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10月6日(日) 連合第13回定期大会を傍聴してきた [労働組合]

 これではまるで「青菜に塩」だなー。労働組合ナショナルセンターの連合(日本労働組合総連合会)第13回定期大会を傍聴した感想です。
 大会は10月3日(木)と4日(金)に東京国際フォーラムで開かれ、私は初日だけの傍聴でしたが、まったく元気がありません。一日目の議事は予定より1時間早く終了するなど、「闘う労働組合」とは程遠い姿にガッカリしてしまいました。

 連合の定期大会を傍聴するのは、これで3回連続になります。古賀前事務局長に直接お願いして傍聴券を手配していただきましたが、その古賀さんが事務局長から会長に選出されたのが4年前の第11回定期大会でした。
 この時は直前の総選挙で政権交代が実現して民主党中心の連立政権が発足し、首相になったばかりの鳩山民主党代表が挨拶(私は交通機関の乱れのために遅刻し、この挨拶を聞くことができませんでした)するなど、喜びと熱気に溢れた大会でした。東日本大震災の半年後に開かれた前回の第12回定期大会には野田佳彦新首相が出席し、連合は震災復旧のボランティア活動に全力で取り組んでおり、使命感に燃えた情熱と行動力を感じさせるものがありました。
 しかし、今回の大会に安倍首相は「公務のために」欠席し、そのような熱気や使命感のどちらも感じられませんでした。昨年暮れの総選挙で再び政権が自民党の手に戻り、直前の参院選でも民主党が大敗したのですから、それも当然でしょう。

 大会では、「ストップ・ザ・格差社会! すべての働く者の連帯で『安心社会』を切り拓こう!」というスローガンが掲げられていました。古賀会長の冒頭あいさつでは、労働分野の規制緩和を許さず、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を保障する社会的うねりをつくること、2014春季生活闘争で家計部門の所得の向上を実現し、デフレ経済の悪循環を絶ちきることなどが新たな運動展開の課題として示されました。
 一昨日の規制改革会議では派遣労働に関する規制緩和を求める意見書が出されるなど、新自由主義的な規制緩和に向けての新たな攻勢が始まっています。これと対峙すべき連合の役割は極めて大きく、この点での奮闘を期待したいと思います。
 春闘での賃上げについては、討論の中でも積極的な取り組みを求める発言が相次ぎ、統一ベア要求闘おうとの呼びかけもありましたが、統一ベア要求を掲げるとの答弁はありませんでした。今後の中央委員会で春闘方針を論議する際に再び問題になるでしょうが、連合としてのベア要求を掲げ、正規だけでなく非正規労働者の賃上げに向けての具体的な方針を打ち出してもらいたいものです。

 また、討論の中では、脱原発に向けて、再稼働を許さず再生エネルギーへの転換に向けての具体的な方針を提起してもらいたいとの要望も示されました。他方で、エネルギー政策について、「現実的建設的なものとなるように」との意見も出されています。
 これにたいして南雲事務局長は「最終的には、原子力エネルギーに依存しないという方向で政策展開したい」と答弁するにとどまりました。「脱原発」や「原発ゼロ」という言葉がなかったのは残念です。
 小泉元首相ですら脱原発を主張するようなご時世で、状況が大きく変わってきています。放射能汚染の危険にさらされている原発関連産業で働く労働者の組合こそ、1日も早く原発依存から離脱することを求めるべきではないでしょうか。

 今回の大会では、10年ぶりに「連合の政治方針」の改定が提案されました。しかし、「政権交代可能な二大政党的体制をめざす」という基本的な方針に変更はありません。
 このような方針の適合性については、十分な検討が必要だったのではないでしょうか。政権交代が挫折したのは民主党の未熟さのせいでしょうが、同時に、それを全面的にバックアップしてきた連合の対応にも問題があったように思われます。
 この点についての総括は極めて不十分だという印象です。連合の政治方針についての討議で発言したのが、たった2人にすぎなかったというのも意外でした。

 そのうちの1人は、憲法改悪反対の一大運動を連合が中心になって展開すべきだと主張し、集団的自衛権の行使容認の動きについても警鐘を鳴らすべきだと発言しました。これは注目すべき指摘ですが、これへの拍手はパラパラで、改憲や集団的自衛権という言葉が登場したのはこのときだけです。
 もう1人も、新自由主義に対抗する広範なリベラル勢力の結集が必要だとし、民意が反映されない小選挙区制の問題点を指摘しました。これも重要な発言だったと思われますが、小選挙区制について検討し研究することは問題ないというレベルの答弁で、その総括が明らかにされることはありませんでした。

 南雲事務局長は、憲法問題について、これまであった「憲法改正を俎上に乗せることは時期尚早と判断する」との記述を削除したことについて、「自民党が改憲草案を出してきている現状では不安がある」との意見があったことを紹介しながら、「憲法は不磨の大典ではない」と説明していました。また、答弁でも、危惧の念に対する理解を示しつつ、「憲法の平和主義を貫徹するということを明確にしたうえで改悪はさせないという強い意志を持っている」と強調しました。
 これらのやり取りからも、憲法をめぐって連合内に様々な異論のあることがうかがわれます。今後、改憲の動きがさらに具体的になった場合、「憲法改悪反対の一大運動」に取り組めるのでしょうか。
 とはいえ、南雲事務局長の言葉通り、自民党の狙う9条改憲阻止のために力を尽くし、「憲法改悪反対の一大運動」を展開してもらいたいものです。予算案では、大衆行動費に重点的に配分したとのことですから、今後の「大衆行動」に注目したいと思います。

 たとえ弱点や不十分さがあっても、連合は基本的には労働組合です。労働者の権利を守り、利益を実現するという原点だけは、どのような状況になっても忘れて欲しくないものです。
 今回の大会を傍聴して、「連合よ、初心に帰れ」との思いを強くしました。もっと元気を出して働く人々の砦となり、「あって良かった労働組合」と言われるような実績を挙げてもらいと、改めてそう思った次第です。

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5月27日(金) 連合は原発推進政策を凍結するだけでは不十分だ [労働組合]

