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8月31日(水) いま再び活憲のススメ [憲法]

 参院選の結果、再び憲法が政局の焦点に浮かび上がってきました。憲法をめぐる争点を、改憲すべてにではなく、その最悪の狙いである壊憲に絞り、護憲ではなく立憲を獲得目標にするべきだというのが、私の新しい提言です。
 加えて、もう一つの提言をさせていただきます。それはすでに以前に行ったものですが、このような情勢に際して再び強調したいと思います。

 それは「活憲」のススメということです。今から11年前、私は『活憲―「特上の国」づくりをめざして』(山吹書店、2005年)という本を出版させていただきました。
 その「はしがき」で、私は「憲法は護らなければならない。しかし、それだけでいいのか?」という問いを発しました。そして、「護るだけでなく、日々の暮らしに活かすことこそ必要だ」という回答を記しています。
 「改憲を阻むだけでは、現実がそのまま残るだけ」です。「その現実は、長年の『反憲法政治』によって、憲法の理念と大きく乖離してい」ますから、それを放置するのではなく、「現実も変えていくことが必要」だということです。

 これが「活憲」であり、「憲法の基本理念に基づいた政治を実現し、憲法を日々の暮らしに活かすこと」を意味しています。憲法を活かし憲法を再生させることが課題になります。
 そして、それによって、憲法が本来の可能性を全面的に開花させれば、どれほど風通しが良く、明るく素晴らしい未来が開けてくるのかというビジョンを打ち出す必要があります。憲法によって開かれる夢と希望が実現する新しい日本像を提起するのです。
 こうして、憲法を「護る」ことから「活かす」ことへと重点が移動することになります。守勢から攻勢へと憲法運動の発展を図ることも可能になるでしょう。

 そのために必要なことは、憲法についての学習を深めることです。小さなグループで自民党憲法草案と現行憲法との対照表を用いてじっくり比較するのが良いでしょう。
 憲法とはどうあってはならないかを実際に条文化した格好の教材が自民党の憲法草案です。それと対比しながら各条文の意味や意義を学べば、憲法に対する理解が一段と深まるにちがいありません。
 そのことによって、「壊憲」が生み出す社会の恐ろしさと現行憲法が目指している社会のすばらしさが認識されるでしょう。自民党による長年の「反憲法政治」によって憲法の理念と大きく乖離してしまっている現実をそのまま受け入れるのではなく、そのような歪んだ現実を理念に近づけていく努力こそが求められているということが良く理解されるのではないでしょうか。

 安保法の発動や米軍基地の強化、自衛隊の増強などに反対し、平和を求める9条理念の具体化を図ることが必要です。基本的人権の尊重などの憲法理念についても、その具体化を目指さなければなりません。
 ヘイトクライムや障害者、女性、少数者への差別などに反対して人権を守ること、マスメディアへの介入や規制を許さず報道の自由や知る権利を擁護すること、政治的中立を名目とした集会規制や教育への介入などを許さないこと、非正規労働者の処遇改善やブラックバイトの是正、職場での労働者の権利拡大など、社会生活と労働の各分野における民主主義の確立に努めることが大切です。
 憲法が保障する権利や自由、民主主義が行き渡っていけば、どれほど明るく希望にあふれた社会に変わるのか。そのような展望とビジョンを示さなければなりません。

 憲法が蹂躙されている「今」を告発し、さらなる改悪を阻止するだけでなく、それが活かされた場合の「明日」を豊かに描くことが必要です。それによってはじめて、憲法がめざしている社会に向けての夢と希望が湧いてくるにちがいないのですから……。

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8月30日(火) ここにこそ活路がある―参院選の結果と野党共闘の成果(その3) [論攷]

〔以下の論攷は、『月刊 全労連』9月号、に掲載されたものです。3回に分けてアップします。〕

3、新たな共同の展望

 プレハブから本格的な建物に

 今回の野党共闘は突貫工事でプレハブを建てたようなものであった。昨年9月に共産党が「国民連合政権」を提唱することで政治課題として浮上し、それは今年2月に5党合意として結実した。3月の衆院北海道5区補選で一定の効果が実証され、6月の参院選に向けて1人区での共闘が実現した。最後の佐賀での統一候補の擁立が決まったのは5月31日のことである。この間、合意がなってから半年もない。
 このプレハブを風雪に耐える本格的な建物にするのが、これからの課題である。これは野党連合の新政権作りに本格的に取りかかるということでもある。
 そのためには、第1に、この間のたたかいで培われた市民や野党間の多様なつながりや信頼関係を大切にし、発展させることによって主体的な力を強めることであり、第2に、アベ政治後のビジョンを提示して明るく夢のある未来像をしめすことによって政策的な魅力を高めることであり、第3に、労働組合運動など大衆運動分野での一点共闘を拡大することによって草の根からの連合政権の土台作りをはじめることである。
 また、戦争法が施行され、今回の参院選で改憲勢力が衆参両院で3分の2を超え、いつでも改憲発議できる「危険水域」に突入した。戦争法廃止を目指すとともに、その発動を阻止し、改憲派にたいする批判を強めて憲法学習を推進し、改憲阻止のたたかいを進めることが重要になっている。

