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10月16日(火) 森友学園疑惑も「まだ区切りはついていない」 [スキャンダル]

 「一件の国有地取引を、1年以上も掘り下げ続けてきた。しかし、売却額が妥当だったかどうかの検証は済んでいない。改ざんの詳しい経緯も、財務省の説明には違和感が残る。まだ区切りはついていない。」

 これは『朝日新聞』10月15日付に掲載された「新聞週間2018」の特集「記録を追う、歴史に残す」という記事にある記述です。ここで指摘されている「一件の国有地取引」というのは、森友学園疑惑のことを指しています。
 この疑惑には二つの問題がありました。一つは「売却額が妥当だったかどうか」、もう一つは土地取引に関する公文書の「改ざんの詳しい経緯」です。
 このいずれについても、真相は明らかにされていません。10月13日と14日に実施されたJNN世論調査で、森友・加計学園疑惑について安倍総理や政府のこれまでの説明に「納得できなかった」と答えた人が80%にのぼり、「納得できた」が11%にすぎなかったのも当然です。

 森友学園の国有地売却問題では、最近になって新たな疑惑が生じています。『朝日新聞』10月11日付朝刊が、8億2000万円もの大幅値引きの根拠となった地下のごみの深さについて、「3・8メートルまで」に存在する証拠とされた写真が、実際には「3メートルまで」を計測していた疑いを報じたからです。
 野党側は、この写真付き報告書を証拠として提出していた国土交通省に、事実関係を確認するよう求め、国交省は値引きの根拠となった「地価のゴミが見つかった深さ」についての新しい資料を国会に提出しました。
 この資料を基に行われた野党側のヒアリングで、国交省はホワイトボードの「深さ3m」という記載について、工事業者から「経験の浅い従業員が誤って書いたものだ」という回答を受けたとしたうえで、「3.8メートルという深さは、限られた時間の中で、当時の使いうる資料に基づいて積み上げ推計した」と説明しました。しかし、野党側からは「業者が撮影した調査の写真は不鮮明で、深さがわからない」といった指摘が相次ぎ、引き続き臨時国会で追及されることになるのは確実です。

 公文書改ざん問題でも、9月25日にテレビ東京で興味深い放送が流れました。「<森友公文書改ざん>自殺職員の父と財務省OBが決意の告白」と題して放送された番組では、公文書の改ざんをさせられ自ら命を絶った近畿財務局の職員の父親が登場し、財務省の財務局OB職員6人が実名でカメラ取材に応じています。
 父親は、「上司に言われることを反対するわけにもいかないし、上司に言われた通りに書き換えたと遺書に書いてありました。7枚か8枚のレポート用紙に書いてありました」と話し、「改ざんをさせられたことで亡くなったと考えているか?」との問いに、「そうそう。財務省に入った自慢の息子はなぜ死ななければならなかったのか、いまも問い続けています」と答えています。他方、財務局OBは「2人の職員から電話をいただいて、彼が改ざんの仕事をやらされる中で100時間を超えるような残業。追い詰められて顔が変わってしまった」と証言しています。
 財務省OBは佐川氏らの国会答弁を複雑な思いで見ていたと言い、「佐川さん、うそついたらあかん、文書っていうのはそんなもんじゃない。記録が全然ないなんてうそつくな、歯がゆい思いがして」などと話し、異例の土地取引や文書改ざんにはある力が働いたと見ています。「公務員の判断で文書の改ざんはありえない」とし、疑惑をすべて明らかにし、二度とこのような問題が起きないために6人は全国の財務局OBに協力を呼びかけています。

 24日から臨時国会が始まります。加計学園疑惑と同様、森友学園疑惑についても、まだ区切りはついていません。
 公文書改ざん問題では自殺者まで出ています。真相を明らかにし、麻生副総理兼財務相と安倍首相の政治責任を明らかにして断罪しなければ、自ら命を絶った職員は浮かばれないでしょう。

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10月14日(日) 6年間の安倍外交がもたらした国際社会における日本の孤立 [国際]

 外交は経済と並んで安倍首相の強みだと言われてきました。しかし、アベノミクスとともに、安倍外交も破たんし漂流を始めたようです。

 その外交で、これほど日本はのけ者にされているのかと思わせるような事態がまたもや生まれました。「またもや」というのは、5月24日に北朝鮮がプンゲリ(豊渓里)の核実験場を爆破して公開したとき、6カ国協議に参加している国の中で日本のメディアだけが除外され、代わりにイギリスの記者が招待されていたからです。
 今回も、日本は除外されました。モスクワからのロイター通信の報道によれば、「ロシア外務省は10日、朝鮮半島の緊張緩和のため、米国と韓国を交えた5カ国協議が必要だとの認識でロシア、中国、北朝鮮が一致したことを明らかにした」そうですから。
 「ロシア、北朝鮮、中国の外務次官が9日にモスクワで会談し、関係正常化のため5カ国協議に支持を表明した」というのです。ということは、6カ国協議に参加している国では日本だけが除外されたことになります。

 同盟国のアメリカとの関係でも、暗雲が漂い始めています。日米貿易戦争の始まりです。
 すでに明らかになっているように、安倍首相はこれまで受け入れないと言い続けていた2国間交渉を呑まされてしまいました。これはTAGであって物品だけの交渉だから、サービスなどを含むFTAではないと言い訳していますが、安倍首相の国会答弁につじつまを合わせるための真っ赤な嘘です。
 現に、ムニューシン米財務長官は13日、日本との新たな通商交渉で、為替介入をはじめとする意図的な通貨安誘導を阻止する「為替条項」の導入を要求すると表明したではありませんか。「物品」だけの交渉ではない新たな「火種」の登場であり、このような「攻勢」は今後も強まるにちがいありません。