 昨日の『朝日新聞』夕刊に、次のような記事が出ていました。「連合、原発推進方針を凍結 昨夏決めたばかりですが」という表題が付いています。

 連合(古賀伸明会長)は東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて原発推進政策を凍結し、新規立地・増設を「着実に進める」としてきた方針を見直す。26日午後の中央執行委員会で決定する。民主党の有力な支持団体だけに、民主党政権のエネルギー政策に影響するのは必至だ。
 連合は中央執行委に提出する文書で、原子力エネルギー政策について「より高度な安全確保体制の確立、地域住民の理解・合意という前提条件が確保され難い状況に鑑み、凍結する」と明記し、原発政策の総点検・見直しに着手する方針を打ち出す。新増設推進の姿勢を改め、当面は政府のエネルギー政策見直しの行方を見守る姿勢に転じる。
 連合は昨年8月、傘下の労組間で意見が割れていた原発政策について、初めて「推進」を明確に打ち出したばかりだった。(以上、引用終わり)

 ここで指摘されている「昨年8月」の政策転換については、5月20日付のブログ「連合は脱原発へと明確にエネルギー政策を転換するべきだ」で紹介しました。昨年の8月19日に連合第11回中央執行委員会で採択された「エネルギー政策に対する連合の考え方」のことです。
 このときのブログでも書きましたが、原発推進政策の「凍結」は当然です。しかし、それだけでは不十分です。
 更に歩を進める必要があります。原子力発電に依存する社会のあり方やエネルギー政策からの転換を明確に打ち出し、連合もそのためにイニシアチブを発揮すべきでしょう。

 連合の傘下には電力総連があり、そこには電力会社で働く人々が沢山います。だから、電力総連は職場を守るためとして原発推進政策を掲げてきたわけです。
 しかし、原子力発電所ばかりが電力労働者の働く場ではありません。再生可能な自然エネルギーによる発電が拡大していけば、そこもまた電力会社の職場となることでしょう。
 それに、原発の職場は、常に放射能による被曝の危険と隣り合わせです。そのような危険に満ちた労働から働く人々を守ることも、労働組合としての当然の役割ではないでしょうか。

 つまり、原発で働く人々の安全と健康を守るために、本来、労働組合こそが大きな役割を果たすべきだったということになるでしょう。電力総連や連合などは、労働者を危険にさらす原発の推進ではなく、脱原発こそ先頭になって訴えるべき立場にあったはずです。
 それが、原発推進の立場に立ってしまいました。大きな間違いを犯したというわけです。
 できるだけ早く、そのような間違いを是正しなければなりません。今もなお、福島第1原発の放射能漏れの防止と沈静化のために必至で働いている人々を守り、二度と再び、このような危険な作業が必要とされないようにするために、連合も、電労総連や電機連合などの労働組合も力を尽くすべきでしょう。

 これを機会に、連合はアンチ・ニュークリア(非核・脱原発)国家を目指して働き方を変えるところまで構想しなければなりません。核兵器の開発に反対し、原子力発電への依存から脱却する方向を明確にするべきです。
 省エネルギー社会を実現し、ワークシェアリングによって労働時間の短縮を図り、過労死のないディーセント・ワークに支えられた新しい社会を目指すべきです。このようにして人間らしい労働と生活を実現することこそ、「福島の教訓」を踏まえた労働組合の使命であることを自覚していただきたいものです。

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5月21日(土) 原発の新増設推進に合意した自治労の責任は大きい [労働組合]

 連合が原発の推進へと舵を切った背景には、二つの理由があったと思います。その一つは、電力総連という強力な「アクセル」の存在であり、もう一つは、それまで効いていた「ブレーキ」が効かなくなったことです。

 電力総連という「アクセル」がいかに強力であったかについては、すでに紹介した木下力さんの『週刊金曜日』の論攷が詳しく書いています。「とりわけ原発推進については同盟時代から強く要求してきた」と書かれているとおりです。
 しかし、それにもかかわらず、連合はこれまで原発推進を明示しませんでした。それは、「連合傘下の労働組合には、原発に反対の立場をとる旧総評系と、積極派の電力関係労組などの旧同盟系がおり、統一見解には至らなかったため」(2010年8月19日付「朝日・コム」)です。
 その事情に、変化が生じました。自治労が「PTの報告書について『安全確保と住民の合意は譲れないという考えに立った上で、新設を推進する』と」、それまでの態度を変えたからです。

 自治労の委員長は連合の会長代行を兼ねています。ですから、連合の三役会議にも出席していますし、当然、エネルギー政策を転換したPTにも参加していました。
 その自治労も合意したうえでPTの報告が出され、「原子力発電所の新増設」を「着実に進める」との昨年8月の「エネルギー政策に対する連合の考え方」も採択されました。当然、自治労内では、大きな反発が生ずることになります。
 「エネルギー政策に対する連合の考え方」が採択された昨年8月に、自治労は徳島市で第82回定期大会を開催しました。この連合の転換は、そこでも問題とされたようです。

 徳島大会について報じた『連合通信』(2010年8月31日付)は、「住民の理解を前提に原発の新増設を容認するなど、連合がこのほど打ち出したエネルギー政策について、本部に態度表明を求める発言が、多数出されたのも特徴だ」と書いています。記事は、「岡本博書記長は連合のエネルギー政策に関し、『原子力発電についての認識が不十分』との味方を表明、『脱原発』の立場で引き続き平和フォーラムと連携していくと述べた」と続いており、自治労が「脱原発」の立場を維持しているかのように報じています。
 しかし、そうではありませんでした。徳島大会の最終日である8月27日に行われた総括答弁で、徳永委員長は「最終的には連合の三役会議そして中央執行委員会でこのエネルギー政策の確認をしましたけれども、三役会のなかでは私の方から改めて自治労としての立場を明確にしながら、ベストミックス化石エネルギー、原子力エネルギー、そして自然エネルギーのこのベストミックスをいかにきっちりと対応していくのか、そのうえで脱原発に向けての取り組みを展開をするという自治労方針について明確にしたうえで、全体での確認がされてまいりました」http://www.geocities.jp/toukyoujititai/doc/20100827tokunagasoukatutouben.docと、苦しい弁明を行っていたからです。
 連合のエネルギー政策についての「全体での確認」は、「ベストミックスをいかにきっちりと対応していくのか」ということを踏まえたうえであったことが強調されていました。ここに登場している「ベストミックス」という用語は、民主党のエネルギー基本政策でも、連合のPT報告でも用いられていたものです。

