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2月4日(日) 2017衆院選の分析と今後のたたかい(その2) [論攷]

〔以下の論攷は、『月刊全労連』No252、2018年2月号、に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

2、野党の混乱と分裂

 〇「小池劇場」の開幕と暗転

 総選挙の直前に野党第一党が姿を消すという、あり得ないはずの事態が勃発した。安倍首相が正式に衆院解散を表明した9月25日、小池知事も記者会見で新党「希望の党」の立ち上げと自らの代表就任を明らかにした。こうして「小池劇場」が幕を開け、やがて民進党の混乱と分裂に結びついていく。
 解散表明の翌26日、市民連合と民進党・共産党・社民党・自由党の4野党は政策合意に調印した。その日の深夜、小池知事と前原誠司民進党代表、連合の神津里季生会長らが帝国ホテルで密談している。『朝日新聞』の「検証 民進分裂」によれば、「民進党を解党したい。民進の衆院議員は、希望の党に公認申請させます」と前原代表が提案し、「それでいきましょう」と小池知事が応じ、同時に「全員(の合流)は困る。私は、憲法と安全保障は絶対に譲れません」と注文を付けたという(同11月19日付)。
 つまり、「全員」の合流という「なだれ込み」路線は、最初からあり得なかったのだ。そのことを知りながら、28日に開かれた両院議員総会で前原代表は事実上の解党と希望の党への合流を提案し、全員一致で承認された。小池人気を頼りに「安倍一強」を打破して生き残りを図ろうという思惑に支配されての結果だったといえる。
 しかし、このような思惑は直ぐに吹き飛んだ。29日の都庁での記者会見で、小池知事は改憲や安保で政策が一致しない民進党出身者について「排除いたします」と明言した。この「排除の論理」によって一挙に舞台は暗転し、それまで吹いていた「追い風」は「逆風」に転じた。
 こうして民進党は混乱のるつぼに投げ込まれ、10月2日には枝野幸男代表代行によって立憲民主党の結成が発表される。結局、民進党は希望の党への合流、立憲民主党への参加、無所属での立候補、そして参院議員などの民進党残留という形で、4つに分裂することになった。
 このような混乱が生じた要因は、民進党が都議選で大敗を喫したことにある。その責任を取って蓮舫代表が辞任し、後任に前原新代表が選出された。代表選挙で対立候補となった枝野氏は共産党を含む野党共闘の継続を訴えたが、前原氏は見直しを主張した。野党共闘に消極的で小池新党との連携に期待を寄せる右派グループに押されて前原氏は新代表に当選する。
 総選挙でも都議選と同様の小池新党ブームが生まれれば民進党は大敗して存亡の危機に陥る。かといって、共産党などとの野党共闘で「勝利」することも前原氏には望ましいことではなかった。周辺には「共産党と組んだら、死んでも死にきれない」(『朝日新聞』11月20日付)と話していた前原氏にとって、それは「望まざる勝利」だったのである。
 こうして、進退窮まった前原氏にとっての唯一の選択肢は、「小池に飛び込む」ことだけになった。これが「なだれ込み」路線である。しかし、民進党を道連れに飛び込んだ前原氏は「排除の論理」に翻弄されておぼれ、「小池劇場」は希望の党の失速という形で幕を引いた。「敗残の将」となった前原氏は希望の党に入り、小池知事はさっさと共同代表を辞任して都知事の椅子に舞い戻ったのである。

