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2月1日(金) スポーツ界の体罰は「パワハラ社会」の氷山の一角にすぎないのではないか [文化・スポーツ]

 スポーツ界の体罰問題が大きな注目を集めています。「選手を強化するための“愛の鞭”だ」などと弁護する人もいますが、とんでもありません。

 スポーツの場や教育の場はもとより、職場や国際政治を含めて、どのようなところであっても、「力」によって問題を解決するようなやり方は間違っています。ところが、この社会では、目的さえ正しければ多少の暴力や暴言などの「力」の行使は許されるとの容認論が広く行き渡っています。
 日本は、このような「力」を正当化し、それが広く行使されている「パワハラ(パワーハラスメント)社会」なのです。スポーツ界での体罰は、そのようなパワハラ社会である日本の歪みを明るみに出した氷山の一角にすぎないのではないでしょうか。

 この問題は、当初、大阪市立桜宮高校のバスケットボール部の監督による体罰が発端になりました。体罰を受けたキャプテンがそれを苦にして自殺したからです。
 これに対して、橋下大阪市長は「体育系2科の入試を中止しなければ、関連予算を支出しない」と表明し、問題は新たな展開を示します。教育委員会は、体育科とスポーツ健康科学科の入試をとりやめるけれども、普通科として入試をして同じ試験科目で受験できるようにするという折衷案での決着を図りました。
 しかし、このような橋本市長のやり方も、予算の支出権限という「力」を背景にして責任を転化する誤った方法だというべきでしょう。それまで体罰を肯定していた自らの間違いを糊塗するために、ことさら厳しい対応を取ろうとして何の責任もない受験生に大きな被害を及ぼすことになってしまったからです。

 その後も、このような体罰は、次々と明るみに出てきています。桜宮高校では、これまでに体罰が判明したバスケ部、バレー部の他にも、複数の部や授業でも体罰 が行われていたとみられています。
 また、他の高校でも、体罰が横行していたようです。高校駅伝の強豪、愛知県立豊川工業高校の陸上部の監督を務める男性教諭が部員に体罰を繰り返していたことも明らかになりました。
 さらに最近では、全日本柔道連盟(全柔連)が園田隆二女子代表監督らによる選手への暴力行為を認めて謝罪しました。これは桜宮高校の問題が発生する前である昨年12月、日本オリンピック委員会(JOC)にロンドン五輪代表を含む選手15人の連名による告発文が届いて明るみに出ました。

 この最後の例は五輪などで勝利を目指す代表選手の強化で、学校教育における体罰問題と同列に論じるわけにはいかないという意見があります。しかし、これも「力」による指導であり、指導される側からは「告発」に値する理不尽な方法と受け取られていました。
 そこには、納得もなければ信頼感もありません。それで、指導が行き届き、選手が強化されるのでしょうか。
 この告発を受けたJOCはきちんとした調査もせずに全日本柔道連盟に「丸投げ」し、全柔連もきちんとした対応をすることなく、園田監督を代表監督に留任させたまま戒告処分とすることでお茶を濁そうとしました。しかし、その後も批判は止まず、結局、園田監督は辞意を表明することになりました。

 JOCも全柔連も、連名で告発した15人の強化選手の悩みや思いを全く理解せず、当事者意識もなく、責任を持って解決に当たる能力もありませんでした。ただ、事なかれ主義で事態を丸く収めようとしただけだったように思われます。
 体罰のような暴力による指導は高校だけではなく、またバスケットボールや柔道だけではありません。暴力を伴う「力」による指導は会社内や職場にもあり、言葉の暴力とも言えるパワーハラスメント(パワハラ)は、日本企業の職場内でも大きな問題になっています。
 13万人に上るとされている「電機リストラ」や、「追い出し部屋」への隔離によって自己都合退職に追い込むやり方も、ある種の暴力でありパワハラであると言えるでしょう。このような職場における暴力やパワハラも、断じて許されません。

 ところが、このような体罰を暴力ではないとして擁護する意見もあります。たとえば、「子どもには『体罰を受ける権利』があります」という「体罰の会」http://taibatsu.com/index.htmlは、次のように「体罰」を肯定し、擁護する主張を行っています。

 「体罰とは、進歩を目的とした有形力の行使です。体罰は教育です。それは、礼儀作法を身につけさせるための躾や、技芸、武術、学問を向上させて心身を鍛錬することなどと同様に、教育上の進歩を実現するにおいて必要不可欠なものなのです。
  一方、あたりまえのこととして、暴力は許されません。自己の利益、不満解消(鬱憤晴らし)、虐待を目的として人(弱者)に対して有形力の行使をして傷つける行為は、家庭内であれ、学校内であれ、社会内であれ決して許されません。それは、その人間の考えの間違い、心の弱さ、過度の精神的な疲労(人間力の劣化)などが原因となっています。しかし、このような進歩を目的としない「暴力」と、進歩を目的とする「体罰」とは根本的に異なります。」

 この会の会長は、外交官の加瀬俊一氏の子息で外交評論家の加瀬英明さんです。加瀬さんは日本躾の会評議員で、日本・イスラエル親善協会副会長、日本会議代表委員、新しい歴史教科書をつくる会の賛同者でもあり、歴史教科書問題に深くコミットしている人物です。
 また、顧問兼支部長には、戸塚ヨットクールの戸塚宏校長の名前があります。発起人名簿には浅田均という人も掲載されていますが、この名前は「日本維新の会」政策担当で政調会長の浅田均さんと同じです。
 別人なのでしょうか。それとも同一人物なのでしょうか。橋下さんは、きちんとした説明をする責任があるでしょう。

 私たちが住むこの社会は、人間で構成されています。「話せば分かる」はずの社会に、体罰などの「力」による強制や指導は不必要であり、逆効果になるだけです。
 スポーツの指導や教育の現場などで「力」に頼ってしまうというのは、手っ取り早く教えたい、問題を解決したいという誘惑に屈服することを意味しています。時間がかかる迂遠なやり方ではあっても、きちんと説明し説得して、相手の納得を得ながらものごとを進めるというのが、民主主義の方法でしょう。
 スポーツや教育、職場や国際社会など、どこであっても「力」に頼ることはもう止めるべきです。私たちの社会は、指導や教育、紛争や問題の解決に暴力を用いず、それに代えてルールや納得が通用する「人間らしい」平和な世の中とするための努力を、永年にわたって積み重ねてきたのですから……。

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