 連合政権樹立に向けての準備を始める

 近い将来における解散・総選挙をめざし、連合政権樹立に向けて政権交代への準備を始めなければならない。政策的一致、国会内での協力、選挙への取り組みなど野党4党間での共同を拡大し、今後の首長選挙や地方議員選挙、衆院補選などでの野党共闘を実現して解散・総選挙でも野党統一候補の擁立をめざすことである。
 とりわけ、政策的準備が重要であり、通常国会での共同提出法案や参院選での確認事項を踏まえ、臨時国会で野党共同の法案提出などを進めながら、外交・安全保障、米軍基地、自衛隊、税制、TPP,エネルギーなどの基本政策での合意形成に努めることである。
 このような準備を行ってこそ、総選挙での共闘も連合政権の樹立も可能となる。今回の参院選での得票を基に、『北海道新聞』は総選挙で共闘した場合の議席を試算している。それによれば、北海道内では野党側が10勝2敗になるという(北海道新聞 7月19日付)。
 ここにこそ展望がある。そして、活路はここにしかない。天下分け目の「関ケ原の合戦」は始まったばかりだ。本格的な対決は次に持ち越しとなった。解散・総選挙がさし当りの政治決戦となろう。参院選での成果を確信にして教訓を学び、より効果的で緊密な共闘のあり方や魅力的な候補者の擁立に向けての模索と研究が不可欠である。
 アベノミクスではなく野党共闘こそが、いまだ「道半ば」なのだ。安倍首相ではないが、アベ政治のストップに向けて「この道を、力強く、前へ」。

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8月29日(月) ここにこそ活路がある―参院選の結果と野党共闘の成果(その2) [論攷]

〔以下の論攷は、『月刊 全労連』9月号、に掲載されたものです。3回に分けてアップします。〕

2、野党共闘はどのような成果を上げたのか

 成果は議席増だけではなかった

 自民党の完勝を阻んだのは、野党共闘の力であった。野党は32ある1人区で統一候補を擁立して自民党と対峙した。これまでは野党同士の競合もあって自民党が「漁夫の利」を得ることがあったが、今回はこのような形での「取りこぼし」は生じなかった。
 その結果、野党の統一候補は11の選挙区で当選し、11勝21敗という戦績を残した。まだ「負け越し」てはいるが、3年前の2勝29敗という成績からすれば、勝率が5倍を超える大きな前進であった。しかも、福島と沖縄では現職の大臣を落選させた。当選には至らなくても、あと一歩という接戦・激戦となった選挙区も現れた。
 その結果、比例代表での野党各党の得票を上回る形で、統一候補の得票が大きく伸びた。この伸びが最も大きかったのは山形で1.71倍、次いで愛媛が1.66倍、長崎1.40倍、沖縄1.40倍、福井1.38倍、岡山1.36倍などとなっている。このうち、山形、沖縄では議席を獲得した。このような形で得票増の効果があったのは、32の1人区のうち28選挙区に上る。
 接戦・激戦となった効果はこれだけではなかった。「勝てるかもしれない」ということで野党陣営の選挙活動が活発化し、有権者の関心も高まり、投票率がアップした。激戦となった青森は9ポイントも上昇し、26の1人区で投票率アップの効果が生じている。

 共闘に加わった各党にも効果があった

 野党共闘の効果は統一候補が立った1人区だけで生じたのではない。アベ政治に対する批判の受け皿づくりに加わった各党も、自民党と対峙する構図を作ったことで野党としての信頼を得て有権者から一定の評価を受けたように思われる。
 民進党は改選議席の43を大きく割り込んで32議席となったが、3年前の前回の17議席から、ほぼ倍増した。7月8日付『朝日新聞』の推計よりも2議席多い結果で、最終盤で勢いを増したことが分かる。野党共闘によって一定のイメージ・チェンジに成功し、3年前の「どん底」を脱することができたのではないか。
 社民党は改選2議席を維持することができず1議席減となった。それでも比例代表では28万票増となって前回の1議席は維持した。
 なかでも、生活の党は共闘の恩恵を大いに受ける結果となった。1人区では野党統一候補として岩手と新潟で党籍のある候補が当選している。また、比例代表でも、事前の予想を覆して1議席を獲得した。小沢一郎と山本太郎の共同代表は安保法制反対運動や野党共闘の実現で大きな役割を演じたことが評価され、報われた形になったと言える。

 共産党は倍増したが前回に及ばなかった

 このようななかで、共産党の獲得議席をどう見たらよいのだろうか。共産党は改選議席3から6に倍増し、比例代表での得票も3年前の前回より86万増の601万票となり、1998年の820万票に次ぐ2番目の高みに到達するという成果を上げた、しかし、前回の8議席には及ばず、『朝日新聞』7月8日付の事前の推計から1議席減となった。途中で失速し、3年前の議席にも、それ以上に伸ばすと見られていた予想の議席にも届かなかった。
 途中での失速ということで考えられるのは、藤野政策委員会責任者による自衛隊についての「人を殺すための予算」という発言である。これについては慎重な検証が必要だが、自衛隊予算についてのこの発言は共産党の方針に反しており、藤野氏も責任を取って辞任した。
 しかし、執拗な反共宣伝の材料の一つとして利用され、有権者に一定の影響を与えたことは想像に難くない。選挙期間中、北朝鮮のミサイル発射が相次ぎ、中国海軍の接続水域への侵入など不穏な動きが報じられたから、なおさらである。
 この藤野発言問題の背景には、自衛隊が持っている「戦闘部隊」としての性格と災害救助隊としての性格という2面性や、この間の東北大震災や熊本地震での活動から後者の性格への評価が強まっているという変化がある。しかも、戦争法の成立によって「専守防衛」の「自衛」隊から米軍などの「後方支援」も可能な「外征」軍への変質が生じ、これへの批判を強めるなかで自衛のための戦闘部隊としての認知が高まっている。これらを踏まえて、今後、自衛隊の役割とその位置づけについての政策的精緻化が必要となろう。

