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5月31日(水) ポピュリズム―民主主義の危機にどう向き合うか [論攷]

〔以下の書評は、『しんぶん赤旗』5月28日付に掲載されたものです。〕

 「一匹の妖怪が世界を徘徊している。ポピュリズムという妖怪が」と言いたくなります。大衆の支持を背景に「自国第一」を掲げたポピュリズムがアメリカやヨーロッパで台頭し、既存の政党や政治を揺るがしているからです。
 極端に単純化した争点によって対立を煽り、人々の不安や怒りに心情的に訴えて支持を獲得し、イギリスの欧州連合(EU)からの離脱やアメリカ大統領選挙でのトランプ候補の当選を実現しました。選挙で勝ちさえすれば何でもできるとするポピュリズムが、既存の政治や政党に対する挑戦であることは明らかです。
 ポピュリズムは「大衆迎合主義」と訳されます。民意に基づくものであれば民主主義ではないのかという疑問がわきます。それは民主主義とどのような関係にあるのでしょうか。このような疑問に答えるのが、今回取り上げる2冊の本です。

功罪? 魔物?

 水島治郎著『ポピュリズムとは何か』(中公新書・820円)、薬師院仁志著『ポピュリズム』(新潮新書・780円)です。両著ともに米大統領選挙までをカバーしており、トランプ当選を生み出した背景としてポピュリズムに注目している点で共通しています。また、ポピュリズムと民主主義とは不可分の関係にあり、両者を切り離して論ずることはできないという点でも同様です。
 しかし、その副題が「民主主義の敵か、改革の希望か」(水島)、「世界を覆いつくす『魔物』の正体」(薬師院)となっているように、大きな違いもあります。前者は「功罪」の両面を見ているのに対して、後者は「魔物」としてとらえているからです。
 この違いは、「現代型ポピュリストの第1号」としてヒトラーを挙げている薬師院さんに対して、水島さんが現代ヨーロッパの「抑圧型」右派ポピュリズムとは区別されるラテンアメリカなどの「開放型」の左派ポピュリズムまで視野に入れていることからきています。薬師院さんは現代ポピュリズムを「人心を荒廃させる扇動」であり、「世の中に分断と対立を持ち込んでゆく」として真っ向から否定するのに対し、水島さんはデモクラシーの「危機」を示すものであるとしながらも、「既成政党に改革を促」して政治の「再活性化」や「政治参加」を促進するなどの「効果」もあるとしている点が注目されます。

「内なる敵」

 その水島さんでさえ、ポピュリズムはデモクラシーの「隘路」や「逆説」だとし、この「内なる敵」と正面から向き合うことを求めています。薬師院さんはもっと厳しく「議会制民主主義の破壊」だとして、「妥協のない民主制は、その反対のものに、つまり、独裁制に転化する恐れがある」と警告しています。
 既存の政治と政党のあり方を刷新することによって、ポピュリズムの挑戦に応えなければなりません。貧困と格差の土壌に生まれ不平・不満を養分に育ってきた「妖怪」に対しては、人びとの不安を解決できる真の「活路」を示し、民主主義の成熟を図ることで競いあうしかないのですから。

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5月27日(土) 権力者の横暴に手を貸すのか、それと戦う人々の側に立つのかが問われている [スキャンダル]

 相変わらずしらを切り続けるつもりなのでしょうか。加計学園疑惑に絡んで明らかにされた「総理のご意向」と書かれた文書について、「怪文書」だと言い続けている菅官房長官のことです。
 テレビに映っている菅さんの無表情な顔を見ていると、言いたくなります。あなたの方こそ「怪人物」じゃないのかと。

 この内部文書について、当事者であった文科省の前川前事務次官が記者会見を開き、「文書は確実に存在していた」と改めて明言しました。「怪文書」ではなく、本物だったのです。
 それでも否定するしかないと、菅官房長官は覚悟を決めているようです。それしか、安倍首相を守る手立てがないからでしょう。
 内部の調査をした松野文科相は確認できなかったと言い、前川さんが証言した後でも再調査はしないそうです。初めから「なかった」ことを証明するための調査ですから、またやって本当に見つかったりしたら困ると思っているからでしょう。

 それにしても恐ろしい時代になったものです。権力者に楯突いたらどうなるのか、そのための見せしめとして森友学園問題では「籠池叩き」、加計学園問題では「前川叩き」が、一部のマスメディアも動員して、これでもかこれでもかと繰り返されています。
 今、私たちが目にしているのは「安倍一強」のもとで権力者がどれほど暴走するのかという姿であり、たとえ味方や身内であった人でも、いったん楯突く姿勢を示せば「敵」になり、徹底的に攻撃されるという実例です。忖度や懐柔、恫喝などが駆使され、政治が私物化され歪められている姿をしっかりと目に焼き付けなければなりません。
 他方で、疑惑の当事者である安倍首相もその夫人の昭恵さんも、黙して語らずのままです。国会という議論の場があるのに、そこから逃げ続けて知らんぷりを決め込んでいるという異常さです。

 森友学園問題では、籠池さんを証人喚問に呼んで偽証罪で監獄にぶち込もうとしました。加計学園問題では、かつて秘かに調査していた前川さんの素行を暴露して社会的に抹殺しようとしています。
 前者では、瑞穂の国記念小学校建設の背後で画策していた昭恵さんを守るためであり、後者では、岡山理科大獣医学部の新設をめざす友人を後押しして行政を歪めた安倍首相を守るためです。この二人が政治を私物化し、行政の公正・公平を損ねてきたのではないかとの疑惑は増すばかりです。
 この疑惑を封じるために関係者は真実を隠蔽し、情報を隠して嘘をつくことを強いられています。本当のことを話せばどれほどひどい目にあうか、籠池さんと前川さんの実例が示しているからです。

