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8月4日(土) 今日の政党・政治運動―ポピュリズムとの関連をめぐって(その3) [論攷]

  〔以下の論攷は、2017年11月11日に開催された労働者教育協会の基礎理論研究会での報告に加筆・修正したもので、同協会の会報『季刊 労働者教育』No.161 、2018年7月号、に掲載されました。5回に分けて、アップさせていただきます。〕

 3、日本におけるポピュリズム

 では、日本においてポピュリズムの問題は、どのように理解できるのか。日本でのポピュリズムとして把握できるような政治現象は、これまで欧米ほど目立つものではありませんでした。しかし、そのような政治現象がなかったわけではありません。
 右派ポピュリズムとして理解できるものには、自民党の内外からの体制補完の動きがあります。これには1990年代の「日本新党」、その後の「小泉郵政選挙」、さらには「維新の党」、地域的な政党ではありますが名古屋の「減税日本」なども、右派ポピュリズム的な現象だといえると思います。
 これに対して、左派ポピュリズムも生じています。それが既存政治の失敗とそれへの失望を背景としているという点では国際的な背景と共通しています。89年参院選での社会党を中心とする野党の躍進、93年衆院選での政権交代、そして09年衆院選での民主党の躍進と政権交代などがありました。いずれも選挙に際してある種の「ブーム」が生じ、熱狂の中で政治転換が図られています。
 今回の都議選でも、同様の現象が生じました。基本的には右派ポピュリズムの動きとして理解して良いと思いますが、「都民ファーストの会」が50人立候補し、49人が当選しました。「小池人気」が先行し、個々の候補者がどのような人物なのか、どのような経歴で、どのような主張をしているのかなど、候補者の人柄、適性、政策などが問われることなく、都民ファーストの会から立候補しているという、ただそれだけの理由で当選しました。衆議院選挙の場合も、当初、同じようなポピュリズム現象が、「小池人気」のもとで生ずるのではないかと見られていました。
 今回の総選挙の大きな特徴であり驚くべき事態だったのは、野党第一党の民進党が選挙直前に姿を消したことです。かつてなかったことであり、これからもないだろうと思います。小池都知事が結成した希望の党に民進党の全員が入り、そこから立候補するという方針を民進党の前原代表が決断し、両院議員総会で承認されたからです。
 なぜ前原さんがこのような驚天動地の方針を提案し、民進党の全員がなぜこれを承認したかといえば、それは都議選での経験があったからです。都議選では「小池人気」によるポピュリズムが生じ、都民ファーストの会が完勝して自民党は惨敗しました。民進党もわずか5議席に終わります。敗北の責任を問われるかたちで蓮舫代表が辞任し、代表選挙が実施されて前原さんが当選しました。
 同じようなことが衆議院選挙でも起こるのでは、と恐れたのではないか。そうなれば民進党は存亡の危機に陥ります。「小池人気」に乗るかたちで生き残りを図れば、自民党が歴史的惨敗となって安倍さんにトドメを刺すことができるかもしれないと思った。前原代表だけではなく、民進党の多くもこう考えたのだろうと思います。
 しかし、これが暗転します。前原さんだけでなく小池さんも躓いた。「躓きの石」となったのは、「なだれ込み」路線に対して「排除の論理」を対置したことです。これによって事態は大きく転換します。小池さんが「全員を受け入れるということはさらさらございません」とニッコリ笑って言ったとき、風向きは大きく変わってしまった。ベクトルが逆転したのです。
 結局、改憲と安保法制を認めるという「踏み絵」を踏まされ、ふるいをかけられた。ふるいから下に落ちたゴミやガラクタが希望の党に入ります。逆ではありません。落ちた人が希望の党に入り、残ったまともな人たちによって立憲民主党が結成されたのです。こうして新しい党に対する「追い風」と熱狂が生じます。これは左派ポピュリズムの発生でした。
 ただし、日本の特徴は、ポピュリズムがそれほど強いものではないということです。欧米に比べればまだ弱いと理解してよいのではないか。それは難民問題がほとんど存在していないということが要因です。テロ事件についても、欧米の場合は大きなテロ事件が頻発していますが、日本では起きていません。1995年にあったオウム真理教事件はテロ事件でしたが、外国のようにイスラム国などの外部勢力への思想的な共鳴や同調による国際テロ事件ではありません。これが海外のような右派ポピュリズムの熱狂を生む状況にならない理由だと言っていいと思います。
 経済も比較的安定しており、GDPはそれほど大きな上昇を示してはいませんが、戦後最長になるといわれるような経済成長がなされ、総選挙が始まったころから株価が上がりました。このような経済状況にあるために、国民生活が改善されているわけではなく実感も乏しいわけですが、諸外国に比べれば安定した状況が、既存政治への失望や反発を強めない背景になっているのではないかと思います。


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