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2月24日(日) 漁船衝突事故が明るみに出した自衛隊のたるみ、特権意識、自己防衛本能 [自衛隊]

 自衛隊の傍若無人ぶりが次第に明らかになってきました。「そこのけそこのけ自衛艦が通る」という、ヤクザ顔負けの通行ぶりだったようです。
 「自衛艦はよけない」と、普段からいわれていたそうです。イージス艦「あたご」は、漁船「清徳丸」らの漁船団を蹴散らして進むつもりだったのでしょう。
 だから、混雑する東京湾に近づいても手動操縦に切り替えず、見張りを増やすこともしませんでした。衝突1分前まで、漫然と自動操舵を続けていたのはそのためにちがいありません。

 今回の事件の背景の一つは、「たるみ」です。情報が伝達されず、確認もおろそかでした。危険に対する想定や警戒心が弛緩しきっているといわざるを得ないでしょう。
 軍隊は戦争の防止のためにあるというのが、バランス・オブ・パワーに基づく「抑止力論」です。この主張を認める場合でも、絶対的な矛盾は避けられません。
 軍隊によって戦争が防止され、戦争の可能性が低下すれば、軍隊の存在意義もまた低下してしまうという矛盾です。現在の自衛隊は、このような矛盾を抱えています。そこからの脱却の道として考え出されてきたのが「国際貢献論」でした。

 もはや、日本を巻き込む戦争の可能性はほとんど考えられません。国民のほとんどは日本有事などあり得ないと考えていますし、自衛隊員の多くもそうでしょう。
 私も、日本有事などはあってはならないと思います。そのリアリティが減少している現状は、望ましいものだと考えています。
 しかし、そうなれば、自衛隊員の「やる気」は低下します。士気を維持するために考案されたのが、海外での戦争支援、すなわち「対テロ戦争」への参加です。

 とはいえ、戦争の可能性が低下すれば、軍事組織における士気の衰えと「たるみ」は避けられません。何があっても接待に応じてゴルフをやっていた守屋前防衛次官のような人が事務方のトップであり続け「守屋天皇」などと呼ばれたのも、このような「たるみ」が防衛省(防衛庁)の全身に行き渡っていたからでしょう。
 そして、それが最新鋭の「イージス艦」の乗組員をも蝕んでいたことが、今回の衝突事件で明らかになったというわけです。艦長から見張りの隊員まで、全員がたるみきっていたという以外に、今回の事件を上手く説明することはできません。

 もう一つの問題は、「特権意識」です。自衛艦には船舶安全法が適用されず、航海情報記録装置(VDR)が装備されていないなど、民間船に適用されるいくつもの法令が自衛艦だけ除外されるという「特別扱い」を受けていました。混雑する湾内に、外洋を航行するときと同じように自動操舵で入ってきたという事実こそは、このような「特権意識」の表れにほかなりません。
 それは、自衛隊員だけに特有なものではないという点に、さらに大きな問題があります。軍隊は国を守るものだから特別だという誤った意識は、一般の人々の中にもあるからです。
 その典型的な例は、「生業として漁業をしているから優先されると考えている人達には、生業の為に海を海賊から守ってくれる海軍に対する感謝の意識が欠落しているのではないでしょうか」というクライン孝子さんの主張http://www2.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=119209&log=20080221です。

 この主張には、二つの大きな誤りがあります。一つは、「海軍に対する感謝の意識」を持つべきだとして、その特権を認めていることです。赤信号を無視して交差点に入ってきたダンプカーが小型車をはねとばしたとき、ダンプカーが警察車両であれば、小型車の方が責任を負うべきだということになるのでしょうか。
 もう一つは、事実誤認の上で、この主張がなされていることです。「あたご」の非は海上のルールを守らなかったことにあり、漁民たちの批判も「生業として漁業をしているから優先されると考えている」からではありません。
 右からやってくる船を見た方に回避義務があり、それが「清徳丸」であったら「生業として漁業をしている」か否かに関わりなく、漁船の方に回避義務が生じます。「あたご」はこの義務を果たさなかったから批判されているのです。

 事実誤認といえば、「海を海賊から守ってくれる海軍」などというのが、その最たるものです。千葉近海に「海賊」が出没するとでも言いたいのでしょうか。
 そもそも、「海賊」対策は海上自衛隊ではなく、海上保安庁の仕事です。海上自衛隊は、「海を海賊から守ってくれる」任務を帯びておりません。
 時には海のレジャーにも行かれるらしいクライン孝子さんでさえ、こんなこともご存じないとは驚くばかりです。もう少し、常識と事実を踏まえた主張をしていただきたいものです。

 このほか、今回の事故では、事故後の対応として、自らの組織防衛を優先して海に投げ出された2人の遭難者を見殺しにした疑いが濃厚です。自衛隊における「自己防衛」本能のようなものが働いたのではないでしょうか。
 イージス艦は軍艦です。海上の戦闘に参加すれば、僚船が撃沈されることがあるでしょう。沈没した船の乗員の救助は、本来的な任務の一部とされているはずです。
 当然、海中に投げ出された海上戦闘員を救助するための最新鋭の装備を備え、そのための訓練も施されていたはずです。今回の衝突事故では、それがどのように生かされたのでしょうか。

