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8月6日(土) 参議院選挙の結果と政治変革の展望(その1) [論攷]

〔以下の論攷は『東京革新懇ニュース』7・8月合併号、2016年8月5日付、に掲載されたものです。2回に分けてアップします。〕

 負けはしたけれど完敗ではなかった

 注目の参院選でした。各党の議席は自民56、民進32、公明14、共産6、維新7、社民1、生活1、無所属4となっています。
 自民党と公明党の与党は、改選議席の過半数である61を超えて70議席となりました。これは安倍首相が掲げていた目標です。その目標を9議席上回ったわけですから、今回の参院選で与党が勝利したことは明らかです。
 しかし、それでは自民党が圧勝したのかといえば、必ずしもそうではありません。確かに自民党は比例代表で3年前から165万票以上増やして15年ぶりに2000万票台に乗せて1議席増とし、56議席となって改選議席の50議席を6上回りました。しかし同時に、選挙区では前回より10議席減となって合計で9減らしています。単独での過半数である57議席にも1議席足りませんでした。
 つまり、与党は勝ちましたが、自民党は圧勝したわけではありません。手放しで喜べるような結果ではなかったのです。逆に言えば、野党は確かに負けはしましたが、完敗したわけではありません。
 参院選の結果、確かに改憲勢力は改憲発議に必要な参院での3分の2の壁を突破しました。しかし、これも無所属の改憲派を合わせた議席数で、その中身はバラバラです。公明党は「改憲勢力ではない」と弁解し、大阪維新の会は9条改憲を主張しているわけではありません。
 安倍首相は選挙中、街頭演説で改憲には触れませんでした。この「改憲隠し戦術」には、メリットとデメリットがあります。議席を獲得するうえでは効果的でしたが、選挙後、直ちに改憲に突き進めば国民から大きな反発を受けるリスクも高めました。
 「任期中での改憲」に執念を燃やしている安倍首相は、投票日夜のテレビ番組でさっそく「どの条文をどう変えていくか、憲法審査会で議論していく」と発言しています。衆参両院の憲法審査会での審議を再開し、秋からでも改憲論議を進めていきたいと考えているのでしょう。

 自民党が踏ん張った要因は

 歴史的に振り返ってみると、自民党の議席のピークは衆院で2012年総選挙、参院では2013年参院選でした。衆院では2014年12月総選挙で2議席減らし、今回の参院選では9議席減らしています。2012~13年を頂点に、その後は下り坂だということが分かります。
 それでもこの坂を転がり落ちることなく、今回は頂上から少し下ったところで踏ん張ったように見えます。どうして、それが可能だったのでしょうか。
 政権を不安定にさせている欧米諸国との違いでは政治的混乱の要因となっている難民問題がなく、逆に日本周辺における安全保障環境の不安定さという問題を抱えていることが挙げられます。これらが政権にとって有利に働きました。
 イギリスのEU離脱決定や中国の経済不振などもあって世界経済の先行きは不透明で、バングラデシュでのテロ事件で日本人が狙われて犠牲になるということもあって国民の不安感が高まっています。そのために政治の安定や安心を求めて変化を嫌う意識が生じたのではないでしょうか。

「隠す、盗む、嘘をつく」

 これに加えて、安倍首相の選挙戦術も功を奏したように見えます。今回の選挙では、とりわけ「隠す、盗む、嘘をつく」というやり方が目立ちました。
 第1の「隠す」ということでは、「選挙隠し」「争点隠し」という特徴があります。この間のマスメディアに対する懐柔工作と恫喝によってテレビは委縮し、参院選の報道は3年前より3割減となり、ワイドショーは都知事選の方を取り上げる始末です。安保法や憲法、TPP(環太平洋経済連携協定)、原発再稼働、沖縄辺野古での新基地建設などの争点に触れることを避け、安倍首相は党首討論から逃げただけでなく街頭演説では改憲について口をつぐみました。
 第2の「盗む」ということでは、野党の政策の剽窃という問題があります。最低賃金時給1000円、同一労働同一賃金、給付型奨学金の創設、保育園の増設による待機児童解消、保育士や介護福祉士の処遇改善などを次々と打ち出し、野党との政策的な違いを曖昧にする作戦に出ました。自民党は「これまで野党が重視してきた政策を取り入れた」(『毎日新聞』7月9日付)と指摘されるように、政策を盗んで野党との違いを見えにくくしたのです。
 第3の「嘘をつく」ということでは、「アベノミクスは道半ば」だと言い張りました。逆から読めば「ばかな道」と言われたように、すでに失敗が明らかなアベノミクスを取り繕い、有効求人倍率など都合のよい数字を利用して嘘をつきました。そもそも消費税再増税の先送りのための「新しい判断」が、参院選での争点化を避けるための大嘘だったと言うべきでしょう。

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