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11月6日(日) 参議院選挙後の情勢と国民運動の課題(その4) [論攷]

〔下記の論攷は、『建設労働のひろば』No.100、2016年10月号、に掲載されたものです。4回に分けてアップさせていただきます。〕

3、臨時国会に向けての課題

 *「3分の2国会」が始まった

 衆参両院で与党が3分の2を越えるという力関係の下で、臨時国会が始まりました。国会と自民党内での安倍首相による「一強多弱」状況の下での論戦が展開されることになります。安倍暴走政治の加速を阻んで、ストップさせることができるかどうかという正念場を迎えたことになります。
 この臨時国会は9月26日から11月30日までの66日間とされ、経済対策を盛り込んだ第2次補正予算案、TPP(環太平洋連携協定)承認案と関連法案の成立が最優先にされています。このほか、消費税率10%への引き上げを2017年4月から19年10月に再延期する法案、高年収の労働者の残業代が支払われなくなる労働基準法改正案(残業代ゼロ法案)の成立などが目指されています。
 一方、過去に3回廃案になった「共謀罪」の要件を変えて「テロ等組織犯罪準備罪」を新設する組織的犯罪処罰法改正案も提出が検討されていますた。これには与党内にも慎重論がありますので、反対運動を強めて阻止することは可能です。
 憲法改正をめぐっては、安倍晋三首相は「(衆参の)憲法審査会のなかで、静かな環境において議論を深めてもらいたい」との意向を示しており、両院の憲法審査会で与野党の合意形成を重視した審議が始まるものと見られています。
 さらに、社会保障の財源確保や負担増とサービスの切り下げ、配偶者控除の廃止と税制改革、沖縄の辺野古での新基地建設と高江でのヘリパッド建設の強行、原発再稼働など、問題は山積しています。稲田防衛相の「白紙領収書」による政治資金の不正受給など「政治とカネ」にかかわる疑惑もあります。
 そのようななかで、臨時国会でとりわけ大きな課題になると見られているのが、憲法改正論議と「働き方改革」の問題です。労働組合運動としても、この二つのテーマを重視して取り組みを強める必要があるでしょう。

 *「壊憲」阻止のための新たな戦略

 参院選の結果、憲法をめぐる状況が新たな「危険水域」に入ったこ とは明らかです。しかし、上手に船を「操舵」することができれば、無事にこの「危険水域」を抜けだすことができます。そのためにどのような戦略を立てるかがここでの問題であり、そこでキーワードになるのが「改憲」とは区別される「壊憲」です。
 「改憲」とは憲法の文章を書き変えることではありますが、憲法の原理や理念に抵触するものではなく、平和主義、国民主権、基本的人権の尊重という「憲法の三大原理」を前提とし、自由で民主的な平和国家という国の形を保ったうえでの条文の変更です。
 これに対して、「壊憲」は憲法の文章を変えるだけでなく原理や理念も変えてしまおうというもので、「憲法の三大原理」を破壊し自由で民主的な平和国家という国の形を変えてしまう条文の書き換えを意味しています。
 「改憲」と「壊憲」を分ける境界は、憲法の三大原理にあります。自由で民主的な平和国家としての現在の日本の国の形を変えてしまうような憲法条文の書き換えであるかどうかという点が最大の判断基準になります。
 臨時国会で憲法審査会が再開された場合、そこで「審査」されるべき焦点は改憲案が「改憲」か「壊憲」か、つまり憲法の三大原理を前提としたものであるか、現在の国の形を変えてしまわないかどうかということでなければなりません。このような判断基準からすれば、自民党の憲法草案は完全に失格です。それは「改憲」のたたき台にはなりません。撤回するか破棄することを審査会再開の前提とするべきでしょう。
 このような基準からすれば、与党の公明党はもちろん、いささか微妙ではありますが野党のおおさか維新の会も基本的には「改憲」勢力であって、「壊憲」勢力とは言えません。民進党内の「改憲」勢力も保守リベラルを含む自民党内の「改憲」志向の議員たちも、必ずしも「壊憲」をめざしているわけではないでしょう。
 真の「壊憲」勢力は「日本会議」と「美しい日本の憲法をつくる国民の会」に絞られます。これと同調する「日本のこころを大切にする党」や「日本会議国会議員懇談会」「日本会議地方議員連盟」に属する議員たちこそが真の敵であり、与党と自民党内にクサビを打ち込んでこれらの勢力を孤立させ打撃を集中することが新たな戦略の基本になります。

