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2月5日(月) 2017衆院選の分析と今後のたたかい(その3) [論攷]

〔以下の論攷は、『月刊全労連』No252、2018年2月号、に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

3、 今後の闘い―その課題と展望

 〇安倍9条改憲をめぐる激突

 総選挙後の特別国会での所信表明演説で、安倍首相は改憲論議の加速化を呼びかけた。「与野党の枠を超えて、建設的な政策論議」を行う努力の中で、「憲法改正の議論も前に進むことができる」と表明したのである。
 与党が3分の2を越え、「改憲勢力」が8割を突破したとされる総選挙での結果を受けて、安倍首相が9条改憲に本腰を入れ、その動きをスピードアップしたいと考えていることは間違いない。しかし、事態はそう簡単ではない。「改憲勢力」とは言っても、その中身はバラバラだからである。
 まず、安倍首相の掲げる自衛隊の明記など4項目の改正案について、自民党内が一致していない。12年自民党改憲草案のように9条2項を削除して自衛隊を国防軍とするべきだという意見が14%ある。
 自衛隊明記については、与党の公明党も反対しており、「改憲勢力」とされている希望の党や維新の会も積極的ではない。希望の党の玉木雄一郎代表は特別国会での代表質問で安倍首相の改憲案について「違和感を禁じ得ない」と述べ、「平和主義や専守防衛の立場から、どこまで自衛権が認められるのかをしっかり議論すべきだ。立憲主義にのっとって、憲法の議論を正しくリードしたい」と語っている(『毎日新聞』11月22日付)。
 野党第一党の立憲民主党の枝野幸男代表も代表質問で、安保法を「立憲主義の観点から決して許されない」と批判し、改憲については「今ある憲法を守ってから言え、それがまっとうな順序だ」と、対決姿勢を鮮明にした。もちろん、共産党と社民党は改憲に反対する立場で一貫している。
 9条改憲について安倍首相は、11月21日の参院本会議で、「合憲の自衛隊を書き加えることで何が変わるのか」という民進党の大塚耕平代表の質問に答えて、「自衛隊の任務や権限に変更が生じることはない」と述べるとともに、「自衛隊員に『君たちは憲法違反かもしれないが、何かあれば命を張ってくれ』というのはあまりにも無責任だ。そうした議論が行われる余地をなくしていくことが私たちの世代の責任ではないか」と改めて表明した。
 9条改憲によって何も変わらない、自衛隊が違憲だと言われなくなるだけだというのである。つまり、「違憲」の2文字を消すための改憲である。そうすれば、自衛隊員は「何かあれば命を張ってくれ」、気持ち良く死んでいってくれるとでもいうのだろうか。そのために、改憲発議と国民投票に政治的エネルギーを費やし、何百億円もの国費を投じようというのである。
 そんなことがいま必要なのかが、国民に問われている。政治が力を尽くして緊急に取り組むべき他の課題が別にあるのではないのか。改憲ではなく、国際環境の改善による平和と安全の維持、少子化対策や景気回復こそ、政治が全力を傾けて解決するべき課題なのだということを、国民に理解してもらうことが必要である。
 安倍9条改憲をめぐる激突において、憲法96条で規定されている改憲論一般とは区別し、安倍首相が目指している9条改憲の違憲性と問題点を暴露し孤立させなければならない。そのためにも、国民的な学習運動を組織して安倍9条改憲の狙いを明らかにし、反対世論を広げていくことが重要である。安倍9条改憲NO!市民アクションが提起している3000万人署名を核として国民的な運動を盛り上げ、たとえ国民投票を行っても勝てる見通しを持てなくすることで、改憲策動の息の根を止めなければならない。