 それにしても前川さんは気の毒です。本当のことを話さなければ、出会い系バーに行っていたことなど明らかにならず、「地位に恋々としがみついていた」と菅さんに侮辱されることもなかったでしょう。
 読売新聞の記者も可哀そうです。官邸からのリークと圧力がなければ、あのような記事を無理やり書かされることもなかったでしょう。
 その尻馬に乗って、前川叩きに躍起となっている人々も犠牲者です。安倍さんを守るために嘘をつき、他人を貶めるという醜悪な姿をさらすことになってしまったのですから。

 共謀罪が成立すれば、これが当たり前の世の中になってしまうのではないでしょうか。普通の市民の日常的な行動を秘かに監視し、権力者に不都合なことが生じた場合、一斉に牙をむいて暴露し、罪に陥れるというようなことが。
 他方では、権力者にすり寄る者や知人、友人に対しては政治に介入し行政を歪めて便宜を図り、それへの配慮と忖度が構造化されつつあります。必要な時には犯罪のもみ消しまでやっているようです。
 「安倍総理お抱えジャーナリスト」として知られている山口敬之氏の例があります。「準強姦」容疑での逮捕状が発付されましたが直前に執行取り止めになり、 その背後に菅官房長官の秘書官も務めた中村格警視庁刑事部長による隠蔽の可能性があることが『週刊新潮』で報じられました。

 これが今、私たちの目の前で繰り広げられている光景です。権力者の横暴とその恐ろしさがこれほどあからさまになったことが、かつてあったでしょうか。 
 疑惑の関係者はもとより、私たち国民の一人一人が問われているように思われます。このような安倍夫妻を中核とする権力者の横暴に手を貸すのか、それと戦う人々の側に立つのかが……。

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5月24日(水) 共謀罪の強行採決で安倍首相が作ろうとしている「恥ずかしい日本」 [国会]

 「共謀罪」の趣旨を含む組織的犯罪処罰法改正案が23日、衆院本会議で自民、公明、日本維新の会などの賛成多数で可決され、衆院を通過しました。維新と自民の「共謀」によって衆院法務委員会で行った強行採決に次ぐ暴挙です。
 これこそ、安倍政権の「狂暴」化を示す何よりの証拠ではありませんか。舞台は参院に移りますが、今後の審議のあり方や加計学院疑惑の進展などによっては廃案に追い込む可能性が生まれてきています。

 この法案は犯罪の合意段階で罪に問い、実行段階から処罰する日本の刑事法の原則を大きく変えるもので、「内心の自由を侵害する」との強い批判がありました。「一般の人」は対象にならないとされましたが、警察などの捜査機関が権限を乱用して市民への監視を強めるのではないか、どういう人が何をした場合に処罰されるのか、は明確になりませんでした。
 また、条文で「準備行為」は「資金や物品の手配」や「下見」とされましたが、普通の市民生活での行為と「準備行為」を区別する基準もはっきりしません。桜並木の下を歩くのが「花見か下見か」が議論されましたが、結局は心の内にまで分け入って調べなければ分かるはずがありません。
 そもそも、この法案でテロが防止できるのか、そのために277もの罪が必要なのかなどの根本的な疑問も解消されないままです。東京オリンピックやテロ防止は、モノ言えぬ社会を作るための口実にすぎません。

 この法律の必要性を裏付けるためにイギリスでのテロ事件などが例に挙げられています。しかし、欧米でのテロ事件の続発は、組織犯罪防止条約によってテロを防止することができないということを証明しています。
 このようなテロ事件は許されず、防止するためのあらゆる手段が用いられなければなりません。その一つがこの条約の締結だとされていますが、近年のテロはこの条約を締結しているイギリス、フランス、アメリカなどで続発しています。
 逆に、この条約を結んでいない日本では、今世紀に入って思想的背景に基づくテロ事件は起きていません。テロ防止のためにすでに13の条約を結んでおり、重大犯罪については予備罪なども導入されており、これらが一定の効果を発揮しているからです。

 このようななかで、共謀罪法案についてプライバシー権に関する国連人権理事会の特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏が懸念を表明した公開書簡を安倍政権に送付しました。「国連人権理事会の特別報告者」とは、単に「個人の資格」でものを言う専門家ではありません。
 国連人権理事会に任命されて報告義務を負い、個別のテーマや個々の国について人権に関する助言を行う、独立した立場の人権の専門家です。「個人」で不適切だとして抗議した菅官房長官は、このことを知らなかったということになります。
 ケナタッチ氏は「早まった判断をするつもりはありません」と断ったうえで、情報の正確性を確かめるための4つの質問を行いました。指摘に間違いがあれば正して下さいと質問をし、「日本政府はいったん立ち止まって熟考し、必要な保護措置を導入することで、世界に名だたる民主主義国家として行動する時だ」と訴えています。

 この問題をめぐって国内の人権団体や国際NGOなど6団体が記者会見を開いて、国連人権高等弁務官事務所に抗議した日本政府を批判しました。法案の審議をストップし、国連の懸念にきちんと対応するよう訴えています。
 会見で「共謀罪NO!実行委員会」の代表の海渡雄一弁護士は、ケナタッチ氏が「日本政府の抗議は、私の懸念や法案の欠陥に向き合っておらず、拙速に法案を押し通すことの正当化は絶対にできない」と反論していると紹介し、「国連からのこのような問いかけに、いったん採決手続きを中止して、きちんとした協議をして欲しい」と述べました。また、ヒューマンライツ・ナウ事務局長の伊藤和子弁護士も、「政府の態度に遺憾に思っている。特別報告者は、日本だけをターゲットにしているわけではない。日本政府は昨年立候補して、人権理事会の理事国になり、今後3年間、人権理事会規約や特別手続きを重視することを約束している。国際社会から出された声にきちんと、耳を傾ける必要がある」と政府の対応を批判しています。
 日本政府が書簡を無視して抗議したことについて、当のケナタッチ氏は本質的な反論になっておらず「プライバシーや他の欠陥など、私が多々挙げた懸念に一つも言及がなかった」と指摘し、報道ステーションのインタビューでは「日本政府からの回答を含めて全てを国連に報告する」と述べています。今まで以上に強い対応を検討しているようで、もし国連が動き出すということになれば共謀罪をめぐる状況は大きく変化するにちがいありません。

