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2月18日(日) 裁量労働に関する答弁を撤回するだけでなく法案の提出そのものを断念するべきだ [労働]

 前回のブログで、次のように書きました。その実例が、裁量労働制をめぐる国会審議でまたもや明らかになりました。

 「安倍政権は長期政権で飽きられ、安倍首相は国会対応で呆れられているというのが、今の姿です。『一強多弱』の下で長期政権化が進むなかで次第に内外政策が行き詰まってきていること、行く手に暗雲が広がり始めていることに、安倍首相は気が付いているのでしょうか。
 華々しく展開され国民の注目を集めている平昌オリンピックの影で安倍政権の陰りが広がりつつあり、それにつれて安倍首相の焦りといら立ちも募ってきているようです。オリンピックの開会式での孤立した姿や野党の質問にまともに答えようとしない国会答弁のあり方などに、それが如実に表れてきているように思うのは私だけでしょうか。」

 まさに「国会答弁のあり方」が重大な疑問と批判にさらされ、安倍首相は自らの答弁を撤回してお詫びしました。これは先のブログをアップしたその日のことです。
 14日午前の衆院予算委員会で、安倍首相は「精査が必要なデータをもとにした答弁は撤回しおわびしたい」と述べて陳謝しました。首相が撤回したのは1月29日の衆院予算委員会での答弁で、裁量労働制で働く人の労働時間についいて「平均的な方で比べれば、一般労働者よりも短いというデータもある」と答えたからです。
 首相が答弁の根拠にしたのは厚生労働省が2013年度に公表した調査で、全国の1万1575事業所の「平均的な人」の労働時間を調べたものですが、裁量労働制で働く人は一般の労働者の労働時間より約20分短かったといいます。しかし、一般の労働者の労働時間は裁量労働制と算出方法も異なり、残業を含めて1日23時間も働いている人がいるなど、データ自体の信ぴょう性が疑わしいものでした。

 ここでの問題は二つあります。一つは、どうしてこのようないかがわしい調査を根拠にしてしまったのかということであり、もう一つは、法案提出に向けての準備が労働の実態を踏まえたものではなかったということです。
 裁量労働とは労働時間の管理を自己の裁量に任せ、どれほど働いてもあらかじめ決めた「みなし労働時間」によって判断するという制度です。このよう形で時間管理を行わなければ、いくら残業しても残業代にカウントされませんから使用者にとってはコスト削減となりますが、働く側からすれば残業代なしで働く時間が長くなる恐れがあります。
 普通に考えれば、時間管理をなくした働き方の方が短くなるなどということはあり得ません。実際、安倍首相が答弁で紹介したいかがわしいもの以外に、そのような調査はなかったのです。

 それなのに、安倍首相はどうしてこのような調査を信じ、国会で答弁してしまったのでしょうか。それは、これから提出しようとしている法案を正当化するうえで都合の良いデータだったからです。
 ここに大きな落とし穴があったというべきでしょう。人は自分の見たいものを見ようとするからです。
 安倍首相も自分の見たい「フェイク(偽)・データ」を見て、これに飛びついてしまったというわけです。ここには、ちょっと考えれば「おかしいな、本当だろうか」と思われるような数字であっても、自分の都合に良ければ安易に信じ込み、騙されてしまうという「ポスト真実の時代」における思考スタイルの問題点が如実に示されています。

 しかも、このような誤った「フェイク・データ」が、これから提出される法案の根拠とされていました。それは「働き方改革」の美名のもとに、法律となれば働く人々を縛ることになるでしょう。
 そうなれば、労働時間規制を強めて過労死を減らすために「改革」するはずなのに、逆に労働時間規制を弱めて過労死を増やすことになってしまいます。今でも裁量労働で働く人の方が一般の人よりも労働時間が長いというデータが、このような未来をはっきりと示しているではありませんか。
 このような実態を踏まえない「フェイク」を基にした「フェイク法案」の提出は許されません。国会への法案の提出そのものをきっぱりと断念するべきです。

