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11月7日(土) 活路は「技術立国」に向けた人材の育成しかない [論攷]

〔この論攷は、『産業訓練』2009年11月号の「巻頭言」として掲載されたものです。〕

活路は「技術立国」に向けた人材の育成しかない

 日本経済の回復に向けて、企業に求められる経営はどうあらねばならないか。その答えは、一つしかない。堅調な内需に支えられた「技術立国」の道をもう一度めざすべきだということだ。それに役立つ経営が、今の企業には求められている。
 そのためには、第一に、雇用、賃金、労働時間の面で画期的な改善が図られなければならない。安心して働くことができ、可処分所得が増え、レジャーなども楽しむことができてはじめて、内需は大きく拡大する。このような働き方を実現することは、直接的短期的には働くものの利益となるが、間接的長期的には企業のためにもなるということを忘れてはならない。希望を持って働き生活することができる、安定した豊かな社会を生み出すことこそ、日本経済回復の基礎的な条件なのである。
 第二に、とはいえ堅調な内需だけでは不十分であり、輸出の拡大も必要になる。この点では、北米偏重の貿易構造を改め、中国など周辺諸国の市場を重視しなければならない。経済発展を続ける中国は、GDPにおいて今年中に日本を追い抜くと見られている。このような巨大な消費市場とどう付き合っていくのかが、今後の大きな課題となろう。小泉政権の靖国参拝のような政治による撹乱を許さず、過去の過ちと真摯に向き合うことにより、周辺諸国の信頼を得て未来志向の関係を築くことが必要である。
 第三に、コストの削減を最優先する「コスト・イデオロギー」から脱却する必要がある。コスト削減に心がけることは企業経営者にとって必要なことだが、それを最優先にしてはならない。人中心の経営理念を忘れて、人材を育て技術を高めるために必要な費用まで削ってしまうことがあるからだ。また、日本の国際的な環境からすれば、低価格によって国際競争力を生み出すことはできない。中国や韓国、台湾などと価格面で競争することは不可能だということを肝に銘ずる必要がある。
 第四に、それでは何によって競争するのか。それは技術である。日本製品の品質の高さを維持するだけでなく、ワン&オンリーの新たな製品開発やユニークなコンテンツ、ニーズへの即応性などの面で、さらに大きな技術力や独創性を発揮しなければならない。環境保全・公害対策や食糧生産、新エネルギー、医療や福祉、文化や観光などの分野における技術開発、コンテンツや魅力の創造こそが、日本経済回復の起動力となるにちがいない。
 以上の点から、技術・技能に関する教育・訓練の役割は高まってきている。これまで企業内で行われてきたOJTだけでは不十分であり、コンピュータ技術などは企業特殊熟練のみでは対応できない。また、失業対策や再就職と組み合わせた職業訓練も登場した。その結果、技能・技術訓練を企業内から外部化するという方向性が強まってきている。
 この点では、職業訓練や産業訓練において、教育機関、企業、業界、行政などによる役割分担や総合的な対応が求められることになろう。企業と公的なシステムとの協働による「技術立国」に向けた人材の育成こそが、日本経済復興の唯一の活路なのではないだろうか。

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コメント 1

NO NAME

日本の技術は、職人の技能が一定以上の貢献をしてきましたが、構造改革から近時の不況に至り、採算が取れないという理由で技能がないがしろにされるような事態が続いています。この状態が続けば、技術立国を唱えたところで再起が図れないおそれがあります。
by NO NAME (2009-11-08 10:36) 

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