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12月9日(土) 衆院選を教訓に、市民と立憲野党の共闘の深化を(その4) [論攷]

〔以下の論攷は、『法と民主主義』No.523、2017年11月号、に掲載されたものです。4回に分けてアップさせていただきます。〕

四 安倍9条改憲の阻止に向けて

 83%の衝撃

 総選挙の結果、与党は衆院で3分の2以上の議席を確保しました。改憲勢力とされる議員の数は374議席で83%を占めるという報道があり、大きな衝撃を与えました。早速、安倍首相は憲法審査会での議論の促進を求め、野党第1党が賛成しなくても発議するかのようなそぶりを示しています。当面は自民党内で改憲案を取りまとめることに重点を置くでしょう。あわせて、同じ与党である公明党への働きかけを強めようとしています。改憲勢力と見られている維新の会や希望の党にも秋波を送るにちがいありません。
 これまでも安倍首相は、国政選挙で景気対策や経済問題などの「疑似餌」を前面に出して支持をかすめ取り、選挙が終わると「信任を得た」とばかりに与野党が対立する違憲法案の成立を強行するという「手口」を重ねてきました。2013年の参院選の後の特定秘密保護法、2014年衆院選の後の安保法制、2016年参院選の後の共謀罪法などがそうでした。今回も、同様の「手口」を用いようというのでしょう。衆院選で「信任された」と強弁しつつ、2020年改憲施行に向けての作業を強行しようとしているように見えます。
 「二度あることは三度ある」と言いますが、すでに三度もありました。今回は4度目になります。しかも、9条改憲は戦争できる国に向けての一連のストーリー(物語)での総仕上げを意味しています。これまで、特定秘密保護法(起)→安保法制(承)、共謀罪法(転)と引き継がれてきた物語は、いよいよ9条改憲(結)によって起承転結の完結編を迎えようとしているのです。

 改憲と安倍9条改憲の区別

 こうして、改憲をめぐる攻防はまさに「激突」の段階を迎えようとしています。「憲法をどうするのか」というテーマが、日本政治の主要な争点として浮かび上がってきました。
 ここで大切なことは、一般的な憲法の改正を意味する改憲と、現在の時点で安倍首相が行おうとしている9条の改憲(安倍9条改憲)を区別し、その間に楔を打ち込んで安倍9条改憲論を孤立させることです。
 国会議員の分布では、確かに改憲に賛成する議員は8割を超えていますが、9条の1項と2項をそのままにして新たに自衛隊の存在を書き込むという安倍首相の改憲案に賛成する議員は54%です(『毎日新聞』10月24日付)。過半数は越えていますが、改憲発議に必要な3分の2の多数を占めているわけではありません。世論調査では自衛隊の明記に52%が反対しており(共同通信調査)、国民の中では安倍9条改憲論は少数派です。
 したがって、安倍9条改憲の発議と国民投票には多くのハードルが存在しており、安倍首相の意図通りに進むとはかぎりません。足元の自民党内でさえ、自衛隊明記に75%が賛成していますが、12年の改憲草案で示した「国防軍の明記」を支持する意見も根強く存在しています。代表的なのは石破茂元防衛相ですが、同様の意見のも14%に上るという調査もあります(前景『毎日新聞』)。
 さらに大きなハードルになるのは、同じ与党の公明党でしょう。総選挙で不振だった公明党は、安倍首相を強く支持する姿勢や憲法論議での対応が支持者の不信感や混乱を招いたと総括文書の原案で指摘していました。今後は安倍政権に対するブレーキ役として存在感を示す必要性があるというわけです。安倍9条改憲についても「ブレーキ役」としての存在感を示せるかどうかが、注目されるところです。
 維新の会や希望の党も改憲勢力とされていますが、安倍9条改憲については積極的でなく、優先順位は低いとしています。改憲と安保法の支持という「踏み絵」を踏んだはずの希望の党の当選議員についても、安倍改憲に72.5%が反対し、2020年改正施行にも66.9%が反対しています(共同通信調査)。
 