 こうして、自治労もまた、それまでの方針を事実上、転換していました。ただし、『連合通信』での岡本書記長の発言では、それは明示されていません。
 また、この時の大会方針でも「脱原発の取り組み」が掲げられ、「低迷する電力需要にもかかわらず、原発の新増設の動きが進んでいます。上関原発新設は大きなヤマ場になっており、引き続き100万人署名の取り組みや現地の運動と連携した取り組みを強化します。また、大間原発(青森)、川内原発(鹿児島)3号機、浜岡6号機などの新増設の動きに対し、地元のねばり強いたたかいに連帯し、全国的な支援の力で、推進側の動きを押し返す運動を進めます」と書かれていました。「ベストミックス」に向けた原発方針の転換をうかがうことはできません。
 それは隠微な形で、組合員から隠れてこっそりとなされたということでしょうか。だからといって、自治労が責任を免れることはできません。

 このように、連合がエネルギー政策を原発推進へと転換した背景としては、その内部に、電力総連、電機連合、基幹労連など、原子力産業に関わる企業の労働組合を傘下に収めているという事情があります。それに加えて、原発が「発電時にCO2を排出せず」「地球温暖化対策」に効果的であると思われていた点も大きかったでしょう。
 さらに、このような政策転換には、政治的な背景があったことも指摘しておかなければなりません。それは政権交代の実現であり、当初は鳩山連立政権に社民党も加わっていたということです。
 民主党政権が作成した「エネルギー基本計画」が閣議決定される直前に、社民党は連立政権を離脱しますが、それは米軍普天間基地の移設をめぐる対立に起因するものでした。自治労の政策転換は、社民党が連立を離脱したとはいえ、いずれ復帰する可能性のあった民主党政権に対する配慮によるものだったのではないでしょうか。

 このような経過を見れば、連合の政策転換において自治労の合意が持っていた意味は大きく、その責任もまた大きかったように見えます。もし、自治労が合意しなければ、連合は原発の新増設を認めるような方向に舵を切ることはできなかったでしょう。
 福島第1原発での放射能漏れ事故の後、自治労の徳永委員長は「計画中の原発の新増設を容認した連合のエネルギー政策について問われ、現状のままであれば、自治労として充分な議論を申し入れる考えであることを明らかにした」と報じられています。そうえで、「自治労として、事態が収束したうえで改めて問題点を整理し、今後のエネルギー政策についての議論をしたいと申し上げていく」と語ったそうです(『連合通信』2011年4月5日付)。
 「現状のまま」ではなく、「改めて問題点を整理し」たうえでの議論とは、どのようなものなのでしょうか。連合に対して、「脱原発」路線への明確な転換を求めていくということなのでしょうか。

 昨日のブログでも紹介したように、連合は今後、エネルギー政策の見直しを行うようです。しかし、古賀会長は「どういう方向付けになるかわからない」と述べていました。
 大震災と原発事故による被災への救援活動の最前線に立って、自治労組合員の多くは大きな役割を演じ苦労しています。その自治労こそが、今後の連合内での議論において「脱原発」の方向を明確にするために大きなイニシアチブを発揮するべきではないでしょうか。

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5月20日(金) 連合は脱原発へと明確にエネルギー政策を転換するべきだ [労働組合]

 2010年8月19日付の「朝日・コム」に、下記のような注目すべき記事が出ていました。「原子力『推進』を明記 連合、エネルギー基本方針を策定」という見出しが付いています。

 連合は19日、エネルギー問題に関する基本方針を初めて策定した。現在計画中の原子力発電所の新増設を「着実に進める」とし、これまで内部で意見が分かれていた原子力エネルギーについて推進する姿勢を明記した。
 これまでは2年ごとにまとめる国への政策提言の中で、原発を「重要なエネルギー源」と位置づけるにとどめていた。連合傘下の労働組合には、原発に反対の立場をとる旧総評系と、積極派の電力関係労組などの旧同盟系がおり、統一見解には至らなかったためだ。
 今回の基本方針は、今後10~20年を見すえた中長期的なものとしてまとめられた。地球温暖化防止に向けて温室効果ガスの排出量削減が迫られるだけでなく、新興国の発展など世界的なエネルギー需要の増加で、資源の獲得競争がますます激しくなってくるとの共通認識に立った。原発の利用向上をはじめ、石油・石炭といった化石燃料によるエネルギーや、再生可能エネルギーとの最適な組み合わせが欠かせないと判断した。
 連合が支援する民主党も、昨年のマニフェストで原子力利用の推進を掲げている。連合の古賀伸明会長は同日の定例会見で「これまでの政策から一歩踏み込んだ方向性が出た。具体的な議論を始めなければならない」と語った。(以上、引用終わり)

 ここで指摘されている「エネルギー問題に関する基本方針」というのは、「エネルギー政策に対する連合の考え方」のことです。これは、昨年(10年)の8月19日に連合第11回中央執行委員会で採択されました。
 この「考え方」は化石エネルギー、原子力エネルギー、再生可能エネルギーの「ベストミックスの推進」を図るとし、原子力エネルギーについて「現在計画中の原子力発電所の新増設については、地域住民の理解・合意と幅広い国民の理解を前提に、これを着実に進める」として推進する方向を明確にしました。ここに登場する「ベストミックス」という言葉は、民主党政権によって昨年の6月に策定されたエネルギー基本計画にも登場した「キーターム」です。
 同時に、この「考え方」は、「原子力エネルギーをエネルギー安定供給に欠かすことのできない重要なエネルギー源として位置づけるとともに、CO2削減に有効な手段として位置づけることが妥当である」との位置づけも示していました。これも、エネルギー基本計画と同様です。