 ロシアとの関係も予断を許さないものになっています。これまで安倍首相はプーチン大統領と22回も首脳会談を行い、自分の選挙区に招いて温泉に入るなどの「おもてなし」をして個人的な関係を築いてきましたが、北方領土問題を解決する点では何の役にも立っていません。
 かえって経済開発のお手伝いをさせられ、ロシアの実効支配を強めてしまっています。さらに、最近目立つのは軍事力の強化です。米ソ冷戦終結後、ロシアは「北方領土」の軍事力を大幅に削減しまたしたが、クリミア半島の併合やウクライナ問題でアメリカとの対立が激化したため、最近になって軍事力を再び強化し、日本との戦争を想定した作戦計画をたてて演習を行っているからです。
 外務省によれば、ロシア政府から10日から今月13日までの予定で、北方領土の択捉島の近海でロシア軍が射撃訓練を行うと日本側に通知があり、これに対して外交ルートを通じて抗議したところ、ロシア外務省は声明を発表し「われわれは国防能力を向上させる手段も含め、自国の領土であらゆる活動を行う権利がある」と主張したうえで、日本側の抗議について「2国間の前向きな雰囲気を作り出さないばかりか損ないかねないものだ。生じた懸念については儀式のような抗議ではなくすでにある政府間対話の枠組みを通して解決すべきだ」と反発したといいます。慌てた外務省は年内に2回も安倍首相とプーチン大統領との首脳会談を開いて事態を打開しようと躍起になっています。

 こうして、窮地に陥った安倍首相が助けを求めようとしているのが中国です。25日から北京を訪問して習近平国家主席との首脳会談を行うことが予定されています。
 このような形で友好関係が回復され、日中関係が改善されるのは結構な話です。しかし、これまでの中国敵視政策や「中国包囲網の形成」政策との整合性をどのようにして取るつもりなのでしょうか。
 最近でも、東シナ海で海上自衛隊の潜水艦訓練を公開し、米空軍の戦略爆撃機と航空自衛隊との共同訓練が行われ、離島奪還のための日本版海兵隊と言われる水陸機動団と米軍との初めての日本国内での共同訓練が種子島で実施されました。いずれも「仮想敵国」として想定されているのは中国です。一方で「米中冷戦」の開始とも言われるほど中国敵視を強めているトランプ政権や対中接近への警戒を高めている極右勢力への「言い訳」をしながら、他方で握手の手を差し伸べようとしているところに、安倍外交のジレンマとギクシャクぶりが象徴されていると言っても良いでしょう。

 ときとして、「強み」は「弱み」に転化するものです。「世界同時株安」が懸念される中で、安倍首相は来年10月1日からの消費税の10%への引き上げを表明するそうですが、そうなれば消費は大きな打撃を受け、景気はまたもや悪化し、アベノミクスは最終的に頓挫することになるでしょう。
 トランプ大統領との親密さやプーチン大統領との個人的な関係の構築は、かえって日本を「ノーと言えない」立場に追い込み、外交的交渉力を奪う結果になっています。経済でも外交でも漂流を始めた安倍首相に、もはや政権のかじ取りを任せておくことはできません。

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10月13日(土) 10月8日 『日刊ゲンダイ』でのコメント [コメント]

 〔以下の私のコメントは、『日刊ゲンダイ』に掲載されたものです。〕

*10月11日付巻頭特集「目に余る懇願だけの無策 拉致問題は自国で解決することだ」
 「長期政権の最大の強みは、やはり外交です。1年、2年の短期政権では、なかなか外交の成果は出しづらい。歴代の長期政権も外交実績を残しています。戦後在任期間1位の佐藤栄作は沖縄返還を成し遂げ、2位の吉田茂は講和条約を結び日本を国際社会に復帰させています。4位の小泉純一郎も、訪朝し拉致被害者を帰国させた。9位の田中角栄は、日中国交正常化という難事業を達成しています。ところが、在任期間3位の安倍首相には、これといった外交成果が見当たらない。6年間、なにをしていたのか。外交無策を証明しています」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

*10月13日付巻頭特集「改憲を隠れ蓑に進行 「人生100年」という弱者切り捨て」
 国にすれば年金も医療費も出費が減る一石二鳥だが、庶民はたまらない。75歳まで年金はもらえず、窓口負担も増えれば、オチオチ医者にもかかれなくなる。高額で知られる夢のがん治療薬オプジーボは、まさに「夢のまた夢」の薬となる。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言った
 「ただでさえ、安倍政権は社会保障費を散々抑えてきたのに、まだケチるとは恐れ入る。トランプ米大統領に言われるがまま大量の兵器を購入し、防衛費を拡大させる一方で、今年度の社会保障費は自然増分を1300億円もカット。来年度予算は自然増分を従来の5000億円を下回るレベルに抑え込むつもりです。さらに予定通り来年10月には庶民に消費増税を押しつけながら、内部留保を貯め込み大儲けの企業の法人税は引き下げる。豊かな人々を助け、貧しき者からふんだくる。アベコベ政策の数々はデタラメの極みです」

 「全世代型社会保障改革の正体は、全世代型の貧困化です。いくら小泉元首相らに『できっこない』と批判されても、安倍首相が改憲に意欲を燃やしているのも、実は隠れ蓑かもしれません。できもしない改憲を騒ぎ立て、国民の危機感を引き付けているうちに、『本命』の総貧困化による財政支出削減を着々と進めるという目くらましです」(五十嵐仁氏=前出)

