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11月12日(月) 安倍異常政権の深層を衝く―3選されても嵐の中の船出となった安倍首相(その3) [論攷]

 〔以下の論攷は、治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟が発行している『治安維持法と現代』2018年秋季号、に掲載されたものです。3回に分けて、アップさせていただきます。〕

3、安倍首相の野望を打ち砕く力はどこに

 自民党総裁選の真実

 安倍首相が総裁選挙で3選されたのは事実ですが、必ずしも安定した支持によって支えられているわけではありません。自民党総裁選挙の中身を子細に分析すれば、「安倍一強」の脆弱性が明らかになります。
 総裁選で石破氏の254票に対して安倍首相は553票を獲得し、圧勝したように見えます。しかし、「党員票」の状況を見れば、全く違った光景に出会います。安倍首相の得票は55%で、石破氏の得票は45%と肉薄していたからです。7割を獲得するという安倍首相陣営の目標からすれば驚愕する結果であり、石破氏が善戦したことは疑いありません。
 しかも、総裁選の有権者である自民党員の中には、かつて犬や猫の名前まであり代理投票などもありました。選挙自体も公職選挙法の規制を受けず、金をばらまいたり飲ませたり食わせたり、何でもありです。今回の選挙の途中でも、石破支持の地方議員や国会議員に圧力がかけられていたことが明らかになりました。
 そのような懐柔や締め付けが横行する下での選挙結果でも、石破氏は半分近い支持を集めました。投票率が62%でしたから、安倍首相の55%という得票は自民党員の34%にすぎません。つまり、安倍首相は自民党員の3分の1にしか支持されていないということになります。これが、総裁選で示された真実だったのです。

 内閣改造と暗雲漂う臨時国会

 10月2日に自民党役員と内閣の改造が行われ、第4次安倍改造内閣が発足しました。安倍異常政権にふさわしい、最低最悪で異常な内閣になっています。「土台」とされている菅官房長官や麻生太郎副総理兼財務相は留任し、その周りを側近や「お友達」の議員が固め、過去最多となった新入閣者は派閥均衡・滞貨一掃の古手がほとんどという顔ぶれです。
 唯一の女性となった片山さつき地方創生担当相は西日本豪雨災害の最中に「赤坂自民亭」で宴会をしていた様子や貧困家庭の子どもを中傷するようなツィートをして問題になりました。原田義明環境相は学歴詐称問題で副文科相を辞任したり、「南京大虐殺」についての政府見解の見直しを求めたりしたことがあります。桜田義孝五輪担当相も「慰安婦はビジネスだ」との発言を批判されて撤回した過去がありました。
 失言や暴言のリスクが高い「ガラクタ」ばかりをかき集めたようなものです。早速、柴山昌彦文科相が教育勅語を評価するような発言をして批判を浴びました。しかも、公明党出身の石井国交相を除く19人の閣僚全員が改憲右翼団体と連携する「神道政治連盟国会議員懇談会」に所属し、「日本会議国会議員懇談会」にも14人が加盟しています。
 改憲・右翼的志向の強さは、自民党役員人事で一層明瞭になっています。憲法改正推進本部長に下村博文氏、総務会長に加藤勝信氏、選対委員長に甘利明氏、筆頭副幹事長に稲田朋美氏など安倍首相の盟友や側近が起用され、露骨な「改憲シフト」が敷かれました。臨時国会で改憲発議をゴリ押しする狙いが明瞭です。
 しかし、改憲に向けての視界は不明瞭で、このような前のめり人事は逆効果になりかねません。安倍首相が改憲発議に本腰を入れようとしているのも成算があってのことではなく、求心力を維持して「死に体(レームダック)」化を避けるために改憲を振りかざさざるを得ないからです。
 秋の臨時国会では日米貿易協議や消費税の10%への再引き上げ問題などの難問が待ち構えています。安倍首相が最重要課題としている改憲問題では、石破氏など自民党内でさえ慎重論があり、公明党の消極姿勢や立憲野党の反対、急ぐべきではないという世論などの「壁」があります。
 公文書改ざんやセクハラ問題、暴言などでとっくの昔に辞任していなければならないのに無理やり続投させた麻生氏、政治とカネの問題を抱えている甘利氏や下村氏、岩屋氏など、野党の追及や世論の批判によっていつ爆発するか知れない「地雷」を組み込んだ新体制で、このような暗雲漂う臨時国会を乗り切れるのでしょうか。

