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8月2日(月) 消費税率のアップと企業減税は再分配政策の逆転だ [消費税]

 消費税についての好著が出ました。斉藤貴男さんの書かれた『消費税のカラクリ』(講談社現代新書)という本です。

 斉藤さんとは、一度、東京土建主催の講演会でご一緒し、言葉を交わしたことがあります。大活躍中のジャーナリストで、この本も消費税の問題点を余すところなく明らかにしています。
 その主張は、「これ以上の税率引き上げは自営業者の廃業や自殺を加速させ、失業者の倍増を招くことが必定だ。社会保障費の大幅な膨張を求める税制を、同時にその財源にもしようなどというのは、趣味の悪すぎる冗談ではないか」(133頁)という一文に尽きていると言っていいでしょう。この意味が理解できない方は、斉藤さんの著書を読まれるか、『東京新聞』7月30日付の「こちら特報部」をお読み下さい。
 「消費税2ケタ 衝撃の予測本」という見出しが付いたこの『東京新聞』の記事には、「しわ寄せは中小業者」「失業率10%、年自殺5万人超」「『控除』で非正規雇用加速」「輸出戻し税 大企業“丸もうけ”」「所得税率見直せば増収」などの中味出しも付いてます。これだけでも、大体の中味が分かるでしょう。

 私は以前、「消費税の税率を高めれば、庶民の家計も中小企業の営業も、ひいては、景気も日本経済も大打撃を受けることは火を見るよりも明らかなのです」(税制改革とは逆累進性を反転させ「秘密の花園」で溜め込まれた「蜜」を国民に分け与えることだhttp://igajin.blog.so-net.ne.jp/2010-03-07)と書きましたが、斉藤さんの著書は、このことを具体的に例証しています。とくに、消費税を価格に転嫁できず、今でも消費税分を自己負担(「益税」ならぬ「損税」)している小・零細の自営業者が壊滅的な打撃を受けるだろうと主張されています。
 その通りだと思います。これに私が付け加えるとすれば、次の点です。
 つまり、金持ちや大企業から取るべき税金を大まけにまけて、そのあげく借金がかさんで赤字が増えてしまったために、広く庶民の懐に手を突っ込んでむしり取ろうというのが、消費税率引き上げ問題の本質だということです。新自由主義という過った政策思想にとらわれず、金持ちや大企業から取るべき税金をきちんと取っていれば、借金がかさむことも赤字が増えることもなく、消費税率のアップも問題にはならなかったはずです。

 しかも、驚くべきことに、消費税率のアップと一緒に企業減税をやろうというのが、参院選で示された菅さんの構想でした。これについても、斉藤さん同様、「趣味の悪すぎる冗談ではないか」と言いたくなります。
 大企業から取るべき税金を取らなかったために生じた赤字です。それを穴埋めするために消費税を引き上げてかき集めたお金を、さらに大企業の税金を負けるために注ぎ込もうというわけですから……。
 金持ちや大企業から取るべき税金をまけすぎたために生じた赤字です。それを埋めるためなら、累進課税や株による儲けへの税率を元に戻す、企業優遇の税制や補助金などを改めるという形で、税金をきちんと取るようにすれば良いではありませんか。

 消費税率アップは、「ギリシアのようにならないため」に必要だと、菅首相は言っていました。先に紹介した『東京新聞』には、社会保障財源としての消費税率アップを主張する橘木俊詔同志社大教授や神野直彦東大名誉教授の発言が紹介されています。
 つまり、消費税の引き上げで得られる新たな財源を当てにして、3つの財布が口を開けているというわけです。1つは、企業減税の穴埋めであり、2つ目は、財政赤字への補填であり、3つ目は、社会保障のための原資です。
 この3つの財布の全てに入れられるほど、消費税で増収を図ることは不可能です。どれを優先するかという問題が出てきますが、結局は、企業減税の穴埋めに使われることになるでしょう。

 お金に名前が書いてあるわけではありません。税収が変わらないとすれば、企業減税で生じた赤字は借金でまかなわなければならず、その分を消費税で穴埋めしても借金そのものが減るわけではありません。
 福祉目的税化して社会保障の経費を消費税でまかなっても、そこで浮いたお金を企業減税で生じた赤字を埋める方にまわせば、借金の返済に充てることはできません。やはり、財政赤字は減りません。
 それでは、消費税率アップによる増収を全部、借金返済に充てたらどうでしょうか。その場合、企業減税による税収減はどう補填するのか、増え続ける社会保障費をどう負担するのか、という問題が生じます。

 本当は、もし税収増があれば直ちに注ぎ込まなければならない第4の財布があるはずなのですが、誰もそのことを口にしません。政治家も官僚も、そしてマスコミも、これについては完全に忘れてしまっています。
 それは、貧困と格差の是正という財布です。お金があるなら、いや、たとえなくても、今すぐにお金を注ぎ込まなければならないのは、この第4の財布ではありませんか。
 生活が立ち行かなくなっている貧しい人びとを救うための施策、ワーキングプアや働く場を失っている人びとへの対策に、何よりも先ず、お金を注ぎ込むべきでしょう。

 生活苦に陥っている庶民や経営難に直面している中小・零細企業を救おうとするどころか、これらの人びとも含む「幅広い層」から、もっと多くの消費税を取ろうというのが税率アップの構想でした。貧しい人びとに税金を注ぎ込もうとするのではなく、逆にむしり取ろうというのですから、何という転倒でしょうか。
 富めるものから税金を取り、貧しい者に分け与える施策を再分配政策といいます。その逆に、貧しい者から「幅広く」税金をかき集めて、富めるものに分け与える政策を、何と呼んだら良いのでしょうか。


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