 何をなすべきか

 安倍9条改憲阻止に向けてどうしたらよいのでしょうか。「激突」して相手を打ち破り、勝利する道はあるのでしょうか。
 そのためには、第1に、安倍9条改憲へのハードルを引き上げることが必要です。私たちの運動で反対世論を増やしていけば、これらのハードルを高くすることができるからです。世論を可視化するという点では集会やデモなどの抗議行動が有効です。官邸前や国会周辺だけでなく全国で、可能な形での安倍9条改憲に反対する集会やスタンディングなどに取り組むことです。安倍9条改憲NO!全国アクションから呼びかけられている3000万人署名運動も世論を具体的な数で示していくという点で大きな意義があります。
 第2に、現行憲法に対する国民的な学習運動を幅広く組織することです。安倍首相による改憲に向けての働きかけが強まり、国会で憲法審査会を舞台にした議論が始まれば、憲法に対する国民の関心は高まるにちがいありません。これは憲法の意義や重要性について学ぶ絶好のチャンスでもあります。憲法に対する理解が深まれば、改憲に反対する大きな力となるでしょう。
 第3に、市民と立憲野党との連携を深め、草の根の市民政治を広げていなければなりません。市民と野党との共闘は総選挙での経験と立憲民主党などの新党の結成によって新たな可能性が生まれてきています。民進党から分かれた立憲民主、希望、民進、無所属の4党・会派と共産、社民、自由の各党は国会内での連携を図りつつあります。国会審議において力を合わせながら国会外での運動とも連携し、草の根の共同を幅広く追求していくことが重要です。
 これらの活動を通じて、いかに世論を変えていくかという視点を貫かなければなりません。当面は国会での改憲発議を阻止することですが、最終的には国民投票で決着が付けられることになります。そこで多数を得る見通しが立たなければ、改憲への動きをストップさせることができます。この点で世論の動向は決定的な意味を持つことになるでしょう。
 ヨーロッパ連合(EU)からの脱退か残留かを問うイギリスの国民投票では脱退への賛成票が上回り、残留を主張していたキャメロン首相は辞任しました。イタリアでも上院の権限を大幅に縮小する憲法改正案についての国民投票が実施され、反対票が多かったためにレンツィ首相が辞任に追い込まれています。日本でも同様の結果が予想されるという状況になれば、安倍首相はあえて冒険を犯すことを避けるにちがいありません。

 むすび―歴史はジグザグに進む

 歴史はまっすぐではなく、ジグザグに進むものです。時には「後退」しているように見えることもあります。かつてレーニンは『一歩後退二歩前進』という論攷を書きました。それになぞらえて言えば、今回の総選挙は「一歩後退二歩前進」ということになるでしょう。いや、そうしなければなりません。
 市民と立憲野党の共闘という点では、「一歩後退」を強いられるような逆流や障害に直面しましたが、今後の発展につながる共闘勢力の誕生や経験の蓄積、そして何よりも共闘相手とのリスペクトや信頼、新たな人間関係や深い付き合いが生まれています。これらを大切にし、選挙だけでなく安倍9条改憲阻止の運動においても共闘を広げ、生かしていくことが大切です。
 このような日常的な活動の積み重ねによって、草の根から改憲阻止、立憲主義と民主主義を守る市民政治を生み出すことができれば、2019年の参院選に向けても、いつ解散・総選挙があっても、市民と立憲野党との共同の力によって対応することができるにちがいありません。それはまた、来るべき野党連合政権を草の根で支える市民の力を鍛え、統一戦線の結成に向けての歴史を切り開く作業となることでしょう。
 歴史は傍観者として「見ている」ものではありません。それは私たちの主体的な参加によって「つくるもの」です。いま私たちに問われているのは、どうなるかではなく、どうするかです。安倍9条改憲に向けての「激突」に勝利し改憲勢力3分の2体制を打破して戦争への道を阻むために、世論と政治を変えて新たな歴史をつくっていこうではありませんか。


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