 野党共闘の威力と「亥年現象」

 第4次安倍改造内閣の前途には、もう一つ大きな試練が待っています。それは選挙です。2019年は春に統一地方選挙があり、夏に参院選があります。「選挙の顔」として勝ち抜くことができなければ、安倍首相には未来がありません。
 安倍政権が選挙で勝ち続けてきたのは確かですが、有権者内での得票率(絶対得票率)はそれほど高くありません。参院選の選挙区や衆院選の小選挙区での絶対得票率は25%前後で、比例代表での絶対得票率は16~17%ほどにすぎません。それなのに自民党が勝利してきた秘密は、野党の分断と投票率の低さにあります。
 逆に言えば、現状のままでも、野党が共闘してまとまり投票率が1割ほど高くなって野党に入れば勝つことができます。そのためには、何としても野党共闘を実現しなければなりません。共闘できれば勝利の展望が見えてきます。諦めていた有権者も、投票所に足を運んで野党候補を後押しする可能性が高まります。
 しかも、来年の参院選挙は統一地方選挙と一緒に戦われます。この12年に一度の亥年の参院選では自民党が苦戦するという「亥年現象」が繰り返されてきました。1959年を唯一の例外にして、71年、83年、95年の参院選では自民党が議席を減らしています。
 とりわけ、前回の2007年参院選は第1次安倍政権の下で実施され、自民党の獲得議席は37議席と89年参院選以来の歴史的惨敗となり、60議席を獲得した民主党に初めて参院第1党の座を明け渡しました。ちなみに、この選挙では公明党も大敗し、神奈川県、埼玉県、愛知県の選挙区で現職議員が落ちています。
 市民と野党との共闘によって、この07年参院選を再現させることができれば、安倍政権を打倒することができます。そうすれば、解散・総選挙に向けての展望を切り開くことも可能になるでしょう。

 むすび―国賠同盟・運動への期待

 安倍政権はすでに「賞味期限」が切れています。安倍首相が掲げてきた「3本の矢」「地方創生」「女性活躍」「一億総活躍社会」「人づくり革命」「働き方改革」などの目玉政策もスローガン倒れに終わっています。歴代自民党政権が取り組んで来た「政治改革」「行政改革」「構造改革」「雇用改革」「教育改革」「大学改革」「司法改革」「税と社会保障の一体改革」「農業改革」などの「改革」路線も失敗の連続です。
 それなのに安倍首相は自民党総裁として3選され、さらに3年間続投することになりました。国政選挙で連勝し、内閣支持率も上下しながらそれなりに安定しているからです。その背景と要因は、小選挙区制を導入した政治改革や官邸支配を強化して官僚の人事権を握った行政改革など、制度「改革」の一部が国会と自民党内での「一強」を生み出す点で有利に働いたからです。
 教育とマスメディアに対する支配と統制の強化も、安倍内閣を支える装置となりました。社会や国民意識の変容と右傾化は安倍内閣支持を安定させる背景の一つでした。安倍長期政権の深層には、右傾化する日本社会の存在があったのです。
 安倍首相は「(戦前の)日本を取り戻す」という野望を実現するために、このような社会の変容を促進するとともに政治的に利用してきました。ときには、意識的なフェイク(虚偽)情報を流すことさえためらいませんでした。こうして、安倍政権は社会の底辺で蘇生しつつある草の根の「戦前」によって支えられてきたのです。
 フェイク(虚偽)にはファクト(事実)で対抗しなければなりません。戦前の日本社会の実像を明らかにし、そのおぞましさと恐ろしさをいつまでも伝え続けていかなければ、いつかは忘れられてしまいます。忘却こそ、戦前回帰への始まりなのです。
 治安維持法という戦前最悪の弾圧法の実態を明らかにし、その被害者を救済することによって国の責任を問うことは、忘却への最善の抵抗手段にほかなりません。安倍政権が社会の底辺に蘇りつつある草の根の「戦前」によって支えられている以上、それを草の根で掘り崩す国賠同盟の存在と運動は、いつまでも現代的な意義を失うことはないでしょう。

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