 〇野党共闘の試練と刷新

 民進党の新代表に選ばれた前原氏は、それまで各選挙区で行われてきた市民連合などの市民団体と共産党など立憲3党との共闘の動きには批判的だった。できれば共産党抜きで1対1の対決構図を作りたいというのが本心だったのではないか。新たに就任した野党第一党の党首が野党共闘に消極的だということも、安倍首相が突然、解散に踏み切る決断をした要因の一つだったと思われる。「前原新代表が就任したばかりの、今がチャンスだ」と。
 この安倍首相の思惑通りに前原氏は市民連合と野党との政策合意を踏みにじり、野党内に大きな混乱を持ち込んだ。しかし、突如として発生した逆流と試練に対して立憲野党は直ちに対応し、それを立て直すとともに刷新に成功した。
 衆院解散と民進党の事実上の解党がなされた9月28日、共産党は社民党との共闘に合意し、翌29日に志位和夫委員長は「安保法制廃止を守って共闘の大義に立って行動しようという方であれば、私たちは共闘を追求したい」と表明した。これらの動きは、民進党の消滅にもかかわらず連携可能な勢力が生まれれば共闘は立て直せるという展望を示す点で、重要な意味を持った。
 そして、それに応える動きが始まる。ネットなどに沸き上がった「枝野立て」という声に押される形で、枝野氏が新党「立憲民主党」を立ち上げた。背景になったのは、2016年2月の「5党合意」以来、積み重ねられてきた市民と野党との共闘である。このような経験と実績がなければ、市民の中から新党結成を求める声は上がらず、枝野氏も確信をもって新党結成に踏み切れなかっただろう。
 この立憲民主党の結成を機に、野党共闘をめぐる状況は一変する。翌10月3日、共産党は中央委員会総会を開いて対応を協議し、新党結成を歓迎するとともに枝野代表の選挙区での候補者擁立の見送りを表明した。候補者調整について都道府県別での協議を開始するとともに一本化に向けて67の小選挙区予定候補を降ろし、多くのところで自主的に支援を行った。
 こうして、立憲民主党は改選15議席を3倍以上も上まわる55議席を獲得して野党第一党となった。市民の強力なバックアップと共産党などの他の立憲野党の支援や協力なしには、このような成果を上げることはできなかったにちがいない。
 野党共闘は大きな試練に直面したが、それによって、その意義や重要性が再確認され市民の財産として再認識されたのである。それを失うまいとして多くの市民が立ち上がり、その力に押されて各政党は連携し、相互の信頼を強め、人間関係を深め、つながりを広めることができた。共闘は単に再建されただけではない。それは刷新され、よりバージョンアップされた形で生まれ変わったのである。
 第1に、共闘の核となるべき野党第一党が明確に共闘推進の立場に立つことになった。安倍9条改憲と安保法に反対するだけでなく、消費増税や原発再稼働への反対でも、民進党より明確な政策を打ち出している。旧民主党からぬぐいがたくこびりついていた負のイメージから脱却することにも成功した。野党第一党は量的に減少したけれども、質的に強化されたのである。
 第2に、この立憲民主党の躍進は市民と野党共闘の成果として達成された。とりわけ小選挙区で当選した議員の多くは、そのことを十分自覚しているにちがいない。このような実感として共闘の意義を理解できる議員が増えたことも、今後の共闘の発展にとって重要な意味を持つだろう。「手を結べば勝てる」ことを知る者が増えれば増えるほど、共闘への期待が高まり逆流は生じにくくなる。
 第3に、立憲民主党の選挙運動において、新たな政治文化が生まれた。インターネットを利用したネット戦略が功を奏し、若者を巻き込んで大きな威力を発揮した。特にツイッターやフェイスブックでは自民党のフォロワー数を抜き、投票日までに19万を超えている。街頭演説も、いかにスマートに格好良く見せるかに留意し、アーティストのプロモーションレベルに高めたという評価もあるほどだった。