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8月28日(日) ここにこそ活路がある―参院選の結果と野党共闘の成果(その1) [論攷]

〔以下の論攷は、『月刊 全労連』9月号、に掲載されたものです。3回に分けてアップします。〕

 はじめに

 天下分け目の合戦として注目されていた参院選である。歴史の分水嶺という見方もあった。選挙の結果、改憲勢力が3分の2の発議可能議席を獲得したから、改憲の「危険水域」に入ったことは明らかだ。
 参院選では、「9年目のジンクス」と言われる現象があった。1989年から9年ごとに、参院選で自民党が大敗して首相が辞任するということが繰り返されてきたからだ。しかし、この「9年目のジンクス」は今回、不発に終わった。
 とはいえ、これまでにない新しい光と可能性が見えてきた参院選でもあった。国政選挙で初めて市民と野党との共闘が実現したからだ。その力が実証されたことが今回の選挙での最大の成果だったと言える。

1、与党は勝ったのか

 勝ちはしたが完勝ではなかった

 7月10日投開票の参院選で121人の議員が決まった。その内訳は、自民56、民進32、公明14、共産6、維新7、社民1、生活1、無所属4というものだった。自民党と公明党の与党で改選61議席を突破して70議席となった。安倍首相が掲げていた目標を超えたのだから、勝利したことは明らかである。
 しかし、自民党がめざしていたもう一つの目標である単独過半数には2議席足りなかった。したがって、完勝したわけではない。開票途中に、無所属で当選した中西健治議員を追加公認したが、それでも1人足りない。そこで、選挙が終わってから無所属の参院議員だった平野元復興相を口説いて入党させ、27年ぶりに単独過半数を回復した。
 この参院選の結果、改憲勢力が参院での改憲発議可能な3分の2を突破したことも注目された。これを阻止するとの目標を掲げていた民進・共産・社民・生活の立憲野党4党からすれば敗北である。しかし、この「改憲勢力」は自民・公明・おおさか維新・日本のこころという改憲4党に無所属の議席を加えたものである。「改憲」とは言っても、その内容はバラバラで9条改憲を意味しているわけではない。
 さらに、自民党の議席は3年前の前回2013年参院選に比べれば9議席減っている。比例代表では1増となったものの、選挙区では10減だったからだ。
自民党の議席は12年総選挙と13年参院選がピークで、その後の14年衆院選では2減となっていた。そして、今回の16年参院で9減となった。歴史的に見れば、自民党の党勢は下り坂にあることが分かる。

 与党勝利の要因と背景

 それなのに与党が余裕をもって勝てたのは公明党のお陰であった。公明党は改選議席より5増やして14議席となったが、3年前の前回参院選との比較では3議席増である。定数増となった愛知・兵庫・福岡で新たに候補者を立てて当選させたが、比例代表での当選は前回同様の7議席で得票もほぼ前回並みであった。公明党の議席増は、定数増の恩恵によるものだったと言える。
 おおさか維新の会も改選前より5議席増となった。今回から18歳選挙権が導入されたが、この議席増はその恩恵によるものだった。18歳と19歳を対象にした共同通信による事前のインターネット意識調査によれば、おおさか維新の会に対する支持は民進に次いで高く、公明党を0.2ポイント、共産党を0.6ポイント上回っていた。
 このように、全体としてみれば、自民党、公明党、大阪維新が支持されたことになる。しかし、「評価する」が39%(『読売新聞』6月23日付け)しかなく、「見直すべきだ」が61%(『毎日新聞』6月20日付)もあったように、有権者はかならずしもアベノミクスを支持したわけではなく、野党に魅力を感じなかったのである。
 欧米諸国が既成政治への不信感の高まりによって変容に直面しているのと比べれば大きな違いがある。それは政治不信を高める要因となっている移民問題が政治的な争点とならず、逆に北朝鮮や中国の動向など国民の不安を高めるような周辺環境が存在しているからだ。中国経済が不振で世界経済が不透明になっているもとで国民の不安感が増したため、安定と安心を求める心理が強まったのではないだろうか。
 いまだ民主党政権時代の「暗く停滞した時代」のトラウマから抜け切れていない有権者は、「あの時代に戻っても良いのか」と脅す安倍首相の言葉にひるんでしまい、「もうしばらく様子を見ようか」という気持ちになったのかもしれない。

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8月27日(土) 自衛隊は南スーダンから撤退し安保法新任務の訓練を中止するべきだ [自衛隊]

 いよいよ、自衛隊は危険な領域に足を踏み入れることになりました。いつ戦闘に巻き込まれ、死傷者が出るかわからないようなリスクを抱えながらの活動を強いられることになります。
 このような未知の領域に足を踏み入れるべきではありません。その危険性が高まっている南スーダンから、自衛隊は直ちに撤退するべきです。

