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9月4日(水) 規制改革と「企業経営との二足の草鞋(わらじ)」は無理だという宮内オリックス会長の述懐 [規制緩和]

 オリックス会長の宮内義彦さんと言えば、小泉構造改革において、牛尾治朗さんや竹中平蔵さんとともに規制緩和の旗を振り続けた方です。その宮内さんが、『日本経済新聞』で「私の履歴書」を書くというではありませんか。
 興味津々です。どのようなことが明らかにされるのでしょうか。
 その第一回が9月1日付に掲載されました。規制改革会議での活動などを振り返って、宮内さんは次のように書いています。

 この仕事も心残りが多い。もっと頑張ればもう少し結果を残せたかなと思うこともあるが、一歩引いて考えれば、そもそも企業経営との二足の草鞋(わらじ)を履きこなすのは、どだい無理な話だった。規制改革をやりきろうとするなら、志と決裁権限を兼ね備えねば無理だ。それは学者でも行政官でもない。政治家にしか改革を成し遂げることはできない。

 この回想で注目されるのは、「心残りが多い」とされていることです。「もっと頑張ればもう少し結果を残せたかなと思うこともある」というのです。
 つまり、宮内さんは規制改革が不十分だったと総括されているわけです。もっと、どんどん規制を緩和するべきだったと考えているのでしょう。
 労働分野での規制緩和によって派遣労働者は急増し、非正規労働者が増大しました。その結果、貧困が増大して格差が拡大したため、派遣労働などに対する「労働再規制」が政策課題として浮上したわけですが、宮内さんはこのようなプロセスをどう総括されるのでしょうか。

 もう一つ注目されるのは、「そもそも企業経営との二足の草鞋(わらじ)を履きこなすのは、どだい無理な話だった」と書かれている点です。そして、「政治家にしか改革を成し遂げることはできない」と指摘されています。
 私も、そう思います。国家の経営と企業の経営は大違いですから、重要政策の転換や立案を経営者任せにしようとするのは政治家の責任放棄であり、「どだい無理な話」なのです。
 以前から、そう思っていました。当事者であった宮内さんの言葉によって、その点を確認できたのは大きな収穫です。

 そもそも、経営者は政治とは異なった領域と論理で企業の経営を行っています。そこには共通するところもあるでしょうが、基本的には異なった分野であることは明らかでしょう。
 経営者が政治に関心を持ち、そのために自らの力や経験を生かしたいと思うのであれば、政治家に転身すればよいのです。今回の参院選で政治家に転身した「和民」の渡辺美樹社長のように、経営者から政治家になった人は沢山います。
 しかし、そのような形で転進することなく、経営者としての地位を保持したまま政治に対する発言を行い、大きな影響力を行使して政治的・社会的災厄を生み出すような例も皆無ではありません。そのうちの一人が宮内さんであり、それに対して宮内さん自身は「二足の草鞋(わらじ)を履きこなすのは、どだい無理な話だった」と総括されているわけです。

 この宮内さんの述懐を、小林喜光三菱ケミカルホールディングス代表取締役社長、佐々木則夫東芝取締役、代表執行役社長(以上、経済財政諮問会議)、秋山咲恵サキコーポレーション代表取締役社長、岡素之住友商事株式会社相談役、榊原定征東レ株式会社代表取締役取締役会長、坂根正弘コマツ取締役会長、佐藤康博みずほフィナンシャルグループ取締役社長グループCEO、竹中平蔵パソナグループ取締役会長(慶應義塾大学総合政策学部教授)、新浪剛史 株式会社ローソン代表取締役社長CEO、長谷川閑史 武田薬品工業株式会社代表取締役社長、三木谷浩史楽天株式会社代表取締役会長兼社長(以上、産業競争力会議)、浦野光人ニチレイ相談役、金丸恭文フューチャーアーキテクト株式会社代表取締役会長兼社長、佐久間総一郎新日鐵住金株式会社常務取締役、佐々木かをりイー・ウーマン代表取締役社長、滝久雄ぐるなび代表取締役会長(以上、規制改革会議)など、現在、政府の戦略的な政策形成機関に参加されている経営者の皆さんは、どう受け取っているでしょうか。

 これらの戦略的機関での審議に加わっている経営者が、日本の労働の破壊を意図しているとは思いません。もしそうなれば、それは日本の産業や企業にとっても破滅への道を掃き清めることになってしまうからです。
 しかし、企業経営と国家経営とは全く異なるものです。国家経営においても経営者が有能だというのは幻想にすぎず、「二足の草鞋(わらじ)を履きこなすのは、どだい無理な話」なのではないでしょうか。
 自らが関わる業界や企業を念頭に置いた発言や限られた範囲での経験に基づく国政への関与は、知らず知らずのうちに政治を歪め、意図せざる破壊的結果をもたらすかもしれません。これまでの民間議員主導による労働の規制緩和がそうであったように……。

 安倍政権の「雇用改革」は、雇用政策の基本を安定から流動化へと転換させるとしていますが、日本の労働者の働き方は、すでにこれまでも十分に流動化、不安定化して多くの問題を生み出しています。これ以上、クビを切りやすくすること、働く人々の不安を高めること、非正規化を進めてワーキング・プアを増やすこと、労働時間の管理を緩めてサービス残業を合法化すること、労働を強化して過労死や過労自殺、メンタルヘルス不全やうつ病を増やすことが、結局は日本の産業のみならず企業にとっても大きな災厄をもたらすということに、そろそろ気がついても良いのではないでしょうか。

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