 〇「立憲チームの勝利」に貢献した共産党

 野党共闘の立て直しのために力を尽くしたのが、共闘の推進力としての役割を担ってきた共産党だった。共産党は市民と野党の共闘成功を大方針にすえ、10月7日には立憲民主党・社民党とともに市民連合との7項目の政策合意を結び、協力・連携して選挙に取り組んだ。その成果が立憲民主党の躍進として結実し、市民と野党の共闘勢力が全体として大きく議席を増やすことができた。
 しかし、共産党は比例代表選挙を重点として闘ったにもかかわらず、前回の14年総選挙で獲得した20議席(606万票、11.37%)から、11議席(440万票、7.91%)への後退となった。これに沖縄選挙区で当選した1議席を合わせても12議席にすぎない。改選21議席と比べれば9議席減である。
 これは野党共闘全体で前進するための自己犠牲的な献身の結果でもあった。他の野党共闘候補に一本化するために候補者を降ろすという措置を取り、そのために様々な制約を被ることになった。小選挙区での候補者を減らせば、その分だけ政見放送の時間や選挙カーの運行台数などに制約が生ずる。それにもかかわらず候補者を取り下げたマイナスの影響が出たのである。
 また、選挙戦序盤において野党共闘の立て直しのために忙殺され、小選挙区ごとの候補者調整に手間取ったために比例代表を重点とする独自の選挙活動が手薄になったという面もある。選挙公示後、次第に野党共闘の体制が整い、小選挙区での対決構図が固まったころに比例代表への取り組みに力を入れたが、序盤の遅れを取り戻せなったということだろう。
 そして何よりも、これまで共産党に引き寄せられてきた旧民主党や維新の党の支持者や革新無党派層が、今回の選挙では立憲民主党に殺到したということではないだろうか。民主党政権や改革政党として期待をかけた維新の党などに裏切られ、失望した支持者や無党派層は共産党に期待を寄せてきた。これが地力以上の前進を可能にした背景である。
 そのために共産党は、13年の都議選から連勝街道を進み始める。同年7月の参院選、14年12月の衆院選、16年7月の参院選、そして先の都議選と、いわば連戦連勝だった。今回は一歩後退したわけだが、13年以降でみれば5勝1敗の成績になる。しかも、連携の幅は広がり、共産党の威信と信頼は高まった。次に前進できる条件と要因は十分にある。悲観することはない。
 このような選挙結果について、市民連合も以下のような「見解」を明らかにし、「日本共産党の努力を高く評価」している。立憲野党のためのサポ―ト役に徹し、ゴール前へのアシストによって得点を挙げることに貢献した共産党は、チームの勝利のために大きな役割を果たしたのである。

 「立憲民主党が選挙直前に発足し、野党協力の態勢を再構築し、安倍政治を憂える市民にとっての選択肢となったことで野党第一党となり、立憲主義を守る一応の拠点ができたことは一定の成果と言えるでしょう。この結果については、自党の利益を超えて大局的視野から野党協力を進めた日本共産党の努力を高く評価したいと考えます。社会民主党も野党協力の要としての役割を果たしました。
 そして何よりも、立憲野党の前進を実現するために奮闘してきた全国の市民の皆さんのエネルギーなくして、このような結果はあり得ませんでした。昨夏の参議院選挙につづいて、困難な状況のなかで立憲民主主義を守るための野党共闘の構築に粘り強く取り組んだ市民の皆さんに心からエールを送ります。」

