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4月18日(金) 抑止のためで行使しない集団的自衛権なら、なぜ行使できるようにしなければならないのか [集団的自衛権]

 今日の『毎日新聞』のシリーズ「どう動く集団的自衛権 識者に聞く」に孫崎享元駐イラン大使のインタビュー記事が出ていました。「報復招く軍事手段」という見出しです。
 「一番の問題点は日本に危険を呼び込むことだ。集団的自衛権を行使すれば、いずれかの段階で自衛隊は戦闘行為に入るだろう。相手側に死者が出れば報復を覚悟しなければならない」と指摘しています。これは重要な指摘です。

 集団的自衛権の行使とは、同盟国が攻撃されれば、自国が攻撃されていなくても反撃する権利です。反撃すれば、当然報復があるでしょう。
 報復されれば、日本は戦争に引きずり込まれることになります。もともと、自国が攻撃されていなかったにもかかわらず……。
 孫崎さんが指摘されるように、「仮に北朝鮮が米国に弾道ミサイルを発射した場合、日本が集団的自衛権を行使して迎撃すれば、米国にとってはプラスだ」が、「報復攻撃される日本はマイナスにしかならない」というわけです。これによって日本の安全が強まるのか弱まるのか、言うまでもないでしょう。

 このような懸念に答えようとしたのかもしれません。2日前の同じ『毎日新聞』のシリーズ「どう動く集団的自衛権 識者に聞く」で、安保法制懇座長代理を務めている北岡伸一国際大学学長がインタビューに応じて、次のように語っています。
 「集団的自衛権は基本的に抑止であり、外国による侵略の可能性を少しでも減らすのが目的だ。日本は戦後、個別的自衛権を行使したことは一度もない。集団的自衛権もそうなるはずだ」
 この部分を読んで、私はズッコケてしまいました。「基本的に抑止」だと言うのであれば行使可能なケースについて議論することに意味はなく、「行使しない」と言うのであればどうしてそれを「行使できる」ようにする必要があるのかが分からなくなってしまうからです。

 北岡さんが言いたいことは、集団的自衛権の行使を容認すれば日米同盟が強化され、それによって今以上に「抑止力」を高めることができるということのようです。この論理には、日米同盟が強化され軍事力が増強されれば「抑止力」が高まって日本は安全になるという前提があります。
 しかし、このような前提は真っ赤なウソです。歴代の自民党政権は憲法9条の解釈改憲で「自衛のための必要最小限度の実力」なら保有できるとして自衛隊を育成し、日米安保条約を結んで在日米軍に基地を提供してきました。
 歴史的に見て、日米同盟が強化され軍事力が増強されてきたことは明らかですが、それによって日本の安全は高まったのでしょうか。このような軍事的対応能力の一貫した増強にもかかわらず、北朝鮮は核実験とミサイル開発を続け、中国は軍事費を増やし続けてきたのではありませんか。

 つまり、「抑止力」としての効果がなかったことは、歴史的経過に照らして明らかです。だからこそ、今また新たに「抑止力を高めるため」という口実で、沖縄在日米軍への基地提供や自衛隊の増強に加えて、集団的自衛権の行使容認の必要性が主張されているのではありませんか。
 このような日本の動きは、北朝鮮や中国の警戒感を高め、それに対抗するためということで新たな軍拡に向けての口実を与えることになるでしょう。こうして、軍拡を抑制し軍事的な脅威を「抑止」するとしてなされた措置が、かえって軍拡を招き軍事的な脅威を増大させるというパラドクスを生み出すことになります。
 日本の政治外交史の専門家で、政府の国連代表部の次席代表だった北岡さんが、このようなことも理解できないのでしょうか。行使するはずのない集団的自衛権を使えるようにするために汗をかかなければならないとは、北岡さんもお気の毒としか言いようがありません。

 おそらく、北岡さんはこのようなことは十分承知のうえで、国民の懸念や公明党の慎重姿勢に応えるためにこのような言い方をしたのでしょう。それがかえって、集団的自衛権行使容認の必要性を不明確にするような形になってしまったのは、まことに皮肉なことだと言うしかありません。

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