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10月12日(金) 米中間選挙でのトランプ・共和党の地滑り的大敗の兆候 [国際]

 世界同時株安の発生です。その引き金を引いたニューヨークの株式市場では一時800ドル以上の大暴落となりました。
 11月6日の投票日まで1カ月を切った上下両院の選挙で経済の好調さを誇っていたトランプ大統領にとっては、耳を覆いたくなるような悪いニュースです。それでなくても、この中間選挙で共和党が地滑り的な大敗を喫するかもしれないという兆候が生まれているのですから。

 もともと中間選挙では与党が不利だとされており、今回も下院では共和党の多数が失われると見られていました。しかし、その敗北は予想を超える地滑り的なものになるかもしれないという兆しが生じています。
 多数を維持するとみられてきた上院でも共和党は苦戦しているからです。接戦区とされている選挙区を民主党が制して多数が入れ替わるかもしれません。

 トランプ大統領は2回目の米朝首脳会談の開催について、中間選挙の後にすると発表しました。選挙の直前に華々しい外交ショーを繰り広げた方が大統領や共和党に有利になるはずなのに、どうして選挙戦後にしたのでしょうか。
 その理由は、選挙への取り組みを最優先にしなければならなくなったからです。北朝鮮との首脳会談に手が回らないほど、選挙情勢が危うさを増してきたということではないでしょうか。
 トランプ大統領自身についても暴露本が何冊も出版され、ロシア疑惑、セクハラ疑惑、脱税疑惑と疑惑がてんこ盛りです。追い詰められて選挙応援に駆け回っている大統領に首脳会談を準備する余裕が失われてきたということが、大敗するのではないかという兆候の一つです。

 もう一つの大敗の兆候は、米女性歌手のテイラー・スイフトさんによる民主党候補支持の表明と投票の呼びかけです。日本で言えば安室奈美恵さんが野党支持を表明して投票を呼びかけたようなものですから、トランプさんも慌てたでしょう。
 その効果はてきめんで、スイフトさんがインスタグラムにメッセージを掲載してから24時間で約6万5000人が新たに有権者登録を済ませたそうです。その多くは20代以下の若者で、これは今後もっと増えるでしょう。
 アメリカでは18歳以上の成人でも有権者登録をしなければ投票できません。このような形で新たに登録した若者が共和党ではなく民主党に投票するだろうことは明らかで、銃規制に反対する候補者の落選をよびかけている高校生の運動や民主党内の民主社会主義者への若者の支持の高まり、トランプ大統領の女性差別への反発と女性の立候補者の増加などとともに大いに注目される兆候です。

 さらに、ヘイリー国連大使の突然の辞任も、中間選挙に微妙に影響するかもしれません。この辞任によって、国際社会でアメリカがどのように受け取られ、扱われているかに国民の思いが至る可能性があるからです。
 ヘイリー辞任の理由は明らかにされていませんが、国連でのアメリカの孤立、地位や影響力の低下に嫌気がさしたのかもしれません。今回の辞任で、しばらく前の国連総会での演説でトランプ大統領が冷笑、失笑、嘲笑された光景を思い出しましたが、国連での会議や諸外国の外交官との接触で、ヘイリーさんは日常的にあのような対応に直面してきたのではないでしょうか。
 あの国連総会でのトランプ大統領は一人の喜劇役者にすぎず、かつての大国アメリカの大統領としての威厳は失われ、各国の反応にはひとかけらの敬意も尊敬も感じられませんでした。アメリカ国民からすれば大いにプライドを傷つけられたことでしょうし、国連でアメリカを代表していたヘイリーさんからすれば、なおさらそうだったにちがいありません。

 トランプ大統領の下で、アメリカは傷つき、孤立し、かつての威厳と覇権を失いつつあります。こんなアメリカを黙って見ているわけにはいかないという気持ちが、一人の女性歌手にすぎなかったスイフトさんを揺り動かしたのではないでしょうか。
 アメリカ国民は、自らが選んだ大統領がトランプでもジョーカーだったことに気付き始めたのかもしれません。もし、中間選挙で民主党が大勝するとすれば、勝たせたのはトランプ大統領その人だったということになるでしょう。

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10月11日(水) 来年の参院選で自民党が苦戦する4つの理由 [参院選]

 昨日のブログで、「このような誤算がこれからも続くとすれば、長期政権どころか来年の参院選を乗り切るのも難しいのではないでしょうか」と書きました。「このような誤算」が続かなくても、「来年の参院選を乗り切る」ことは、安倍首相にとってかなり難しい課題だと思われます。
 今のままでも、自民党の苦戦は避けられません。その理由を、とりあえず4点ほど指摘しておきましょう。

 第1は、昨日のブログで指摘したように、自民党役員人事と内閣改造の失敗です。これによって内閣支持率を高め、勢いをつけて臨時国会を乗り切るという「スタートダッシュ」を決められず、国民の不信と自民党関係者の不安を引きずったまま政権運運営を続けなければならなくなりました。
 しかも、安倍首相にとっては最後の任期で先がなく、後継者争いが始まって早晩「死に体(レームダック)」化が避けられません。すでに、禅譲を狙う岸田政調会長が福井で後援会を立ち上げるなどの動きが始まっています。
 改造による政権浮揚に失敗しただけでなく、逆に、失言や暴言、スキャンダルの発覚や答弁の失敗などでいつ「爆発」するかもしれない「地雷」を閣内に敷設するような結果になりました。昨日のブログでも指摘したように、片山さつき地方創生担当相、桜田義孝五輪担当相、平井卓也科学技術担当相、原田義昭環境相などいわくつきの面々が顔をそろえ、当選回数ばかり多くても閣僚として役に立つかどうかわからない初入閣組の「ガラクタ」が7人もいます。大丈夫なのでしょうか。