 こうして、連合はエネルギー政策の転換を確認し、「原子力発電所の新増設」を「着実に進める」との「考え方」を明らかにしました。この方針転換は、その後も続いています。
 連合は、東日本大震災が発生した3月11日のまさにその日、第18回中央執行委員会を開いていました。そこでまとまられた「政策・制度 要求と提言」には、次のように書かれています。

 国は、国家戦略として原子力エネルギーの位置づけを明示するとともに、安全・安心の確保や国民・住民に対する理解活動に責任を持って取り組む。また、より高度な安全確保体制の確立を大前提に、原子力発電の高経年化対策と設備利用率向上をめざす。(以上、引用終わり)

 しかし、福島第1原発での放射能災害がここまで拡大してしまった現在、このような路線を今後も維持することは不可能でしょう。連合は4月20日に開いた中央執行委員会で、原子力エネルギーを推進する従来の政策は「より高度な安全確保体制の確立、地域住民の理解・合意という前提条件が確保され難い状況を考慮し、凍結する」として棚上げを提案しました(『連合通信』2011年4月23日付)。
 放射能漏れ事故の収束のめどがつかず、「住民の理解が確保され難い」というのがその理由ですが、当然でしょう。今後の方向付けの「原案は、政策委員会で修正を含めて議論し、6月の中央委員会で決定する」そうです。
 前述の「政策・制度 要求と提言」についての政策制度中央討論集会が4月25~26日に開催されました。棚上げの方針はここで提案され、「政策の総点検や見直し作業は、事故の収束を待って始める」とされましたが、「この判断には、『脱原発』も視野に入れた早期の議論開始を求める意見が相次いだ」そうです(『連合通信』2011年4月28日付)。

 この「凍結」方針は、原発推進派と慎重派に組織が二分されることを回避するためだと見られています。連合は今後、福島第一原発の事故処理の進ちょく状況を踏まえて、「然るべき時期」に原子力政策の総点検・見直しを行うとし、政府に対しては深刻な放射能漏れの事態を打開するためのあらゆる対策と「被害者への適切な救済」を求めていくとしています。
 しかし、エネルギー政策の見直しについて、古賀連合会長は「どういう方向付けになるかわからない」と述べ、必ずしも脱原発の方向ではありません。原発推進政策の継続にも含みを持たせたものとなっており、連合が明確に反原発・脱原発の方向に転換できるかどうかが注目されます。

 このような連合の原発政策の推移は、規制緩和についての政策的な推移と良く似ています。連合は、人材サービスゼネラルユニオンという派遣労働者の労働組合が加盟するUIゼンセン同盟を有力な民間単産として抱えており、そのせいもあって労働分野での規制緩和を要求してきました。
 しかし、その後、貧困の増大や格差の拡大、ワーキングプアの増大や「派遣切り」によって世論や行政当局の対応が変化するにつれ、連合の対応も変わってきました。中央に非正規労働者センターを設置し、今日では34の地方組織でも設置を進めて非正規労働者の相談に応じたり、労働条件の改善に取り組み、労働者派遣法についても「早急な改正」を求めています。
 このような経緯からすれば、原発政策においても連合が方針を再転換する可能性は少なくないと思われます。ただし、電力総連や電機連合、基幹労連などの有力単産の方針が転換しているわけではなく、民主党政権の脱原発政策への転換もそれほど明瞭ではありません。

 この点では、今後の世論やマスコミ、そして何よりも連合傘下の労働組合員の動向が極めて重要であるということになるでしょう。とはいえ、いやしくも労働組合であろうとする限り、連合も脱原発の方向へと明確に舵を切ることなしには社会的な存在として生き延びていくことはできないのではないでしょうか。

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5月19日(木) 民主党と同じ頃、連合も原発推進へと方針を転換していた [労働組合]

 先週の『週刊金曜日』2011.5.13に、村上力さんの「労組頼みの民主党に脱原発は難しい 原発推進の連合、背後に電力総連あり」という論攷が掲載されています。「民主党は脱原発どころか、自民党よりも原発を推進しようとしているのは明白」で、その「背後には、民主党に原発推進へと舵を切らせてきた労働組合の“暗躍”がある」というのです。

 ここで、民主党が「自民党よりも原発を推進しようとしている」というのは、いささか言い過ぎでしょう。自民党政権だったら、浜岡原発の停止やエネルギー基本計画の凍結を言い出したかどうかは、大いに疑問だからです。
 そもそも、原発を推進してきて世界第3位の原発大国を作り上げてしまったのは、歴代の自民党政権です。すでに書いたように、その元凶は中曽根康弘と正力松太郎であり、原発推進のエネルギー基本計画を最初に作ったのも自公政権の時代でした。
 とても、「自民党の方がまし」などとは言えません。村上さんの論攷のリードは、このような自民党を「免罪」してしまう危険性があります。

 とはいえ、民主党の原発政策転換の「背後には、民主党に原発推進へと舵を切らせてきた労働組合の“暗躍”がある」というのは、間違いではありません。それは、自民党の原発政策推進の背後に電力会社の“暗躍”があったのと同様です。
 この「労働組合の“暗躍”」の中心勢力が電力総連であったことも、村上さんが書いている通りです。その他にも電機連合や基幹労連なども、原発推進勢力だったと言って良いでしょう。
 これらの原発推進の立場に立ってきた単産は“暗躍”というよりも、公然と連合の路線転換を働きかけて来ました。たとえば、電力総連は2010年9月8~9日に開催された第30回定時大会の「議案書」で次のように書いています。

 プルサーマルの推進、核燃料サイクルの確立を含め、原子力発電の推進は、エネルギー安定供給、地球環境問題への対応の観点において、極めて重要な課題です。私たちは、労働組合の立場から労働界をはじめ国民各層への理解活動を強化していかなければなりません。(以上、引用終わり)

 「原子力発電の推進」は「極めて重要な課題」であるから、「労働組合の立場から労働界をはじめ国民各層への理解活動を強化していかなければな」らないというわけです。こそこそと隠れてやっていたわけではなく、堂々と公言していました。

