く把握できていませんでした。シビリアンコントロール(文民統制)は機能せず、現場が独走して戦争へと突き進んで行った戦前の過ちや、終戦に当たって公文書を焼き尽くしてしまった間違いが繰り返されているということになります。
 イラク関連の日報隠蔽は「非戦闘地域」に反する実態を隠すためであり、南スーダンでのPKO関連の日報隠蔽は「駆けつけ警護」など戦争法による新任務の付与に影響を与えないためだったのではないかと疑われています。戦争法案はうその説明の下に強行採決されたことになり、これらの日報が当時から明らかになっていればイラクや南スーダンへの自衛隊派兵の正当性の根拠が崩れ、法案が成立しなかったかもしれません。


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6月14日(木) 戦後政治をぶっこわしてしまった安倍政権の5年間(その1) [論攷]

〔以下の論攷は、全農協労連の機関誌『労農のなかま』No.572、2018年5月号、に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

 はじめに

 最近の政治・行政の姿を見て、「全般的危機」という言葉を思い出しました。国有財産の不当廉売と国の根幹を揺るがせるような公文書改竄、「お友達」の優遇と行政の私物化、文民統制に反する自衛隊の日報隠蔽、女性の人権を踏みにじるセクハラ・スキャンダルと財務次官の辞任。これらの大罪を嘘で誤魔化し、言い逃れようとする醜態の数々。
 政治の土台がひび割れてしまったのです。政治への信頼が崩れ、行政の前提となる土台は亀裂だらけになってしまいました。戦後最低最悪の安倍首相が発する毒が、少しずつしみ込んで政治の土壌を汚染させてきたということでもあります。
 森友・加計学園疑惑など安倍夫妻をめぐる疑惑やスキャンダルよりも重要な問題があるのではないか、国会はもっと法案や政策の議論をするべきではないかという意見があります。しかし、土台が安定していなければ、その上にどんな家を建てても崩れてしまいます。土壌が毒に汚染されていれば、どのような作物や花を植えても育ちません。
 国政の重要問題を議論するためには、その土台となっている信頼を取り戻す必要があります。政策という作物を植えるためには、土壌を改良しなければなりません。丈夫に育てて花を咲かせ実らせるためには、まず土から毒を取り除き、立憲主義や民主主義という肥料をやらなければならないのです。
 振り返ってみれば、安倍政権の5年間は憲法を踏みにじる暴走政治の連続でした。「石流れ木の葉沈む」理不尽な日々がつづき、行き着いた先が安倍首相夫妻による政治の私物化であり、それを取り巻く政治家や官僚、「お友達」などによる「忖度政治」でした。世論を恐れず反知性と非常識が大手を振るような時代になってしまいました。
 安倍首相は「戦後レジームからの脱却」を唱え、「日本を取り戻す」というスローガンを掲げてきました。その主張通り、安倍暴走政治の5年間は、平和憲法に基づく軽武装国家としての「戦後レジーム」を掘り崩し、戦前の「日本を取り戻す」歩みにほかならなかったのではないでしょうか。