 第2は、「公明党神話」の崩壊です。これまで自民党は連立相手である公明党、その支持基盤である創価学会に助けられて選挙を闘ってきました。
 しかし、公明党支持者の3割前後がデニー候補に投票した沖縄県知事選挙に見られたように、創価学会に対する締め付けが効かなくなってきています。『週刊ダイヤモンド』編集部の「「最強教団」創価学会の焦燥、進む内部崩壊の実態」というレポートhttps://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181010-00181607-diamond-soci&p=1によれば、「会員の多くは学会の会員であると同時に“池田教”の信者でもある。「絶対平和主義」を掲げた池田氏のかつての言動と、執行部や公明党の方針に齟齬が生じれば、それは会員に「師匠の教えに背く反逆行為」と映る。実は全国各地で今、……幹部から「査問」を受けたり、役職を解かれたりする会員が急増している」といい、池田大作氏の直属の“親衛隊”ともいうべき人材グループで身辺警護や車両の運転に当たる「転輪会」メンバーの男性は、「池田先生がつくった学会は、完全に乗っ取られた。今の学会は宗教法人ではなく、単なる政治集団だ。師匠に反逆する執行部に対し、残されたわれわれ弟子たちが戦わなければならない」と語っているそうです。
 公明党は昨年の総選挙において小選挙区で1人落選させ、比例代表で初めて700万票を下回るなど敗北しました。来年4月の統一地方選挙や参院選を前に安倍首相に追随していると見られれば同様の苦戦は免れませんから改憲問題で距離を取らざるを得ず、自公の選挙協力にも陰りが生じているというわけです。

 第3は、これまでも触れてきた「亥年現象」というジンクスの存在です。12年に一度、統一地方選挙と一緒の年に戦われる参院選挙で、何故か自民党は苦戦するという結果が繰り返されてきました。
 事実、自民党結成後に実施された参院選で、1959年は唯一の例外ですが、71年、83年、95年に自民党は議席を減らしてきました。特に、前回の2007年参院選は第1次安倍政権の下で実施され、自民党の獲得議席は37議席と89年参院選以来の歴史的惨敗となって、60議席と躍進した民主党に初めて参院第1党の座を明け渡しました。
 このときの選挙では自民党と共に公明党も大敗し、神奈川県、埼玉県、愛知県の選挙区で現職議員が落選しています。市民と野党との共闘によってこの07年参院選を再現させることができれば、安倍政権に大打撃を与え安倍首相を政権の座から引きずり下ろすことができるかもしれません。

 第4は、16年参院選の実績です。3年前の参院選では32ある1人区で野党共闘が成立し、11選挙区で勝利することができましたが、これが繰り返されれば与党は3分の2の改憲発議可能な議席を失うことになります。
 この時の成績は、改選121議席のうち自民党が56議席で公明党が14議席と過半数を大きく上回りましたが、改選議席121の57.9%で3分の2を下回りました。自民党は3年前の参院選での当選65を9議席も減らしています。
 来年の参院選でも同じような結果になるとすれば、自民党の議席が減り公明党と合わせた与党全体としても3分の2の改憲発議可能な議席に達せず、この時まで発議できなければ、安倍首相の改憲野望は潰えることになります。前回参院選での野党共闘は2月19日の「5党合意」から始まり、投票日まで2ヵ月もない5月31日に一人区すべてで「1対1の構図」が確立していますから、それよりもずっと早く準備が可能な今回は、さらに強力な野党共闘の力を発揮できるはずです。

 来年7月の参院選まで、まだ10カ月もあります。しかし、もう10カ月しかありません。
 その時間を無駄にしてはなりません。野党間の共闘をどう強め、参院選をどう闘うのか、具体的な協議を始めてもらいたいものです。
 国民民主党を含めて、野党共闘に向けての態勢は整いつつあります。共産党の機関誌『前衛』での座談会や沖縄県の翁長前知事の県民葬での立憲野党代表の勢ぞろいなど、共闘に向けての機運は高まってきています。

 安倍内閣改造の不発と参院選での苦戦の予想が強まる中で、自民党内には来年の参院選で衆院選との「ダブル選挙」を行うべきだという声も出てきているようです。結構じゃ、ありませんか。
 衆参ダブル選挙で一挙に政権交代すれば、手間が省けます。その可能性も視野に入れた準備を、今から始めなけれなりません。

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10月10日 3選された安倍首相を悩ます4つの誤算 [首相]

 安倍首相は3選され、今後3年間の任期を確保しました。憲政史上最長の長期政権を視野に入れたことになります。
 しかし、その視界は良好とは言えません。出発した途端に躓いてしまったような誤算が次から次へと持ち上がり、安倍首相を悩ませているからです。
 とりあえず、自民党総裁選、沖縄県知事選、第4次改造内閣、そして日米貿易交渉で明らかになった4つの誤算について見てみましょう。このような誤算がこれからも続くとすれば、長期政権どころか来年の参院選を乗り切るのも難しいのではないでしょうか。