 その効果もあって、連合は原発推進へと舵を切ります。その始まりは、2008年11月のことでした。2008年11月20日、連合第14回中央執行委員会はエネルギー政策の転換に向けてプロジェクトチーム(PT)を設置します。
 それは「今後のエネルギー問題に関する政策的課題の洗い出し、連合としての方向性を整理すべく、政策委員会のもとにエネルギー問題PTを設置する」として決定されました。PTは、12月に第1回を開催します。
 その後、09年5月まで7回の会議を開いて「6月の政策委員会、7月の中央執行委員会に報告する」予定でした。しかし、実際にこの報告がなされたのは、09年9月17日に開かれた第24回中央執行委員会です。

 2ヵ月も遅れたのは、内部での議論が紛糾したからだと思われます。それだけ問題のある方針転換だったのではないでしょうか。この時のPTの報告には、原子力発電について次のように書かれています。

○原子力エネルギーは、発電時にCO2を排出せず、大量勝つ安定的なエネルギー供給が可能であることから、わが国における主要電源の1つという位置づけは変わらない。既設原子炉の廃炉により供給能力が確実に減少するなかで、需要に見合った供給力の確保を確実に進めていくことが重要である。
○(「エネルギーのベストミックスとは何か」という問いに)化石エネルギー、原子力エネルギー及び再生可能エネルギーの特性(安定性、環境性、経済性、安全性等における調書・短所)、地球温暖化対策をはじめとする社会的要請、そのと時々の経済環境や関連技術の進展度合いなどを見ながら、多様なエネルギーの組み合わせについて都度最適なあり方を判断・決定する。
○原子力エネルギーは現在わが国の主要電源の1つであり、……エネルギー安定供給に欠かすことのできない重要なエネルギー源として位置づけることが妥当である。
○より高度な安全確保体制の確立を大前提に、高経年化対策を着実に実施するとともに、原子力発電所の設備利用率向上をめざす(「長期エネルギー需給見通し」では80%への引き上げを仮定)。さらに、現在計画中の原子力発電所の新増設(計13基。「長期エネルギー需給見通し」では9基の新増設を仮定)については、地域住民の理解・合意を前提に、これを着実に進める。
○高速増殖炉については、……拙速を避けつつも確実に進める。(以上、引用終わり)

 この転換については、09年9月16日付の「産経ニュース」が、次のように伝えていました。「連合が『原発新設』容認へ 民主シフト鮮明に」という記事です。

 民主党最大の支持団体、日本労働組合総連合会(連合)が、原子力発電所の新設を容認する方針を固めたことが15日分かった。17日の中央執行委員会で了承される見通し。
 原子力政策では、民主党はマニフェスト(政権公約)で「着実に取り組む」と推進を明言。一方、連合傘下の自治労などが支持する社民党は「脱原発 」が党是で、連合は これまで原発への態度を明確にしていなかった。
 連合の新原子力政策で 民主党シフトが明確化し、社民党との距離が広がった形だ。
 ……
 連合ではこれまで、原子力利用について、反原発の姿勢をとる自治労など旧総評系と、推進派の電力総連などの旧同盟系が対立。双方に配慮し運動方針が定まらず「現状の原発は維持する」と妥協してきた。
 民主、社民両党を支持する自治労はPTの報告書について「安全確保と住民の合意は譲れないという考えに立った上で、新設を推進する」としている。(以上、引用終わり)

 ということで、民主党がマニフェストで原発推進へと舵を切った頃、歩調を合わせるようにして連合も原発推進の方針を明確にしていました。『週刊金曜日』に掲載された村上さんの論攷で、「連合は09年に中央執行委員会で旧総評系の自治労などの合意の下に『現状維持』から『新設の推進』と方針を転換」(21頁)と書かれているのは、このPTの報告を指しています。
 これはまだPTの段階でしたが、それはやがて連合全体の方針として確認されることになります。

 というところで、この続きは、また明日……。



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12月23日(水) 『週刊ダイヤモンド』に掲載された特集「労働組合の腐敗」 [労働組合]

 「特集 労働組合の腐敗」という文字が目に入りました。『週刊ダイヤモンド』2009年12月5日号です。
 この特集号のためだったんですね。しばらく前、研究所に「労働組合の財政についての資料はありますか」という取材の電話がかかってきたのは……。

 この『週刊ダイヤモンド』の特集にも、大原社会問題研究所の刊行物が使われています。35ページにある「表 労働組合戦後60年史」の「参考文献」として挙げられている『社会・労働運動大年表』です。
 この『大年表』は、労働旬報社(現・旬報社)から出されていて、これに、『日本の労働組合100年』と『日本労働運動資料集成』を加えた3点を、私たちは「旬報社3部作」と呼んでいます。現在、これ加えて『社会労働大事典(仮題)』の刊行も準備していますので、いずれ、「旬報社4部作」になるでしょう。
 たまたま昨日、この『大事典』の編集会議が開かれました。今年最後の会議だったので、終わってから忘年会に行きましたが……。

 それはともかく、この『週刊ダイヤモンド』の特集記事で残念なのは、現在までに出された「旬報社3部作」のうち『大年表』しか参照しなかったようだということです。他の『日本の労働組合100年』の「組織系統図」や、『日本労働運動資料集成』の別巻を参照していれば、あのような間違いはなかったでしょうに……。
 というのは、46ページの「離合集散送り返し 戦後の労働組合再編の歴史」の図に大きな間違いがあるからです。労働組合の系統図の最後のところで、「全労協」と「全労連」が入れ替わり、逆になっています。

 「統一労組懇」の後継組織は「全労協」ではなく「全労連」だということは、日本の労働組合運動について多少の知識を持っていれば、すぐにわかることです。これは、あまりにも初歩的な間違いですから、「旬報社3部作」を見なくてもすぐに気づくに違いありません。
 ということは、『週刊ダイヤモンド』の記者さんは、そのような知識を持たない人々だということになります。そのような記者や週刊誌が労働組合についての大きな特集を組んだということに、私としてはある種の感慨を覚えてしまいます。