 〇野党共闘の継続と発展

 このような安倍9条改憲NOの運動にとっても、市民と立憲野党の共同が大きな力となるにちがいない。それだけでなく、原発再稼働反対や沖縄の辺野古新基地建設反対、消費税の再増税や偽りの「働き方改革」、全世代にわたる社会保障給付の削減と負担増への反対などの運動においても、市民と野党の共同を追求することが必要である。
 これまでも、国会正門前集会や周辺での抗議行動、各種の集会やデモ、駅頭での演説会などで政党代表があいさつしたりエールを交換したりすることがあった。そのような場を数多く設定するとともに、そこに野党の代表を招き、できるだけ多く市民の声に直接、接する機会を作っていくことが重要である。
 国会議員は、そのような場に身を置くことで変わっていく。そのような場に、国会議員を招くことによって変えることもできる。市民の運動と国会内での審議の連動も可能となるだろう。国会内外の動きを結び付けることによって、議員を鍛え成長させ、国会内の議論を活性化させることも、これからの大衆運動の大きな役割なのである。
 もちろん、選挙への取り組みも忘れてはならない。労働組合の活動や大衆運動において共同の実現という視点を貫くとともに、国政選挙だけでなく各種の地方選挙での市民と野党との共闘を可能な限り実現していく必要がある。
 地方自治体の首長選挙での市民と立憲野党の共闘の実現、各種議員選挙での政策協定、相互推薦や相互支援も検討されるべきだろう。これらの経験を積み重ねながら、2019年4月の統一地方選挙や夏の参院選に向けての野党共闘を、今から準備していかなければならない。
 とりわけ、2019年7月の参院選に向けての取り組みが重要である。この時まで安倍9条改憲の発議を阻止し、改憲勢力を3分の2以下にするだけでなく与党を過半数以下にできれば、安倍内閣を打倒することが可能になる。そのためにも、野党の連携と共闘を何としても実現することが必要である。

 むすび

 総選挙の結果、安倍政権の基盤にはほとんど変化がなかった。選挙中の野党の分裂によって、「一強多弱」と言われるような国会の状況はさらに強まったように見える。安倍首相の驕りは一層高まり、強引な国政運営も強まっていくにちがいない。すでに、国会質問における与野党の時間配分の比率を変え、与党の質問時間を増やそうとしている。
 選挙が終わっても、国政の課題に変化はない。「森友」「加計」学園疑惑は解明されていず、選挙があったからといってウヤムヤにしてはならない。安倍首相夫妻の関与や国政の私物化に対する真相解明と追及は、引き続き重要な課題になっている。
 北朝鮮危機にも変化はなく、国民の不安は解消されていない。トランプ米大統領に追従し、圧力一本やりの安倍首相の対応は問題の解決を遅らせるだけでなく危機を高めている。対話の可能性を探り、軍事力によらない解決の道を模索するしかない。
 安倍首相が選挙中に約束した全世代を対象にした社会保障の組み換えは、全世代を対象にした社会保障の切り下げと負担増に転化しようとしている。教育費の負担軽減と子育て支援の充実は選挙対策のための思い付きにすぎなかった。
 国民の生活と労働を守るたたかいは、さらに大きな意義と役割を担うことになる。アベ暴走政治をストップさせ、日本が直面している危機からの活路は共闘にしかない。バラバラでは勝てないこと、統一して力を合わせてこそ勝利への展望が開かれること――これが今回の総選挙における最大の教訓だった。そのために労働組合と労働運動が大きな役割を果たすことが期待されている。この期待に応えることこそ、来るべき春闘の最大の課題ではないだろうか。
 これまで日本では維新の党や都民ファーストの会などの「右派ポピュリズム」はあっても、今回のような「左派ポピュリズム」の発生はあまりなかった。今回、それが生まれたのだと思う。
 「ポピュリズム」とは既存のエスタブリッシュメントの政治への不信、エリートに政治を任せていられないという人々の自発的な政治参加の波を意味している。それが排外主義に向かえば右派、民主主義を活性化させれば左派ということになる。
 今回の総選挙では、希望の党による「右派ポピュリズム」の発生が抑制され、立憲民主党による「左派ポピュリズム」が生まれた。それは、アメリカ大統領選挙でのサンダース、フランス大統領選挙でのメランション、イギリス総選挙でのコービンなどによる「左派ポピュリズム」旋風と共通するものだったと言える。
 国際的な政治の流れに呼応する新たな市民政治の局面が「左派ポピュリズム」の発生という形で表面化し、立憲主義を守り民主主義を活性化させる新しい展望を切り開いたのではないだろうか。ここにこそ、今回の総選挙が戦後政治においてもっている重要な意味があったように思われる。


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