 第1の自民党総裁選挙です。これについては、すでによく知られているように党員票の誤算があります。
 7割の得票を目指していたのに、55%しか獲得できませんでした。公選法の適用を受けず、金あり恫喝あり、飲ませ食わせの何でもありの選挙だったにもかかわらず、投票率が62%でしたから党員全体の34%しか安倍首相に投票していなかったことになります。
 これはショックだったでしょう。3選されたものの、すでにこの時から安倍首相の躓きが始まっていたのですから。

 第2の沖縄県知事選の結果も、安倍首相にとっては大きなショックだったにちがいありません。総力を挙げて支援した佐喜間候補が当選できなかったこと以上に、差が8万票も開いたことの衝撃が大きかったのではないでしょうか。
 政権側が全力を出し切って総力戦を挑んだにもかかわらず、そのことがかえって沖縄県民の反発を強め、予想外の大差につながったと思われます。大きな力を総動員して力づくで言うことをきかせようとする安倍首相お得意のやり方自体が逆効果になり、県民には通用しませんでした。
 「争点隠し」と「利益誘導」によって組織戦を展開し、事前投票によって囲い込むという「勝利の方程式」が「敗北の方程式」に変わってしまったのです。逆に、辺野古新基地建設反対と普天間飛行場の即時閉鎖という最大の争点を前面に掲げて「オール沖縄」を野党共闘が支え、一部の保守層や創価学会、7割もの無党派層の支持を集める闘い方こそ、市民と野党の側にとっての「勝利の方程式」であることがはっきりと証明されました。

 第3の安倍改造内閣への国民の冷ややかな反応も、安倍首相にとっては大きな誤算だったにちがいありません。内閣が改造されれば多少の「ご祝儀」があって支持率が上がるのが普通で、それ目当てに改造する場合すらあるというのに今回は逆で、こんなに評判の悪い改造も珍しいと言えるでしょう。
 改造後の10月2、3日に実施された世論調査すべてで「評価しない」が「評価する」を上回り、内閣支持率も前回調査から日経で55%から50%に5ポイント、共同でも47.4%から46.5%に0.9ポイント下落し、読売でさえ50%の横ばいで上がっていません。毎日による10月6、7日実施の世論調査でも内閣支持率は37%の横ばい、40%の不支持率の方が高く、改造について「期待できない」37%が「期待できる」8%を大きく上回りました。
 これはNHKの世論調査でも変わありません。内閣支持率は改造前の先月と同じで変化せず、内閣改造と自民党役員人事を全体として評価するか聞いたところ、評価するが34%なのに対して評価しないが65%になっています。
 応援してもらったお礼のためとはいえ、本来ならとっくにやめていなければならない麻生太郎副総理兼財務相を残留させ、「改憲シフト」のために盟友の下村博文自民党憲法改正推進本部長と加藤勝信総務会長を新任し、「選挙シフト」のために甘利明選対委員長、稲田朋美総裁特別補佐兼筆頭副幹事長、萩生田光一内閣官房副長官という側近が起用されています。そのうえ、12人の新入閣組では、片山さつき地方創生担当相、桜田義孝五輪担当相、平井卓也科学技術担当相、原田義昭環境相など過去の言動やスキャンダルが問題になりそうな面々がそろい、衆院当選7回以上のベテランなのに初入閣という新閣僚が7人にも上るなど、改憲極右のガラクタ寄せ集め内閣の本質が国民に見透かされた結果ではないでしょうか。
 派閥のバランスを取り「滞貨一掃」を狙ったためにそうなったわけですが、初入閣が多ければそれだけ大臣としての手腕や国会での答弁、普段からの言動などが不安になるものです。早速、柴山昌彦文科相が教育勅語について「アレンジした形で、今の道徳などに使える分野があり、普遍性を持っている部分がある」などと述べて追及を受けています。

 第4の日米貿易交渉でのアメリカの対応も、安倍首相にとっては大いなる誤算だったにちがいありません。これはまだ始まったばかりで今後どのように推移するか分かりませんが、少なくとも2国間交渉を早々と呑まされてしまったことは間違いありません。
 日米首脳会談で発表した共同声明について、在日米国大使館がホームページで掲載している日本語訳では「物品、またサービスを含むその他重要分野における日米貿易協定の交渉を開始する」として物品だけでなくサービスを含む包括的なものだということが明確にされています。ハガティ駐日米国大使も「われわれはTAGという用語を使っていない」「共同声明には物品と同様にサービスを含む主要領域となっている」と発言しています。
 ところが、外務省が発表した共同声明の日本語訳(仮訳)では、「日米物品貿易協定(TAG)」の交渉を開始するとして新貿易協定があたかも物品のみの交渉であるかのような表現になっています。正文にはない「日米物品貿易協定(TAG)」という用語をねつ造して、「包括的なFTAとは、全く異なる」という安倍首相の発言との整合性を合わせるように改ざんしたのではないかとの疑惑が濃厚で、森友学園疑惑で安倍首相の発言とつじつまを合わせるために公文書の改ざんやねつ造が行われた構図と極めて似通っています。
 アメリカのペンス副大統領は4日の演説で「日本と歴史的な自由貿易交渉(Free Trade Deal)をまもなく始める」と述べて事実上の日米FTA(自由貿易協定)であることを明言しました。パーデュー米農務長官も4日、日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)などを上回る農林水産品の関税引き下げを求める考えを示唆して強硬姿勢を鮮明にしていますから、日本政府のウソがばれるもそれほど先ではないでしょう。

