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8月7日(月) 「政治の劣化」「行政の劣化」とは何か―どこに問題があるのか、どうすべきか(その2) [論攷]

〔以下の論攷は『法と民主主義』No.520、2017年7月号、に掲載されたものです。3回に分けてアップします。〕

2 通常国会での暴走・逆走

 9条改憲方針の明言

 第193回国会は1月20日に召集され、6月18日までの150日間でした。この通常国会はアベ政治の暴走・逆走が際立ち、政治・行政の退廃と混迷が露わになるという異常な国会でした。
 なかでも、5月の連休中に安倍首相が9条改憲の意図を明らかにして注目されました。改憲に向けてのギアを入れ替えたことになります。与野党の合意をめざして「低速」で慎重な運転を行ってきたこれまでのやり方を投げ捨て、3分の2を占めている改憲勢力だけで突っ走ろうというわけです。
 安倍首相は9条の1項と2項をそのままにして、新たに自衛隊の存在を明記することで公明党を引き込み、教育費無償化を書き込むことで日本維新の会を抱き込もうとしています。これに他の改憲勢力を合わせれば、民進党などの協力を得なくても衆参両院の3分の2議席を占めて発議が可能になります。
 秋の臨時国会で自民党案を提起し、来年の通常国会で発議したうえで衆院選と同時に国民投票で可決するというのが安倍首相の目論みです。それまでは改憲議席を維持しなければなりません。首相の側から解散・総選挙を実施することは避けようとするでしょう
 こうして、9条改憲をめぐる対決の構図は明確になってきました。安倍首相が改憲議席を維持したいと考えて総選挙を先延ばしするのであれば、改憲発議ができなくなるほどに議席を減らすことをめざして解散に追い込み、総選挙で勝利を勝ち取らなければなりません。9条をめぐる「激突の時代」が始まりました。私たちも腹を固めて対抗することが必要です。1人1人の決意と本気度が試される局面がやって来たということになります。

 「共謀罪」法の成立

 このような9条改憲に反対し、憲法を守ろうとする市民運動をあらかじめ取り締まるための武器も調達されました。それが共謀罪を制定した目的の一つだったように思われます。2013年の特定秘密保護法、15年の安保法(戦争法)、そして17年の共謀罪と、アベ政治の暴走は続いてきました。この戦争できる国づくりへの道は9条改憲へとつながっています。
 国民の多くが不安に思い、世論調査では反対が増え、成立を急ぐ必要はないという意見も多い法案でした。心の中が取り締まられるのではないか、一般の人が対象とされるのではないか、拡大解釈によって適用範囲が広がるのではないか、政府に都合の悪い運動などが監視され密告される恐れがあり、委縮してしまうのではないかなどの疑問が出されました。しかし、いくら審議しても、これらの懸念は解消されませんでした。
 これらの疑問や懸念に丁寧に答えるどころか、委員会採決の省略という問答無用の強権的な方法が取られました。異例の奇策による完全な「だまし討ち」です。内心の自由を取り締まる法案の内容も問題ですが、「中間報告」という「禁じ手」を用いた強行採決も大きな問題でした。まさに立法府の劣化というしかありません。
 テロ等準備罪という名前に変えて粉飾を凝らし、オリンピックを名目にして成立を強行しましたが、テロや五輪・パラリンピックという看板を掲げれば国民を騙せると高をくくっていたのでしょう。騙されてはなりません。共謀罪によって取り締まる対象と市民や市民活動との違いを曖昧にしているのは、政府に都合の悪い発言をしたり活動に加わったりする一般市民や正当な市民活動、社会運動を取り締まるためであり、拡大解釈によって共謀罪を適用する余地を残しておきたかったからではないでしょうか。

 「森友」「加計」学園疑惑

 もう一つの焦点となった「森友」「加計」学園疑惑も、安倍政権のいかがわしさをはっきりと示しています。官庁や役人が安倍夫妻の意向を「忖度」して知人や友人を優遇したり便宜を図ったりして、一部の人によって政治と行政が私物化されているのではないかという疑惑が表面化したからです。
 「森友」疑惑では、教育勅語を暗唱させるような籠池泰典前理事長の教育方針に共鳴した首相夫人の昭恵さんが「力になりたい」と考えて「神風」を吹かせ、国有地を8億円もディスカウントしたのではないかと疑われています。「加計」疑惑では加計孝太郎理事長の30年来の「腹心の友」である安倍「総理のご意向」に従い、「加計ありき」で岡山理科大への獣医学部新設と国有地の取得に便宜が図られたのではないかとの疑惑が浮かび上がりました。
 昭恵さんを守ったのは、その意向を「忖度」して便宜を図った財務官僚だと見られていますが、計算違いは籠池森友学園前理事長です。安倍首相からの「100万円」の寄付を暴露された腹いせに証人喚問するなど「敵」に回したため、財務省への働きかけを示すファクスを暴露されるなど首相も昭恵さんも窮地に陥りました。
 他方の「加計」疑惑で安倍首相を守ったのは内閣府だったようです。交渉の経過を示すメールや内部文書が文科省で発見されましたが、それに対する追及が「官邸の最高レベル」に届かないようにする作戦だったと思われます。文科省(第1の防衛線)は突破されましたが、内閣府(第2の防衛線)でストップさせようとしたのでしょう。
 「加計」疑惑での計算違いは前川喜平前文科事務次官です。文科省内で作成された内部文書は本物で「確実に存在していた」「あったものを無かったことにはできない」「行政のあり方がゆがめられた」と証言しました。官邸は人格攻撃までしてこれを否定しましたが、結局はむりやり国会を閉じて疑惑を隠すという醜態をさらすことになったのです。

 アベ政治の退廃と混迷

 通常国会では、政治と行政の劣化、アベ政治の退廃と混迷も余すところなく示されました。
 その第1は、情報の秘匿と隠ぺいです。行政文書など保管されるべき記録が廃棄されたり、隠されたりしました。南スーダンへの自衛隊PKOの「日報」が隠蔽され、「森友」「加計」疑惑での財務省や文科省、内閣府の情報隠しも大きな批判を招きました。行政の透明化、検証可能性、知る権利の保障という意識も仕組みも極めて劣弱であることが改めて明らかになっています。
 第2に、国連関係者からの懸念や批判です。共謀罪については国連人権理事会の特別報告者であるケナタッチさんがプライバシーを制約する恐れを指摘し、報道の自由に関して懸念を表明しました。人権理事会のケイ特別報告者も特定秘密保護法について改正を促しました。日本は国際標準から逸脱しつつあり、国際社会から後ろ指をさされるような国になってしまったようです。
 第3に、「安倍一強」体制の下での独裁と強権化です。小選挙区制の導入や内閣人事局の新設などによって官邸支配の体制ができ、国家戦略特区によってトップ・ダウンの政治主導が強まりました。多数党が強権を振るうことができる仕組みができ、三権分立の歪み、総理・総裁や公人・私人の使い分けなどによる政治・行政の私物化が生じています。
 第4に、マスメデイアが変質し、一部のメディアの劣化が進みました。政治権力の批判・監視を行う「第4の権力」から権力への迎合・走狗へという機能転換が生じています。とりわけ最大の部数を持つ『読売新聞』が安倍首相の9条改憲インタビューや「加計」疑惑での前川さんの「出会い系バー通い」を報ずるなど、安倍首相によって利用され、報道機関として大きな汚点を残すことになりました。

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