 事故後の報告の遅れという問題もあります。自らの非が明らかになるのを恐れ、「なだしお」事故のときのような事実隠しが行われていたのではないかとの疑念をぬぐうことができません。
 もっと早く報告されていれば、救助活動はそれだけ早まり、2人が助かった可能性もそれだけ高まったことでしょう。自衛隊は、本気で2人を救うつもりがあったのでしょうか。
 この2人を見殺しにしたのかもしれません。隠蔽工作のために、救助を手控えたなどということはなかったのでしょうか。

 自衛隊もまた、本気で事実を明らかにする積もりがあるのか疑問です。艦長からの事情聴取は未だに行われていないようです。
 防衛庁が省になったのは間違いでした。事実関係と責任を明らかにし、解体的出直しが必要でしょう。
 石破さんも、きちんとした対応策と責任を明らかにして辞任すべきです。詰め腹を切らされることは明らかですから、自ら辞める方が賢明だと思いますよ。

 このイージス艦と清徳丸との衝突事件で、沖縄の米兵による少女暴行事件は後景に退いてしまいました。今日は三浦和義元被告がサイパンで逮捕されたことが報道されていますが、清徳丸の沈没もこのニュースの影にかすんでしまうかもしれません。
 このようにしてニュースは消費されていきます。新しい大きなニュースが飛び込んできて古くなったものは、もはや「ニュース」ではなくなってしまいます。

 これがマスコミの常とはいえ、次々と塗り替えられていくニュース番組に流されてはいけません。いつまでも忘れてはならない事件、古くしてはならない「ニュース」があるということを確認しておきたいものです。


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コメント 4

磯永征司

的を得た、適切なブログ内容です。本日、見張りの自衛官は、「確認していたけれども、漁船がよけてくれると重い、危機感は無かったと」述べたといいます。これは「なだしお」のときと同じです。
ここに、ご指摘の「特権意識・危機意識のたるみ」が、はっきり出ています。
そして、沖縄が吹き飛ぶ、吹き飛ばせがごとく、マスコミは連日の細切れ報道。正に、マスコミ操作の手本を見ているようです。
憲法に反しての、防衛体制、日米軍事同盟下の、平和戦略、基地問題、地位協定、全てを見直す機会にしたいものです。的を見失わず、力の結集が必要です。
by 磯永征司 (2008-02-24 19:32) 

前田純一

おっしゃることにすべて同感です。それだけに、「混雑する東京湾に入っても手動操縦に切り替えず」は、「混雑する東京湾に近づいても手動操縦に切り替えず」と正確に述べられたほうがよろしいのではないでしょうか。妙な揚げ足をとりたがる輩が徘徊しておりますので。
by 前田純一 (2008-02-24 21:16) 

とりすがり

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/02/post_828f.html

五十嵐先生、こちらで話題になっていますよ。
by とりすがり (2008-02-27 23:33) 

労働者

こんばんは。
クライン孝子氏のページも見てみました。ヒドイものです。クライン孝子氏による文章、クライン孝子氏宛に送られたメールと思われるものの引用の文章で構成されています。後者についても、無批判的に引用していることからクライン孝子氏の見解と一致して捉えることができます。
先生の指摘される点もヒドイですが、クライン孝子氏の考え方を進めると、次のようなとんでもない話が展開できます。
(例)Aさんが横断歩道の向こうに行こうとした時に起こった出来事。
Aさんは、横断歩行の向こうに行こうと思った。信号を確認して、青信号だったので横断歩道を歩き出した。ところが横から信号を無視して自動車が突っ込んできた。それによりAさんはじき飛ばされ地面にたたきつけられ負傷しました。
こういうことが起こったら、普通に考えれば信号無視をして突っ込んできた自動車が悪く、自動車を運転した人の責任が追及され、民事・刑事で責任が追及されます。当然ながら、はね飛ばされたAさんは悪くないと判断されます。ルールに則した考えであり、常識であろう。
 ところがクライン孝子の手にかかると、横からくる自動車に注意しなかった私にも責任がある、と言い出す。響を自覚しろと説教をし始める。大きな自動車が止まってくれるとは思わず、よけろという。
 そりゃまあ、大概の人は痛い目にはあいたくないから青信号でも注意するようにするけど、だからといってルール無視という根本原因を無視して、被害者側も悪いという主張は非常にメチャクチャ。
 クライン孝子氏と同調者の方には、目印をつけて欲しいものです。こんな「暴走」族にひっかけられたら災難だからです。人を傷つけても「おれは悪くない」と開き直る思想をもった、クライン孝子と同調者に皆様ご注意めされ。
by 労働者 (2008-03-01 22:44) 

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