 暴走政治の害悪を象徴する森友・加計学園疑惑

 安倍暴走政治の害悪を象徴するのが、森友・加計学園疑惑です。安倍首相だけでなくその妻である昭恵氏の関与が疑われ、首相夫妻の意向を忖度して政治が歪められ私物化されたのではないかとの不信を招きました。これに対して「おかしい」と異議を唱えれば、前川喜平前文科次官のように私生活をリークされ授業にまで介入されてしまいます。
 森友学園疑惑は籠池泰典前理事長の時代錯誤な教育理念と、教育勅語を園児に暗唱させるような国粋主義的な愛国教育の実践に安倍首相夫人の昭恵氏が共感し感銘したことが発端でした。森友学園の小学校新設を応援しようとして100万円を寄付するとともに設立認可と土地取得、建設費用の融資に便宜を図ったというのが真相だったのではないでしょうか。
 2017年2月17日の「私や妻が関係していたら首相も議員も辞める」という安倍答弁の3日後の20日に「口裏合わせ」の電話があり、その2日後の2月22日に、官邸側の関与を全面的に否定している佐川宣寿前理財局長と太田充現局長(当時財務省大臣官房総括審議官)が菅義偉官房長官から官邸に呼ばれ、国有地売却の経緯などについて説明していたこと、ここには国土交通省航空局次長も出席し、国有地から出たごみの撤去処分費用の見積もりなどを説明したことが判明しています。当然、この場でも決裁文書の改ざんなどの善後策が相談されたものと思われます。
 こうして、森友学園への破格の安値での国有地売却、その経緯を書いた決裁文書の改ざんという前代未聞の「国家犯罪」が実行されたのです。その背後には安倍夫妻の存在があり、とりわけ森友学園が経営する塚本幼稚園で3回も講演し、ホームページに推薦文を書き、一時は新設予定の小学校の「名誉校長」まで引き受けていた昭恵氏の関りは極めて大きなものだったと思われます。
 その後、当時の佐川理財局長が「ない」と答弁していた財務省と森友学園との交渉記録が500ページ以上も残っていたことが新たに分かりました。なかには昭恵氏と密接に連絡を取り合っていた記録も残っています。
 昭恵氏の存在と働きかけがなければ、「良い土地ですから進めてください」と昭恵氏が言ったなどと護池氏が圧力をかけることも、建設予定地前で撮った写真を見せることも、それを見た官僚が籠池氏のために便宜を図ることも、慌てて公文書を改ざんすることもなかったはずです。安倍首相夫妻が「関係」していたことは明らかであり、安倍首相は自らの言葉に従って首相も国会議員も辞任するべきでしょう。

 決定的な証拠が出てきた加計学園疑惑

 加計学園疑惑についても決定的な証拠が出てきて、国家戦略特区での獣医学部の新設計画は最初から「加計学園ありき」だったことが明確になりました。というより、安倍首相の親友である加計考太郎氏が経営する岡山理科大に獣医学部を新設するために国家戦略特区が利用され様々な便宜が図られたというのが真相であると思われます。
 愛媛県や今治市の職員、加計学園事務局長らが2015年4月2日に首相官邸で柳瀬唯夫首相秘書官(当時)と面会したとする文書には、内閣府の藤原豊地方創生推進室次長(当時)とも会ったことが書かれていました。柳瀬氏が「本件は、首相案件」と述べ、藤原氏が「内容は総理官邸から聞いている」「国家戦略特区の手法を使って突破口を開きたい」「かなりチャンスがあると思っていただいてよい」と発言したなどと記されています。
 すでに昨年のうちに、「総理のご意向」や「官邸の最高レベル」という文言のある文書が発見されていました。これらの異なった性質の文書の全てが偽りでない限り、この問題に安倍首相や官邸が深くかかわっていたことは完全に裏付けられたと言えるでしょう。
 4月10日の中村愛媛県知事の記者会見では、もう一つの重要な事実が語られていました。問題の土地にはサッカースタジアムを作るプランだったのに、途中で内閣府から助言があって獣医学部の新設計画を国家戦略特区に申請することになったというのです。岡山理科大に獣医学部を新設する計画は内閣府から持ち込まれたということであり、初めから「首相案件」だったということになります。
 柳瀬元秘書官の参考人聴取でも、首相官邸で加計学園関係者と3回も面会していたこと、特区関係者で面会したのは加計学園だけだったことなど、「加計ありき」を示す新たな事実が明らかになりました。
 加計学園疑惑はクリスマスイヴにワイングラス片手で相談された安倍首相や加計氏による「男たちの悪だくみ」の一つだったと思われます。そのような形で政治・行政を私物化し国会と国民を欺いてきたというのであれば、許されざる背信であり、安倍首相に国政を担当する資格はなく、ただちにその座を去るべきです。

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