 稲田防衛相は安保法で可能になった新たな任務について、自衛隊の各部隊の判断で訓練を始めることを明らかにしました。南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に11月に交代で派遣される陸上自衛隊第九師団第五普通科連隊(青森市)主体の部隊は25日から訓練を始めています。
 PKO関係者らが武装集団などに襲われた際に防護に向かう「駆け付け警護」や宿営地の他国軍との共同防衛を付与することなどで、抵抗する暴徒らを武器を使って威嚇、制圧する訓練も行う見通しです。「駆け付け警護」では武器使用の基準を緩和し、任務遂行のための警告射撃などを容認しています。
 その他の集団的自衛権の行使を想定した訓練は、米国との共同訓練の場を利用して実施されます。防衛省は10月以降に予定する日米統合演習「キーン・ソード」などで米側と調整を進め、米艦に対する攻撃に自衛隊艦隊が反撃するシナリオや発進準備中の戦闘機への給油など米軍の戦闘支援も訓練メニューとなるようです。
 
 安保法については、日本が米国の戦争に巻き込まれたり、危険な任務に当たる自衛隊員のリスクを高めたりするとして批判されました。集団的自衛権の行使の容認には違憲性も指摘されていますが、これらの批判や指摘が実証されようとしています。
 そもそも、駆けつけ警護や宿営地の共同防衛が必要になるような危険な状況の下で、自衛隊の部隊が派遣されていることが大きな間違いなのです。南スーダンの実態は内戦というべきものでPKO部隊派遣の前提は崩れており、宿営地の共同防衛は他国軍とともに宿営地を守るこですから、攻撃してくる相手が国や国に準ずる組織なら海外での武力行使にあたり、憲法9条に違反することになります。
 安保法制定後、日本周辺の安全保障環境は悪化し、「抑止力」などは全く働いていません。安保法の成立によって、確かに「日米同盟の絆」は強化されたかもしれませんが、その結果、バングラデシュでは日本人が国際テロの標的として犠牲になるなど、安全は高まったのではなく急速に低下しつつあります。

 さらなる犠牲者が出る前に、ブレーキをかけて方向転換するべきでしょう。急迫不正の侵害に対する拒否力としての「自衛」隊が、海外で殺し、殺される「外征軍」へと変質してしまう前に、既成事実化を防がなければなりません。
 災害救助などでの活躍ぶりを見て、「自分も人助けをしたい」ということで自衛隊員になった若者も沢山いることでしょう。そのような隊員をアフリカに送りこみ、現地の住民や子供たちを誤って殺傷するようなリスクを負わせてよいのでしょうか。
 すでに、「日米同盟の絆」はバングラデシュでの日本人犠牲者によって血塗られてしまいました。今度はアフリカの南スーダンで、日本の若者たちの血を流させようというのでしょうか。

 このままでは、日本という国の形が変わってしまいます。自由で民主的な平和国家としてのこの国のあり方は、安保法によって既に変質を始めています。
 憲法の原理と理念を破壊する「壊憲」策動を許さないだけでなく、安保法の全面的な発動を阻止することが必要です。先の大戦で多大な犠牲を払い、それへの反省として手に入れた自由で民主的な平和国家としてのこの国のあり方を守るために……。


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8月26 日(金) 改憲への賛否や9条改憲への賛否を問う世論調査の「落とし穴」 [憲法]

 「あなたは改憲について賛成ですか、反対ですか」と問われたとします。新聞などによる世論調査では、このように問うのが一般的です。
 しかし、改憲への賛否や9条改憲への賛否を問うこのような世論調査には大きな「落とし穴」があります。何をどのように変えるのかが特定されずに問うのでは、全く正反対の意見が含まれてしまうからです。

 例えば、朝日新聞社(5月3日)の調査では、「いまの憲法を変える必要があると思いますか。変える必要はないと思いますか」との問いに「変える必要がある」43%、「変える必要はない」48%という回答があり、毎日新聞世論調査(5月4日)では、「憲法を改正すべきだと思いますか、思いませんか」との質問に「思う」43%、「思わない」43%と答え、NHK (5 月 1 日 )では、「今の憲法を改正する必要があると思うか」という問いへの回答は「改正する必要があると思う」28%、「改正する必要はないと思う」25% 、「どちらともいえない」43%でした。
 いまの憲法を「変える必要がある」かどうかを問われて、朝日の調査では「必要はない」が多数、読売の調査では同数、NHK調査では「必要がある」が多数となっています。世論はバラバラのように見えますが、それも当然でしょう。
 憲法のどこをどのように変えるのかが明示されずに聞かれているのですから。答える側が勝手に想像して判断しているわけですから、回答がバラバラになるのは当たり前です。

 しかも、「変える必要がある」という回答には、私が言う統治ルールの変更など憲法原理や国の形を変更しない「改憲」と、原理や理念に抵触し破壊してしまう「壊憲」とが混在しています。この両者は根本的に異なっており、厳密に区別されなければなりません。
 世論調査をする側は、この違いに気が付いているのでしょうか。同じ「変える」にしても、憲法原理と国の形を維持し改善するための「改憲」と、憲法原理と国の形を壊してしまう「壊憲」とでは、その方向性は全く逆になります。
 良くするために変えるのか、悪くするために変えるのか。この正反対の意見を一緒にして「変える必要があるか否か」を聞いても無意味だということが分からないのでしょうか。