 「労働組合の腐敗」という表題からもわかるように、特集の内容は労働組合運動に対して好意的なものとはいえません。しかしそれでも、このような週刊誌に労働組合が特集として取り上げられたことには意味があると思いますし、「民主党パーティ券を購入した労組一覧」「連合傘下の産別労組の集票力」「労組の政治団体から政治献金を受けた主な民主党議員」「ひと目でわかる! 労組業界勢力図」「労働貴族の呆れた実態」などの興味深い図表や事実も紹介されています。
 
 たとえば、旧JPU(日本郵政公社労働組合)の幹部の年収は「単純平均では、1人2500万円」で「事務次官並みの好待遇」(39頁)だといいます。また、「NTT労組が積み上げたスト資金は前期末で548億円」(40頁)だそうです。
 548億円ものスト資金があっても、ストをする可能性はありません。この資金をどうするのでしょうか。
 スト用の「闘争資金」なのですから、「闘争」用に使うべきでしょう。0.1%の利子でも、5480万円になりますから、この利子だけでも、全額、非正規労働者の運動のためにカンパしたらどうでしょうか。

 年収が高くてもスト資金が積み上がっても、それ自体が悪だというわけではありません。それに見合った運動を指導したり、展開したりすれば良いのです。
 労働運動の発展のために役立てるべき資金が生かされないとき、それは無駄金になります。「労働貴族」とか「恐竜労組」などと後ろ指を指されないために、そのお金をどう生かすのか、真剣に考えるべき時ではないでしょうか。

12月10日(木) 労働組合の組織率も反転した [労働組合]

 嬉しいじゃありませんか。「反転の構図」に、また新しい項目が付け加わりました。
 長年の間、低下を続けていた労働組合の組織率が上昇したのです。このような形での反転こそ、私が密かに期待していたことです。

 厚生労働省は、全国の労働組合の推定組織率(雇用労働者に占める労働組合員の割合)が6月末現在で対前年比で0.4ポイント増の18.5%だったと発表しました。1976年以降減少を続けてきた労働組合の組織率が、34年ぶりに上昇へと反転したのです。
 報道では、組合に入っていない契約や派遣などの非正規労働者が不況で大量に失業したために雇用労働者が110万人減って5455万人となったのが主な要因であると指摘されています。分母が減ったから、組織率が増加したというわけです。
 しかし、それだけではないでしょう。分子となる労働組合員数も1万3000人増え、労働組合員は1007万8000人となっているのですから……。

 なかでも、パート労働者の組合員数は8万4000人増えたといいます。それだけ増えたのに増加数が1万3000人だというのはおかしいと思われるかもしれませんが、退職したり辞めたりクビを切られたり、ということで組合員が減っているからです。
 労働組合員の組織率が増えるためには、減少を上回る数の人々が労働組合に入らなければなりません。また、分母となる雇用労働者がその増加率を上回るほどに増えないことも必要です。
 今回は、一方で分母となる雇用労働者が減り、他方で分子となる労働組合員数が増えたために、前年度の組織率を0.4ポイント上回ることになりました。組合員を増やした労働組合の努力を高く評価したいと思います。

 私は、『日本労働研究雑誌10月号の巻頭言として、「戦後労働運動の第3の高揚期を生み出す新たな条件が生まれている」という論攷を、期待を込めて書きました。その一つの表れが、今回発表された労働組合組織率の反転です。
 この論攷では、「戦後第3の高揚期を迎える可能性と条件をもたらすかもしれない」として、「非正規労働者の多くは、既存の労働組合に加入したり、新たに労働組合を結成したりしている」ことを指摘しました。今回の厚生労働省の発表は、この私の直感的な指摘を、事実をもって裏付けたことになります。
 今年が「第3の高揚期」となることを願っています。組織率だけではなく、労働組合運動自体の大きな高揚を期待したいものです。

 なお、この労働組合組織率の反転が「34年ぶり」であったことにも、注目すべきでしょう。34年前といえば、1975年のことになります。
 これについても私は、「75年に8日間にわたって実施された『スト権スト』は、戦後労働運動が攻勢から守勢へと追い込まれる分岐点になった」と書いたことがあります。山田敬男さんが書かれた『新版 戦後日本史-時代をラディカルにとらえる』の書評で、雑誌『経済』の2009年8月号に掲載された論攷です。
 ここにも書いたように、戦後労働組合運動は大きく二つの時期に分かれるというのが、私の理解です。1975年を境に、攻勢から守勢へと転換したのです。

 この労働組合運動の攻勢から守勢への転換にともなって、労働組合の組織率も1975年を境に上昇から減少へと転換したということになります。そしてそれが、今年2009年に、34年ぶりに上昇へと転じたというわけです。
 戦後労働運動の守勢の時期は終わったのでしょうか。攻勢へと転ずる時期が訪れたのでしょうか。
 少なくとも、それを期待させるような朗報です。今後、雇用労働者が増えてもなお、労働組合組織率が上昇を続けるような本格的な反転が訪れることを願っています。

 そうなれば、「戦後労働運動の第3の高揚期」は、現実のものとなるでしょう。大きな期待を抱きながら、今後の労働組合運動の推移を見守りたいと思います。

10月10日(土) 連合第11回定期大会への感想 [労働組合]

 そこは懐かしい場所でした。連合第11回定期大会が開催された東京国際フォーラムです。

 この場所にはかつて、新宿副都心に移転する前の都庁と都議会がありました。都立大学に入学して東京に出てきた18歳の私は、すぐに学生自治会の副委員長に選ばれ、何も知らないまま先輩に連れられて陳情にやってきたのが、ここだったのです。
 あの時、目黒区選出で都議会議員だった、若き小杉隆さんにお目にかかった記憶があります。その小杉さんは、その後衆院議員となり、今では引退してしまいました。