 *真の「働き方改革」に向けて

 臨時国会で急浮上しつつあるのが「働き方改革」の問題です。安倍首相が改造内閣の「最大のチャレンジ」だとして加藤勝信一億総活躍担当相を「働き方改革担当相」に任命し、「働き方改革実現会議」を開いて年度内をめどに実行計画をまとめるという方針を打ち出したからです。9月3日の記者会見では、長時間労働の是正、同一労働同一賃金の実現をあげ、「非正規」という言葉をこの国から一掃するとのべました。
 安倍首相を議長とする「働き方改革実現会議」に対する政府の対応方針は、図(省略)で示されている通りです。正規・非正規労働者間の賃金差を縮小する「同一労働同一賃金」の実現、長時間労働の是正、給付型奨学金の創設、外国人労働者の受け入れに向けた法制など、幅広い課題が検討されるようです。同一労働同一賃金と長時間労働是正については厚生労働省の検討会が議論を進めており、政府は両検討会の報告も踏まえて来年3月末までに具体案を盛り込んだ「働き方改革実行計画」を取りまとめ、順次関連法案を提出する方針だとされています。
 このような形で労働政策が重要な課題として取り上げられ、非正規雇用の処遇改善、賃金の引き上げ、長時間労働の是正などが本格的に取り組まれようとしていることは注目されます。このような動きが「働かされ方改革」ではなく、真の「働き方改革」となるための取り組みが求められることになるでしょう。
 これらの課題は、これまで労働側が要求して無視され放置されてきました。そのために、非正規化と雇用の劣悪化、賃金の低下とワーキングプア、長時間労働と健康被害や少子化など状況が悪化して多くの社会問題を生み出し、改善を求める声や運動も高まってきました。その結果、もはや無視できないまでに矛盾が高まり、改革に着手せざるを得なくなったということでしょう。
 しかも、少子化の進行とともに1995年をピークに生産年齢人口の減少が続き、震災復興とオリンピックなどのための人手不足もあって、資本の側からしても労働力の確保が深刻な問題になってきました。女性や高齢者の人材活用、労働力の保全と有効活用のための政策展開が必要になってきたということでもあります。
 だからといって、労働者の求める方向で改革が進むとはかぎりません。ここでも労使の利害は異なっており、「誰のための改革か」が問われなければならないからです。一方で長時間労働の是正や勤務間インターバル規制の導入促進を言いながら、他方で「残業代ゼロ法案」を出そうとしているなど、政策内容は「玉石混交」となっています。「玉」だと思って割ってみたら中から「石」が出てくるなどということがあるかもしれません。
 とりわけ、本来なら厚生労働省が担当するのが当たり前の「働き方改革」を新設の大臣のもとでの会議でやり、公益・労働・経営の3者同数で構成される労働政策審議会が無視されている点は大きな問題です。労働者の声を遠ざけ、財界の主張がより強く反映される労働政策決定の新しいシステムづくりにならないように監視し、運動の側からの働きかけを強め要求実現のチャンスとして生かしていくことが重要になっています。
 資本による職場支配の成功が、新たな失敗を生み出してしまったということです。その結果必要となった「働き方改革」を、新たな労働者支配の手段としてはなりません。そのためにも、労働組合運動の本領を発揮することが求められています。


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