 憲法9条についても同じような問題があります。朝日新聞社(5月3日)は「憲法第9条を変える方がよいと思いますか。変えない方がよいと思いますか」と聞き、「変える方がよい」29%、「変えない方がよい」63%となり、毎日新聞世論調査(5月4日) での「憲法9条を改正すべきだと思いますか、思いませんか」という問いには、「思う」27%、「思わない」55%と答えています。
 いずれも変えないという意見の方が多数になっていますが、ここで注意しなければならないのは、9条改憲論の中にも、自衛隊の現実にあわせて憲法を変えるという意見と自衛隊が海外に派遣されて米軍などの支援を行う「外征軍」化を防ぐために憲法を変えるという意見があるということです。ここでも「専守防衛」の壁を破るための9条改憲とその壁を強化するための9条改憲という正反対の意見が混在しているのです。
 これを一緒にして「憲法9条を改正すべきか否か」を聞いても意味がありません。もし聞くのであれば、朝日新聞社のように、「憲法第9条を変えて、自衛隊を正式な軍隊である国防軍にすることに賛成ですか。反対ですか」とするべきで、これには「賛成」23%、「反対」69%という回答が寄せられています。

 9条改憲論には、自衛隊の国防軍化や外征軍化をめざすものと、これ以上の増強を阻止することをめざすものという正反対の意見が混在しています。それでも9条改憲への反対論が多くなっているのは、安倍首相がめざしているのは「改憲」ではなく「壊憲」であること、9条改憲によって自衛隊の国防軍化や外征軍化を進めようとしていることが国民の中で理解されるようになってきたからです。
 このような世論の変化に直面して、安倍首相は一定の後退を余儀なくされました。「改憲勢力」や「改憲論」の中には、「壊憲」に反対する勢力や意見も含まれていることに、うすうす気が付いているからかもしれません。
 自衛隊についても同様です。自衛隊への支持や認知度が高まっていますが、それは必ずしも「軍隊」としてのものではありません。

 だから、7割近い人が「自衛隊を正式な軍隊である国防軍にすること」に「反対」しているのです。信頼を高めているのは「軍隊」としてではなく、災害救助のための専門家集団としてだということを忘れてはなりません。
 それを忘れて、安保法を発動させ外征軍としての訓練や装備、機能を強化すれば、国民の反発は免れません。世論による強力なしっぺ返しは避けられないのではないでしょうか。

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8月25日(木) 「壊憲」に反対していた後藤田正晴元官房長官の「情と理」 [憲法]

 『毎日新聞』8月23日付夕刊の「特集ワイド」に後藤田正晴元官房長官が取り上げられていました。「海外での武力行使認めず」「『待て』と言う勇気を持て」という見出しが付けられています。
 この後藤田さんの鎌倉霊園にあるお墓の墓碑には、「自身の戦争体験から来る平和への強い思いが一貫した政治信念であった」と書かれているそうです。長男の尚吾さんによるものだと言います。

 後藤田さんはイラン・イラク戦争のときペルシャ湾への掃海艇派遣に反対しました。アメリカからの要請を受けて、中曽根首相と外務省が海上保安庁の巡視艇か海上自衛隊の掃海艇の派遣に踏み切ろうとした際、「戦争になりますよ。国民にその覚悟ができていますか。閣議でサインしません」と首相に迫って、派遣を断念させたのは有名な話です。
 この後藤田さんを初当選以来支えてきた秘書の川人さんは「後藤田さんは、誰かが『ストップ』と言わないと日本人は流れてしまうと体感していて、その役目を果たし続けた」と語っています。この記事に付けられた「『待て』と言う勇気を持て」という見出しはここから取られたのでしょう。
 与党に後藤田なき今、「ストップ」と言うのは野党の役割です。「待て」という勇気を持つべきなのは、主権者たる私たち一人一人であると言うべきでしょう。

 ところで、この記事の中で、自民党が「自主憲法制定」という党是を棚上げした時期のことが紹介されています。それを主導したのも後藤田さんでした。
 95年の立党40周年の大会で採択された「理念」や「新綱領」では憲法に触れず、「新宣言」では「新しい時代にふさわしい憲法のあり方について、国民とともに議論を深める」と書かれていただけです。その背後には、後藤田さんの憲法観がありました。
 それは著書『情と理』に書かれている言葉に象徴されています。この記事でも紹介されていますが、後藤田さんは次のように述べています。

 「僕の考え方では、マッカーサー憲法と言っても、それは平和主義なり、基本的人権なり国際協調なり、ある意味における普遍的な価値というものは、日本の中に定着しておるのではないか、だから、マッカーサーが作ったんだから変えるという時代はもはや過ぎたのではないかと。こういった価値を基本にしながら、どういうことで新しい憲法を作るのか。例えば89条には私学に対する寄付を禁止しているのにやっている、だからこの条文は変えるべきだと言うんなら、それはいい。しかし自主憲法を言う人たちの頭の中に持っているのは、再軍備ではないか、それには僕は反対だと言っているわけです。それは早すぎると。
 再軍備だってやりたければやって、もういっぺん焼け爛れる者が出ても構わんと言うのならやってもいいよ。しかしいま言うことではないな。この時期に9条を直すとなると、そう簡単にことは行かないよ。この流動化している世界の中では早すぎる。」(後藤田正晴『情と理[下]』講談社、998年、288頁)

 このブログの読者であれば、すでにお分かりだと思います。後藤田さんは、通常の「改憲」には賛成でも、憲法原理や理念を破壊する「壊憲」には反対しているのです。
 それは、「平和主義なり、基本的人権なり国際協調なり、ある意味における普遍的な価値というものは、日本の中に定着しておるのではないか、だから、マッカーサーが作ったんだから変えるという時代はもはや過ぎたのではないかと。こういった価値を基本にしながら、どういうことで新しい憲法を作るのか。例えば89条には私学に対する寄付を禁止しているのにやっている、だからこの条文は変えるべきだと言うんなら、それはいい」と述べている点に象徴されています。
 憲法の三大原理や自由で民主的な平和国家という国の形など「ある意味における普遍的な価値というものは、日本の中に定着しておるのではないか」と言い、それを前提としてその枠内での「改憲」なら、「例えば89条には私学に対する寄付を禁止しているのにやっている、だからこの条文は変えるべきだと言うんなら、それはいい」というわけです。逆に言えば、「9条を直す」ことによって平和主義を破壊するような「壊憲」は許されないと主張していることになります。

