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8月5日(木) 安井孝之朝日新聞編集委員の「記者有論」で述べられている正当な主張 [消費税]

 先ず、次の一文を読んでみてください。

 消費税率を10%に引き上げれば、間接税比率はおそらく主要国のなかでトップクラスになるだろう。主要国の消費税の税率はすでに10%以上の例が多いのに、なぜこんなことになるのだろうか。
 景気の低迷で主要な直接税である所得税、法人税がピークに比べて半分以下に減ってしまったことが大きな理由だ。そうした要因に加えて、消費税が導入され、3%から5%に引き上げられる過程で実施された、さまざまな税制改革の影響もある。
 例えば、所得税では中低所得者も04年までは軽減されたが、高所得者も最高税率が引き下げられるなど累進構造は見直され、負担が軽減された。法人税も減税された。法人の7割が赤字で、法人税を払う企業は少ないという日本固有の事情もある。
 また、相続税はバブルで不動産の価格が高くなったとして、負担軽減のために基礎控除額が引き上げられた。94年からは5千万円が定額で控除され、税率も緩和、その結果、相続税を払う人は、遺産相続をした人の4%余りまで減った。ピーク時は相続した純資産の22%を納税したが、最近は11%台に落ちている。
 消費税は低所得者に悪影響を与える。一方、消費税導入後の税制改革は高所得者や多額の遺産相続をした人に優しかった。税制改革の論議を消費税をどうデザインするかにとどめてはならない。所得の再分配機能を回復するため、所得税や相続税など直接税も議論すべきである。

 これは、私が書いたものではありません。しかし、私がこれまで書いてきたことと、極めて似通った主張です。
 これは何と、『朝日新聞』の編集委員が書いたものです。全文をお読みになりたい方は、「税制改革 議論、消費税にとどめるな」と題された安井孝之さんの「記者有論」『朝日新聞』2010年8月3日付をご覧になって下さい。
 まだ、『朝日新聞』も捨てたものではないということでしょうか。それとも、この問題を普通に考えれば、このような主張になるのは当たり前だということでしょうか。

 直接税の比率が下がったのは、景気低迷で「主要な直接税である所得税、法人税がピークに比べて半分以下に減ってしまったことが大きな理由」だといいます。これに加えて、安井さんは極めて重要なことを指摘されています。
 たとえば、「高所得者も最高税率が引き下げられるなど累進構造は見直され、負担が軽減された」こと、「法人税も減税された」こと、「法人の7割が赤字で、法人税を払う企業は少ない」こと、それは「日本固有の事情」であること、「相続税を払う人は、遺産相続をした人の4%余りまで減った」ことなどです。
 「法人の7割が赤字で、法人税を払う企業は少ない」ということなら、法人税率が高かろうが低かろうが関係ないということになりませんか。税金そのものを払っていないのですから……。

 総じて、「消費税導入後の税制改革は高所得者や多額の遺産相続をした人に優しかった」というのが、安井さんの総括です。この「優しさ」が、財政赤字と格差拡大の元凶にほかなりません。
 ここにこそ、強き者に優しく弱き者に厳しい新自由主義的税制改革の本質があります。このような税制改革によって富めるものはますます富み、貧しい者はますます貧しくなって、「大貧困社会」と格差社会が登場したのです。
 こうして、安井編集委員は、税制改革論議を「消費税にとどめるな」、つまり、消費税以外の税制改革についても充分に議論するべきだと主張されるわけです。当然のことでしょう。

 ただし、安井さんは「所得の再分配機能を回復するため、所得税や相続税など直接税も議論すべき」だとしています。つまり、注意深く「法人税」を除いているわけです。ここに、『朝日新聞』の禄をはむ方としての限界があると言うべきでしょうか。
 所得の再分配機能を回復するための税制改革論議から、「法人税」を除外する理由はありません。それどころか、私は大企業に対して特別の課税を行うべきだと思いますが、これについては既にこのブログ(8月3日(火) 「社会保障充実税を大企業から取り立て社会保険料負担の引き上げを実施すべきだ」http://igajin.blog.so-net.ne.jp/2010-08-03)で書きましたので、ここでは繰り返しません。
 この点では、菅首相が所得税の最高税率を引き上げる可能性に言及したのは、大きな前進だと思います。次に俎上に上らせるべきは相続税でしょう。

 安井さんは、直接税に分類される様々な税を引き下げてきたために、もし、消費税を10%にすれば「間接税比率はおそらく主要国のなかでトップクラスになるだろう」と指摘されています。つまり、消費税だけを引き上げれば税構造が歪むということです。
 かつて、「直間比率」が問題になりました。日本の税収構造において、直接税の比率が間接税と比べて高すぎると批判されたのです。
 今また、「直間比率」が問題になろうとしています。消費税が10%になれば間接税の比率が高くなりすぎるという、かつてとは全く逆の意味で……。


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