 〇民進党の分裂で「また割き状態」に陥った連合

 今回の選挙に当たって、労働組合はどのように対応したのだろうか。全労連は、市民と野党の共闘実現のために力を尽くし、野党統一候補の勝利に向けて要求実現の立場での活動に参加した。傘下の単産や単組も、組合員の政党支持の自由を保障しながら、市民と立憲野党の共闘を後押しする活動に取り組んだ。
 これに対して連合は、神津会長が希望の党への民進党の合流を話し合った9月26日深夜の密談に同席し、「信義なき再編」の旗振り役の一人になっている。しかし、小池都知事の「排除の論理」によって全員の合流は不可能になり、民進党は希望の党・立憲民主党・無所属の3つに分裂した。
 これに伴って、連合の選挙支援も「また裂き状態」に陥った。連合全体として特定の政党を支援するのではなく、傘下の産別組合がそれぞれ個別に民進党系の候補者を支援するという方針を取らざるを得なくなったのである。
 民進党分裂で連合の組織内候補も3分裂した。連合傘下の産別による各候補の支援の状況は、図4(省略)の通りになっている。希望の党に対しては、自動車総連・電機連合・JP労組・情報労連、立憲民主党については運輸労連・JP労組・私鉄総連、無所属の候補者に対しては、UAゼンセン・自治労・全国農団労が、それぞれ支援する形になった。
 連合労組の場合、労働組合として特定の政党や候補者の支持を機関で決定し、組合員に支持を押し付けるという方法が一般的である。今回のように、その支持の対象が分裂したり、動向が不明であったりした場合、組合や組合員の側も振り回されることになる。特定政党支持押し付けの問題点が、より大きな形で浮き彫りになったと言える。
 これに対して、労働組合としての自主性を尊重しつつ、共同行動の実現に向けて努力した例もある。全国一般東京東部労組の地元である東京・葛飾地域の労働組合4団体が10月4日、「今回の総選挙にあたって、私たち4団体は、この間の運動の積み重ねを踏まえて、憲法改悪反対、『戦争法』廃止、『共謀罪』法廃止の世論を盛り上げるために、力を尽くします」という共同アピールを発表した。
 この4団体は、東部労組が加盟している葛飾区労協のほか、葛飾区労連・葛飾区職労・東京土建葛飾支部で、それぞれ連合、全労連、全労協と異なるナショナルセンター(労働組合の中央組織)に所属している。この4団体は、2016年5月に「労働組合の上部組織の違いを超えて、『戦争法の廃止を求める』共同アピールを発表し、その後、共同での駅頭宣伝・署名行動、学習会の開催などを行ってき」たという。
 これは野党共闘を草の根から作り上げていく貴重な例である。今後も、組合員の政党支持の自由を尊重しながら、労働組合として可能な形での共同を進めていくことが求められている。

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2月3日(土) 2017衆院選の分析と今後のたたかい(その1) [論攷]

〔以下の論攷は、『月刊全労連』No252、2018年2月号、に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

 はじめに

 突然の解散・総選挙だった。安倍首相の意向が報じられたのが9月17日で解散が28日、公示は10月10日で投票が22日。稀に見るあわただしい総選挙だった。どうして突然、解散する必要があったのか。その理由は最後まで明確にならなかった。「大義なき解散」と批判されたのも当然である。
 このあわただしさに輪をかけたのが、小池百合子東京都知事による新党「希望の党」の結成表明に始まる野党内での混乱だった。こうして「小池劇場」の幕が開いた。しかし、「排除の論理」によって舞台は暗転し、民進党は分裂、立憲民主党が登場する。「信義なき再編」による混乱が静まる暇もなく、22日の投票日が迎えられた。
 衆院選の結果は、表1(省略)のとおりである。自民党は284議席、公明党は29議席で、与党は313議席と300議席の大台を確保し、安定過半数の維持に成功した。野党は大きく明暗が分かれ、第一党の立憲民主党は55議席に躍進したが、第二党以下の希望の党は50議席、日本共産党は12議席、日本維新の会は11議席に後退し、社会民主党は2議席を維持した。このほか、無所属が22議席になっている(図1=省略)。
 各政党の選挙期間中の勢いの変化を示すために、ここでもう一つの表2(省略)を示したい。中盤の情勢と選挙結果とを比べたものである。この表を見てわかることは、立憲民主党の勢いのすごさだ。この勢いに呑み込まれるような形で、希望(-6)、共産(-3)、自民(-2)、維新(-1)の各党が、予測よりも議席を減らしている。
 選挙戦の中盤から後半にかけて、立憲民主党の「ブーム」が生じたということだろう。強力な「追い風」が吹いて議席が上積みされたことが分かる。
 今回の選挙では、新たに結成された立憲民主党と無所属だけが議席を増やした。予測との比較を見ても、その勢いを知ることができる。選挙の勝敗ということで言えば、立憲民主党こそが唯一の勝者だった。ここに、今回の総選挙の最も大きな特徴が示されている。
 このような結果をどう見たらよいのか、「劇場型選挙」の舞台の上で何が演じられ、その幕の影でどのような動きがあったのか。その内容と意味を明らかにし、選挙後の課題についても若干の検討を行うことにしたい。

