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5月31日(水) ポピュリズム―民主主義の危機にどう向き合うか [論攷]

〔以下の書評は、『しんぶん赤旗』5月28日付に掲載されたものです。〕

 「一匹の妖怪が世界を徘徊している。ポピュリズムという妖怪が」と言いたくなります。大衆の支持を背景に「自国第一」を掲げたポピュリズムがアメリカヨーロッパで台頭し、既存の政党や政治を揺るがしているからです。
 極端に単純化した争点によって対立を煽り、人々の不安や怒りに心情的に訴えて支持を獲得し、イギリスの欧州連合(EU)からの離脱やアメリカ大統領選挙でのトランプ候補の当選を実現しました。選挙で勝ちさえすれば何でもできるとするポピュリズムが、既存の政治や政党に対する挑戦であることは明らかです。
 ポピュリズムは「大衆迎合主義」と訳されます。民意に基づくものであれば民主主義ではないのかという疑問がわきます。それは民主主義とどのような関係にあるのでしょうか。このような疑問に答えるのが、今回取り上げる2冊の本です。

功罪? 魔物?

 水島治郎著『ポピュリズムとは何か』(中公新書・820円)、薬師院仁志著『ポピュリズム』(新潮新書・780円)です。両著ともに米大統領選挙までをカバーしており、トランプ当選を生み出した背景としてポピュリズムに注目している点で共通しています。また、ポピュリズムと民主主義とは不可分の関係にあり、両者を切り離して論ずることはできないという点でも同様です。
 しかし、その副題が「民主主義の敵か、改革の希望か」(水島)、「世界を覆いつくす『魔物』の正体」(薬師院)となっているように、大きな違いもあります。前者は「功罪」の両面を見ているのに対して、後者は「魔物」としてとらえているからです。
 この違いは、「現代型ポピュリストの第1号」としてヒトラーを挙げている薬師院さんに対して、水島さんが現代ヨーロッパの「抑圧型」右派ポピュリズムとは区別されるラテンアメリカなどの「開放型」の左派ポピュリズムまで視野に入れていることからきています。薬師院さんは現代ポピュリズムを「人心を荒廃させる扇動」であり、「世の中に分断と対立を持ち込んでゆく」として真っ向から否定するのに対し、水島さんはデモクラシーの「危機」を示すものであるとしながらも、「既成政党に改革を促」して政治の「再活性化」や「政治参加」を促進するなどの「効果」もあるとしている点が注目されます。

「内なる敵」

 その水島さんでさえ、ポピュリズムはデモクラシーの「隘路」や「逆説」だとし、この「内なる敵」と正面から向き合うことを求めています。薬師院さんはもっと厳しく「議会制民主主義の破壊」だとして、「妥協のない民主制は、その反対のものに、つまり、独裁制に転化する恐れがある」と警告しています。
 既存の政治と政党のあり方を刷新することによって、ポピュリズムの挑戦に応えなければなりません。貧困と格差の土壌に生まれ不平・不満を養分に育ってきた「妖怪」に対しては、人びとの不安を解決できる真の「活路」を示し、民主主義の成熟を図ることで競いあうしかないのですから。

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