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11月30日(水) 「陸の森」に押し切られてしまった五輪ボート会場の「海の森」案 [文化・スポーツ]

 このままでは「大山鳴動して鼠ゼロ匹」ということになりかねません。東京オリンピック・パラリンピック会場の見直し問題です。
 さまざまな案が議論されてきた東京オリンピック・パラリンピックの会場見直し問題で昨日、IOC(国際オリンピック委員会)のコーツ副会長、東京都の小池知事、組織委員会の森会長、そして丸川オリンピック・パラリンピック担当相による4人のトップ会談が開かれ、都の調査チームが見直しを求めた3会場のうち、ボート・カヌー会場の海の森水上競技場、水泳会場のアクアティクスセンター(東京都江東区)の二つは、費用を見直したうえで予定通り造ると決めました。費用が掛かりボート競技の関係者からも評判が悪かった「海の森」案ですが、組織委員会の会長である「陸の森(元首相)」によって押し切られてしまったわけです。

 残されたバレーボール会場については、クリスマスの頃までに決着させるということのようです。どのような「プレゼント」が用意されているのか注目されます。
 小池知事にしてみれば、都知事選挙での公約でもありますから「ゼロ回答」というわけにはいかないでしょう。「せめて一つくらいは」ということで抵抗しているのではないでしょうか。
 しかし、有明アリーナが横浜アリーナに代わっても「大山鳴動して鼠一匹」にすぎません。組織委員会の森会長だけではなく、競技団体やオリンピック委員会も代替案には消極的であり、小池知事の思惑通りに見直されるとは限りません。

 そもそもオリンピックの開催など、日本の財政状況から言って無理だったのではないでしょうか。東日本大震災からの復興は遅れ、その後も熊本地震や鳥取地震、東北北海道などでの大雨被害などへの災害対策によって、すでに今でも建設資材は高騰し、人手不足が深刻になっています。
 2兆円を上限にした場合でも、半分は都民の負担になると言われています。それは現時点での試算ですから、さらに費用が増えて負担が増す可能性は大きいでしょう。
 トンデモナイ「金食い虫」を連れて来てしまったものです。かと言って招致プランを大きく変更すれば、「招致詐欺」だとして世界中から批判を浴び、顰蹙を買うにちがいありません。

 1964年の東京オリンピックは、日本の近代化と高度成長のきっかけになったと評価されています。しかし、2020年の東京オリンピックは、財政危機と国民負担の増大によって日本の没落と衰退を促進する契機になってしまうかもしれません。
 すでに、主会場の国立競技場やエンブレムの問題などでゴタゴタが続いてきました。今もなお会場問題は決着せず、他の会場の建設費などの見直しにまで手が回らないという状況です。
 今後も様々な問題が起きるのではないかと心配されています。外国からテロリストが入り込むリスクも高まるでしょうし、開催時期が夏真っ盛りですから高温多湿に不慣れな外国人アスリートや観戦者がバタバタと倒れるのではないかという心配もあります。

 それに加えて、安倍首相が招致演説で行った「放射能による汚染は完全にコントロールされている」という大ウソがあります。福島第1原発の現状はコントロールされていないだけでなく、今後も新たな原発事故が起きるのではないかとの懸念はぬぐい切れません。
 国民がこぞって歓迎し、外国から安心して観戦に来られるような状況になっていないという点に、2020年東京オリンピック・パラリンピックの大きな不幸があります。今からでも開催を返上したらどうかと思いますが、それはもう無理なのでしょうか。

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11月24日(木) 無残というしかない安倍外交における破産の数々 [国際]

 外交というのも恥ずかしいほどの破産ぶりです。安倍首相が行ってきた対外政策のことごとくが失敗してしまいました。
 安倍暴走政治の破産の始まりです。その責任を、安倍首相はどのように取るのでしょうか。

 昨日の朝日新聞の一面には、「TPP発効不可能に トランプ氏『就任日に離脱』」という大きな見出しが出ていました。今日の新聞には、オバマ大統領もTPPの任期中の議会承認を断念する考えを正式表明という記事が出ています。
 もう、終わりです。現行のTPPは発効が不可能となり、「TPPを成長戦略の柱としてきた安倍政権は根本的な戦略の見直しを迫られそうだ」と、新聞は伝えていました。
 それなのに、参院ではまだTPP承認案権についての審議を続け、そのために国会の会期延長まで画策されているそうです。何という往生際の悪さでしょうか。安倍首相の意地と見栄のために、国会審議の時間と費用を無駄遣いするようなことは直ちにやめるべきです。

 昨日の新聞には、ベトナム国会が日本からの原発輸入を撤回する案を可決したという記事も掲載されています。これも原発の輸出を成長戦略の一環に置付けて推進してきた安倍外交の失敗にほかなりません。
 成長戦略の一環としては、軍事技術の輸出も進められてきました。その輸出先として有望視されていたオーストラリアへの潜水艦技術の売り込みにも失敗しています。
 原発技術や軍事技術の輸出を成長戦略の柱と位置付けるようなことはやめるべきだとの批判があるにもかかわらず、安倍政権はそれを無視し強行してきました。それらがいずれも挫折したということになります。

 外交的な失敗ということで言えば、国連総会第1委員会での「核兵器禁止条約」の交渉を来年開くとした決議に米露など核保有国とともに反対したことも大問題でした。唯一の戦争被爆国である日本こそ、その先頭に立たなければならないはずなのにまったく逆の態度を取ったことになるからです。
 また、TPP条約の批准を優先したために地球温暖化対策の新枠組み「パリ協定」の批准が遅れたという失敗もあります。結局、第1回締約国会合には間に合わず、日本は決定に異議の申し立てができないオブザーバーとして参加することになりました。
 どちらも、アメリカの顔色を窺った結果の失敗です。日本独自の外交政策を展開する自主定な判断能力を持たない安倍政権だからこそ、このような迷走を繰り返すことになってしまいました。

