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11月9日(日) 国家公務員給与減額違憲訴訟の東京地裁判決についての疑問 [裁判]

 昨日、ある研究会で国家公務員の給与減額違憲訴訟について弁護団事務局長の萩尾健太弁護士の報告を聞きました。東京地裁での一審判決は、「原告らの請求をいずれも棄却する」という全面敗訴です。
 しかし、それで良いのかという大きな疑問を感じました。東日本大震災からの復興に要する財源を確保するという理由で、2012年4月分の給与から人事院勧告によらない国家公務員給与の平均7.8%(賞与は一律10%)の減額が実施され、それが当然だとされたからです。

 第1の疑問は、なぜ国家公務員だけが復興財源を二重に負担しなければならないのかということです。東日本大震災からの復興財源は所得税、法人税、住民税に上乗せされる形で徴収され、国家公務員も国民としてそれを負担しているからです。
 このような所得税と住民税の上乗せによる税負担に加えて、国家公務員だけが給与の削減によって平均一人100万円程度の強制カンパを徴収されたことになります。それが国家公務員だけというのは、取りやすいところから取ったというに過ぎないのではないでしょうか。
 しかし、東日本大震災の被害に対して国家公務員は何ら責任を問われる筋合いはないどころか、その復興に向けて特別に大きな役割を果たすことが期待される立場にありました。本来であれば、公務員は給与を減額されるどころか、その特別な役割発揮に向けて給与を増額するとか特別手当を支給されるべき立場にあったというべきでしょう。

 第2に、給与の減額は平均7.8%、賞与では約1割、平均100万円の削減になりましたが、どうしてこのような額になったのかということです。多少の負担はやむを得ないとしても、なぜこれほどの額を強制的に差し引くことになったのでしょうか。
 この削減額についての明確な算定根拠は示されたのでしょうか。その根拠とは復興のために必要な額の全体ということではなく(すべての復興財源を公務員だけで負担できるはずがありませんから)、その一部を国家公務員として負担するにふさわしい割合がこれだけであるという正当性根拠を意味しています。
 東日本大震災の復興財源が必要なことは明確であり、国民こぞってそれを負担すべきことも了解されるとして、そのうちのどれだけを公務員給与の減額という形で確保すべきであるかは、負担することを求められた当事者に納得される額ないしは割合でなければならないないでしょう。それについての合理的で納得を得られるような根拠は示されたのでしょうか。

 第3に、そもそも労使関係において、賃金は勝手に決められて良いものなのかという問題があります。そうであってはならないということ、本来、労使の交渉によって決められるべきであるということは、公務員であっても例外ではありません。
 だからこそ、このような労使交渉の権利を十分保障されていない公務員には代替するものとして人事院勧告というシステムがあるわけです。労働基本権を代替するシステムが人事院勧告ですから、この代替システムが機能不全に陥った場合には当然ながら本来の労働基本権の行使が認められることになるはずです。
 人事院勧告を無視して公務員給与の削減を行うということは、「文句があるなら、本来の権利を行使せよ」と言っているに等しいことになります。一方で労働基本権の行使を制限しながら、他方でその代替措置を無視するというのでは、あまりにも理不尽ではないでしょうか。

 第4に、人事院の勧告はあくまでも勧告であって、国会は必ずしもそのまま従う必要はないというのが裁判所の見解です。これまでも実施が遅らされたり、凍結されたりしたことがあったからです。
 しかし判決も、一方で「人事院勧告通りの立法をすることが義務づけられているとはいえない」としつつ、他方で「国会は、国家公務員の給与決定において、人事院勧告を重く受け止めこれを十分に尊重すべきことが求められている」と指摘しています。つまり、給与決定において人事院勧告は無視してよいものではなく、それに従わない場合でも、どのような形で「十分に尊重」され考慮されたのかがきちんと説明される必要があります。
 「勧告どおりの立法」がなされなかった場合でも、人事院勧告が「絵に描いた餅」ではなく、「重く受け止めこれを十分に尊重」しているということ、このシステムがきちんと機能し考慮されているということを示す必要があるのではないでしょうか。そうでなければこの制度に対する信頼を維持することはできず、人事院勧告制度の正当性が揺らぐことになります。

 萩尾弁護士は必ず控訴すると仰っていました。高裁での二審では、以上に述べたような点についても疑問を晴らすような審理を望みたいものです。



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