 大会の会場はAホールでしたが、その立派なことに驚きました。その昔、民間連合の結成大会も傍聴したことがありますが、その時は新宿の厚生年金会館だったと思います。
 それから22年経ちます。この会場の違いが、連合の発展や社会的な地位の向上によるものであれば幸いなのですが……。
 残念ながら、必ずしもそうではありません。民間連合結成から22年、連合になってからでも20年になりますが、労働運動全体としても連合自体としても、その力は強まったというよりもかなり弱まってきているように見えます。

 しかし、大会の会場は、祝賀ムードに包まれていました。政権が交代し、連合が支援する民主党中心の新たな連立政権が発足したばかりですから、それも当然でしょう。
 長年の宿願が実現し、とうとう与党的な立場に立つことになったのですから……。私が、この大会の傍聴にやってきたのも、政権交代後の連合のあり方に注目したからです。
 このように思った方が多かったのかもしれません。代議員よりも傍聴者の方がずっと数が多いように見えました。

 大会は、予定されたタイム・テーブルに基づいて、寸分の狂いもなく進行しました。一昨日も昨日もほぼ予定通りの終了時間で、昨日は予定より3分早く終わったほどです。
 波乱のない進行だったということになります。拍手に次ぐ拍手でしたから、文字通り、シャンシャン大会だったということでしょうか。
 とはいえ、大会での発言などには、それなりに注目される部分がありました。いくつかの点に絞って感想を書いておきましょう。

 第1に、大会での発言者は21人でしたが、そのうち、女性はたったの1人(自治労)です。民間連合の結成大会でも、発言した代議員のうち女性は1人だけだったように記憶しています。
 ただし、急いで付け加えなければならないのは、連合は女性役員を増やそうと特別の配慮を行い、努力しているということです。今回の大会では、会長代行に「女性代表」を新設してNHK労連の岡本直美議長が選ばれ、中央執行委員にも8人の女性代表が選出されています。
 大会に向けて、「私の提言 第6回連合論文募集」が行われましたが、優秀賞、佳作賞、奨励賞の受賞者6人のうち4人が女性です。つまり、女性は多くの問題を抱えており、問題意識も鮮明で的確な問題提起や提言を行っているけれども、実際の運動を担うという点では制約が多く、前線に立てないということでしょうか。いずれ、このような制約が取り払われ、労働組合役員や大会代議員となった女性の発言が殺到する状況が生まれてもらいたいものです。

 第2に、大会の論議では非正規労働者の問題が一つの焦点でした。連合は運動方針で新たに「各論その2」で「非正規労働者の労働条件底上げ・組織化と社会運動の展開」を掲げ、「連合本部に構成組織担当者会議と地方連合会非正規労働センター会議を設置する」「すべての地方連合会に非正規労働センターを設置する」との方針を打ち出しました。
 討論でも非正規労働者の問題について、宮崎地連、サービス流通連合、自治労などからの発言がありました。なかでも圧巻は全国ユニオンの関根秀一郎書記長の発言です。
 その概要は、ご本人が『東京新聞』10月9日付の「本音のコラム」に書かれていますが、関根さんは、①派遣法改正問題、②有期雇用の規制、③均等待遇実現、④非正規労働者への具体的な支援のあり方、⑤年末年始に向けての取り組みの5点について質問し、古賀事務局長は「派遣村のような状況を生まないために政府に働きかけるなど全力を挙げる」と答弁していました。今後、このような取り組みが大きな成果を挙げることを願っています。

 第3に、地域での運動が重視されるようになってきているということです。これについては、新潟地連、宮崎地連、JEC連合、九州ブロック、運輸労連などからの発言がありました。
 これに対して、古賀事務局長は「社会的労働運動をどう展開していくのかが課題だ」と答弁していました。最近、注目されている「社会運動的労働運動」を意識した発言であり、答弁であったと思います。
 運動方針でも、「各論その1」は「組織拡大、集団的労使関係の再構築、連帯活動の推進による社会的影響力ある労働運動の展開」となっており、「地域に根ざした顔の見える労働運動の展開」が打ち出されています。地域での組織や運動を十分位置づけて来なかった連合としては積極的な方針提起だとは思いますが、地域における運動の重視が職域における運動からの逃避という形にならないよう気をつける必要があるでしょう。

 第4に、民主党との距離の取り方、政策的な違いや協議のあり方も問題になっていました。民主党が掲げていたマニフェストと連合の要求とは全てが一致する訳ではなく、民主党の掲げている政策相互の間でも矛盾する部分があるからです。
 活動報告についての発言は電力総連からしかありませんでしたが、そこでは、連合の意見・要望を新政府に伝えることが大切だとの指摘があり、政策制度の実現を図るために政策問題で協議の場を設けることが求められていました。同様の発言は、運動方針についての討論でも、JR連合、国公連合、JAM、自動車総連などからありました。
 特に問題とされたのは、国家公務員総人件費2割削減、国の出先機関の廃止、在日米軍基地の整理・縮小、環境対策、高速道路の無料化、社会保険庁改革、公務員制度改革などの問題です。これらの中には雇用問題に結びつくものもあり、今後の対応が注目されます。

 第5に、発言しなかった単産や取り上げられなかった問題があったということです。そのために、連合内に存在しているはずの異論は大会で表面化しませんでした。
 というより、大会での混乱を避けるために、異論のある単産は発言せず、一致していない問題は取り上げられなかったということかもしれません。結局、私が注目していた電機連合からの発言はなく、電力総連や自動車総連は温室効果ガスの25%削減問題には言及しませんでした。UIゼンセンも派遣法改正問題にはふれず、労働者代表制の法制化など集団的労使関係の強化について発言しただけです。
 労働者派遣法については、「各論その4」で「『日雇い派遣』の禁止、『直接雇用見なし規定』の導入、均等待遇原則の確立など、労働者保護の視点に立った法改正の実現に取り組む」との方針が掲げられていますが、「製造業派遣」については、その言葉すら登場していません。ただ、基幹労連が提起した社会契約的課題について、退任のあいさつに立った高木会長が「社会契約は相互の信頼関係が前提だ」と釘を差したのは流石であり、注目される点でした。