 さらに、日露関係をめぐる問題もあります。12月の首脳会談に向けて領土問題で大きな進展があるのではないかとの観測は幻に終わりそうです。
 安倍首相は日露間の経済協力の拡大をテコに領土問題を打開し、それを成果として解散・総選挙に打って出るのではないかと見られていました。しかし、この戦略にも狂いが生じているようです。
 プーチン大統領は領土問題で日本に譲歩する意志はないようで、経済協力だけを「食い逃げ」するかもしれないからです。これも、安倍外交の失敗となる可能性が強まっています。

 中国韓国、北朝鮮など周辺諸国との間でも、関係改善に向けての展望は開けていません。まさに、八方ふさがりと言っても良い状況です。
 「朝貢外交」よろしく慌ててトランプ詣でを行い、54万円のゴルフクラブを送って媚びを売り、「信頼できる指導者だ」と請合ってトランプのマジックを手伝うことで世界中に恥をさらした安倍首相です。このような外交破産のオンパレードもむべなるかなというところでしょうか。

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11月20日(日) トランプ当選による容易ならざる事態を打開するために何が必要か [国際]

 アメリカトランプ大統領候補の当選について様々な論評がなされています。今後の行く末についても、楽観論と悲観論の両方があります。
 日本に対する政策やその影響についても、様々な憶測が流れていました。これらの観測や憶測に対して、新政権の陣容が整うにつれて次第に回答が明らかになりつつあります。

 トランプ当選を生み出した力は、第1に、グローバル化や新自由主義によって生み出された貧困化と格差の拡大に対する白人労働者を中心とする不満の増大であり、第2に、対立候補であったクリントンさんの不人気とオバマ前大統領の「チェンジ詐欺」に騙された人々によるオバマ後継候補に対する反発であり、第3に、選挙人を選ぶという間接選挙の制度的不備でした。これらが重なりあって、トランプの「ババ抜き」でジョーカーを引くような結果を生み出してしまったのではないでしょうか。
 トランプさんは当選後、「すべての国民のための大統領になる」と宣言して過激な言動を抑制し、融和を口して柔軟姿勢を示しました。そのために、「それほど極端なことはやらないのではないか」という希望的な観測や楽観論が広まりましたが、これは新政権の陣容によって裏切られる結果となっています。
 今日の『朝日新聞』で「現実的路線や議会との調和を演出しつつ、自身がこだわる政策では譲らないという思いが透けて見える」「今回の人事は、移民問題やテロ対策などの看板政策では、たとえ批判を受けようとも、自身の考えに近い布陣で実現に向けて突き進むという姿勢を示しているかのようだ」と評されているように、閣僚人事は人種差別主義者や右派・タカ派の強硬論者のオン・パレードとなりつつあります。この陣容を見れば、トランプ新大統領は選挙戦で語っていた過激な政策を変更するつもりがないこと、その主要な政策を実行するつもりであることが分かります。

 このような危険な本質を見誤り世界中に恥をさらしてしまったのが、日本の安倍首相です。トランプ当選に慌てて、御機嫌うかがいのためにニューヨークに飛んでいったからです。
 そして、安倍首相はトランプさんにコロッと騙されてしまいました。会見後、安倍首相はトランプさんが「信頼できる指導者だということが分かった」と述べましたが、信頼できない指導者である安倍さんにそう言われたからといって、信頼できるわけがありません。
 トランプさんを世界中に売り込んで不安を払しょくするために、安倍首相は使われてしまったようです。トランプの「手品」の「サクラ」として、うまく利用されたというところでしょうか。

 トランプ当選による悪影響は、すでに具体的な現実として姿を現しています。アメリカ国内では抗議デモやマイノリティに対する差別的言動が繰り返されているからです。
 当選後、融和を口にしたトランプさんですが、このような分断の動きに対してまったく対応しようとしていません。それどころか、新政権の中枢に差別主義者を起用して、このような分断を拡大する危険性を生み出しています。
 このような新政府の陣容からすれば、日本に対しても厳しい注文が寄せられる可能性があります。トランプの「手品」に魅せられ取り込まれてしまった安倍首相は、これにきちんと対応できるのでしょうか。

 日本では先の参院選で、衆参両院で改憲勢力が3分の2を越え、安倍首相の任期延長も決まりました。海の向こうでは、トランプ新大統領が日本に対してこれまでとは全く異なったアプローチを行う可能性が強まっています。
 日米両国で、容易ならざる情勢が生じたということになります。今後の推移を注視する必要があるだけでなく、このような危機をどう打開し、どのように抜け出すかが問われなければなりません。
 そのために何ができるでしょうか。どうする必要があるのでしょうか。

 私たちにできることは、トランプ新大統領の忠実なしもべとして取り込まれてしまった安倍首相の退陣に向けて、衆院選への取り組みを本格化させることです。衆院選で政権交代を実現することが最善ですが、少なくとも与党を大敗させれば安倍首相は政治責任を問われ、退陣に追い込まれる可能性が生まれます。
 そのためには、自民党が恐れている野党共闘を推進し、小選挙区での候補一本化を実現することです。ことここに及んでも共産党との共闘に消極的な姿勢を示している民進党の蓮舫代表は、そのような「贅沢」を言っていられるような場合ではないこと、それは許されざる利敵行為にほかならないということを自覚しなければなりません。

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11月18日(金) 再開された憲法審査会で明らかになった改憲をめぐる意見分布の構図と問題点 [憲法]

 参院憲法審査会は16日、今年2月に中断され開店休業状態になって以来、9カ月ぶりに審議を再開しました。翌17日、衆院憲法審査会も1年5カ月ぶりに実質的議論を再開しています。
 いよいよ、「3分の2国会」において改憲に向けての具体的な動きが始まったことになります。ここで注目されるのは、改憲をめぐる意見分布の構図と問題点が明らかになり、改憲をめぐっては与野党間に大きな違いがあるだけでなく「改憲勢力」とされている政党などにも無視できない違いがあるということです。