 私は8月20日付のブログ「『壊憲』阻止のための新たな戦略をどのように打ち立てるべきか」で、「『改憲』と『壊憲』を分ける境界は、憲法の三大原理にあります。自由で民主的な平和国家としての現在の日本の国の形を変えてしまうような憲法条文の書き換えであるかどうかという点が最大の判断基準になります」と書き、「このような基準からすれば、『改憲』勢力とされている与党の公明党や野党のおおさか維新の会は『壊憲』勢力にはなりません。民進党内の『改憲』勢力も保守リベラルを含む自民党内の『改憲』志向の議員たちも、必ずしも『壊憲』を志向しているわけではないでしょう」と指摘しました。
 ここに紹介した後藤田さんの主張はまさに「保守リベラル」のもので、これらの人は「必ずしも『壊憲』を志向しているわけではない」ことを示しています。このような意見の自民党内保守リベラルとも共闘可能な幅広い立憲共同の戦線を構築することが、今こそ求められているのではないでしょうか。

 「改憲」については、「憲法は時代に応じた改正が必要であり、いつまでも解釈論で済ませるべきではない」「憲法を吟味する機会を増やし、国民の声を反映していくことが憲法の価値を高める」「政権交代があった場合でもぶれることのない、一貫したルールを作っていくという視点が大事だ」などという意見が出されています。これらの意見はいちがいに否定できません。
 そうであっても、後藤田さんの言うように「平和主義なり、基本的人権なり国際協調なり、ある意味における普遍的な価値……こういった価値を基本にしながら、どういうことで新しい憲法を作るのか」が議論されるべきでしょう。その前提はあくまでも、憲法の三大原理や自由で民主的な平和国家としての国の形を変えないことです。
 「こういった価値を基本にしながら、どういうことで新しい憲法を作るのか。例えば89条には私学に対する寄付を禁止しているのにやっている、だからこの条文は変えるべきだと言うんなら、それはいい」のです。このような時代の変化に応じた統治ルールの変更を目的とし、現行憲法の原理や理念、普遍的な価値を基本にした憲法条文の書き換えであれば、何も問題はないのですから……。

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8月24日(水) 実証された市民と野党共闘の力 [論攷]

 〔以下の論攷は、日本科学者会議『東京支部つうしん』2016年8月10日号、に掲載されたものです。〕

 参院選では、与党が70議席を獲得して61議席という目標を越えました。改憲勢力も発議可能な3分の2の議席を突破しています。残念な結果に終わりましたが、同時に、新しい希望の光も見えました。それは市民と野党共闘の力が実証されたことです。
 昨年の安保法制(戦争法)反対運動では、SEALDsやママさんの会など市民が大きな役割を果たしました。学者や文化人も市民連合を結成して運動の発展に貢献しました。このような盛り上がりを背景に「野党は共闘」という声が上がり、全国32ある1人区で野党共闘が成立したのです。
 この野党共闘がどれほどの効果を生むのか。それが試された今回の参院選でした。初めての取り組みでしたが、大きな成果を上げたと言えるでしょう。
 第1に、野党側は東北、甲信越を中心に11の1人区で議席を獲得することができました。11勝21敗ですから、まだ「負け越し」ですが、それでも3年前の2013年参院選での2勝19敗に比べれば5倍以上の議席獲得になります。統一候補を立てなければ、このような成果は得られなかったでしょう。
 第2に、比例代表での各党の得票の「足し算」以上の得票を上げました。たとえば、山形(当選)1.71倍、愛媛(落選)1.66倍、長崎(落選)1.40倍、沖縄(当選)1.40倍など、28の1人区で合計を上回り、「共闘効果」が示されています。朝日新聞の出口調査では無党派層の6割、公明党支持者の2割、自民党支持者の1割も、統一候補に投票していました。
 第3に、与野党による一騎打ちの構図が有権者の関心を高め、1人区での投票率を押し上げるという効果もありました。3年前との比較では合区を除く30選挙区のうち、26の1人区で前回を上回っています。伸び率が高かった青森(9.06ポイント増)や愛媛(6.96ポイント増)は特に激戦となった選挙区でした。
 第4に、共闘に加わった各党にとっても、少なからずメリットがありました。民進党は改選議席を維持できなかったとはいえ前回の17議席をほぼ倍増して32議席となり、共産党も改選議席を倍増させて8議席を獲得しています。社民党は改選2議席を維持できませんでしたが、比例区の得票を28万票増やしました。
 最もメリットが大きかったのは生活の党だったかもしれません。事前の推計ではゼロとされていた比例代表で1議席を獲得し、1人区でも岩手と新潟で党籍のある候補が当選しています。統一候補でなければ、2人の当選はおぼつかなかったでしょう。
 このように、市民が野党と協力・共闘することによって統一候補の擁立に成功しただけでなく、積極的に選挙活動にも取り組んで与党と互角に渡り合える新たな可能性を切り開きました。今後の首長選挙や衆院補選、来るべき総選挙でも野党共闘を維持・発展させなければなりません。参院選の最大の成果は、このような形でアベ政治の暴走をストップさせる新しい力を誕生させたところにあったのです。