 安倍政権は国際社会との協調を掲げながら、国際社会から示された懸念を足蹴にして応えようとしていません。日本は何という「恥ずかしい国」になってしまったのでしょうか。
 国会での審議を軽視し、国民に説明して納得を得る努力もせず、採決を強行するばかりか国際的な懸念にも耳を貸そうとしないのが、今の安倍政権の姿です。このような国が、安倍首相のめざす「美しい国」なのでしょうか。

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5月17日(水) 動かぬ証拠が立証する安倍首相夫妻による政治の私物化 [スキャンダル]

 朝日新聞によるスクープだと言って良いでしょう。森友学園問題に続いて、安倍首相夫妻による政治の私物化を立証する動かぬ証拠が明らかになりました。
 加計学園疑惑を裏付ける記録文書が暴露されたのです。そこには、「総理のご意向」と書かれていたというのですから、まさに動かぬ証拠だというべきです。

 この間、森友学園問題についても新たな事実が次々と明らかになってきました。たとえば、小学校の設置認可を出した大阪府私立学校審議会(私学審)会長だった梶田奈良学園大学学長と安倍昭恵さんが名誉校長を引き受けた9月4日の講演前日に会っていたこと、真っ黒に塗られて公表された小学校の設立申請書には「安倍晋三記念小学院」と書かれていたことなどです。
 また、2016年3月15日に籠池さん夫妻が財務省を訪れた際に田村国有財産審理室長との間で行われた音声記録は実物であり、それによれば、籠池さんは昭恵さんに事態の経過を逐一報告していたこと、田村さんは学園側と協議していた国有地の定期借地契約を「特例」と表現していたこと、財務省近畿財務局は国有地取得に必要な手続きを詳細に記し名前だけ入れればよいだけの書類を作成して渡していたことなども判明しました。
 さらに、昭恵さんの秘書役をしていた公務員は自民党議員の選挙応援などの私的活動についても同行していました。これについて政府は公務と説明していましたが、公務であれば当然必要とされる出張命令書がなく、専門家からは国家公務員旅費法違反との指摘が出ています。

 これらに加えて、昨日、籠池前理事長は国有地が値引きされる根拠となった地中のごみの一部がそもそも存在しなかったとするメールのやりとりを公開しました。TBSニュースによれば、国有地の取得をめぐって小学校の設計業者と籠池さんの顧問弁護士らが交わしたメールだそうです。
 籠池さんは「私にとってもこのメールは驚きです。真実が明らかになることを期待します」と述べていますが、これには「添付にボーリング調査の資料をつけております。約3m以深には、廃棄物がないことを証明しております」(設計業者)という記述があります。
 これについて、「3メートルより深い所にごみがないのになぜ8億円も値引きされた?」と問われた籠池さんは、「それは分かりません」と答えています。また、「これまでの国会答弁が全て覆る?」という問いにも「おっしゃるとおりですね」、「なぜこうなった?いつごろからこうなった?」という問いに「安倍昭恵夫人が私どもの小学校の名誉校長になられた後。ご意向がここまで伝わったかという感じ」と応じています。

 このようななかで、本日午前5時に配信された「朝日新聞デジタル」は、次のように報じました。加計学園問題についての報道です。

 首相の知人が理事長を務める学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)が国家戦略特区に獣医学部を新設する計画について、文部科学省が、特区を担当する内閣府から「官邸の最高レベルが言っている」「総理のご意向だと聞いている」などと言われたとする記録を文書にしていたことがわかった。
 野党は「首相の友人が利益を受けている」などと国会で追及しているが、首相は「加計学園から私に相談があったことや圧力がはたらいたということは一切ない」などと答弁し、関与を強く否定している。
 朝日新聞が入手した一連の文書には、「10/4」といった具体的な日付や、文科省や首相官邸の幹部の実名、「加計学園」という具体名が記されたものもある。加計学園による獣医学部計画の経緯を知る文科省関係者は取材に対し、いずれも昨年9~10月に文科省が作ったことを認めた。また、文書の内容は同省の一部の幹部らで共有されているという。

 森友学園に次いで、加計学園疑惑についても新たな事実が判明したということです。安倍首相と夫人の昭恵さんは、この二つの学園をめぐる疑惑について、国民が納得できるようにきちんと説明するべきでしょう。
 率直に事実を明らかにして夫婦そろっての政治の私物化を謝罪し、責任を取って総理を辞任するべきです。それ以外に、国民を納得させる道はありません。

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5月16日(火) 9条改憲のために「朝鮮半島危機」を利用することは許されない [国際]


 「ギアを一気に高速に切り替えた印象です。野党が反対しようが、世論が反発しようが、衆参で改憲勢力が3分の2を保持しているうちに突っ込むことにしたのでしょう。ただ、国の根幹である憲法を変えるというのは重要な問題ですから、憲法改正の発議は野党第1党の民進党も巻き込んで行うことが自民党の基本路線だったはずです。安倍首相の進め方は、丁寧にやっていたのでは2020年に間に合わないから、野党なんて無視して、数の力で押し切ってしまえと言っているに等しい。おごり高ぶりの極みで、暴君そのものです」(政治学者の五十嵐仁氏)

 「戦後政治がこれまで積み上げてきた民主主義の手続きを平然と踏みにじり、独裁者気取りで、何でもかんでも数の力で押し切ってしまう。仮にも民主主義を標榜する国家で、ここまで首相の暴走がひどくなるものかと戦慄します。その強権手法を徹底批判するでもなく、まるで迎合するかのようなメディアはどうかしている。民主主義の基本理念も理解していない狂乱首相に高支持率を与え、甘やかしてきた国民の責任とも言えますが、権力の暴走は、自分たちがナメられているのだということを有権者は自覚しなければなりません」(五十嵐仁氏=前出)