 第1に、改憲については党内がまとまっていないとされる民進党です。参院で白真勲さんは「現行憲法を正しく評価し、守ることが今、求められている」と表明し、衆院で武正公一さんは、権力を制限し、個人の自由を守る「近代立憲主義」の認識を衆参憲法審で共有することが「3分の2以上の発議の大前提」として、自民党の改憲草案に関し「個人よりも国家が前面に出ている。近代立憲主義の共通の土俵に立てるのか」と懸念を示しました。
 当面、安倍政権による改憲に反対する立場であることは明らかです。共産党や社民党、自由党とも共通するもので、憲法問題でも野党4党が共通の立場で共闘できることがはっきりしました。
 これは今後の野党共闘にとって極めて重要な意味をもちます。衆院選に向けての共通政策を作成するうえで、共通の憲法観は前提条件になるものですから。

 第2に、「改憲勢力」とされている政党などの間でも違いが明らかになっています。とりわけ公明党は、参院で西田実仁さんは「決して一方的な押し付けではない」と述べ、衆院でも北側一雄さんは憲法を「国民に広く浸透し支持されてきた」と評価し、必要な条文を加える「加憲」がふさわしいとするなど、自民党との憲法観の違いを鮮明にしました。
 公明党は、以前から憲法の3大原理を守ることを主張しています。また、9条改憲についても反対するなど、自民党との違いを明らかにしていました。
 このような違いは、今後の憲法審議では大きな意味を持つ可能性があります。しかし、集団的自衛権の行使容認でも「認められない」としていた当初の立場を覆して「部分的容認」に道を開いた「前科」がありますので、途中で腰砕けになって裏切る可能性も皆無とは言えません。

 第3に、「押し付け憲法論」や「9条改憲論」などについても、違いが明らかになっています。「押し付け憲法論」については日本のこころを大切にする党以外は特に主張せず、「9条改憲論」についても自民党以外で明言した政党はありませんでした。
 自民党でも、中谷さんや船田さんなどはこのような主張を抑制していたように見えます。しかし、個々の自民党議員の発言となると事情は別で、東京新聞は「本紙の集計では、2日間で計6人(衆院2人、参院4人)の自民党議員が9条改憲を訴えた」と報じています(18日付)。
 このような違いが生じたのは、9条改憲についての意見の違いというより任務分担ではないかと思われます。幹部は野党との合意を優先して改憲論議の本格化を狙い、個々の議員は右派的な支持者の反発を招かないように「本音」を主張するという形で役割を分担したのでしょう。

 衆院の憲法審査会で自民党を代表して意見表明した中谷元さんは、制定後70年を経た憲法と社会の間に「ずれが生じている」と指摘し、国民主権などの基本原理を維持した上で改正する必要性を論じました。しかし、この「ずれ」を生じさせたのは、ほかでもない長年にわたる自民党政権による「反憲法政治」の結果ではありませんか。
 憲法9条の理念に反して自衛隊を創設して増強させ、憲法との「ずれ」を意識的に拡大しておきながら、その「現実」を振りかざして今度は憲法の方を変えようというわけですから「盗人猛々しいにもほどがある」と言うべきでしょう。変えるべきは憲法ではなく、すでに世界有数の軍事力を保持し安保法によっていつでも海外に派遣可能な「外征軍」となりつつある自衛隊の方ではないでしょうか。
 同時に、「国民主権などの基本原理を維持した上で改正する」と言明した点は重要です。憲法の3大原理を壊すような「壊憲」ではないと明言したわけですから、この3大原理の破壊を主張していた長瀬元法相を処分し、自民党改憲草案を撤回するべきでしょう。

 また、中谷さんが「改正ありきではなく、改正の必要性が指摘されている項目について、改正の要否という観点から議論を深めていくべきだ」と述べた点も重要です。こういわざるを得なくなったのは、「改憲が自己目的化しているのではないか」という批判を考慮したからでしょう。
 「改正ありきではなく」というのであれば、今なぜ改正が必要なのか、国民はそれを求めているのか、求めているのは安倍首相など一部の自民党議員などにすぎないのではないのか、などについても「審査」していただきたいものです。
 さらに、国民のどれだけ多くが現行憲法に不都合を感じているのか、安保法の制定は憲法に反し立憲主義を破壊するものではないのか、憲法の理念や条文がどれほど現実の政治に活かされ実現しているのか、アベノミクスが破たんして国民生活の危機が高まっている今日、改憲に多くの政治的エネルギーを費やす必要があるのか、このようなことを行っている場合なのか、政治にはもっと優先して取り組むべき課題があるのではないのか、などの点についてもきちんとした「審査」をお願いしたいものです

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11月16日(水) 「駆けつけ警護」が必要なほど危険な場所からは撤退するべきだ [自衛隊]

 いよいよ、日本の若者が血を流すことになる危険性が高まっています。集団的自衛権の行使容認を強行した安倍首相にとっては、それが目的だったのかもしれません。
 安倍首相は『この国を守る決意』という本の中で、日本の若者も血を流すことによって日米が初めて対等になると語り、自民党の石破茂幹事長(当時)もNHKの番組で集団的自衛権について、「アメリカの若者が血を流しているのに、日本の若者が血を流さなくていいのか?」というような発言をしていたのですから。

 昨日、安倍内閣は南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣する陸上自衛隊の部隊に、安保法に基づく新任務である「駆けつけ警護」や「宿営地の共同防護」を付与することなどを盛り込んだ実施計画を閣議決定しました。安保法に基づいて海外での自衛隊の任務が拡大されるのは初めてのことです。
 この閣議決定に合わせて「新任務付与に関する基本的な考え方」も発表されました。そこでは、施設部隊の自衛隊は「治安維持は任務ではない」とし、「他国の軍人を駆けつけ警護することは想定されない」と明記され、自衛隊の出動は「他に対応できる国連部隊が存在しないといった、極めて限定的な場面で緊急の要請を受けた、応急的かつ一時的な措置」だと明示されています。
 このような限定の多さから、「駆けつけ警護が必要になる場面はほとんどない」とされていますが、それなら何故、このような新たな任務を付与するのでしょうか。安倍首相は「有意義な活動が困難だと判断する場合は、撤収を躊躇することはない」と強調していますが、すでに今でも「有意義な活動が困難」になっているのではないでしょうか。

