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10月28日(月) 苛酷なスクラップ・アンド・ビルドが始まろうとしている [社会]

 日本社会の様々な分野で、苛酷なスクラップ・アンド・ビルドが始まろうとしています。それによって生ずる変貌は、新たな成長の道となるでしょうか。それとも、日本社会の衰退を加速させることになるのでしょうか。

 第1の分野は農業です。環太平洋経済連携協定(TPP)の締結に向けて、政府は「聖域」5項目の見直しだけでなく、その後の農業の競争力強化のために、農地の集積化を促して中核農家を育成するための新たな方針の検討を始めました。コメの生産を抑えて価格を維持する現行の生産調整(減反)制度を見直し、減反に応じることを条件に支給されてきた各種の補助金を廃止するというのです。
 民主党政権が導入した戸別所得補償制度も経営所得安定対策と名前を変えて基本的に続けられてきましたが、これも減額するか廃止する方向だといいます。こうして、農家の淘汰を図るというのが新しい方針の目的です。
 そうなったら、都市近郊の兼業農家は全滅するでしょう。TPPで外国産の安い農産品がなだれ込む中で米価は下がりますから、これら小規模農家の経営は成り立たなくなり、父祖伝来の農地を売り払って離農せざるを得なくなるからです。

 その結果、農地は集約されて大規模化し、大量生産によって価格は下がります。そうなれば、外国農産品との競争に勝てるかもしれません。
 しかし、泣く泣く農地を手放して離農した兼業農家はどうなるのでしょうか。手放された農地の買い手や借り手が現れなかったらどうするのでしょうか。
 これまでも、都市近郊の農家は後継者不足から離農する場合がありましたが、その多くは耕作放棄地となって荒廃してきました。小規模農家の経営破綻と農地の荒廃によって、地方社会はさらに疲弊し、衰退していくのではないでしょうか。

 第2の分野は中小企業の淘汰です。消費税の8%への引き上げによって、大きな困難に直面するからです。
 事業年度の売上高が1000万円に満たない零細業者は、消費税の課税を免除されています。それ以上の売上高がある中小の業者は消費税を納付しなければなりませんが、その分を価格に上乗せできるのでしょうか。
 もし、売れ行きが下がることを恐れて価格に上乗せできなければ、消費税分は自分で負担しなければなりません。これはいわば「損税」であり、これを負担できなければ消費税の滞納という問題が生じます。

 消費税の滞納率は今でも高く、国税の滞納額全体の約半分は消費税です。5%から8%に税率が上がれば、中小業者が負担しなければならない税額も大きく膨らむでしょう。
 これまでなら「何とか自腹を切る」ことでやりくりしてきた業者でも、8%や10%ということになればそうはいきません。しかも、政府は2%のインフレターゲットを示して物価を引き上げようとしており、すでに円安の影響で物価が上がり始めています。
 そのような中で消費税を上乗せすれば、さらに価格は高くなります。政府は、このような消費税分の上乗せをやりやすくしようと躍起になっていますが、価格の高騰による売れ行き不振の面倒までは見てくれません。

 そして、第3の分野は正規労働者です。労働の規制緩和によって、非正規労働者だけでなく、正規労働者の雇用と労働条件も急速に悪化するからです。
 雇用の維持ではなく移動の支援が主眼とされ、派遣労働は「臨時的、一時的な場合に限」り、正社員を派遣に置き換えてはならないという「常用雇用の代替禁止」原則が緩和されれば、これまでの正規労働者は派遣などの非正規労働者に置き換えられるでしょう。解雇をしやすくすることも狙われていますから、正規労働者の地位は脅かされ、賃金が低く労働条件が劣悪な非正規労働者がますます増えることになります。
 今回の雇用改革では、労働時間の弾力化を進めることも課題の一つになっています。裁量労働が拡大され、残業代が支払われないようになれば、労働時間はさらに長くなり、過労死やうつ病などのメンタルヘルス不全が増大するでしょう。

 注目されている限定正社員にしても、勤務地や職務が限定されることによって賃金が低くなったり、雇い止めが容易になったりするだけです。というより、正規労働者の賃金を切り下げ、人員整理をやりやすくするための手段として、限定正社員という雇用形態が利用されようとしているのではないでしょうか。
 労働時間を「限定」することによって、ワーク・ライフ・バランスを実現できるという擁護論もあります。しかし、正規労働者なら際限ない労働時間でも良い、正規なんだから家庭生活との両立などを考えずに死ぬまで働けとでも言うのでしょうか。
 不安定な雇用、長時間労働、低賃金では、結婚して家庭を持ち、子どもを産んで育てることはできません。少子化はさらに深刻化し、日本社会の量的な存続可能性すら失われていくことになるでしょう。

 このような苛酷なスクラップ・アンド・ビルドの結果、都市近郊の農村部における兼業農家は淘汰され、中小企業は消費税を負担できずに倒産し、正規労働者として働く人々は量的に減少するだけでなく慢性的な雇用喪失の危機や過重で長時間の労働にさらされることになるでしょう。日本社会における安定帯を形成していた中間層は、農村でも都市でも急速に減少し、地方の衰退は加速されるにちがいありません。
 こうして、日本社会は大きく変貌することになります。貧困と格差の拡大は容赦なく私たちの生活を脅かし、未来を破壊していくことになるでしょう。

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