 これは、「3日の憲法記念日に開かれた右派組織「日本会議」系の改憲派集会にビデオメッセージを寄せた安倍は、そこで9条改正に言及し、2020年に新憲法の施行を目指すと表明した」ことについての私のコメントです。昨日の夕刊紙『日刊ゲンダイ』に掲載されました。

 いよいよ、憲法9条をめぐって安倍首相との「ガチンコ勝負」が始まったということです。このような形で安倍首相が挑戦状をたたきつけたのは、いつまでたっても事態が動かないことへのいら立ちがあったからだと思われます。
 それは焦りの表れそだと言って良いでしょう。同時に、「今ならやれる」という見通しを持ったためでもあるでしょう。
 そう考えた理由の一つは国会と自民党内での「一強」体制です。国会内では衆参両院で改憲発議可能な3分の2の勢力を維持していますし、自民党内でも多少の抵抗はあっても結局は乗り切れると考えたからでしょう。

 もう一つの理由は、国民の反応です。色々な不祥事や森友学園問題などでの野党による追及があっても、内閣支持率は比較的安定しているからです。
 その背景には、「朝鮮半島危機」があります。北朝鮮による核開発とミサイル発射が続き、国民が不安を高めている状況を意図的に利用し、危機を煽り立てているのが安倍政権です。
 14日にも新型とみられるミサイルの発射実験が行われました。高度は2000キロを超えて約30分にわたって約800キロ飛行し、日本海に落下しています。

 これについて、首相官邸幹部は「日本に向けて普通に打てば8分程度で届いていた」と述べています。今回は角度を通常より高く打ち上げる「ロフテッド軌道」で飛距離を抑えたと見られていますが、このような軌道は落下速度が速く迎撃が難しいとされています。
 わずか8分で着弾し、高高度から落下して迎撃が困難なミサイルの技術開発が進んでいるというわけです。これによってミサイル防衛体制の見直しなどの議論が加速するという見方がありますが、そもそもミサイルによる迎撃などは不可能で日本に向けて発射されれば防ぐ手立てがないということを、なぜきちんと国民に伝えないのでしょうか。
 トランプ米大統領は「あらゆる選択肢」と言い、安倍首相はこれを評価し歓迎していますが、とんでもありません。日本にとっては、唯一の選択肢しかないのです。それは、外交交渉による対話です。

 岸田外相は韓国の外相と電話で協議し、北朝鮮とは対話のための対話では意味がなく、圧力をかけていく必要性などを確認したと報じられています。まったく愚かなことです。
 「対話のための対話」にすぎないのか、それとも具体的な成果に結びつく「対話」となるのか、それこそ「対話」してみなければ分からないではありませんか。まず、無条件で会い、相手の言い分を聞くことからしか「対話」の糸口は見いだせません。
 自民党の二階幹事長は、北朝鮮による弾道ミサイル発射への政府の対応について、「同じコメントをしているだけではなく、協議する必要がある」と苦言を呈したそうです。より有効な対応策を直ちに検討すべきとの考えを示したとされていますが、実は軍事的な対応策を含めた「あらゆる選択肢」を用意しているアメリカ政府の方が、このような努力を始めているようです。

 米朝間の極秘協議がノルウェーで開催されたと報じられました。久しぶりの直接「対話」が、水面下で実施されたというわけです。
 トランプ米大統領は内政面では失態続きで、弾劾される可能性さえささやかれるほどに追い込まれています。それを挽回するためには、外交で華々しい成果を上げなければなりません。
 オバマ前政権がなしえなかった外交的な成果を上げることができるのは、パレスチナ和平と朝鮮半島危機の解決です。トランプ米大統領は20日からサウジアラビアとイスラエルなど中東地域を訪問して新たなパレスチナ和平に向けての働きかけを行い、同時に水面下で米朝協議の可能性を探っているのではないかと思われます。

 この間、立て続けに北朝鮮がミサイルを発射しているのは、ある種の「駆け込み実験」なのかもしれません。今のうちにできるだけ実験を繰り返してデータを蓄積し、来るべき米朝協議での「取引カード」として役立てようとしているのではないでしょうか。
 それは新たな戦争への準備というよりも、いずれ受け入れざるを得ない「対話」に向けての準備なのではないでしょうか。核とミサイルを交渉のための「取引カード」としてできるだけ有効に活用したいという金正恩の意図が隠されているように見えます。
 このような見方は、あまりに楽観的で希望的な観測にすぎないかもしれません。しかし、このような可能性やシナリオこそが問題を解決して緊張を緩和する唯一の道であり、いたずらに危機を煽り立てるのではなく、それを現実のものとするためにできるだけ力を尽くすことがいま求められているのではないでしょうか。

 戦争になったらどうするかを考えるのは軍人です。しかし、政治家は戦争にならないためにどうするのかを考えなければなりません。
 改憲のための世論工作を意図して戦争の危機を煽り立てている安倍首相は、政治家としての立場も役割も忘れているというべきでしょう。外見は政治家でも頭の中は軍人そのもので、しかもアメリカの側からの発想しかできないこのような人に、日本の進路も国民の安全も任せるわけにはいきません。

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5月14日(日) 9条「壊憲」をめざした「関ケ原の合戦」に向けて宣戦布告を行った安倍首相 [憲法]

 徳川家康が石田三成とのたたかいに向けて腹の内を明らかにしたのが「小山会議」でした。これが後に東西両軍が関ケ原で激突した天下分け目の合戦に向けての発端となります。
 安倍首相は読売新聞でのインタビューと改憲派の集会へのビデオメッセージを通じて、9条「壊憲」の意図を明らかにしました。これは「関ケ原の合戦」に向けて徳川家康が腹の内を明らかにした「小山会議」に相当する転換点です。