 安保法が制定されたことによって付け加えられた新たな任務ですから、これまで以上に自衛隊の活動領域が拡大されることになります。それに伴って、危険性が増すことは誰の目にも明らかでしょう。
 そもそも自衛隊が駆けつけて警護しなければならないということは、襲われる危険性があるからではありませんか。宿営地を共同で防護しなければならないということは、宿営地に対する攻撃が予想されるからではありませんか。
 このような危険性が生じているのは、すでに停戦合意が崩壊して内戦状態になっているからです。いつ襲撃され、戦闘になるかわからないところで、どうして「道路補修」のための部隊を派遣しなければならないのでしょうか。

 しかも、南スーダンは日本からはるか遠くに離れたアフリカの地にあります。集団的自衛による日本の安全保障とどのような関係にあるのか、まったく理解できません。
 どうしてこのような所に、自衛のための部隊を派遣する必要性があるのでしょうか。武力衝突は大統領派と副大統領派の間で生じていますから、政府は崩壊状態でPKO部隊は政府軍に狙われる可能性があるというのですから話になりません。
 派遣される自衛隊員にとっては、いつ戦闘に巻き込まれるかわからない状況の下で命の危険にさらされながら理解不能な任務の遂行を強いられることになります。このような無意味な派遣は直ちに中止し、今すぐに撤収を開始するべきです。

 7月に大規模な戦闘があって300人近くの死者が出たにもかかわらず、安倍首相は「衝突であって戦闘ではない」として、首都ジュバは安定していると強弁しています。もし今後、再び戦闘が発生して現地の自衛隊員に死傷者が出た時、安倍首相は責任を取れるのでしょうか。その覚悟があるのでしょうか。

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11月12日(土) 米大統領選挙で負けているのに勝ってしまったトランプ候補 [国際]

 アメリカ大統領選挙の衝撃は、その後も世界を震撼させているようです。株式市場での「トランプ・ショック」はそれほどでもなかったようですが、国際政治に対する衝撃は今も続いています。

 このような結果に直面して、「あのような差別的で過激な発言を繰り返していたトランプ候補が、何故大統領に当選できたのか」という疑問が沸いてきます。様々な形で、その背景や原因が論じられていますが、ここで重要な事実を忘れてはなりません。
 それは、今回の大統領選挙でトランプ候補の票がクリントン候補の票よりも少なったという事実です。米東部標準時で10日午前8時現在、有権者投票者数ではクリントン候補が59,814,018票、トランプ候補が59,611,678票となり、クリントン候補が過半数を取得したことが明らかとなりました。それでもトランプ勝利となったのは選挙人の数が上回ったからで、それは間接選挙という制度に助けられた勝利だったのです。
 このような得票総数と選挙人の数の逆転はこれまで4回もあり、私がハーバード大学の客員研究員としてアメリカに渡った2000年の大統領選挙でも目撃しました。このような逆転は小選挙区制などの間接選挙では避けられない問題点であり、だからこそ比例代表制や直接選挙にすべきだという議論が生ずるわけです。

 つまり、アメリカ国民はトランプではなくクリントンを選んでいたのです。今回の選挙で国民の分断が進み、最左派のサンダース支持層、中道左派のクリントン支持層、共和党の主流派、そしてグローバル化の進展のあおりを食って没落しつつある白人労働者などを中心にしたトランプ支持層の4つの階層に分かれたと言われています。
 このうち多数派は、サンダース支持層の一部を惹きつけたと言われるトランプ支持層ではなくクリントン支持層でした。アメリカ国民における多数派が実はリベラルな人々であったという事実は、これからのトランプ新大統領の方針や政策を大きく制約する要因となるにちがいありません。
 この事実をトランプ氏自身も自覚しているようです。選挙中の差別的で過激な発言は影を潜め、意外に常識的で穏健な態度に終始しているからです。

 このような「猫をかぶった姿」を見て、「意外とまともじゃないか」と胸をなでおろした人も多かったことでしょう。株式市場で「トランプ・ショック」がⅤ字回復したことに、このような安ど感が如実に示されています。
 しかし、このような豹変は、新たな矛盾を引き起こすにちがいありません。選挙中の差別的で過激な発言や公約を信じて「虎」だと思って投票した支持者にとって、「猫」になってしまったトランプ氏は「裏切り者」にほかならないからです。
 これまでの政治を厳しく批判してきた発言や公約こそ、貧困化にさいなまれて現状打破を願い、既成政治に毒されていないと信じてその突破力に期待した白人労働者層を惹きつける原動力でした。当選2日後にオバマ大統領と会見して教えを乞い、「猫」をかぶって「まとも」になったトランプ氏はさっそく既成政治に取り込まれてしまったと失望を買い、選挙中の約束を反故にした裏切り者でペテン師だとの批判を免れないでしょう。

 クリントン氏を支持した多数派の目を恐れ、選挙中に生じた深い分断の修復を目指せば「裏切り者」となり、選挙中の発言や公約に忠実であろうとすると分断はさらに深まり、自らを支持しなかった多数派の「壁」にぶつかるかもしれません。トランプ氏は大きなジレンマに直面する可能性があります。
 白人労働者層などに蔓延した不満と現状打破への願いを追い風に、間接選挙という制度にも助けられて大統領の椅子を手に入れたトランプ氏ですが、前途は多難のようです。これからワシントンでめくるトランプには、果たしてどのようなカードが隠されているのでしょうか。

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11月9日(水) アメリカ大統領選挙でのトランプ当選をどう見るか [国際]

 驚天動地の結果となりました。アメリカの大統領選挙です。
 事前の予想を覆して、共和党のトランプ候補が当選しました。首相官邸で開票状況を見守っていた安倍首相は、頭を抱えていることでしょう。

 トランプ当選で大混乱に陥っているのは、日本政府だけではありません。外国為替市場と株式市場も同様です。
 トランプ大統領では世界経済の先行きが不透明になると警戒感が高まり、円買いが進みました。それに連動して日経平均株価も急落し、一時は下落幅が1000円を超えています。
 結局、この日の為替市場で円は102円代前半となり、株価の下げ幅は前日比で919円84銭安となっています。これからも、円高・株安の基調は続くでしょうから、外国為替や株式市場の関係者だけでなく、輸出産業の経営者なども頭を抱えていることでしょう。