 今回の「働き方改革」関連法案は、労働時間の規制緩和と規制強化とが抱き合わせになっているという問題もあります。「毒」と「薬」を一緒にして飲ませようというやり方自体が大きな問題です。
 「薬」であるはずの規制強化にしても、労働基準法36条で許される時間は繁忙期には100時間未満という内容です。過労死ラインを越える労働時間が正当化されることになり、過労死して裁判で訴えても労基法で許されているということで敗訴する可能性があります。
 「毒」となる規制緩和では、裁量労働制と同様に時間規制を外す高度プロフェッショナル制度(残業代ゼロ法案)が導入されようとしています。これでは労働時間の長さを是正することはできず、過労死はなくなりません。

 「働き方改革」は、長い労働時間で健康を害したり過労死したりする現状を是正し、人間的な働き方の実現へと「改革」するものでなければなりません。労働力は人材であり、その疲弊と枯渇は使用者側にとっても大きな問題であるはずです。
 目先の利益にとらわれず、長期的な視野を持った「働き方改革」こそが求められています。働く人々が虐げられ「大企業栄えて民滅ぶ」ような社会では、企業もまた存続し「栄える」ことはできないのですから……。

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2月14日(水) 内外政策の行き詰まりの中で強まる安倍首相の焦りといら立ち [首相]

 平昌オリンピックが始まり、NHKが占拠されてしまいました。オリンピック放送のためにニュースの時間が減り、見なくなってしまった私のような視聴者がいることをNHKは知っているのでしょうか。
 このオリンピックの開会式に出席した安倍首相の写真が話題を呼んでいます。韓国の文在寅大統領と北朝鮮から来た高官代表団などの歓喜の輪から少し離れ、ぽつんと一人だけ前を向いている安倍首相の姿が写っていたからです。
 トランプ大統領が来日したときゴルフ場でボールをバンカーに入れ、大統領の後を追いかけようとして焦り高いところから出ようとしてバランスを崩しひっくり返って一回転してしまった安倍首相の動画も話題を呼びました。この写真も動画も、今の日本と安倍首相の孤立と従米の姿を象徴しているようです。

 オリンピックを契機にした北朝鮮高官代表団の訪韓と南北対話に対して、河野外相も安倍首相も「北朝鮮のほほ笑み外交にだまされるな」「対話のための対話は意味がない」と主張しています。開会式では、アメリカからやって来たペンス副大統領も安倍首相と同じような対応を取りました。
 しかし、「ワシントン・ポスト」によると、帰国したペンス副大統領は「北朝鮮が非核化に向けた重要な行動をとるまで、圧力は止めない」と強調する一方で、「対話を望むならば、我々は話をするだろう」と述べ、圧力強化の方針は変えないものの北朝鮮と直接対話をする可能性を示したと報じられています。真っ向から対話を拒否する安倍首相は、アメリカからも取り残されてしまったようです。
 自民党の二階幹事長も13日の記者会見で、韓国の文大統領と北朝鮮高官代表団による会談などの南北対話に関し「話し合うのはいいことだ。次のときに役に立つということもあり得る」と評価しました。二階に上がった安倍首相は、二階さんにはしごを外されたということでしょうか。

 通常国会での審議が続いていますが、森友学園疑惑に関連する内部文書や録音テープが次々に明らかになり、「廃棄した」と言っていた佐川さんの証言は真っ赤な嘘だったことがはっきりしました。その内容も「価格交渉はしていなかった」「昭恵夫人が関与していたとは知らなかった」などの発言をくつがえすものです。
 公文書の扱いという点でも森友学園疑惑の内容についても、佐川さんは偽りを証言していたことになりますから、改めて本人を国会に呼び、今度は偽証すれば罪になる証人喚問という形で証言してもらわなければなりません。安倍総理夫人の昭恵さんと「腹心の友」である加計さんの証人喚問も必要でしょう。
 森友・加計疑惑はすでに1年以上も継続して追求されていますが、これだけ長く疑惑追及がなされているのは安倍首相が真正面から誠実に答えることなく逃げ回っているからで、しかも内部文書や録音テープは安倍総理の「ご意向」や総理夫人への忖度が強く働き、特別扱いによって行政が私物化され歪められたことを示しています。朝日新聞に八つ当たりしたり、質問をはぐらかしたりするような安倍首相の荒っぽい答弁は、森友・加計学園疑惑がますます深まることへの焦りといら立ちを示す以外の何物でもありません。