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8月23日(火) 市民と野党の共同の発展を願う―参議院選挙をふりかえって(その2) [論攷]

〔以下の論攷は、『雑誌 経済』2016年9月号、に掲載されたものです。2回に分けてアップします。〕

 成果を生んだ野党共闘

 今回の参院選で与党は勝利しましたが、圧勝ではありませんでした。野党も完敗したわけではありません。安倍首相に凱歌を上げさせなかったのは野党協力の力です。市民と野党との共同のたたかいが参院選にも引き継がれ、全国32の1人区で野党が統一候補を擁立したからです。
 その結果、11選挙区で野党候補が当選しています。3年前には2勝にすぎませんでしたから大きな前進です。議席が増えただけではありません。当選にはいたらなくても得票増となり、1+1=2という「足し算」以上の効果を発揮しています。『朝日新聞』の出口調査によれば、無党派層の56%、公明党支持者の24%、自民党支持者でさえ11%が野党統一候補に投票しました。その結果、28の1人区で各党の比例代表での得票合計を上回っています。
 市民と野党が統一候補を立てて一騎打ちになったために有権者の関心が高まり、投票率も上がりました。26の1人区で前回よりもアップしています。
 共闘に加わった各政党にもメリットがありました。民進党は3年前の前回民主党時代の17議席をほぼ倍増させ、32議席を獲得しています。共産党も改選議席3を6議席に倍増させ、比例代表では601万票と1998年の820万票に次ぐ2番目の得票になりました。
 社民党は改選2議席を守れませんでしたが、比例代表の得票を28万票増やして3年前の1議席を維持しました。生活の党と山本太郎と仲間たちは比例代表で12万票増となって1議席を獲得し、岩手と新潟では党籍のある候補が当選しています。

 改憲阻止・戦争法廃止に向けて

 参院選での与党の勝利によって、安保法(戦争法)廃止に向けた運動の再構築が必要になりました。同時に、改憲勢力が衆参両院で3分の2を超え、改憲に向けての動きが強まる危険が生じています。いつでも改憲発議可能な「危険水域」に入ったことは間違いありません。
 改憲を悲願としている安倍首相は、虎視眈々とチャンスを狙っており、少しでも隙を見せれば攻勢をかけてくることは目に見えています。投票日夜のテレビ番組で、さっそく「どの条文をどう変えていくか、憲法審査会で議論していく。いかに与野党で合意を作っていくかだ」と述べ、秋から改憲論議を始める意向を明らかにしました。当面、憲法審査会の再開とそこでの審議を通じて準備工作を進め、緊急事態条項に限って改憲発議を行うのではないかと見られています。
 今後、改憲をめぐる動向を注視し、戦争法の発動による既成事実化を阻み、民進党内の改憲派の動きを抑えて立憲4党の共闘を維持することが必要です。同時に、憲法に対する国民の理解を深めて改憲勢力の狙いと危険性を周知していく活動が重要になっています。
 また、野党共闘を継続し、首長選挙や衆院補欠選挙、来るべき解散・総選挙へと引き継いでいかなければなりません。安倍暴走政治をストップさせるために手に入れた最強の武器である野党共闘こそ、日本の政治変革に向けての希望となっています。戦争法を廃止して立憲主義を確立し、個人の尊厳を守ることのできる新しい政府の樹立に向けて、これからも闘いは続きます。

 本格的に政権をめざす

 今回の参院選で、野党は共闘すれば勝てるという実績を示しました。それは初歩的なものでしたが、自公政権に代わる受け皿づくりとしては大きな成果です。このよう野党協力が実現したのは2月19日の5党合意ですが、それから参院選まで半年もありませんでした。
 いわば、野党協力は突貫工事でプレハブ住宅を建てたような状況で選挙に突入したわけです。これを風雪に耐えるような本格的な建物にするのが、これからの課題です。そうしなければやがてやってくる解散・総選挙には勝てません。戦争法を廃止して立憲主義を回復するための新しい政権作りに本格的に取りかかることが必要です。
 選挙後の『朝日新聞』の世論調査で、安倍内閣を支持する理由として「他よりよさそう」という回答が46%で最多、与党が勝利したのは「安倍首相の政策が評価されたから」が15%、「野党に魅力がなかったから」が71%となっています。野党にとっては厳しい意見ですが、新たな政権の受け皿づくりによって魅力を高め、支持される政策を打ち出し、「他の方がよさそう」と思われるようになれば政権交代できるということでもあります。
 そのためにも、第1に、主体的な力を強めることが必要です。この間のたたかいで培われた市民や野党間の多様なつながりや信頼関係を大切にし、今後の共同の発展に生かしていかなければなりません。共同の力を発展させ団結を強めることです。
 第2に、政策的な魅力を高めることが必要です。個々の政策課題では安倍政権に対する支持は高くありません。その弱点を突くため、野党共同で国会に提出した法案や選挙に当たっての協定などを基礎に政策合意の幅を広げ、安保・自衛隊・税制・エネルギーなどの基本政策に関する合意を追求していかなければなりません。
 第3に、大衆運動の分野で個々の政策課題についての日常的な取り組みを強め、一点共闘を発展させることです。これは将来の連合政権に向けての土台作りであり、それを支える力を草の根から準備することでもあります。
         *      *      *
 野党共闘は始まったばかりです。緒戦で一定の成果を上げましたが、どう発展するかはこれからの取り組み如何にかかっています。再生に向けての足場はできました。いかに魅力を高めて幅広い国民と共同できるかが、その成否を決めることになるでしょう。
                                 (7月19日記)