 事前の予測を覆して、なぜトランプ候補が勝利できたのでしょうか。今回の大統領選挙は不人気者同士の争いで、より小さな悪の選択だと言われました。
 ということは、トランプ候補の方がクリントン候補よりもまだましだと見られたことになります。女性蔑視や過激な発言を繰り返していたトランプ候補への嫌悪感よりも、エリートとエスタブリッシュメントの代表で既成政治家の典型のようなクリントン候補への反感の方が大きかったということでしょうか。
 グローバル化が進む中で白人を中心とする中間層の没落による格差の拡大は激しいものでした。そのような状況を生み出したこれまでの政治に対する失望と、しがらみの無い突破力を持っているように見えたトランプ候補への期待が番狂わせを生み出した力になったのかもしれません。

 トランプ新大統領の登場は日本へも大きな影響を及ぼすものと見られます。現在審議中のTPPは空中分解するでしょうから、審議を続けることは無意味になります。
 アメリカ第1主義を掲げ、「世界の警察官であり続けることはできない」と明言していましたから、アジア重視の「リバランス政策」の転換は避けられず、中東やアジアから手を引くことになるでしょう。
 在日米軍基地については新たな費用負担を要求し、それが入れられなければ撤退すると言い出すかもしれません。さらなる分担要請が強まるかもしれませんが、他方で在日米軍の撤退など沖縄基地問題をめぐって新たな展開が生まれる可能性もあります。

 それにしても、選挙の力とは絶大なものです。イギリスのEU離脱といい、アメリカでのトランプ新大統領の誕生といい、いずれも一票の力が生み出した大変革でした。
 その結果への評価は様々でしょうが、このような結果が一票の積み重ねによって生み出されたことは間違いありません。一人一人の選択の積み重ねが予想を覆す巨大な変化を生み出したのです。
 それだけ、現状に対する不満と政治を変えたいという欲求が大きなものになっていたということでしょう。不満の高まりを政治変革の力とするための一票の役割を改めて再評価しなければなりません。

 いずれにしても、世界はこれまでの物差しが使えない未知の領域に入り込んだことだけは確実です。それが世界の平和と日本の安全、アベ暴走政治のストップに役立つように活用することが、これからの課題だということになります。

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11月6日(日) 参議院選挙後の情勢と国民運動の課題(その4) [論攷]

〔下記の論攷は、『建設労働のひろば』No.100、2016年10月号、に掲載されたものです。4回に分けてアップさせていただきます。〕

3、臨時国会に向けての課題

 *「3分の2国会」が始まった

 衆参両院で与党が3分の2を越えるという力関係の下で、臨時国会が始まりました。国会と自民党内での安倍首相による「一強多弱」状況の下での論戦が展開されることになります。安倍暴走政治の加速を阻んで、ストップさせることができるかどうかという正念場を迎えたことになります。
 この臨時国会は9月26日から11月30日までの66日間とされ、経済対策を盛り込んだ第2次補正予算案、TPP(環太平洋連携協定)承認案と関連法案の成立が最優先にされています。このほか、消費税率10%への引き上げを2017年4月から19年10月に再延期する法案、高年収の労働者の残業代が支払われなくなる労働基準法改正案(残業代ゼロ法案)の成立などが目指されています。
 一方、過去に3回廃案になった「共謀罪」の要件を変えて「テロ等組織犯罪準備罪」を新設する組織的犯罪処罰法改正案も提出が検討されていますた。これには与党内にも慎重論がありますので、反対運動を強めて阻止することは可能です。
 憲法改正をめぐっては、安倍晋三首相は「(衆参の)憲法審査会のなかで、静かな環境において議論を深めてもらいたい」との意向を示しており、両院の憲法審査会で与野党の合意形成を重視した審議が始まるものと見られています。
 さらに、社会保障の財源確保や負担増とサービスの切り下げ、配偶者控除の廃止と税制改革、沖縄の辺野古での新基地建設と高江でのヘリパッド建設の強行、原発再稼働など、問題は山積しています。稲田防衛相の「白紙領収書」による政治資金の不正受給など「政治とカネ」にかかわる疑惑もあります。
 そのようななかで、臨時国会でとりわけ大きな課題になると見られているのが、憲法改正論議と「働き方改革」の問題です。労働組合運動としても、この二つのテーマを重視して取り組みを強める必要があるでしょう。

 *「壊憲」阻止のための新たな戦略

 参院選の結果、憲法をめぐる状況が新たな「危険水域」に入ったこ とは明らかです。しかし、上手に船を「操舵」することができれば、無事にこの「危険水域」を抜けだすことができます。そのためにどのような戦略を立てるかがここでの問題であり、そこでキーワードになるのが「改憲」とは区別される「壊憲」です。
 「改憲」とは憲法の文章を書き変えることではありますが、憲法の原理や理念に抵触するものではなく、平和主義、国民主権、基本的人権の尊重という「憲法の三大原理」を前提とし、自由で民主的な平和国家という国の形を保ったうえでの条文の変更です。
 これに対して、「壊憲」は憲法の文章を変えるだけでなく原理や理念も変えてしまおうというもので、「憲法の三大原理」を破壊し自由で民主的な平和国家という国の形を変えてしまう条文の書き換えを意味しています。
 「改憲」と「壊憲」を分ける境界は、憲法の三大原理にあります。自由で民主的な平和国家としての現在の日本の国の形を変えてしまうような憲法条文の書き換えであるかどうかという点が最大の判断基準になります。
 臨時国会で憲法審査会が再開された場合、そこで「審査」されるべき焦点は改憲案が「改憲」か「壊憲」か、つまり憲法の三大原理を前提としたものであるか、現在の国の形を変えてしまわないかどうかということでなければなりません。このような判断基準からすれば、自民党の憲法草案は完全に失格です。それは「改憲」のたたき台にはなりません。撤回するか破棄することを審査会再開の前提とするべきでしょう。
 このような基準からすれば、与党の公明党はもちろん、いささか微妙ではありますが野党のおおさか維新の会も基本的には「改憲」勢力であって、「壊憲」勢力とは言えません。民進党内の「改憲」勢力も保守リベラルを含む自民党内の「改憲」志向の議員たちも、必ずしも「壊憲」をめざしているわけではないでしょう。
 真の「壊憲」勢力は「日本会議」と「美しい日本の憲法をつくる国民の会」に絞られます。これと同調する「日本のこころを大切にする党」や「日本会議国会議員懇談会」「日本会議地方議員連盟」に属する議員たちこそが真の敵であり、与党と自民党内にクサビを打ち込んでこれらの勢力を孤立させ打撃を集中することが新たな戦略の基本になります。

