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12月20日(木) 小選挙区制にこのような害悪があることはとっくの昔から分かっていた [選挙制度]

 今回の総選挙の結果を見て、小選挙区制というのはこんなにひどい制度だったのかと、改めて驚いた人は多かったことと思います。しかし、小選挙区制が今回明らかになったような弊害や問題点を数多く持っていること、民主主義に反する制度であること、したがって選挙制度としては最悪のものであるということは、ずっと前から分かっていたことです。

 たとえば、私は政治改革が問題となり、選挙制度を中選挙区制から小選挙区制と比例代表制を並立させた制度に変えようとした約20年前、『一目でわかる小選挙区比例代表並立制-新しい選挙制度であなたの一票はどうなる』(労働旬報社、1993年)という本を書きました。この拙著で、小選挙区瀬の問題点を列挙して、次のように主張しています。

 ……議会への民意の正確な反映は、憲法で保障された国民主権を具体化する上での基本的な条件です。それは、他のあれこれの問題と同列に論じられるようなものではないはずです。中選挙区制の「制度疲労」を言い、それに代えて小選挙区制を含む選挙制度を導入しようとする人びとは、この一番肝心なところに口をつぐんでいます。マスコミも、なぜか、ふれようとしません。
 民意に基づく政治が民主政治ということであれば、民意をゆがめ、無視するような制度は、民主政治における制度として、基本的な必要条件を欠いているということになります、たとえば、政権交代があったとして、それが民意をゆがめたり逆転させたりした結果であれば、このような政権交代もまた、民主的なものではないということになります。(209頁)

 また、初めてこの小選挙区比例代表並立制で行われた1996年10月の総選挙の直後、『徹底検証 政治改革神話』(労働旬報社、1997年)という拙著でも、「選挙の実際を見聞きして、『これではいけない。こんな選挙はできるだけ早く終わりにしなければ』という危機感を強く抱いたことを、正直に告白しなければなりません」として、次のように指摘しました。

 ……これほど「欠陥が浮き彫り」になった選挙も珍しいといえましょう。……一度実際にやってみて、これだけ害悪がはっきり出たのですから、「悪かったら直せばよい」と言っていた人は、「柔軟な発想」で、「欠陥が浮き彫りになったから、また手直しをする。制度とはそういうものだ。小選挙区制をやめなさい」と、先頭に立って論陣をはってもらいたいと思います。(124~125頁)

 さらに、「民意を反映しない小選挙区制はワースト制度―早急に改めるべきである」『日本の論点2011』文藝春秋社(2010年11月)という拙稿でも、次のように書きました。

 選挙の基本は、議会に民意の縮図を作ることである。そのような民意に基づいて政権を構成し、政治運営を行うことこそ、議院内閣制の本旨である。政治主導を言うのであれば、まず、「国権の最高機関」である国会と民意との距離を可能な限り縮めることから始めるべきだろう。比例代表定数の削減など、とんでもない。このような逆立ちした改革案は、国会の議席分布と民意との乖離を更に広げ、政治の閉塞状況を強めるだけである。
 国会を民意の縮図とするためには、民意を反映しない小選挙区制を改め、世界の先進国の多くと同様に比例代表制的な選挙制度に変えなければならない。そうすれば、選挙区定数(「一票の価値」)の不平等という難問もまた、たちどころに解決されるにちがいない。

 今年になってからも、「選挙制度改革をめぐる動き」『法と民主主義』2012年5月号(No.468)という拙稿で、次のように書いています。

 ……選挙とは、国会や議会でものごとを決める人を選ぶことだから、選挙にとって一番大切なのは民意をそのまま議会に反映させることであり、民意の縮図を作ることである。
 ところが、「政治改革」によって小選挙区制が導入され、選挙によって民意を集約しようとした。そのために、少数意見は選挙の過程で切り捨てられてしまい、議会には歪んだ民意しか出てこなくなった。民主党政権であれ自民党政権であれ、民意が反映されず、政治が国民の願いから乖離してしまう最大の原因はここにある。
 あらためて小選挙区制の害悪をあげれば、①大量の「死票」が出ることのほか、②「二大政党化」による小政党の排除、③理念・政策に基づかない「選挙互助会」的政党(民主党)の登場、④選挙での選択肢の減少、⑤風向きによる短期間での多数政党の交代、⑥大連立や翼賛化への誘惑と連立・連携の困難というジレンマなどがある。主要政党が二つであるため、政権の交代が政権の「キャッチボール」にしかならないという不毛性、政治の劣化と閉塞性は、まさにこのような小選挙区制の害悪から生じている。