 「壊憲」に向けてのギアを入れ替えたということになります。与野党の合意をめざして「低速」で慎重な運転を行ってきたこれまでのやり方を投げ捨て、3分の2を占めている「壊憲」勢力だけで突っ走ろうというわけですから。
 安倍首相は9条の1項と2項をそのままにして、新たに自衛隊の存在を明記した3項を加えることで公明党を引き込み、高等教育の教育費無償化を書き込むことで日本維新の会を抱き込む方針を明確にしました。これに「日本のこころ」などの「壊憲」勢力を合わせれば、民進党などの協力を得なくても改憲発議が可能になります。
 これまでは、その後の国民投票まで見据えて野党第1党との協調を重視してきましたが、もはやそんな余裕はないと覚悟を決めたにちがいありません。安倍首相は、たとえ国民投票で否決されるリスクを犯しても自らの任期中に改憲発議を行い、国民投票の壁を乗り越えて何としても2020年までに施行したいと腹を固めたのでしょう。

 12日の党憲法改正推進本部(保岡興治本部長)の幹部会で柴山昌彦首相補佐官は保岡本部長を前に「高村氏が公明党の北側一雄副代表と与党間で調整するのがいい」と提案しました。高村さんは北側さんと太いパイプを持ち、この二人は集団的自衛権の部分的行使容認に道を開いた安保法制の原案作成を担当しています。
 柴山さんは安倍首相の意を汲んで、安保法制での「成功体験」を生かそうと考えたのでしょう。この二人に任せれば、あの時のように激しい世論の追及をかわして上手くやってくれるにちがいないと。
 公明党も甘く見られたものです。9条「壊憲」に消極的な姿勢を見せてはいても、どうせ同じ穴の「むじな」だ、これまでもそうであったように、「いやだいやだ」と言いながら適当なタイミングで足並みをそろえるに違いないと、安倍首相らはそう考えているのでしょう。

 首相に近い下村博文幹事長代行はBSフジの番組で、来年の通常国会への自民案提出を目指す考えを示し「自民党内で年内にコンセンサスをつくり、来年の通常国会に発議案を出せたらベストだ」と述べました。9条「壊憲」をめぐる最初の決戦は、このときになるでしょう。
 それまでは衆院での「壊憲」議席を維持しなければなりませんから、よっぽどのことがない限り、首相の側から解散・総選挙を実施することは避けようとするでしょう。2014年総選挙の数字を基にした新聞各紙の予測では、野党が共闘すれば自民党は議席を減らすということで一致していますから。
 これだけのスピードで突っ走るということは、民進党など野党との合意は二の次だということになります。こうして、9条「壊憲」をめぐる対決の構図は次第に明確になってきました。

 もし、来年の通常国会に自民党の原案が出されれば、9条をぶっ壊そうとする自公プラス補完勢力対それをを阻止しようとする民進党を含む野党4党との激突が生ずることになるでしょう。天下分け目の「関ケ原の合戦」の前哨戦です。
 解散・総選挙の前に改憲発議がなされたとしても、衆院議員の任期は来年の12月までしかありません。これまでには必ず解散・総選挙は実施されることになります。
 安倍首相が「壊憲」議席をこのまま維持したいと考えて総選挙を先延ばししようとするのであれば、改憲発議ができなくなるほどに議席を減らすことが獲得目標だということになります。立憲野党4党としては、できるだけ早く解散・総選挙に追い込むことをめざさなければなりません。

 日本の命運を決する重大な政治決戦の日が近づいているということになります。安倍首相の挑戦に対して市民と野党がどのように応えるのか、9条をめぐる「激突の時代」が始まりました。
 安倍首相は腹を固めたわけですから、私たちも腹を固めて対抗しなければなりません。一人一人の決意と本気度が試されることになります。

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5月10日(水) 安倍改憲論は健康体を手術しようとしている気の狂った医者のようなものだ [憲法]

 世の中には、急ぎすぎたためにかえって遅れてしまうということが、えてしてあるものです。だから「急がば回れ」という格言が、それなりの説得力を持って信じられてきたのです。
 ところが、「回ってばかりでは着かないのではないか」と、不安に思った人がいました。「急がば急げ」という新しい格言を作ろうとしているのかもしれません。

 ひょっとしたら、これも閣議決定されるのかも? というのは冗談ですが、やはり「急がば回れ」というやり方の方が良かったのかな? と思い始めているかもしれません。
 急いだために、色々な齟齬や不都合が生じているからです。一石を投じたことは確かですが、それが吉と出るか、それとも凶と出るか、果たしてどちらでしょうか。
 もう、お判りでしょう。安倍首相、ではなくて安倍自民党総裁による明文改憲(改憲発議と国民投票による憲法条文の書き換え)に向けての新たな提起です。

 このところ、安倍総裁は改憲問題について自制の姿勢を示してきました。自分がしゃしゃり出ていったのでは、まとまるものもまとまらないと、考えたからでしょう。
 96条先行改憲論をぶち上げて改憲派の小林節さんの反発を浴び、かえって反対運動を盛り上げてしまいました。この失敗の経験が、安倍さんを慎重にさせたのかもしれません。
 それからは、緊急事態条項の導入などを示唆する程度で、国会の憲法審査会での論議を見守ってきました。しかし、安保法制への反対運動の高揚などもあって憲法についての論議は進まず、次第に安倍さんに残された時間は少なくなってきました。

 「急がば回れ」ということで回り続けてきたものの、一向にらちが明かないというわけです。次第に焦ってきたのではないでしょうか、安倍さんは。
 来年、自民党総裁に3選されても、任期は2021年までです。来年末までには総選挙を実施しなければなりません。
 それほど時間的な余裕はなく、総選挙をすれば衆院での3分の2という改憲勢力が失われてしまうことは確実です。国会での発議は来年の解散・総選挙前でなければならず、国民投票を経て施行するのは何としても21年までに完了させたい、と思いつめたのではないでしょうか。