 *真の「働き方改革」に向けて

 臨時国会で急浮上しつつあるのが「働き方改革」の問題です。安倍首相が改造内閣の「最大のチャレンジ」だとして加藤勝信一億総活躍担当相を「働き方改革担当相」に任命し、「働き方改革実現会議」を開いて年度内をめどに実行計画をまとめるという方針を打ち出したからです。9月3日の記者会見では、長時間労働の是正、同一労働同一賃金の実現をあげ、「非正規」という言葉をこの国から一掃するとのべました。
 安倍首相を議長とする「働き方改革実現会議」に対する政府の対応方針は、図(省略)で示されている通りです。正規・非正規労働者間の賃金差を縮小する「同一労働同一賃金」の実現、長時間労働の是正、給付型奨学金の創設、外国人労働者の受け入れに向けた法制など、幅広い課題が検討されるようです。同一労働同一賃金と長時間労働是正については厚生労働省の検討会が議論を進めており、政府は両検討会の報告も踏まえて来年3月末までに具体案を盛り込んだ「働き方改革実行計画」を取りまとめ、順次関連法案を提出する方針だとされています。
 このような形で労働政策が重要な課題として取り上げられ、非正規雇用の処遇改善、賃金の引き上げ、長時間労働の是正などが本格的に取り組まれようとしていることは注目されます。このような動きが「働かされ方改革」ではなく、真の「働き方改革」となるための取り組みが求められることになるでしょう。
 これらの課題は、これまで労働側が要求して無視され放置されてきました。そのために、非正規化と雇用の劣悪化、賃金の低下とワーキングプア、長時間労働と健康被害や少子化など状況が悪化して多くの社会問題を生み出し、改善を求める声や運動も高まってきました。その結果、もはや無視できないまでに矛盾が高まり、改革に着手せざるを得なくなったということでしょう。
 しかも、少子化の進行とともに1995年をピークに生産年齢人口の減少が続き、震災復興とオリンピックなどのための人手不足もあって、資本の側からしても労働力の確保が深刻な問題になってきました。女性や高齢者人材活用、労働力の保全と有効活用のための政策展開が必要になってきたということでもあります。
 だからといって、労働者の求める方向で改革が進むとはかぎりません。ここでも労使の利害は異なっており、「誰のための改革か」が問われなければならないからです。一方で長時間労働の是正や勤務間インターバル規制の導入促進を言いながら、他方で「残業代ゼロ法案」を出そうとしているなど、政策内容は「玉石混交」となっています。「玉」だと思って割ってみたら中から「石」が出てくるなどということがあるかもしれません。
 とりわけ、本来なら厚生労働省が担当するのが当たり前の「働き方改革」を新設の大臣のもとでの会議でやり、公益・労働・経営の3者同数で構成される労働政策審議会が無視されている点は大きな問題です。労働者の声を遠ざけ、財界の主張がより強く反映される労働政策決定の新しいシステムづくりにならないように監視し、運動の側からの働きかけを強め要求実現のチャンスとして生かしていくことが重要になっています。
 資本による職場支配の成功が、新たな失敗を生み出してしまったということです。その結果必要となった「働き方改革」を、新たな労働者支配の手段としてはなりません。そのためにも、労働組合運動の本領を発揮することが求められています。


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11月5日(土) 参議院選挙後の情勢と国民運動の課題(その3) [論攷]

〔下記の論攷は、『建設労働のひろば』No.100、2016年10月号、に掲載されたものです。4回に分けてアップさせていただきます。〕

2、安保法の廃止と発動阻止に向けて

 *自衛隊は南スーダンから撤退し安保法新任務の訓練を中止すべきだ

 安保法は3月に施行されました。これによって自衛隊は戦闘に巻き込まれ、死傷者が出るかわからないようなリスクを抱えながらの活動を強いられることになります。このような危険な領域に足を踏み入れてはならず、南スーダンから直ちに撤退するべきです。
 稲田防衛相は安保法で可能になった新たな任務について、自衛隊の各部隊の判断で訓練を始めることを明らかにしました。南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に11月に派遣される陸上自衛隊第九師団第五普通科連隊主体の部隊は9月25日から訓練を始めています。
 安保法については、日本が米国の戦争に巻き込まれたり、危険な任務に当たる自衛隊員のリスクを高めたりするとして批判されました。集団的自衛権の行使の容認には違憲性も指摘されていますが、これらの批判や指摘が実証されようとしています。
 そもそも、駆けつけ警護や宿営地の共同防衛が必要になるような危険な状況の下で、自衛隊の部隊が派遣されていることが大きな間違いなのです。南スーダンの実態は内戦というべきものでPKO部隊派遣の前提は崩れており、他国軍とともに宿営地を守る共同防衛は海外での武力行使にあたり、憲法9条に違反することになります。
 安保法制定後、日本周辺の安全保障環境は悪化し、「抑止力」などは全く働いていません。安保法の成立によって、確かに「日米同盟の絆」は強化されたかもしれませんが、その結果、バングラデシュでは日本人7人が国際テロの標的として犠牲になるなど、安全は高まったのではなく急速に低下しつつあります。
 さらなる犠牲者が出る前に、ブレーキをかけて方向転換するべきでしょう。急迫不正の侵害に対する拒否力としての「自衛」隊が、海外で殺し、殺される「外征軍」へと変質してしまう前に、既成事実化を防がなければなりません。
 このままでは、日本という国の形が変わってしまいます。自由で民主的な平和国家としてのこの国のあり方は、安保法によって既に変質を始めています。「壊憲」策動を許さないだけでなく、安保法の全面的な発動を阻止することが必要です。先の大戦で多大な犠牲を払い、それへの反省として手に入れた自由で民主的な平和国家としてのこの国の形を守るために……。