1、 与党は「勝った」のか

 〇自民党の延命と「勝因」

 選挙後の新聞各紙の見出しには、「自民圧勝」「自民大勝」の文字が躍った。自民党は単独で過半数を制し、与党でも3分の2の多数を維持している。政権基盤の安定という当初の目標を達成したのだから、負けたわけではない。しかし、選挙後の安倍首相の表情には、勝利感や高揚感が意外なほど感じられなかった。それは、自民党が支持を増やして「勝った」わけではないからである。
 図2(省略)は、衆院選での自民党の獲得議席数と絶対得票率を示している。これを見ればすぐに分かるように、自民党の獲得議席は2005年の小泉郵政選挙での296議席がピークだった。その後、政権を失った09年総選挙で119議席と惨敗する。12年総選挙で政権に復帰したが、獲得議席は293議席で05年総選挙に及んでいない。
 その後も、14年総選挙では291議席で2議席減、今回の17年総選挙では284議席と7議席減になっている。過去3回の総選挙で、自民党の獲得議席は増えていない。今回は定数が10議席削減されたので単純な比較はできないが、ほぼ現状維持にすぎなかった。
 なお、今回の自民党の獲得議席のうち、比例代表・東海ブロックでの1議席は立憲民主党の候補者が足りなかったために当選したもので、本来であれば自民党の獲得議席は283であった。
 小選挙区での自民党の得票数を有権者総数で割った絶対得票率の変動でも、ピークは05年になっている。政権を失った09年総選挙で大きく減らしているが、政権に復帰した12年総選挙でもさらに減っている点が注目される。自民党は議席を回復したが、有権者内での支持の割合は減っていたのである。この割合は12年総選挙で横ばい、今回の17年総選挙で多少上向いているが、大きな変化ではない。過去3回の総選挙での絶対得票率はほぼ25%で、有権者の4人に1人しか自民党に投票していない。
 それなのに「圧勝」「大勝」などと報じられるような成績が残せたのは、大政党に圧倒的に有利な小選挙区制のためである。この選挙制度のカラクリと恩恵は、対抗する野党が分裂しているときに増大し、統一しているときには減少する。与野党の対決構図が1対1になれば、小選挙区制の害悪を減らすことができる。だからこそ、このような対決構図を作ろうとして市民と野党は共闘をめざしたのである。
 しかし、このような共闘体制は十分に構築できなかった。今回の総選挙でまたもや自民党が「大勝」した根本的な要因はこの点にある。