 以上のような誤算は、まだこれからも続きそうな状況が生まれています。昨日のブログでも書いたように、「幕引き」を狙って開かれた加計学園疑惑での加計理事長の会見が臨時国会での追及に向けての新たな「幕開け」になりそうなことも安倍首相にとっては誤算だったでしょう、
 また、ポンペオ米国務長官を介して提起してもらった拉致問題への北朝鮮側の反応も、安倍首相にとっては誤算だったと思われます。この提起に対する金委員長の反応は単に聞き置くだけで積極的な返答はなされず、日朝首脳会談についても消極的な反応だったようです。
 かつてない長期政権に向けて船出した安倍首相ですが、誤算続きで暗雲漂う中での出航となりました。臨時国会に向けてさらに風雨が強まるのは確実で、果たしてこの先も無事に航海を続けることができるのでしょうか。


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10月9日(火) 終わっていなかった加計学園疑惑 [スキャンダル]

 愛媛県今治市での獣医学部新設をめぐって、加計学園理事長の加計孝太郎氏が7日、2度目の記者会見を開きました。通常国会が終わって野党の追及も一段落したように見える段階で、「腹心の友」である安倍首相の3選を見届けて臨時国会が始まる前に、加計学園疑惑の「幕引き」を図ろうとしたのではないでしょうか。
 直接的には、説明責任を果たすことを求めた愛媛県議会の決議に応ずる必要があったためですが、このタイミングを選んだのには、以上のような計算が働いていたと思われます。しかし、「やればいいんだろ」と言わんばかりのアリバイ的な記者会見だということが見え見えで、かえって新たな疑惑の「幕開け」となってしまったように見えます。

 『毎日新聞』10月8日付の「加計氏またゼロ回答」「愛媛文書読まず否定」という見出しの記事は、そのリードで「疑惑を否定しつつも根拠は示さないままの『セロ回答』で、疑惑が晴れたとはおよそ言い難い。会見を開いた趣旨も判然とせず、臨時国会でも野党から追及されるのは必至だ」と書いています。何のために開いたのかと言わんばかりの記事ですが、そういわれても仕方がないような無内容な会見でした。
 森友・加計学園疑惑で共通しているのは、疑惑を指摘する側は具体的な文書や根拠、事実を示しているのに、それを否定する側は具体的な根拠を明らかにせず、ひたすら記憶に頼って言葉で言い逃れるだけだという点にあります。今回の加計学園理事長の会見での説明も同様です。
 証拠を示して指摘された疑惑について、具体的な根拠を明示して反駁することができていないということになります。裁判であれば、もうこれだけで「有罪」を言い渡されても仕方がないような状況に追い込まれているのです。

 質問の中で、加計氏は「愛媛県文書で安倍晋三首相と面会したと報告された15年2月25日、理事長は何をしていたか」と聞かれ、「3年前なので覚えていない。記憶がないということは、会っていないと思う」と「即座に否定」しています。今回の会見で、加計氏が最もはっきりさせたかったのは、この点だったと思われます。
 しかし、ここでも否定の元になっているのは「記憶」だけで、それを裏付ける事実が示されたわけではありません。それどころか、「覚えていない」と言っています。
 「覚えていない」のに、否定だけはきっぱりとする。これも森友・加計学園疑惑での証言に共通する特徴です。

 同じ『毎日新聞』には、10月6,7日に実施された世論調査の結果が出ています。森友・加計学園問題について、「安倍首相や政府のこれまでの説明に納得していますか」という質問に対して、「納得している」13%、「納得していない」71%となっています。
 この調査は加計氏の会見前でのものですが、会見を見た国民は「説明に納得」したでしょうか。愛媛県文書を見もせず、何の準備もせずに出てきてほとんどが「ゼロ回答」でした。
 これで、国民の納得が得られるはずがありません。証人喚問でなければ真相は明らかにならないということを、かえって強く感じさせるような会見でした。

 野党からの追及は止まず、その舞台は臨時国会に移ることになるでしょう。3選されたがために安倍氏は今も首相の座にあり、森友・加計学園疑惑追及の矢面に立つ資格を持ち続けているのですから。

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10月8日 『日刊ゲンダイ』でのコメント [コメント]

 〔以下の私のコメントは、『日刊ゲンダイ』に掲載されたものです。〕

*10月3日付巻頭特集「沖縄の乱は全国へ 亡国内閣改造で尽きた安倍内閣の命運」
 現地で沖縄県知事選を取材した法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)がこう言う。
 「安倍首相が苦戦した“総裁選”と“沖縄県知事選”は、よく似ていると思います。沖縄県民が安倍政権にノーを突きつけたのも、自民党員の45%が石破支持に回ったのも、具体的な政策というより、安倍政治の強権的な手法そのものに反発した結果でしょう。『沖縄の気持ちに寄り添う』と口にしながら、民意を無視して辺野古基地の移設を強行した。総裁選では市議や現職大臣まで恫喝していた。力ずくで批判や不満を封じ込めているのが安倍政治です。逆らう者は脅し、スリ寄る者には褒美を与える。でも、さすがに安倍政治は限界を迎えている。総裁選の苦戦ぶりは、そのことを表している。いずれ“沖縄の乱”は、全国に伝播するはずです」

*10月4日付巻頭特集 「自壊へ一直線 「安倍改造内閣」国民唖然の酷い顔触れ」
 「ここまでヒドい組閣をするのか、と言葉を失いました。沖縄県知事選で突き付けられたアベ強権政治へのNO、総裁選で地方票が示した異議申し立て、モリカケ問題を巡るアベ首相の説明に納得できない7割超の世論はすべて無視。国民に挑戦状を叩きつけた布陣です」(法大名誉教授の五十嵐仁氏=政治学)