 *ミサイル防衛(MD)ではなく外交交渉を

 北朝鮮は建国記念日にあたる9月9日に、核弾頭の爆発実験に成功したと発表しました。日本など周辺諸国にとっては深刻な脅威です。国連の安保理決議にも違反するこのような核実験と核兵器の開発は許されず、断固として糾弾しなければなりません。
 この核実験に対して厳しい対応が行われていますが、それはほとんど「手詰まり」状態に陥っています。アメリカ韓国に対してB1戦略爆撃機の派遣や高高度迎撃ミサイル(THHAD)の配備、米韓共同演習など軍事的対応を強化しようとしていますが、それは逆効果です。
 北朝鮮に対して、さらに強い圧力をかけて「締め上げ」ようとすれば、もっと強い反発が返ってくるだけでしょう。安全を高めようとして「抑止力」を強めれば強めるほど、それへの反発も大きくなって軍拡競争が激化し、結果的に安全が損なわれてしまうという「安全保障のジレンマ」から抜け出すことこそが必要なのです。
 ここで重要なことは、ミサイル防衛(MD)で対抗することはできないということです。軍事的に対抗するのは不可能であるばかりか間違いで、唯一の解決策は外交的手段しかありません。
 そもそも、日本は北朝鮮に近すぎます。この点で、遠く離れているアメリカなどとは決定的に異なっています。近いから、もし北朝鮮がミサイルを発射すれば7~8分で着弾します。これをどうやって、撃ち落とすのでしょうか。移動式であれば、いつどこから発射されるか分からないものを。
 MD構想はいずれも対応する時間が十分にあるという前提での議論ですが、そんな時間はありません。この「時間の壁」を突破できるということが証明されない限り、MDについての議論は荒唐無稽なものとなります。
 もし対応が可能であったとしても、迎撃ミサイルよりも多くの数が発射されればお手上げで、射程距離以外には届かず、届いたとしても速度の速いミサイルを撃ち落とすのは技術的に難しく、日本国内で破壊すれば残骸が降り注ぐことになります。これらの問題を解決できるのでしょうか。
 この問題を解決するためには、無駄なMD構想などで国民に幻想を持たせず、対話と交渉の外交的手段しか解決策がないことを知らせなければなりません。北朝鮮を軍事的に挑発することのないように韓国やアメリカに進言し、必要なら無条件で直接対話に応ずる姿勢を示すようアメリカに要求するべきです。
 日本が北朝鮮との国交正常化交渉を打ち切ってしまった過去の対応は完全な誤りでした。拉致問題の解決を優先するということで、交渉より制裁を選択したからです。日朝間の国交を回復していれば、その後の拉致問題についての進展も核やミサイル開発の経過も大きく違っていたでしょう。
 北朝鮮を話し合いの場に引き出すことでしか問題解決の道はないということは、はっきりしています。しかし、そのような道を選ぶ意思も能力も今の安倍政権にはないというところに、本当の危機が存在しているのではないでしょうか。

 *ドイツの経験は何を教えているか

 ドイツでも日本の9条解釈の変更のような憲法(基本法)解釈の変更がなされたことがありました。その過ちは今も大きな傷跡としてドイツの人々を苦しめています。このドイツが犯した過ちとそれがもたらした負の教訓を、日本の私たちもしっかりと学ぶ必要があります。
 というのは、ドイツでは基本法で軍の出動は北大西洋条約機構(NATO)同盟国の「防衛」などに限られると規定され、NATO域外では活動できないと解釈されてきたにもかかわらず、その解釈を変えて中東地域に出動させてしまったからです。
 このような解釈変更の契機となったのは1991年の湾岸戦争でした。ドイツが派兵しないことにアメリカから強い批判が噴出し、94年に基本法の番人であったはずの憲法裁判所は連邦議会の事前承認を条件に域外派兵を認めてしまいました。その後、ドイツ軍はユーゴスラビア空爆に参加し、NATOや欧州連合(EU)、国連の活動範囲内で十数カ国に派兵し、特にアフガニスタンには毎年4000~5000人を派兵しました。
 長年、集団的自衛権の行使を認めていなかったにもかかわらず過去の最高裁判決を持ち出して解釈を変え、内閣法制局のお墨付けをもらって閣議決定を行い、安保法を制定して海外派兵を可能にしてしまった安倍内閣と、うり二つではありませんか。
 ドイツでも戦闘行為への参加には世論の反発が強かったと言います。そのため、当時のシュレーダー政権は米軍などの後方支援のほか、治安維持と復興支援を目的とする国際治安支援部隊(ISAF)に参加を限定しました。
 しかし、現地では前線と後方の区別があいまいで、多くは後方支援部隊にいながら死亡しています。戦闘現場と後方支援の現場を分けられるという考え方は幻想にすぎません。結局、兵士55人が死亡し、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の患者が400人を超えるなどの深刻な結果をもたらしました。
 これがドイツの経験であり、これから日本が向かおうとしている未来の姿です。ドイツではすでに実行され、多くの犠牲者が出てしまいました。日本ではこれからですから、今ならまだ間に合います。このようなおぞましい未来を招き寄せてもよいのか、そのような間違いを犯す可能性が大きい安保法の発動を許してもよいのかが、いま私たちに問われています。


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11月4日(金) 参議院選挙後の情勢と国民運動の課題(その2) [論攷]