 「幸い」なことに、衆参両院では改憲発議に必要な改憲勢力が3分の2の多数を占めています。しかし、この中には、条文を書き換えるのではなく必要な部分を付け加えるにとどめるべきだと「加憲」を主張する公明党と独自の改憲路線を取る日本維新の会がいます。
 この両党を引き込まなければ、3分の2を確保することは不可能です。どうすればそれが可能なのかと考えた末に思いついたのが、両党の案をそのまま盗んでしまえば良いという「盗人作戦」です。
 こうして、9条に自衛隊の保持という3項を加える「加憲」、維新の会が主張していた教育費の無償化を入れるという提案でした。これで公明党と維新の会を引き込めれば、改憲発議は可能だと安倍首相、ではなく総裁は考えたのでしょう。

 しかし、困ったのは自民党です。総裁の言うことは無下にできないけれど、これまでの改憲草案や方針とは全く違うのですから。
 突然、「これでやる」と言われても、「はい、そうですか」というわけにはいきません。早速、「今まで積み重ねた党内議論の中では、なかった考え方だ」「自民党の議論って何だったの、ということがある」(石破さん)、「もう少し慎重であっていただきたかった」(船田元憲法改正推進本部長代行)、「党内手続きをとっていないものを公にするときは、党内の話をやっておくべきだった」(伊吹文明元衆院議長)、「首相が思ったような日程感で『とんとん』といくとは考えづらい」(竹下亘国対委員長)などの不平が漏れてきています。
 でも、今の自民党は「安倍一強」ですから。結局は「右へ倣え」ということで尻尾を巻いてしまうのではないでしょうか。

 問題は「挑戦状」をたたきつけられたような形になった野党と国民です。安倍さんのもくろみ通り、やりたい放題やらせてしまって良いのでしょうか。
 国の基本法である憲法がこれほど軽んじられる現状を認めてしまって良いのでしょうか。「3分の2が確保できる内容でさえあれば、変えるのは何でも良い」と言っているようなものなのですから。
 国権の最高機関である国会がこれほど邪険にされている現状を許してしまって良いのでしょうか。「国会で説明するのは面倒だ。詳しいことは読売新聞を読んでくれ」と言ったようなものなのですから。

 今回の安倍さんの改憲発言ほど、許しがたいものはありません。とにかく「改憲した」という実績をあげて歴史に名を残したいという功名心からの提起に、国民全体が巻き込まれようとしているのですから。
 まるで、新しい術式での手術で実績を残したいという功名心に駆られたマッド・ドクター(気の狂った医者)のようなものです。健康体で悪いところでなくても、どこでも良いから手術しやすいところを切らせてくれとメスを振り回しながら叫んでいるようなものなのですから。

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5月6日(土) ついに「壊憲」の本音を現わした安倍首相の驕りと焦り [憲法]

 「壊憲」というのは、憲法の理念を破壊するということです。現行憲法の国民主権、基本的人権の尊重、平和主義という3大理念と、これに議会制民主主義と地方自治を加えた5原則をぶっ壊すような条文の書き換えを、この理念や原則の範囲内での条文の書き換え(改憲)とは区別してこう呼んでいます。
 安倍首相は、現行9条の1項と2項をそのままに、新たに自衛隊の存在を明記する3項を付け加えることを明らかにしました。平和主義の原理を逸脱する「壊憲」への本音を示したことになります。

 安倍首相は5月3日、超党派の国会議員らでつくる「新憲法制定議員同盟」が開いた大会で、「いよいよ機は熟してきた」「(日本国憲法の施行70周年という)この節目の年に必ずや歴史的な一歩を踏み出す」とあいさつし、「圧倒的第1党として現実的かつ具体的な議論をリードしていく決意だ」と述べました。同時に、憲法第9条改正と2020年の施行を目指す考えを表明し、在任中の改憲の実現に強い意欲を示しました。
 これまでは、与野党の合意を優先して国会の議論を見守る姿勢をみせてきました。それだけに、突然、このような形で突出したことに対して与党内にも困惑が広がっているようです。
 安倍首相は一種の勝負に出たわけですが、それが改憲に向けての議論を加速させることになるのか、それとも与野党の合意を難しくさせてしまうのかは不明です。少なくとも、このような勝負に出ざるを得なくなったのは、朝鮮半島危機によって国民の不安が高まり「安倍一強」の今ならやれるかもしれないという驕りと、任期中に何としても道すじをつけたいという焦りの両方の現れだと思われます。

 昨年7月の参院選が終わったころに、安倍首相は「9条3項に自衛隊を明記したい」と漏らしていたそうです。今回表明した構想は、その頃から表明のタイミングを探っていたことになります。
 この構想は公明党の主張する「加憲」の発想に近いものです。民進党内にもこのような考え方がありますから、そこに一石を投じたのでしょう。
 高等教育まで含めた教育費の無償化は日本維新の会が主張しています。これも、野党を分断して一部を引き寄せるための狙いに基づくものです。

 しかし、このような改憲論が憲法尊重擁護義務を有する国務大臣の長たる首相から、突然、改憲派の仲間内で打ち出されるのは極めて異例です。トップダウンで新たな「壊憲」方針が示されたのは、現行憲法の平和主義や9条に対する支持は高く、9条改憲論が国民の中から盛り上がって来ていないからです。
 安倍首相の言う「いよいよ機は熟してきた」というのは、9条に関する限り、真っ赤な嘘です。憲法そのものについても、変える必要があるという意見は過半数を上回っていません。
 毎日新聞全国世論調査では、憲法を改正すべきだと「思う」という回答は48%、「思わない」は33%で、憲法第9条に関して改正すべきだと「思わない」が46%で、「思う」の30%を上回っています。共同通信社の世論調査では、日本が戦後、海外で武力行使しなかった理由について「9条があったからだ」とする回答は75%に上り、9条改正については必要49%、必要ない47%、安倍晋三首相の下での改憲に51%が反対し、賛成は45%でした。

