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10月7日(金) 珍しくまっとうなことを言っている「財界総理」の諫言に安倍首相はどう答えるのか [憲法]

 「オヤオヤ」と思いましたね。今日の『朝日新聞』に掲載されている榊原定征経団連会長の改憲についての発言です。
 珍しくまっとうなことを言っているじゃありませんか。改憲に無駄なエネルギーを注いでいる安倍首相への諫言にほかなりませんが、この発言を安倍首相はどう読んだでしょうか。

 本日付の『朝日新聞』のインタビュー「危機下の『財界総理』 経団連会長・榊原定征さん」での発言です。榊原さんは「安倍晋三首相の宿願は、私は憲法改正だと思います。実現には相当の政治的精力が必要な難題です。危機下にあって、政策実行の優先順位をどう考えますか」と問われて、次のように答えています。
 「戦後すぐにできた憲法を時代に即したものに変えていく必要性は、一般論としてはその通りです。とかく憲法9条が注目されがちですが、教育や防災などの分野は改正は必要と考えます。ただ、経済界からすると、優先順位は憲法ではなく、経済再生であり、社会保障改革であり、構造改革。首相にはいつも『経済最優先』と申し上げ、首相も繰り返し言及されてきた。脇目もふらずにやって欲しい、それが正直なところです」

 この発言に関する限り、きわめてまっとうなものだと思います。「憲法を時代に即したものに変えていく必要性は、一般論としてはその通り」という点や「とかく憲法9条が注目されがちですが、教育や防災などの分野は改正は必要と考えます」という指摘は、憲法の基本原理に反せず、この国の形を壊さないことを指しているとすれば、否定されるようなものではありません。
 しかし、だからと言って、そのような「改憲」に政治のエネルギーを費やしている場合なのか、そのような必要性が一体どこにあるのか、ということが次に問題になります。これについても榊原さんは、「首相と直接、この優先順位の話はしたのですか」という問いに対して、こう答えています。

 「さすがに『憲法改正の議論はやめてください』とは言っていません。でも、どこまで直接的な表現を使うかは別にして、必要なときは言います。憲法審査会で議論するのはいいと思いますが、大事な国会の審議がそちらに割かれ、経済や構造改革、社会保障制度改革の議論が遅れることはあってはならない。経済は国の礎。まず経済をよくしなければなりません」

 さらに、「経済が脇に置かれると、榊原さんの持論の『政治と経済の車の両輪』も狂ってしまう、と」という問いにも次のように答えています。
 「おっしゃる通り。『憲法は後にしたってよろしい』と言うくらいのつもりです。経済界としては、このような経済、社会保障、財政の状況にある時期ですから、まさに『経済最優先』の主張を強く発信するところだと思います」
 ――それが経団連の使命だと。
 「改革には政治の力が絶対に必要です。いくら新聞が書いても、世の中を変えられるのは政府、特に首相しかいない。だから私は政治と連携し、首相に直接、提言できる関係を構築したのです。業界に利益を誘導するとか、そんなけちなことは考えていません」

 このような発言の背後には、経済界としての強烈な危機感があります。それについても榊原さんは次のように指摘し、アベノミクスについても「アベノミクスで、国民所得、税収、雇用の指標も大きく改善しました。最初の3年間は大きな成果を上げたと評価しますが、その後は十分な形になっていないのは確かです」と、失速していることを認めています。

 「日本のGDP(国内総生産)は1993年からの20年間で、増えるどころか減りました。米国は2・4倍、中国は16倍にも増えたのに。世界シェアでは日本は90年の13・8%から2013年は6・6%に落ち、国際社会における経済的プレゼンスは半減しました」
 「人口も減り始めて、2060年には9千万人を割り、国を支える生産年齢人口はいまの6割から5割に減るでしょう。一方、年間の社会保障給付はすでに100兆円の大台を超え、国の予算を上回ります。放っておくと25年度には150兆円ほどにもなる。しかも高齢者向けは大幅に増え、子どもや働き世帯へはほとんど増えていない。医療費は40兆円を超え、国と地方合わせた長期債務残高は、GDPの2倍超です。これほど債務を抱えている先進国はありません。この流れを変えないと、日本はまさに消滅してしまいます」

 こう仰る榊原さんには、「このような危機を作り出してきたのは歴代の自民党政権ではありませんか。それを支持し背後から支えてきたのは、ほかならないあなたたち財界人ではありませんか」と言いたいところです。とはいえ、現在の日本がこのような危機に直面しており、「この流れを変えないと、日本はまさに消滅してしまいます」という状況に陥っていることは間違いありません。
 それは現行憲法のせいではなく、憲法を変えたからと言って「この流れ」が変わるわけでもありません。改憲は政治的なエネルギーの無駄遣いであり、優先順位が間違っているという認識は財界と共有できるということになります。
 榊原さんは現在の政治の優先順位が改憲にはないと明言しています。この論理を民進党はじめ野党は大いに主張するべきでしょう。

 「『憲法は後にしたってよろしい』と言うくらいのつもりです。経済界としては、このような経済、社会保障、財政の状況にある時期ですから、まさに『経済最優先』の主張を強く発信するところだと思います」という経団連会長の発言は、改憲最優先で暴走を加速しようとしている安倍首相に対する強力なブレーキになる可能性を秘めています。この点に限って言えば、立憲野党との共同も可能かもしれません。
 日本の経済と社会が深刻な危機状況に陥っているのに、相も変わらず「壊憲」に精力を費やそうとしている安倍首相の暴走振りが、経済界までも「『憲法は後にしたってよろしい』とも言うくらいのつもり」にしてしまったということでしょう。「財界総理」と目される経団連会長からこのように言われたとき、「政界総理」である安倍首相はどう答えるのでしょうか。


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