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1月19日(木) 今の情勢をどう読み、どう行動するか(その3) [論攷]

〔以下の論攷は、昨年の9月に秋保温泉で開かれた全農協労連全国労働組合セミナーでの講演です。『労農のなかま』No.533、2011年11月号、に掲載されました。4回に分けてアップします。〕

Ⅲ 脱原発による新産業革命を

 (1)原発依存を続けることはできない

 次に原発問題ですが、これについては、いつまでにどのようにして脱原発を図るかという選択肢しか残されていません。現状維持は許されず、新規増設などはとんでもありません。
 人間のやることに「絶対」はありえない。五重の防護措置などは「神話」にすぎません。スリーマイル島もチェルノブイリも、事故を起こした原子炉は1基でしたが、福島は4基です。爆発したのは3基ですが、4号機は定期点検で停止していました。燃料が取り出されていましたが、停電のために格納容器の水がなくなり臨界が始まったとみられています。原発は制御不能の怪物であり、「死の灰」の処理もできません。
 放射能には「入り口」と「出口」の問題があります。ウランを採掘したあとの放射能汚染された残土は野積みされています。雨で流れ出しますし、風が吹けば飛んでいきます。ウランを採掘しているカナダ、アメリカ、オーストラリアなどでは大きな問題になっており、国連の原子力委員会はこちらの放射能汚染の方が深刻だと言っています。
 このウランを燃料に加工して日本に持ってきます。これは二酸化炭素を出さないから地球に優しいクリーン・エネルギーだと言われていますが、これもウソです。原発で発生する熱量の3分の1しか発電には使っていません。3分の2の熱量は水で冷やされて海に放出されています。二酸化炭素は間接的に地球を暖めるかもしれませんが、原発の排水は直接的に海水を温めています。温暖化防止に役立つなどというのは、まったくの間違いです。
 そのうえ「出口」には、使用済み核燃料の処理という未解決の問題があります。原発が「トイレのないマンション」と言われるのは、そのためです。使用済みとなった核燃料からプルトニウムを取り出して再び燃料にして燃やすという核燃料サイクルはうまくいっていません。そのために、プルトニウムがたまってしまいますが、日本は国際公約で必要以上にためておくことはしないと約束しています。原爆を作る原料になり、核開発の疑惑を招くからです。
 このプルトニウムを消費するために進めてきたのがプルサーマル計画です。ウランとプルトニウムを混合してMOX燃料を作り、これをむりやり燃やしています。余剰プルトニウムを増やさないためです。プルサーマル計画でプルトニウムの蓄積を防がなければならないというわけです。
 現在、高レベル放射性廃棄物(死の灰)の最終処分場として建設中(2020年運用開始予定)の施設は、フィンランド・オルキルオト島のオンカロだけです。これは「10万年後の安全」というドキュメンタリー映画になっています。これ以外にはありません。日本も、「死の灰」をどう処分するかは明確になっていません。
使用済みの「死の灰」はそれぞれの原発にたまったままで、あと8年で満杯になると言われています。それをどうするのか、誰も答えられません。今回の事故がなくても、原発にはこのような重大な問題があります。
 今後問題になるのは、放射能被害でしょう。福島県の子どもたちの甲状腺の検査によれば、約半数から放射性ヨウ素による影響が検出されています。放射線の影響は、年齢に反比例し、若い人や子どもがいちばん危ない。40歳以上は急速に影響が低下します。
 しかもその影響は、何十年も経たないとわかりません。チェルノブイリ事故で膀胱がんが発生することがわかったのは、つい数年前のことです。また最近わかったのは、その頃に生まれた子どもに染色体異常が現れることです。25年も経ってから、このようなことがわかってきました。
 福島原発事故の場合も、被害がどういう範囲でどの程度拡大しているかは、数十年かからないとわかりません。本当に、人類はとんでもないものを作り出してしまったと思います。でも、今からでも遅くはない。原発をなくす方向に大きくカーブを切るべきでしょう。