 〇安倍首相による「疑似餌」と野党の「敵失」

 「衆院選の結果には驚きませんでした。自民党が勝ちましたが、それは他の政党のオウンゴールが原因。野党同士がまるで共食いをしているようでした。」
 日本外国特派員協会(FCCJ)会長でシリア出身のカルドン・アズハリ氏は、こう言っている。多くの日本人の報道関係者の感想も似たようなものだろう。政府寄りの『産経新聞』の石橋文登編集局次長兼政治部長も、次のように指摘している。
 「事前調査では、民進、共産両党が共闘すれば自民党は50議席超を失う公算が大きかった。そうなれば憲法改正は水泡に帰す。それどころか総裁3選に黄信号が灯(とも)り、政権運営もおぼつかなくなる。……ところが、9月25日の首相の解散表明に合わせて、小池百合子東京都知事が『希望の党』を旗揚げした。28日には民進党が希望への合流を決めた。……小池氏が『排除の論理』を唱えたことにより、民進党は希望の党、立憲民主党、無所属の3つに分裂。期せずして自民党が『無敵』となる枠組みが生まれたのだ。しかも小池氏は出馬を見送り、希望の勢いは急速に衰えた。……振り返ってみれば敵失による勝利といえなくもないが、政権与党が圧倒的な勢力を得た意義は大きい。」(『産経新聞』2017年10月23日付)
 このように小選挙区における自民党の「勝因」は明らかだ。それは小池都知事による希望の党の結成と「排除の論理」をきっかけにした野党の分断にあった。このような「敵失」によって、小選挙区制が持っているカラクリと恩恵が増幅させられたからである。
 しかし、自民党は比例代表でも1856万票を獲得し、90万票も増やすなど健闘している。その要因として考えられるのは、第1に、客観的な背景としての北朝鮮危機と経済状態である。北朝鮮の金正恩政権による核開発とミサイル発射実験に国民は不安を高めていたうえに安倍首相はそれを煽りたてた。また、景気の状況も「いざなぎ超え」がささやかれるような一定の回復状態にあり、株価も「官製相場」による高進を続けていた。国民の実感を伴うものではなかったとはいえ、安倍首相が数字を挙げて「景気回復」を強弁できる程度の経済状態だったことは事実である。
 第2に、このような客観的背景を利用して、安倍首相は「疑似餌」をまいた。一定の有権者はこれに食いついて釣り上げられたのである。解散の「大義」として北朝鮮危機への対応や消費増税による増収分の使途変更を打ち出し、若者の教育と子育て支援に力を入れ、高齢者重視から全世代型に社会保障のあり方を変えると約束した。これがある程度、青年層や若いママの期待を集めたのである。
 第3に、「小池劇場」によって混乱に陥った野党の状況は、小選挙区だけでなく比例代表の得票にも微妙な影響を与えた。北朝鮮危機に不安を高めた国民は「信義なき再編」に嫌気がさし、離合集散を繰り返す野党よりも安定した政権の方がましだという意識を強めたのではないだろうか。そこに安倍首相は付け込み、北朝鮮の脅威を煽って政権安定のメリットを強調した。
 他方で、選挙直前に大きな問題となっていた「森友」「加計」学園疑惑には口をつぐんで「丁寧な説明」を回避し、「政治の私物化」という批判を無視した。9条改憲についても、選挙公約の重要項目に掲げたものの街頭演説で触れることはほとんどなかった。重要な争点を隠しての選挙戦術に徹したのである。このような「争点隠し選挙」も、自民党の「勝因」の一つだったと思われる。

 〇「全勝神話」が崩れて「敗北」した公明党

 現状維持に成功した自民党と比べて、公明党の状況は厳しいものだった。公明党は改選前の34議席から5議席減となって29議席にとどまったからだ。総選挙が公示される直前の10月3日、樋口尚也前衆院議員が女性問題で離党して公認を辞退しているから、実際には6議席減になる。
 小選挙区では神奈川6区に立候補した当選7回の前職が敗れて議席を失った。政権交代を実現した2012年選挙以来の小選挙区での全勝がストップするという思いもかけない結果だった。「全勝神話」の崩壊である。
 図3(省略)は公明党の比例票と議席数の推移を示している。これを見れば、今回の結果がいかに大きな「敗北」であったかが分かる。比例代表では前回731万票だった得票数が今回は698万票となり、700万票を下回った。これは自民党と選挙協力を始めた2000年衆院選以降、初めてのことで、13回にわたる衆院選と参院選での最低である。
 獲得議席数でも、民主党ブームによって与党の座を失った09年選挙の21議席に次ぐ少なさになっている。この2回以外、30議席を下回ったことは一度もなかった。これは公明党にとって大きなショックだったにちがいない。
 この結果について、公明党は総選挙総括の原案で、安倍首相を強く支持する姿勢や憲法論議での対応が支持者の不信感や混乱を招いたと指摘していた。斉藤鉄夫選対委員長は、①準備時間の不足、②野党再編で公明党の存在感が埋没した、③当時の現職2人に女性問題が相次いで発覚したことなどを敗因に挙げている。
 党内や創価学会には、特定秘密保護法や安保法の制定、共謀罪の新設などをめぐって「平和の党」を掲げる公明党が安倍首相サイドに押し込まれてきたという不満があるようだ。衆院選で立憲民主党が注目され、「中道やリベラルな政策に期待した無党派層が流れた」(創価学会関係者)という見方も出ており、公明党関係者は「自民に引きずられ続けると、いずれ党内や支持者の不満が爆発しかねない」と指摘している(『毎日新聞』2017年11月11日付)。
 ただし、自民党との距離の取り方は簡単ではない。小選挙区で自民党を応援する見返りに、比例は公明党に投票してもらうように求めているからだ。今回の結果についても、都議選で小池都知事の都民ファーストの会と選挙協力したために自民党側にわだかまりが残り、衆院選に尾を引いたという見方もある。
 安倍首相は自衛隊の存在を明記する改憲を提案しており、公明党は慎重な構えを崩していない。今回の選挙結果は、安倍9条改憲に対する公明党の対応についても微妙な影響を与える。態勢の立て直しを目指す公明党の指導部にとっては、これが大きな試金石になるにちがいない。