 「分かりやすいほどの憲法改正シフトです。盟友の加藤総務会長もそうですが、安倍首相と思想信条が近い下村氏を本部長に据えることで、党内の反発を抑え込み、改憲論議を強引に加速させる思惑がミエミエです」(五十嵐仁氏=前出)

*10月7日付巻頭特集「なぜ庶民は怒らないのか 「死ぬまで働け」という安倍政治」
 労働法制に詳しい法大名誉教授の五十嵐仁氏はこう言った。 
 「過去15年の歴代政権は『100年安心』の年金制度を掲げ、第1次政権時代に安倍首相は『消えた年金』について『最後の1人まで支払う』と約束しました。ところが、第2次政権以降は3党合意の『社会保障と税の一体改革』を棚上げ、消費増税も2度先延ばし。年金財政の逼迫を長年放置した揚げ句、支給開始を遅らせる。その分を雇用延長で民間企業に肩代わりさせるとは、責任放棄も甚だしい。安倍首相は、未来投資会議の関係閣僚に盟友や“茶坊主”を寄せ集め、“やっている感”のアピールに余念がありませんが、ダマされてはいけません」

 「内閣支持率を年代別で見ると、すでに年金を受給している60代以上の“アベ離れ”は進んでいますが、40~50代は依然、支持率が高い。年頃の子どもを抱えて会社人生も長くなった、この世代こそ『死ぬまで働け社会』で最も割を食うのです。この働き盛り世代が、安倍政権にもっと異議を申し立てなければ、いいように痛めつけられるだけです」(五十嵐仁氏=前出)

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10月6日(土) 自民党と内閣の改造人事に示されている安倍首相の二つの狙い [内閣]

 10月2日に自民党役員と内閣の改造が行われ、第4次安倍改造内閣が発足しました。内閣の「土台」とされている菅官房長官や麻生太郎副総理兼財務相は留任し、その周りを安倍首相の側近や「お友達」の議員が固め、過去最多となった新入閣者は派閥均衡・滞貨一掃の古手がほとんどという顔ぶれです。
 その結果、公明党出身の石井国交相を除く19人の閣僚全員が改憲右翼団体と連携する「神道政治連盟国会議員懇談会」に所属し、「日本会議国会議員懇談会」にも14人が加盟しているなど極右政権の本質は変わらず、失言や暴言のリスクが高い「ガラクタ」ばかりをかき集めた形になってしまいました。早速、柴山昌彦文科相が教育勅語を評価するような発言をして批判を浴び、釈明に追われています。
 このような自民党と内閣の新しい布陣には、安倍首相の二つの狙いがはっきりと示されています。その一つは改憲発議の強行を狙った「改憲シフト」であり、もう一つは選挙対策を強化した「選挙シフト」です。

 第1の改憲発議強行の狙いは「改憲シフト」と評されるような人事に明瞭です。改憲の先頭に立つ司令塔を穏健派とされる細田博之氏から強引なやり方をためらわない腹心の下村博文氏に変え、自民党内で改憲案を承認させるために重鎮でもない加藤勝信前厚労相を総務会長に抜擢しました。
 これまで公明党とのパイプ役を果たしてきた高村正彦前副総裁も後ろに引っ込めました。必ずしも、公明党との了解を前提としないという姿勢を示したことになります。
 安倍首相は成算の少ない改憲路線へのこだわりを、依然として諦めていません。自民党だけでも改憲発議に向けて突っ走ることができるような態勢をとりあえず人事面で固めたというのが、今回の改造が示しているポイントです。

 安倍首相は総裁選で改憲を重要な争点の一つに掲げ、これまで臨時国会での条文案の「提出」に意欲を示してきました。しかし、最近になって、議論のたたき台として「説明」するだけでも構わないとトーンダウンしたと報じられています。
 10月3日に自民党の高村正彦前副総裁と会談した際、安倍首相は自衛隊の明記など4項目の党憲法改正案を臨時国会で与野党に説明したいと表明し、高村氏が「党の条文案を衆参両院の憲法審査会で説明するという意味でいいか」と真意を尋ねると、首相は「そうとらえてもらって結構だ」と答えました。「提出」から「説明」へのトーンダウンだと受け取られています。
 だからと言って、油断してはなりません。このような形で印象を操作することが、安倍首相一流の「隠す、誤魔化す、ウソをつく」作戦である可能性が高いからです。
 当面、「説明」だからと言って世論と野党を油断させ、与野党を巻き込んで憲法審査会を開かせて改憲発議を強行するチャンスをうかがうということが十分に考えられるからです。こんなことは常識的には考えられませんが、そのような常識の通用しないのが安倍首相です。

 そのような形で強行したら、野党や世論の大きな反発を買うことは目に見えています。統一地方選挙を控えている地方議員や参院選で立候補を予定している参院議員の予定候補者も動揺するでしょう。
 そこで意味を持ってくるのが第2の「選挙シフト」です。今回の改造で、安倍首相は来年の選挙に向けての体制を格段に強化したからです。
 選対委員長に今回の総裁選で安倍陣営の選対事務総長を務めた盟友の甘利明氏、総裁特別補佐兼筆頭副幹事長に安倍首相の秘蔵っ子と言われている稲田朋美氏などを要職に付け、幹事長代行には総裁特別補佐や官房副長官として常に側近くで仕えてきた側近中の側近である萩生田光一氏を再任するなど、安倍首相の盟友や側近を起用して万全の構えが取られています。党内の動揺を抑えて睨みを利かせ、首相の指導力を強化して選挙を勝ち抜こうという並々ならぬ決意が示された布陣です。