 5月23日には、衆院政治倫理の確立・公職選挙法改正特別委員会に参考人として呼ばれ、国会でもこう陳述しました。

 小選挙区制は最悪の選挙制度であり、ぜひ廃止してもらいたい。
 小選挙区の制度的欠陥は第1に、多数と少数が逆転するからくりが仕組まれていることです。イギリスでは1951年と1974年の二度、総得票数と議席数が逆転しています。民主主義を口にするなら認めてはなりません。
 第2は、少数(の得票)が多数(の議席)に読み替えられるという問題です。2009年総選挙で、民主党は47%の得票率で74%の議席を得ています。
 第3に、多くの死票が出て選挙結果に生かされません。09年総選挙では、46%が死票になっています。
 第4に、「過剰勝利」と「過剰敗北」によって選挙の結果が激変します。
 第5に、政党規模に対して中立ではなく、小政党に不利になります。このように、小選挙区制は人為的に民意を歪める根本的な欠陥をもっています。
 実際にどのような問題が生じてきたか。政権の選択肢が事実上、2つしか存在しません。小選挙区で当選するための「選挙互助会」的な政党ができました。「風向き」によって短期間で多数政党が交代します。二大政党の間の有権者を奪い合うために相互の政策が似通ってくる。地域や民意とも離れ、議員の質も低下しています。
 ……
 比例定数の削減案も出ていますが、日本の国会議員は国際的に見ても多くない。現在より少なくするのは反対です。身を切る改革と言われているが実際は民意を切る改悪です。比例定数の削減は小選挙区の比率を高め、問題点や害悪を増大させるだけでしょう。

 今回の総選挙が始まってからも、このような問題が生じるであろうとことは明白でした。12月14日のブログ「今回の総選挙でも明らかになりつつある小選挙区制の害悪」で、私はこう書いています。

 総選挙の最終盤でも、自民党の好調さが伝えられています。このまま行けば、自民党は衆院でV字回復することになるでしょう。
 ……
 今回の選挙では、このような多数の政党が候補者を擁立する小選挙区が沢山あります。そこで、公明党のアシストを受けた自民党が評判の悪い民主党より相対的に多数の得票をすれば、当選できるということになります。
 このようにして、中小の政党に投じられた票は無駄にされるでしょう。今回の選挙では、今まで以上に「死票」が多く出ると予想されています。
 「死票」とは、議席に結びつかない票であり、議員を通じて国会に代表されることのない民意です。制度によって「殺されて」しまう民意であると言っても良いでしょう。
 このような状態を、いつまで続けるつもりなのでしょうか。これでは、せっかく選挙をやりながら、民意をドブに捨てているようなものではありませんか。
 たとえ、それが議席に結びついた場合でも、大きな問題があります。相対的に多数であるにすぎない得票を絶対的な多数に読み替え、有権者の意思を大きく歪めてしまうからです。
 民主党に嘘をつかれ裏切られて、懲らしめたいと軽い気持ちで自民党に投じられた票が、いつの間にか膨らんで巨大な議席を与えることになってしまいます。そうなってから、「そんなつもりではなかったのに」と慌ててみても、もう遅いのです。

 このように、小選挙区制の害悪を指摘し続けてきた私からすれば、「(得票数を)減らしたのに、(議席数を)増やした」という手品のようなとんでもない結果が生じても、何ら驚くには当たりません。「それ、見たことか」と言いたい気持ちでいっぱいです。
 しかし、本当は、このような予測が当たらなければ良かったのです。小選挙区制が導入されるときに主張されたメリットが全くの期待はずれで、懸念された弊害が増幅された形で明瞭になってしまったのは、日本政治の不幸であり、ひいては日本国民の不幸だからです。
 とはいえ、このような弊害が多くの国民の知るところとなった現在こそ、重要なチャンスが訪れたということもできます。この機会に選挙制度の抜本的な改革を行って小選挙区制を廃止すれば、このような日本政治と国民の不幸から抜け出すことができるかもしれないのですから……。

 この機会を逃すべきではありません。民意を大きく歪め、大量の「死票」を生んで民意を殺すような制度を廃止し、日本の政治に民主主義を取り戻すことこそ、新政権が取り組むべき最優先の課題ではないでしょうか。

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