 (2)再生可能な自然エネルギーへの転換

 原発を再稼働させなければ、短期間で「自然死」させることができます。しかし、それでは電気が足りなくなるのではないかと心配される向きもあるかも知れません。今年の夏、東京電力は電力不足になるからと言って節電を訴えましたが、使用量が90%を超えたのは1日しかありませんでした。
 今まで電気を作りすぎていたのです。だから、オール電化の家を推奨して電気を大量に使用させようとしてきました。がんがん作ってジャブジャブ使わせるというのが、これまでのエネルギー政策でした。この政策を転換させ、節電するのが当たり前の生活に切り替えて持続可能な社会にしていかなければなりません。そのためには、化石燃料に頼るのではなく、再生可能なエネルギーの普及に努めることです。
 現在は、再生可能なエネルギーによる発電が9%(水力8%)、原子力29%、火力62%(石炭25%、LNG29%、石油8%)となっています。ここから原子力発電への依存をなくしていくことが、これからの目標になります。過渡的には、石炭+チップ、シェールガス(LNG)、メタン・ハイドレートなどによる発電に切り替えることが必要でしょう。しかし、これらも化石燃料ですから限界があります。将来的には、1000kw以下の中小水力発電、地熱発電、太陽光(熱)発電、風力発電、潮力(波力)発電、バイオマス発電などによって電力需要をまかなえるようにしなければなりません。
 実際に、岩手県葛巻町では、風車15基、太陽光、牛200頭よる37kwの発電などで180%以上を自給しています。牛200頭による発電というのは、牛の屎尿からメタン・ガスを発生させて発電するものです。
 高知県檮原町では、木質バイオマスを公共施設の冷暖房に利用しています。風力発電も行い、その売電収入で太陽光発電パネルに1kw/hあたり20万円の補助金を支給し、世帯率で1割近くに普及しています。これらはまだ始まったばかりですが、今後向かうべき方向を示唆していると言えるでしょう。

 (3)新産業革命によって地方・地域の再生を

 このような再生可能エネルギーの普及は、産業だけでなく社会全体を変える力を持っています。それによって、いま新しい産業革命が始まりつつあります。
 第1の産業革命は農業革命で、農業技術の急速な発展と地域への定着が行なわれました。第2の革命は、一般に言われる産業革命で、石炭による蒸気機関の発明によって軽工業から重工業へと発展していきました。第3の革命は、IT(情報通信)革命です。情報通信技術の画期的な発展があり、原子力によるエネルギー供給も進みました。
 そして、第4の革命が今訪れつつある環境革命です。節電、自然エネルギーの利用、大量消費社会の転換、持続可能な社会を実現していくための社会革命でもあります。それはまた、大規模集中型の原発から小規模分散型の自然エネルギー発電への転換であり、地場産業としての中小エネルギー産業を拡大することによって地方に雇用を生みだし、地域興しの手段としても活用することができます。
 それぞれの地域や地方にふさわしい方法で、このような取り組みを始めてもらいたい。農村で減反政策などによって耕作を放棄された田んぼや畑、中山間地域などでの山林や雑木林なども活用し、雑草や間伐材などでのバイオマス発電をぜひ考えてほしいと思います。先ほど葛巻町と檮原町の例を言いましたが、その他にも、ゴミ焼却熱での発電、缶詰の廃シロップでの発電、温泉熱による発電等、さまざまな技術を活用して発電することができます。
 それは同時に新たな雇用を創出し、町や村に人が集まり、地方を活性化させることができます。荒廃した農地や山林を甦らすことができるでしょう。大規模な風力や太陽光発電だけでなく、再生可能な自然エネルギー発電によって地産地消型の中小事業を興して、地方の再生と活性化に役立ててほしいと思います。皆さんが働くJAなどが中心になって、是非そのような取り組みを進めていただきたいものです。


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