 安倍首相は、今回の改造によって大きな賭けに出たということでしょう。公文書改ざんやセクハラ問題、暴言などでとっくの昔に辞任して当然だった麻生副総理を再任し、政治とカネの問題を抱えている甘利氏や下村氏、岩屋氏などを起用し、女性大臣を1人しか起用しないとなれば、世論の反発や批判を受けることは十分に分かっていたはずです。
 しかし、「改憲シフト」や「選挙シフト」を敷き、80人とも言われている入閣待望組の不満を抑え、再選に協力してもらった派閥のご機嫌を取るためには、そうせざるを得なかったのです。安倍首相としては、「苦渋の選択」だったということになるでしょう。
 それもこれも、改憲を自分の手でやり遂げたいという野望の実現を願ってのことだったと思われます。今回の改造人事には、隙あらば参院選の前に改憲発議を強行したい、それで混乱しても参院選で勝てるようにしておきたい、発議に失敗しても参院選後に可能性を残すために何としても勝ち抜きたいという首相の執念がにじみ出ています。

 このような執念をしっかりと見抜き、油断することなく対応しなければなりません。トーンダウンしたとされている首相の「死んだふり」に騙されてはいけません。
 さし当り、「説明」のための憲法審査会の開催には断固として反対する必要があります。同時に、捏造したとされる「TAG」問題をはじめ日米貿易交渉などについての追及を強め、安倍政権の「死に体(レームダック)」化を促進することによって改憲発議の余裕を与えないようにすることが、臨時国会において野党のめざすところとなるでしょう。


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10月5日(金) 「打倒 安倍政権」にむけた労働組合運動の役割(その3) [論攷]

 〔以下の論攷は、「2018年・勤労者通信大学・通信」の『団結と連帯』3、に掲載されたものです。3回に分けてアップします。〕

 労働組合運動はどのような役割を果たすべきか

 このようななかで、労働組合運動の対応も問われることになります。労働組合運動には、市民と野党との共闘の重要な構成員としての課題や役割と、労働組合としての固有の運動の課題や役割があります。
 安倍政権打倒に向けて、特に大きく期待されるのは前者です。労働組合は組織された社会運動体として大きな力を持っており、古くから活動してきた社会運動における「敷布団」としての貴重なネットワークや豊富な経験があるからです。
 その第1は、安倍9条改憲阻止に向けての取り組みです。3000万人署名は引き続き9月末まで続けられます。この署名運動は通常国会での改憲発議阻止の大きな力になりました。引き続き、憲法共同センターなどに結集して署名運動に取り組む必要があります。
 組合内での討論や署名への取り組みは重要ですが、すでに組合員の多くは署名している場合が少なくありません。これからは9条の会や革新懇などとも協力し、地域に打って出ることが重要です。宣伝活動や署名集めでも、労働組合としての組織力は大きな力となるにちがいありません。
 第2は、安倍政権を追い込み、悪法の発動を阻んで内閣支持率を低下させるための取り組みです。国際情勢の激変によって、安全保障関連の施策の存立根拠や正当性は失われつつあります。特定秘密保護法や安保法制(戦争法)などの廃止を求め、沖縄・辺野古での新基地建設や横田へのオスプレイ配備、秋田と山口で予定されている陸上イージスの設置、基地強化と防衛装備の拡充など安倍政権の歴史逆行の愚策に反対し、その無益と危険性を明らかにしなければなりません。
 緊急に取り組むべき課題は、通常国会で成立したカジノ法案を「立ち枯れ」にすることです。国内3カ所でIR(統合型リゾート)が設置されますが、具体的な場所は決まっていません。候補地での反対運動によって阻止できれば、安倍政権の「命取り」になる可能性もあります。
 第3は、来年の統一地方選挙や参院選に向けての準備です。特定政党支持の押し付けに反対して組合員の政党支持の自由を守ると同時に、政策の一致する候補者や政党を支援する活動に取り組まなければなりません。とりわけ、統一地方選挙の首長選での共闘実現と統一候補の擁立のために力を尽くすことが必要です。
 議員選挙では来年の参院選での野党共闘の実現を、今から準備しなければなりません。参院選で与野党逆転を実現して衆参の「ネジレ」状態を生み出せば、安倍政権を打倒できます。そのためには、32の1人区はもとより可能な選挙区での野党共闘を実現することが必要です。それぞれの選挙区で野党間の相互支援による統一候補の擁立を仲立ちし、労働組合としてのイニシアチブを発揮しなければなりません。

 むすび

 安倍政権打倒に向けてのこれらの取り組みは、賃金・労働条件の改善という労働組合固有の課題・役割である18年秋闘や19年春闘と並行して実施されることになります。両者の結合によって相乗効果を生み出すことが大切です。
 また、この間の「働き方改革」関連法案の国会審議を通じて、過労死・過労自殺をなくすための取り組みの重要性が明らかになり、世論の支持が得られるようになってきました。不十分とはいえ、労働基準法の36条に罰則付きの制限が導入されたことには大きな意味があります。その趣旨を生かして、労働基本権の実現や国際労働基準の具体化を職場レベルから進めていかなければなりません。
 労働組合は労働者の生活と権利、働く環境を守るだけでなく、働く人々の生命を守る役割を果たすことが必要です。日本人の労働環境はそれだけ悪化し、達成すべき課題もそれだけ切実なものになってきています。
 そのためには、何としても安倍政権を打倒しなければなりません。この点でも、労働組合運動はその真価を問われているということになるでしょう。
(2018年9月3日記)

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