 発言を聞いての感想は以上のようなものですが、これらの発言に対する古賀伸明事務局長の答弁は、「そつがないなー」と感心させられるものでした。発言内容は事前に通告されていたのでしょうが、微妙な問題提起や質問についても、上手くまとめていたという印象です。
 古賀さんには、4月のILO創立90周年記念の祝賀会でお会いして言葉を交わす機会があり、その翌日にはメールをいただきました。如才のないマメな方だという印象を持ちましたが、その印象通りの答弁だったように思います。
 今回の大会で高木剛会長が勇退され、古賀事務局長が次の会長に選出されました。新政権発足後という未体験ゾーンに乗り出す航海の船長さんになられたわけですが、与党的立場を生かしながら、労働組合運動の発展のためにリーダーシップを発揮されることを期待したいと思います。

1月19日(月) 全労協結成20周年記念レセプションでの挨拶 [労働組合]

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 拙著『労働再規制-反転の構図を読みとく』(ちくま新書)刊行中。240頁、本体740円+税。
 ご注文はhttp://tinyurl.com/4moya8またはhttp://tinyurl.com/3fevcqまで。
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 先週の土曜日(17日)に、全労協の結成20周年記念レセプションが開かれました。それに先立つ記念講演は都留文科大学の後藤道夫教授で、「労働者の未来と日本労働運動・労働組合の課題」というものです。

 全労協は大原社会問題研究所ともお付き合いがありますし、後藤さんの話も大変興味深い。ということで、この記念講演と記念レセプションに出席することにしました。
 事前に出席するとの返事を出しましたら、前日、中岡基明事務局長から研究所に電話がかかってきました。レセプションで挨拶をして欲しいというのです。
 「ああ、いいですよ」と快諾しました。一杯やった後、うるさい中、ほろ酔い機嫌で話をするんだろうと思って、簡単な挨拶を紙に書いて出かけました。

 ところが、違ったのです。会場について中岡さんにお会いしたら、乾杯の前にやって欲しいと仰います。
 司会の中岡事務局長の挨拶の後、主催者を代表しての藤崎良三議長の挨拶がありました。その後、来賓の挨拶です。
 1番バッターは、日本労働弁護団の宮里邦雄弁護士です。そして、何と、その次に私の名前が呼ばれました。驚きました。

 私の次に壇上に上がったのは、社民党の保坂展人衆院議員でした。ちょっと意外でした。
 選挙を控えている保坂さんより前に挨拶をしたということで、申し訳ないような気持ちになりました。
 でも、政治家より民間の弁護士や研究者を優先するというのも、一つの見識かもしれません。全労協もなかなかやるわい、というところでしょうか。

 その後、初代議長で全労協顧問の宮部民夫さんの乾杯があり、宴会が始まりました。料理を口にする間もないほど、沢山の方から声をかけられ、お話しすることができました。
 このブログを読んでいる方も多く、大変、有意義な時間になりました。皆さん、ありがとうございました。

 この「全労協結成20周年記念レセプション」の模様は、ユニオンチューブで見ることができます。http://video.labornetjp.org/Members/fishuseman/videos/zenrokyo.wmv/view
 ビデオの中で、藤崎議長の次、保坂議員の前に登場する、顔のでかい男が私です。ご笑覧いただければ幸いです。
 なお、この日の挨拶の全文をここに掲げておきましょう。

 全労協結成20周年、おめでとうございます。一言、お祝いの言葉を述べさせていただきます。
 よく、20年も持ったものだと、思っている方がおられるかもしれません。しかし、存在するものにはそれなりの理由があります。全労協が20年間という歴史を刻むことができたのにも、それなりの理由があったと言うべきでしょう。
 この20年間、全労協は、けんり春闘、国鉄闘争の支援、外国人労働者や女性の運動、平和・反核・護憲の運動、労働法規の改悪反対、さまざまな分野での労働争議、今問題になっている非正規労働者問題への取組など、連合や全労連とはひと味違った運動を展開してきました。
 連絡共闘組織として、これらナショナルセンターの壁を越えた共同の実現に向けても独自の役割を果たしてきたと言って良いでしょう。これらの経験を生かして労働組合運動内での協力と共同を強め、その総力を結集するために、全労協がさらなる力を発揮されることを期待したいと思います。
 さて、100年に一度の未曾有の経済危機の下で09年が明けました。今年は、政治と労働の二つの領域において、歴史に残る大きな意味のある年になるでしょう。
 アメリカではオバマ政権が発足しますが、日本では「オバカ政権」が末期症状を呈しています。麻生首相ならぬ「アホー首相」の政権です。そのお祖父さんである吉田首相は「バカヤロー」と言って解散しましたが、麻生首相の方は「バカヤロー」と言われて解散に追い込まれそうです。
 いずれにしましても、秋までには必ず総選挙があります。これを自公政権の墓場にしなければなりません。政策転換によって日本の未来を切り開くチャンスとして、この機会を生かすことが大切です。
 また、年末から年始にかけて、「年越し派遣村」が大きな話題を集めました。問題解決に向けての機敏な取組、斬新で創意的な行動提起、ナショナルセンターや政党の枠を越えた共同の広がり、NPOなど市民団体や自発的に立ち上がった個々の市民との協力、マスコミに対する効果的なアピールと行政への働きかけなど、労働運動にとっても今後生かされるべき多くの教訓に満ちあふれていました。
 このような新しいうねりは、09年を日本労働運動の歴史的勃興の年とする可能性を示唆しているように思われます。労働組合運動の再生というよりも、これまでにない全く新しい運動の誕生であります。全労協が、その先頭に立って新たな地平を切り開かれることを期待したいと思います。
 どうか、燃え尽きるまで闘ってください。その“骨”を、我が大原社会問題研究所は拾わせていただきます。皆さん方の運動が残した資料を集め、足跡を記録することによって、その意味を歴史に問うことが私どもの役割でございます。是非、記録しきれないような壮大な運動を生み出していただきたいと思います。
 全労協運動の発展によって労働運動の新しい局面が切り開かれ、今年09年が文字通り日本労働運動の勃興の年となることを期待いたしまして、私のお祝いの言葉に代えさせていただきます。



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