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6月28日(木) 米朝首脳会談が切り開いた「対決から対話へ」の歴史的転換 [国際]

 国際政治を動かすベクトルが逆転したということではないでしょうか。米朝首脳会談の歴史的な意義はそこにあると言うべきでしょう。
 この意味を理解せず、その大転換を前提としないどのような議論も、国際政治の行く末を論ずることや見通すことはできません。それほど大きな激変が、6月12日にシンガポールで起きたということです。

 朝鮮半島を舞台にした戦争の危機が回避されただけでも大きな成果でした。アメリカと北朝鮮の「どちらが勝ったのか」などという議論がありますが、どちらも戦争を望んでいなかったというのであれば、「どちらも勝った」ということになります。
 戦争で大もうけを狙っていた一部の軍産複合体という「戦争屋」どもを除けば、平和的な解決を望んでいたのは朝鮮半島やその周囲の人々だけでなく世界の大多数の人々でした。戦争ではなく平和的な交渉による問題解決への道が開かれたのですから、これらの人々も「勝者」だったと言えます。
 もし、「敗者」がいるとすれば、それは日本の安倍首相でしょう。「圧力」一辺倒で首脳会談実現の足を引っ張ったあげく、トランプ米大統領には貿易面で裏切られ、ロシアのプーチン大統領にも領土問題で騙され、北朝鮮の金正恩委員長からは相手にされず、韓国の文在寅大統領とはギクシャクしたままで、中国の習近平主席からも適当にあしらわれるという醜態を演じ、「蚊帳の外ではない」と叫びながら蚊帳の外で飛び回っている一匹の蚊のようになってしまったのですから。

 特に、北朝鮮との関係では先方の厳しい対応が際立っています。これまでの拉致問題をめぐる日朝交渉で北朝鮮は日本への強い不満を抱き不信感を高めてきたからです。
 しかも、その中心に居て、時にはアメリカの背後で軍事的な対応さえほのめかし、常に圧力のみを主張し続けてきたのが安倍首相でした。このような安倍首相への嫌悪と反感は、米朝首脳会談後も払しょくされていないようです。
 なかでも最悪だったのが、1月16日に河野太郎外相がカナダ・バンクーバーで開催された北朝鮮問題を話し合う関係国の外相会合で、北朝鮮との外交関係の断絶や北朝鮮労働者の送還を呼びかけた声明でした。平昌での冬季オリンピックへの北朝鮮代表団の参加などが予定され、米朝首脳会談に結びつく動きが始まっていた段階でのこのような呼びかけは、日本政府がいかに事態の進展を見誤っていたかを象徴的に示すものだったと言って良いでしょう。

 米朝首脳会談では、アメリカによる体制保障と北朝鮮の非核化が約束されました。同じようなことはこれまでも約束され、北朝鮮によって破棄され覆られるという歴史が繰り返されています。
 このような経過もあって、北朝鮮は信用できない、今回の合意も抽象的で具体性に欠けており、裏切られるにちがいないという悲観的な見方が支配的です。しかし、このような見方は今回の首脳会談の歴史的な意義を十分に理解していない誤ったものだと思います。
 米朝両国における外交・安全保障政策のベクトルが大きく変化したことは誰にも否定できない事実だからです。非核化に向けて揺れ戻しや紆余曲折はあるでしょうし、一直線には進まず時間はかかるでしょうが、この方向でしか問題の解決はあり得ず、それをどう確実なものにするのかという立場から対応すべきではないでしょうか。

 これまでとの違いを言えば、今回の合意は米朝両国の最高指導者によってなされたものだという点が重要です。担当者や実務者レベルの約束ではなく、史上初めての米朝首脳会談による合意であり、簡単に覆されるようなものではありません。
 また。米朝首脳会談に関連して、南北朝鮮の首脳会談、北朝鮮と中国との首脳会談など、関連するトップ同士での合意が積み重ねられているという点も重要です。なかでも、中国との間では3回もの首脳会談が行われ、シンガポールへの往来のために特別機まで中国から提供されました。
 このように、今回の米朝合意の後ろ盾になっているのが中国だという点も重要です。アメリカや日本が軍事的なオプションを含めた圧力路線を主張していた時にも、朝鮮半島での戦争に反対し非核化を望んでいた中国とロシアはあくまでも対話による問題の解決を主張していたからです。

 決定的に重要なのは、対話と交渉の道が開かれ、朝鮮半島における緊張の緩和と信頼の醸成に向けての具体的な措置が次々に実施されているということです。その結果、日本に対する脅威も大きく減少しました。
 『朝日新聞』6月27日付の社説「ミサイル防衛 陸上イージスは再考を」が「安全保障分野で脅威とは、相手の『能力』と『意図』のかけ算とされる。北朝鮮にミサイルがあることは事実だが、対話局面に転じた情勢を無視して、『脅威は変わらない』と強弁し続けるのは無理がある」と指摘しているように、北朝鮮の「意図」が大きく変化しました。小野寺防衛相が「北朝鮮の脅威はなにも変わっていない」と繰り返しているのは、このような安全保障のイロハを理解していないからです。
 もちろん、非核化とミサイルの削減によって攻撃「能力」を減らしていくことが必要です。同時に、緊張緩和と信頼醸成による攻撃「意図」の縮小も大きな意味を持ち、この点ではすでに多くの具体的な措置が取られているということに注目する必要があります。

 6月25日に、韓国と北朝鮮は朝鮮戦争の開戦68周年を迎えましたが、南北は軍の通信回線を復旧させる実務協議を行い、今は1回線しかない回線を過去に最大で9回線あった状態まで復旧させることで合意しました。韓国統一省は、26日に鉄道連結、28日に道路連結、7月4日に北朝鮮の荒廃した山林復旧の実務協議を板門店などで行うという新たな対話の日程を明らかにしました。
 韓国の各地では記念式典も開かれましたが、李洛淵(イナギョン)首相は、ソウル市内で開かれた式典で、「(南北の軍事境界線近くに展開する)長距離砲を後方に移すことが議論されている」と明らかにしています。他方、朝鮮通信によれば、北朝鮮の労働新聞(電子版)は25日付で、朝鮮戦争に関する7件の記事を載せましたが、米国を名指しで非難せず「米帝」の表現も使いませんでした。
 すでに米朝首脳会談前に、拘束されていた3人のアメリカ人が帰国し、首脳会談直後には米韓軍事演習の中止も発表されています。訪ロした文韓国大統領とロシアのプーチン大統領との間でシベリア横断鉄道と朝鮮半島を横断する鉄道の連結についても協調していく方針で一致し、プサン発ロンドン行きのユーラシア大陸横断鉄道も夢ではなくなっています。

 新しい歴史的な局面に向けての扉が、東アジアで開かれようとしているということです。朝鮮戦争の終結が宣言され、最後まで残った「冷戦」が終わろうとしているように思われます。
 「対決」から「対話」へとベクトルが逆転し、国際関係を律する原則が大きく方向を転じました。日本国憲法前文と9条が本格的に活かされ、その本領を発揮するような「活憲の時代」が、今こそ幕を開けようとしているのではないでしょうか。

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