〔下記の論攷は、『建設労働のひろば』No.100、2016年10月号、に掲載されたものです。4回に分けてアップさせていただきます。〕

 *野党共闘をめぐる民進党内での議論

 野党共闘は民進党の代表選挙でも大きな争点になりましたが、立候補した3人は参院選での野党共闘については一定の評価をしていました。共闘したから負けたというのではなく勝ったわけですから、真っ向から否定するわけにいかないのは当然でしょう。問題は衆院選での共闘と共産党との連立です。新しい代表に選出された蓮舫さんは「衆院選で綱領や政策が異なる政党と政権を目指すことはない」と否定していました。
 しかし、これは理論的にも実践的にも間違っています。理論的に言えば、綱領や政策が異なっているからこそ、一致できる部分に限って行動を統一するわけです。この統一戦線論の基本が理解されていません。連合政権にしても同じです。別の政党ですから綱領や政策が異なっているのは当たり前ですが、そのような政党が共通の目標や一致する政策の実現を目指して手を結ぶのが連合政権ではありませんか。
 蓮舫さんのように言ったら単独政権しかあり得ず、連立政権は存在できなくなってしまいます。しかし、2009年に発足した鳩山連立政権は綱領や政策が異なった民主党・社民党・国民新党によるもので、今の安倍政権だって綱領や政策の異なる自民党と公明党による連立政権です。このような連立政権は世界では当たり前のことです。
 「別の政党だから」「綱領や政策が違うから」などといって政党間の選挙共闘や政権連合を否定するのは、連合政権の理論についても実態についても無知であることを告白するに等しいものです。「違うのは当たり前」「でも力を合わせなければ勝てない」「だから一致点を探して共闘する」というのが、基本の「キ」なのですから。
 念のために付け加えておけば、民進党と共産党など野党との間には政策的な共通点が存在しています。だからこそ参院選での共闘が実現したのです。2月の「5党合意」、選挙前の通常国会に野党共同で提出された15本の法案、6月の市民連合と野党4党との合意、1人区での選挙協定や確認事項などによって積み重ねられた一致点は、政権を共にすることによってこそ実現できるものではありませんか。
 自民党最大派閥の細田派(清和政策研究会)は9月4日、長野軽井沢町で研修会を開きました。そこで会長の細田博之総務会長は民進党が今後も共産党との選挙協力を続けると予想したうえで、前回衆院選の選挙区での得票率が5割未満だった自民党の現職議員は次回当選が困難になると強調し、「漫然と戦ったら大変なことになる」と活を入れたそうです。
 また、細田総務会長は埼玉県新座市であった自民党衆院議員の国政報告会でもあいさつし、「小選挙区では(得票率)5割以上を目指さないといけない。もし、共産党と民進党が協力し、(統一候補を)擁立した場合、非常に危ない。我が党は簡単に解散・総選挙をするよりは、候補者たちが頑張って、次の選挙で堂々たる勝利をおさめてもらってこそ安定政権が維持できる」とはっぱをかけています。自民党幹部にこれほどの危機感を生み出した野党共闘を、「衆院選だから」ということでやめようというのでしょうか。
 2014年の前回衆院選の結果をもとにした『東京新聞』の試算では、野党4党側の勝利は前回の43選挙区から2.1倍の91選挙区になるとされています(『東京新聞』9月4日付朝刊)。このように、野党共闘の効果は歴然としています。
 自民党の細田さんでさえ十分に理解している野党協力の威力を、民進党の代表が分かっていないというのでは困ります。蓮舫さんには、自ら先頭に立って野党共闘を引っ張る決意を示していただきたいと思います。このような形で力を合わせる以外に、自民党に勝って「一強多弱」の壁を突き崩せる妙案はなく、それ以外にアベ暴走政治をストップさせ、政権交代を実現して新しい連立政権を樹立する展望は開けてこないのですから。

 *共闘の継続と発展に向けて

 このような野党共闘を生み出す背景となった力は、昨年の安保法案に反対する国民的な運動の高揚でした。そこには、それまでとは異なる大きな特徴がありました。
 その一つは、SEALDsやママの会、市民連合など、従来になく若者や女性、学者、弁護士、市民が自主的に運動に加わってきたことです。平和フォーラムや全労連傘下の労働組合、9条の会など以前からの運動団体と新たに加わってきた運動団体が連携し、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会を中心に継続的な集会が開かれ、デモやパレードが展開されました。
 もう一つの特徴は、このような国会外での運動と国会内での議員の活動や委員会での質疑などが連動して運動を盛り上げたことです。国会前の集会には野党の議員が参加して決意を表明し、市民団体の関係者は委員会の参考人などとして意見を述べ、憲法審査会で「安保法案は憲法違反」だと断言した3人の憲法学者の証言は運動に大きな力を与えました。
 そして第3に、これらの市民運動は政党との連携を強め、選挙などにも深くかかわることになりました。政治や政党と一定の距離をとってきた従来の市民運動とはこの点で大きく異なり、市民や政党が連携して開いた集会やデモの中で「野党は共闘」という声が上がったのは自然な成り行きでした。
 安保法は昨年9月19日に成立しています。この日の午後、共産党は今後の方針を協議し、「国民連合政権」樹立を呼びかけました。安保法の廃止を可能にするような新しい政府を市民と野党との共同の力で樹立しようという呼びかけです。
 この時点から「2015年安保闘争」は新たな局面を迎えることになります。参院選に向けて野党共闘の成立をめざすという、これまでの国政選挙では経験したことのない新しい運動目標が提示されたからです。同時に、安保法廃止を目指す2000万署名運動も提起されました。市民と政党との共同は大衆運動と選挙闘争との連携という新たな運動領域を切り開くことになったのです。
 2016年2月19日、安保法成立から5ヵ月後に野党5党は国会内で党首会談に臨み、安保法の廃止と国政選挙での協力で合意しました。いわゆる「5党合意」です。これによって参院選での統一候補擁立が可能になりましたが、それを実現させたのは共産党による候補者の取り下げでした。
 こうして、まるで突貫工事での「プレハブ造り」のように野党共闘が成立しましたが、それは前述のように大きな成果を上げました。参院選の結果を見ても野党共闘の威力と効果は明瞭です。それを維持し、発展させていくことが今後の大きな課題だということになります


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