 〇小選挙区制の問題点と克服への道

 今回の総選挙では、改めて小選挙区制の問題点が浮上した。そのカラクリと恩恵によって自民党が「勝利」したことは、すでに指摘した通りである。これに関連して、さし当り2点指摘しておきたい。
 その一つは、得票数と議席数の大きなかい離である。今回の選挙での自民党の得票率は小選挙区で47.82%、比例代表では33.28%であった。しかし、議席占有率は小選挙区で74.4%へと跳ね上がり、30ポイント近くの増である。比例代表の場合には37.5%で、4ポイントほどしか増えていない。
 小選挙区の場合、4割台の得票率で7割台の議席を獲得している。この結果、莫大な「死票」が生まれ、大政党の議席が膨れ上がり、有権者の投票行動が歪められ議席に反映されなくなる。このような歪みが選挙への信頼を失わせ、投票率の低下を招いているのではないだろうか。
 もう一つの問題は、今回新たに明らかになった選挙区割りの混乱である。一票の価値の平等を実現するために選挙区割りの変更がなされ、行政区画や生活圏とは無関係に線引きが行われたために大きな混乱を招いた。しかも、今回は突然の解散でもあったために、この混乱に拍車がかかったように見える。
 このような投票価値の平等を実現するための区割りの変更は、今後も繰り返されるにちがいない。選挙区の人口は固定されず、その流動化と人口構成の変化は避けられないからである。一票の価値の平等を保障する点でも、小選挙区制は極めて不合理で不適格な制度なのだ。
 このような問題を解決するためには、制度を変えなければならない。得票率に獲得議席が連動する比例代表制に変えれば、このような問題は解決する。さし当り、全国11ブロックの比例代表はそのままに、小選挙区を廃止してその定数をそれぞれのブロックの比例代表定数に加算すればよい。
 もし、現行の制度が変わらないとすれば、得票数と議席数の大きなかい離によって自民党が常に優位に立つ状況の方を変えなければならない。そのために、唯一有効な方法は野党間の選挙協力である。小選挙区で与党と野党が1対1で対峙するような状況を作ることができれば、圧倒的に与党が有利になる現行制度の欠陥を一定程度是正することが可能になる。
 しかし、その場合でも選挙区割りの見直しと、それに伴う混乱は解決できない。今後、人口減少が進み、さらに人口分布は変化するにちがいない。その影響を最小限にとどめるための選挙制度の変更、すなわち小選挙区制の廃止はいずれ避けて通れなくなるだろう。

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2月1日(木) ヘイト大統領と好戦首相をともに権力の座から放逐するのが今年の目標 [国際]