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8月22日(月) 市民と野党の共同の発展を願う―参議院選挙をふりかえって(その1) [論攷]

〔以下の論攷は、『雑誌 経済』2016年9月号、に掲載されたものです。2回に分けてアップします。〕

 日本の進路を左右するとして注目されていた参院選です。7月10日に、その投開票が行われました。選挙結果を示すボードに赤い花をつける安倍首相は満面の笑みを浮かべていました。マスメデイアも改憲勢力が3分の2を越したことを大きく報じていました。
 一方、この選挙結果を見て、都知事選挙に手を挙げたのが鳥越俊太郎氏で、野党与党と市民の共闘が実現しました。こうして、あらたなたたかいが開始されたのです。

 目標は達成したけれど

 参院選に際して、安倍首相は与党による改選議席の過半数(61議席)突破という目標を掲げていました。与党の獲得議席は、自民党56議席、公明党14議席で合計70議席でしたから、目標を達成したことは明らかです。それだけでなく、大阪維新の会や無所属などの改憲勢力全体で参院の3分の2の議席を超えました。
 しかし、自民党圧勝であったかといえば、必ずしもそうは言えません。もう一つの悲願であった27年ぶりの単独過半数を回復できなかったからです。選挙後、無所属だった平野元復興相を自民党に入党させて実現しましたが、これは姑息な政治工作によるものでした。
 また、自民党は3年前の2013年参院選と比べて9議席減となっています。比例代表では1議席増となったにもかかわらず、選挙区で10議席を減らしたからです。実は、自民党の議席は衆院で12年総選挙を頂点として14年総選挙で2議席減となり、参院の議席も13年をピークに今回は9議席減っています。自民党の力は衆参両院で下り坂にあるということになります。

 安定志向に助けられたのでは

 自民党の党勢が弱まりつつあり、昨年は「2015年安保闘争」ともいえる市民の運動が高揚したにもかかわらず、どうして自民党は勝ち、野党は安倍首相を追い詰めることができなかったのでしょうか。
 世界的に見ても、アメリカの大統領選挙では既成政治家への不信感が高まって「トランプ現象」や「サンダース現象」が起こり、ヨーロッパでは極右勢力が台頭しています。イギリスでもポピュリズムが強まってEU離脱が決まりました。それなのに日本の安倍政権は国会内と自民党内での「ダブル一強」を維持しています。それは何故でしょうか。
 それには、移民問題の不在や日本周辺の安全保障環境が大きく影響していると考えられます。欧米の先進国に比べて外国からの難民の流入は少なく、大きな社会問題にはなっていません。北朝鮮の核開発やミサイル実験、中国の南シナ海での埋め立て、尖閣諸島周辺での不穏な動きなど、安全保障面で不安をあおるような報道が相次ぎました。
 世界経済の先行きが不透明になり、バングラデシュのテロ事件で日本人が狙われて犠牲になるなど、国民の多くは不安感を抱き安定志向を強めたのではないでしょうか。バブル崩壊以来、長期のデフレ不況に痛めつけられてきた国民は民主党政権に裏切られ、もうこりごりだと思っているところに安倍首相から「あの暗い、停滞した時代に戻っても良いのですか」と言われてひるんでしまったのです。アベノミクスによって得られたというささやかな成果にかすかな期待をつなぎ、その行く末を見極めようとしたのかもしれません。

 「選挙隠し」と「争点隠し」

 これに加えて、今回の参院選は「選挙隠し」「争点隠し」とも言うべき選挙戦術が駆使されました。マスメディアの選挙報道は貧弱で、とりわけテレビからの情報は極端に少ないものでした。選挙権が18歳以上へと70年ぶりに変わった歴史的な国政選挙であったにもかかわらず、ワイドショーがもっぱら報じたのは参院選ではなく都知事選でした。
 事実、調査会社エム・データの集計ではNHKを含む在京地上波テレビの放送時間は2013年の前回参院選より3割近く減っています。情報・ワイドショー番組で民放は6割減だったそうです。安倍政権による懐柔と恫喝によってメディアが委縮して放送を控え、結果的に選挙への関心を低めて「選挙隠し」と「争点隠し」に手を貸すことになりました。
 また、安倍首相による「争点隠し」という選挙戦術も顕著でした。その最たるものは安保関連法や改憲に関わる争点です。「首相が本気で改憲を目指すのであれば、自ら国民に問いかけるべきではないか」(『朝日新聞』11日付)と批判されるように、街頭演説では完全に口をつぐんでしまいました。
 その代わり、安倍首相は都合のよい数字を並べてアベノミクスの成果を誇り、政策を訴えるのではなくネガティブキャンペーンを全開させ、共産党への反感をあおり野党共闘への批判を繰り返しました。このような選挙戦術が一定の効果を上げたことは否めません。
 しかし、争点を隠しきれなかったところでは厳しい審判を受けています。TPP(環太平洋連携協定)への不信が強い北海道や東北・甲信越、東日本大震災や原発被害への対応の遅れが批判を浴びた被災3県、米軍基地被害や辺野古新基地建設が怒りを引き起こした沖縄などでは野党が善戦し、福島と沖縄では現職閣僚が落選しています。

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