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2月1日(水) 政治転換の機は熟している [論攷]

〔以下のインタビュー記事は、日本平和委員会が発行している『平和新聞』第2128号、2017年1月15・25日合併号、に掲載されたものです。〕

 世界は「第三の段階」に

 今年は一言でいえば、「チャンスと飛躍の年」です。現在の国際政治は、戦後の「第三の段階」のとば口に差しかかっているからです。
 1970年代のオイル・ショック以降、それまでのケインズ主義を背景にした公共事業で有効需要を創出して経済成長を図る修正資本主義的な路線(第一の段階)が壁にぶつかり、政府はなるべく経済に介入しないで民間に任せるという新自由主義的な規制緩和、民営化路線が徐々に台頭してきました。この流れはソ連崩壊で一気に加速し、90年代以降、新自由主義とグローバリズムは世界の隅々に広がりました(第二の段階)。この弱肉強食の新自由主義路線の結果、強欲資本主義となって資本の力が強くなり、富が一極に集中し、貧困や格差が拡大しました。
 これに対する大衆の不満や反感がネガティブな形で出てきたのが、英国のEU離脱や米大統領選挙でのトランプ氏当選です。また、シリア内戦による難民の流入やイスラム国(IS)の勢力拡大による各国でのテロなどを背景に、欧州でナショナリズムや排外主義が強まり、極右勢力が台頭する事態も生まれています。
 他方、1%の富裕層のための政治から99%の人々のための政治に変えなければならないという動きも強まっています。ギリシャやスペインでは新しいリベラル・左派勢力が台頭し、米大統領選挙の民主党予備選挙では自らを「民主的社会主義者」と呼ぶサンダース氏が若い世代の熱い支持を受けて大健闘しました。
 行き詰まった新自由主義とグローバル化路線を打開する「第三の段階」に向けて、この二つの流れが激しくぶつかり合っているのが現状です。いわば絶望と希望がせめぎ合うような過渡期において、リベラル・左派勢力が新しい政治の活路を切り拓くチャンスが生まれているのです。

 「勝利の方程式」見えた

 日本でも、安倍政権による暴走政治の破たんが明らかになってきました。
 一番の破たんは、政策の目玉としてきたアベノミクスです。安倍首相はまだ「道半ば」で「エンジンをふかす」などと言っていますが、実際にはこれだけ長くやっても成果が上がっていません。最大の問題は、大企業の内部留保と富裕層の資産だけが増え、国内総生産(GDP)の6割を占める個人消費がいっこうに上向いてこないことです。大企業や富裕層がもうかれば、富が国民全体にしたたり落ちて経済が成長するという「トリクルダウン理論」は、完全に破たんしてしまいました。
 安倍政権が「働き方改革」を最重要課題に位置付けると表明せざるを得なくなったのも、破たんの現れです。規制緩和で非正規雇用を増やし、貧困と格差を広げ、働く人々の困難な状況を作り出してしまったからです。非正規の若者は結婚や出産をあきらめざるを得ない状況に追い込まれ、深刻な少子化により持続不可能な社会になりつつあります。このままいけば「来世紀には日本人はいなくなる」という試算もあるくらいです。そういう中で「働き方改革」を掲げざるを得なくなった。ここにアベノミクスが生み出した矛盾があります。
 他方、安倍暴走政治から抜け出す活路が示されたのが、去年の参議院選挙と新潟県知事選挙でした。市民と野党が明確な争点を掲げて本気の共闘をすれば勝てるというのが、両選挙の教訓です。参院選挙は、まだ突貫工事でプレハブを建てるような初歩的な共闘でしたが、それでも野党の1人区での勝利は、前回(2013年)の2選挙区から11選挙区に増えました。
 この「勝利の方程式」が大きな成果を生む可能性があるのが、次の総選挙です。今度は十分な準備時間がありましたし、年明けから野党4党の政策協議も始まりました。安倍暴走政治の破たんが明らかになり、安倍首相の解散戦略も齟齬をきたしています。不意打ち解散の可能性は消えていませんが、いつ解散するかをうかがうのではなく、逆に市民と野党の共闘で解散に追い込んでいくというのが、通常国会での獲得目標になると思います。
 政治転換の機は熟しており、あとはこの「勝利の方程式」をきちんと解いて、正しい「解」を導き出すだけです。小選挙区制は多数党に有利ですが、得票がある一定の割合を超えると一気に変わるという特徴もあります。2009年に民主党が政権交代を実現させたように、野党が安倍政権を終わらせて政権を奪取することは可能です。日本でも、平和と民主主義、立憲主義、そして個人の尊厳を尊重する政治への転換のチャンスが生まれているのです。
 安倍政権はマスメディアを使って嘘とごまかしの情報を流し続ける「偽ニュース」や「ポスト真実」によってしか支持を維持できなくなっています。NHKのニュースだけを見ていると、アベノミクスや安倍外交などがうまくいっているかのような印象を持ってしまいます。このような錯覚を打ち破って暴走政治の実態を暴露し、事実を多くの市民に伝えていくことが重要になっています。

 安保問い直すチャンス

 平和や安保の分野でも、安倍暴走政治は行き詰まり、新しい転換の可能性が生まれています。
 安倍政権は「これは戦争法ではなく、戦争を抑止するものだ」と言って多くの反対を無視して戦争法を強行採決しました。しかし、その後、北朝鮮のミサイル発射は急増し、中国の尖閣諸島周辺での活動も活発化しており、「抑止力」が働いていないことは明らかです。むしろ、「挑発力」となって緊張を高め、軍拡競争の悪循環を招く要因となっています。
 昨年末の国連総会で核兵器禁止条約の交渉を開始する画期的な決議が採択されましたが、日本は唯一の戦争被爆国であるにもかかわらず、米国の顔色をうかがってこれに反対しました。これも、安倍外交の破たんの一例です。
 こうしたなかで、米国に追随する日米安保の本質、植民地的従属状態と言っても過言ではない日米地位協定や日米合同委員会の問題性が明かになってきました。加えて、米トランプ政権の誕生で駐留経費(思いやり予算)のさらなる負担を要求される可能性もあり、日本の安全保障のあり方が根本から問い直される状況が生まれています。
 確かに、野党間で日米安保に対する考え方に違いがありますが、「東アジア共同体」のような地域の平和協力の枠組みを目指していくことや、日本の主体性を高める方向で日米地位協定を改定したり、日米合同委員会の透明性を高めて米軍の要求を密室で押し付けられるような現状を見直したりすることは十分に可能だと思います。
 こうした政策を一つひとつ実現していくことで、安保体制という軍事同盟に頼らない対話と交渉による非軍事的な安全保障を実現し、東アジアにおける平和で安定した国際環境を広げていかなければなりません。


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