 今日から2月です。「もうそろそろ春ですね」と言いたいところですが、雪が降るようで春はまだ先です。

 アメリカの連邦議会で、トランプ大統領の一般教書演説が行われました。日本の通常国会で冒頭に行われる施政方針演説に相当するものです。
 トランプ大統領の演説も安倍首相の演説も、美辞麗句と誇張をちりばめた自画自賛に満ちたものでした。これでどれだけ、国民に希望を与えることができたでしょうか。
 トランプ大統領は「今こそ米国の新時代だ」と宣言し、「米国の強さと自信を国内で立て直し、海外でも強い地位を取り戻す」と主張。今年11月の中間選挙をにらんで、税制改革法の成立や株価上昇など政権1期目の成果を強調し、インフラへの大規模な投資や移民制度改革への決意を表明しました。

 引き続きアメリカファーストを掲げて国際社会を「敵」と「味方」に色分けし、中国とロシアへの対抗意識をむき出しにしています。核戦力の強化を打ち出すなど非核化へと歩み出した国際社会の動向に背を向け、北朝鮮への先制攻撃も示唆するなど安倍首相と同様の「力による平和」を打ち出しました。
 好調な経済を自慢しながら軍事力をさらに強化する方針を示しましたが、その直前にニューヨーク株式市場のダウ工業株が急落し、前日比362.59ドル安となったのは皮肉です。この下げ幅は昨年5月17日以来、約8カ月半ぶりの大きさで、一般教書演説を前に冷や水を浴びせた形になりました。
 11月に中間選挙があるというので、「アメリカは一つのチーム、国家、家族だ」と融和の姿勢を示し、民主党にも秋波を送っています。しかし、民主党の議員14人がボイコットし、抗議の黒い服も目立っていたようです。

 確かに、アメリカに「新たな時代が到来」したことは確かでしょう。これほど国内に亀裂が拡大し、国際的な威信を低めて孤立することはかつてありませんでした。
 壁にこだわって公約を守ろうとする姿勢は、強固な30%ほどの支持者には受けるかもしれません。しかし、それよってアメリカの政治と社会はさらに分断と対立を深めるにちがいありません。
 公約を守らなかった実施されていないと言って批判されるのが通例ですが、公約を守って政策を実現したと言って批判されるのはこれまでにないことです。確かに、「新たな時代」がやって来たとは言えますが、それはやってきてはならない時代だったのです。

 このトランプ大統領との密接な関係を自慢しているのが安倍首相です。施政方針演説では「トランプ大統領とは、電話会談を含めて二十回を超える首脳会談を行いました。個人的な信頼関係の下、世界の様々な課題に、共に、立ち向かってまいります」と、親密さや関係の深さを誇示していました。このようなことが自慢の種になるという感覚がすでに異常です。
 トランプ大統領が、アメリカ国内はもとより世界中の鼻つまみ者になっていることが分からないのでしょうか。まあ、似た者同士だから分からないのも仕方がないのかもしれません。
 これから1年、トランプ大統領と安倍首相はともに手を取り合って世界とアメリカ、日本を分断し混乱の渦に巻き込むことになるでしょう。アメリカ国民とともに日本国民も、それに対する覚悟と責任を自覚しなければなりません。

 それを阻むことが、今年1年の両国の国民にとっての大きな獲得目標になります。中間選挙での敗北と通常国会での追及によって、ヘイト大統領と好戦首相を権力の座から放逐することをめざして全力を尽くさなければなりません。 

 なお、今月も以下のような講演が決まっています。お近くの方や関係者の方に沢山おいでいただければ幸いです。

2月1日(木)18時30分 江東区総合区民センター:戦争法廃止をめざす大島の会
2月3日(土)18時 河辺市民センター:市民連合おうめ
2月4日(日)13時 東京革新懇総会:東京労働会館ラパスホール
2月11日(日)14時 静岡市あざれあ(男女共同参画センター):静岡県革新懇
2月18日(日)13時30分 田無公民館:西東京革新懇
2月20日(火)13時30分 八王子由井市民センターみなみ野分館:スイートピーお喋り会

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