 安倍首相の発言とは逆に国論は割れており、全く「機は熟して」おりません。このような世論状況も、安倍首相の焦りを生む一因だったと思われます。
 このような世論に慌てて、力づくでこじ開けようとしても上手くいくのでしょうか。ますます世論の危機感を高めて野党の反発を強めるということになるかもしれません。
 私たち国民からすれば、安倍首相によって挑戦状をたたきつけられたようなものです。戦後の平和国家としての歩みを転換することへの是非を問われているわけですから……。

 憲法をめぐって日本の進路が真正面から争われる時代が、いよいよやってきたということになります。これにどう答えるべきかが、今後の選挙での一貫した争点となるにちがいありません。

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5月5日(金) 春の花と新緑に迎えられた宇都宮と足尾銅山を訪ねる旅 [旅]

 昨夕、宇都宮と足尾銅山を訪ねる旅から帰宅しました。宇都宮に行ったのは5月3日の憲法記念日での講演を依頼されたためであり、足尾銅山に行ったのは、この機会に足を延ばして、まだ訪れたことがなかった足尾銅山をぜひ訪問したいと考えたからでした。

 5月3日の憲法集会については、地元紙『下野新聞』5月4日付が、写真付きの「『壊憲』より『活憲』を ネット中継の議論注視も 県内」という記事で、次のように報じていました。

 日本国憲法施行70年の節目の憲法記念日となった3日、平和・民主・革新の日本をめざす栃木の会などは宇都宮市雀宮町の同市立南図書館で憲法集会を開き、憲法改正の動きを強める安倍政権を護憲の立場から批判した。一方、都内で開かれた改憲派集会を、インターネット中継で視聴する会場が宇都宮市内にも設けられ、約50人が議論を見守った。
 護憲派の集会には約300人が参加。講演した五十嵐(いがらし)仁(じん)法政大名誉教授は「憲法を破壊する『壊憲(かいけん)』ではなく、憲法を政治と生活に活(い)かす『活憲(かつけん)』が必要だ」と訴えた。また改憲を目指す安倍政権について「安倍一強体制の緩み、おごりがある」と指摘。閣僚の失言、スキャンダルや森友学園問題などを挙げ政権を批判し、野党共闘と市民勢力の結集を呼び掛けた。
 さらに「戦後70年かけて実現した自由で民主的な平和国家を守り、次世代に手渡すことが現世代の責任」と強調。「1人1人が正しい情報を発信し、周囲に伝えていくことが重要だ」とした。

 この記事では、「約300人が参加」とありますが、400人入る会場がいっぱいでした。300人以上の方が参加されたのではないでしょうか。
 皆さんの反応も良く、爆笑に次ぐ爆笑で、私も気持ちよく話をさせていただきました。私の前に、昨年の参院選栃木選挙区で野党統一候補として出馬され惜敗した田野辺隆男さんも「未来のための『徳義』の連帯を」というテーマで話をされました。
 講演終了後、会場で私の新著『活路は共闘にあり―社会運動の力と「勝利の方程式」』(学習の友社)のサインセールをしていただきました。取り寄せた50冊が完売したと聞き、嬉しく思ったものです。

 その後、一席設けていただき、宇都宮駅前のホテルまで送っていただきました。この時、宇都宮に来たのに、まだ餃子を食べていないことに気づき、駅近くのお店を調べて出かけました。
 しかし、夜の8時半を過ぎているというのに、どこも長蛇の列です。連休中だったと言うこともあるでしょうが、宇都宮餃子の人気を見くびっていたことを反省しました。
 結局、餃子は諦めて、ホテルに戻ることにしました。それにしても、すごい人気ですね。

 懇親会の席上、翌日の予定を聞かれ、「まだ行ったことがないので、足尾銅山を訪問するつもりです」と話しましたら、「日光からのバスの便がないかもしれないから、車で案内しましょう」との申し出がありました。
 「それはありがたい。ぜひお願いします」ということで、ホテルの前で待ち合わせました。車で現れたのは、日中友好協会宇都宮支部の伊藤義明事務局長と奥様の新日本婦人の会栃木県支部事務局長の伊藤直子さんです。
 このお二人と共に、長い間、行きたいと思いながら訪問する機会がなかった足尾銅山に向かうことになりました。足尾については、私の勤務先であった大原社会問題研究所の先輩所長でもある二村一夫先生のご専門で、『足暴動の史的分析―鉱山労働者の社会史』(東大出版会、1988年)という著作があり、私も読んだりお話を伺ったりしていました。

 日光から足尾に至る山道も、足尾の町も周辺の山も、そして帰りに乗ったわたらせ渓谷鉄道沿いの渓谷も、春真っ盛りでまさに百花繚乱ともいうべき花々が咲き誇り、新緑は滴るようなモスグリーンで、濃淡が鮮やかなパッチワークのようでした。しかし、その緑が失われた一角がありました。
 足尾ダム上流の松木沢と言う渓谷で、この周囲の山は精錬所から出たガスの影響や鉱山開発に伴う森林伐採で緑が失われ、ここにあった松木村も全村移転を強いられ、先祖代々のお墓は下流の龍蔵寺にまとめてピラミッドのように積み上げられています。足尾銅山については、銅の採掘による渡良瀬川下流への鉱毒の垂れ流しによる公害は田中正造によって告発され良く知られていますが、その上流の空中にも公害がまき散らされていたのです。
 足尾の銅山開発によって水と空気が汚染され、谷中村だけでなく松木村も廃村になっていた事実はあまり知られていません。私も、途中から合流した元足尾町議の藤井豊さんに案内されお話を伺って始めて知りました。

 足尾ダムの上流には許可がなければ車で入ることができません。藤井さんは管理者としての資格があり許可を得ているということで、私たちも松木村の跡地に入ることができました。
 日当たりが良く平坦な場所にあった村は跡形もなく、数基のお墓が残っているだけでした。周囲の山は今も緑が失われ、岩がむき出しになっています。
 ここで偶然、植樹などを行って緑を回復する作業に従事しているNPO法人「森びとプロジェクト委員会」の方々とお目にかかりました。5月20日にも植樹のイヴェントを行うそうですが、ボランティアで緑の復活をめざしているこのような取り組みには本当に頭が下がります。

 このほか、109人の霊が祀られているという中国人受難烈士慰霊塔、粗末な蘇東坡のような墓しかない朝鮮人連行碑、本山抗跡とその前の無人の野となった住宅街の跡、旧松木村の墓や鉱夫の墓などが残されている龍蔵寺、そして足尾観光の中心である通洞抗跡・足尾銅山観光をめぐりました。車で案内していただかなければ、とても回りきれるものではありません。
 こうしてめぐった山の中に、足尾銅山はあったのです。足尾銅山は610年に発見され、10層以上の横抗が縦抗で結ばれ、総延長は東京から博多までに相当する1200キロになるそうです。
 その周囲をぐるりとめぐり、主要な入口であった通洞抗、本山抗、小滝抗なども見ることができました。伊藤さんが車で案内して下さったばかりか、藤井さんに連絡して途中から合流し案内していただいた賜物です。

 今回の宇都宮と足尾銅山をめぐる旅も、伊藤さんご夫妻や藤井さんを始め、沢山の方のお世話になりました。お陰様で、大変意義深く、また思い出に残る旅となりました。
 お世話になった全ての方に、この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。

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5月2日(火) 朝鮮半島危機を利用した「火事場泥棒」のような戦争への「慣らし運転」 [自衛隊]

 朝鮮半島では北朝鮮による戦争の挑発が強まっていると、安倍首相は煽り立ててきました。国民の不安が高まっている今がチャンスだと考えたのでしょう。
 どさくさに紛れて盗みを働く「火事場泥棒」のような陰険で姑息な実績作りだと言わなければなりません。朝鮮半島危機を利用して安保法制による新任務を初めて実施し、戦争に向けての「慣らし運転」を始めたのですから……。

 昨日、海上自衛隊の護衛艦「いずも」が安保法制に基づいて自衛隊が米艦などを守る「武器等防護」のために、横須賀基地を出港しました。房総半島沖で米海軍の補給艦と合流し、護衛するためです。
 自衛艦は防護のために必要最小限の範囲で武器を使えるとされています。こうして米軍との一体化がさらに進み、日米間の軍事協力は新たな段階に達しました。
 安保法制に基づく新たな任務が実施されたのは初めてのことになります。攻撃されれば反撃することができるとされていますから、日本が戦争に巻き込まれる危険性が格段に高まったことになります。

 護衛艦「いずも」は大型のヘリ空母型ですが、防空能力は限られており他の艦船を防護するような装備は持たず、場所も太平洋側で攻撃される可能性は低く、房総沖から四国沖までという中途半端なルートになっています。もともと、シンガポールで開催される国際観艦式に参加する予定だった「いずも」が、たまたま米補給艦の移動ルートと重なったために、今回の「防護」になったと見られています。
 ほとんど実質的な意味がないにもかかわらず実施されたのは、安保法制に基づく新任務を実行するには絶好のチャンスだと考えたからでしょう。大型で目立つヘリ空母型の護衛艦を派遣することで日米間の軍事的連携をアピールでき、朝鮮半島危機に不安を高めている国民も強く反対しないだろうと高をくくっていたからだと思われます。
 別の言い方をすれば、米韓防護の実績作りの機会として、朝鮮半島危機が利用されたということになります。このような形で安保法制の実績作りを行い、日米同盟を強化し、「積極的平和主義」に基づく軍事力強化に向けての世論動員を図るために、北朝鮮によるミサイル発射やトランプ政権による空母カール・ビンソンの派遣などを契機に高まった緊張をさらに煽り立てていたわけです。

 こうして、安保法制は具体的な任務を伴って動き出しました。それによって、日本は安全になり、国民の安心感は増大しているでしょうか。
 トランプ大統領の登場に伴うアメリカの方針転換もあって北朝鮮をめぐる緊張が激化し、日本周辺の安全保障環境は極端に悪化しています。日本が攻撃されたり戦争に巻き込まれたりするのではないかとの国民の不安も、これまでになく大きくなりました。
 戦争の足音が高まり、不安や危機感が強まっているのが実態です。安倍首相はこのような国民の不安や危機感を和らげるどころか、軍事力強化という自らの政治的な思惑を実現するために煽り立ててきました。

 一体、どこの国の指導者なのか、と言いたくなります。アメリカとの軍事的一体化をめざす余り、安倍首相は頭の中までアメリカと一体化してしまったようです。
 しかし、朝鮮半島危機に対するアメリカと日本の立場は根本的に異なっており、ひとたび戦争になれば日本が甚大な被害を受けることは避けられません。日本にとって「あらゆる選択肢」があるわけではなく、軍事的対応を選択肢にすることは許されないのです。
 まして、「武力による威嚇」は憲法9条で禁じられており、首相は憲法尊重擁護義務を負っています。「武力による威嚇」も「力による平和」も、まして軍事的対応は日本として断固として拒否しなければなりません。

 先日、北朝鮮が午前5時半にミサイルを発射したのに対して、テレビなどが速報したのは6時で、これに対応して地下鉄が止まったのは6時7分でした。もし、日本に向けて発射されていれば7~8分で到達しますから、これに対応することは不可能だということが改めて示されました。
 解決する道は外交的な話し合いしかありえません。このことを肝に銘じて、危機打開のための協議の道を探ってもらいたいものです。

 なお、5月の講演などの予定は以下の通りです。お近くの方や関心のある方に足を運んでいただければ幸いです。

5月3日(水)13時30分 宇都宮市立図書館サザンクロスホール:栃木県革新懇
5月6日(土)13時30分 甲斐駒センターせせらぎ:北杜市地域で人権・『共謀罪』を考える会
5月13日(土)13時 萩中集会所:全日空職場革新懇
5月14日(日)13時30分 ルミエール府中:府中市革新懇
5月25日(木)18時30分 世田谷区宮坂区民センター:世田谷革新懇
5月28日(日)15時 明日都浜大津:滋賀県革新懇

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