 安倍首相の答弁の変化という点では、9条改憲問題についての対応も変わってきています。これまでは、野党の質問に対して総理と総裁の立場を使い分け、国会では正面から答えることを避け、憲法審査会での議論に任せるような形で自民党に丸投げしてきました。
 しかし、通常国会が始まってからは、9条改憲に対する野党の質問に踏み込んだ答弁をするようになっています。例えば、2月5日の衆院予算員会で安倍首相は、自らの案について「9条第2項の規定を残し、自衛隊の存在を憲法に明記することによって、自衛隊の任務や権限に変更が生じることはない」と繰り返し、「自衛隊の正当性を明文化、明確化することは、わが国の安全の根幹に関わる。改憲の十分な理由になる」と述べ、「自衛隊が合憲であることは政府の一貫した立場で、国民投票でたとえ否定されても変わらない」と強調しました。
 このような形で安倍首相自身がしゃしゃり出ざるを得なくなったのは、9条改憲論についての国民の理解が深まらないだけでなく、自民党内でさえなかなか議論が煮詰まらないからです。しかも、憲法を変えても「自衛隊の任務や権限に変更が生じることはな」く、「国民投票でたとえ否定されても変わらない」というのですから、いくら答弁しても一体何のために改憲するのか説明できないジレンマと矛盾に満ちたものになっています。

 安倍首相は長期政権で飽きられ国会対応で呆れられているというのが、今の姿です。「一強多弱」の下で政権が長期化しても次第に内外政策が行き詰まってきていること、行く手に暗雲が広がり始めていることに、安倍首相は気が付いているのでしょうか。
 華々しく展開され国民の注目を集めている平昌オリンピックの影で安倍政権の陰りが広がりつつあり、それにつれて安倍首相の焦りといら立ちも募ってきているようです。オリンピック開会式での孤立した姿や野党の質問にまともに答えない国会答弁のあり方などに、それが如実に表れてきているように思うのは私だけでしょうか。

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2月10日(土) 安倍首相が狙う9条改憲にとってのこれだけの誤算 [憲法]

 「自衛隊の存在を憲法に明記してもしなくても、明記した改憲案が国民投票で承認されてもされなくても何も変わらないのなら、改憲案を発議し、国民投票にかける意味がどこにあるのか。」

 これは今日の『東京新聞』の社説「9条改正論議 切迫性欠く自衛隊明記」の一部です。昨日のブログで、私も同じようなことを書きました。
 「改憲を提案する前から自衛隊は合憲だと言っているのに、わざわざ合憲にするために改憲を提案して国民投票を実施し、国民投票で否決されても合憲だということになります。一体、何のために改憲を提案して国民投票を実施するのか、訳が分かりません。やってもやらなくても、国民投票で承認されてもされなくても、自衛隊は合憲だというのですから」と。
 同じような疑問が生まれるのは、誰が考えてもおかしいからです。やってもやらなくても同じなら、何故やらなければならないのかと。

 安倍首相が誤魔化しているから、このような疑問が生まれるのです。実は、自衛隊の存在を書き加えれば、9条の意味は大きく変わります。
 安倍首相は戦前の日本と戦後のアメリカを足して2で割るような国に、この日本を変えようとしているのではないでしょうか。そのために「国の形」を変えることが、安倍首相が改憲を目指す究極の目標のように思われます。
 しかし、戦前の日本は破滅への道をたどり、戦後のアメリカは失敗の連続でした。その後追いをすれば、同じように破滅と失敗しか待っていないということが、どうして分からないのでしょうか。

 このような目標を胸に秘めて、安倍首相は9条の本丸への攻撃を強めようとしています。昨年5月の自衛隊明記を打ち出した改憲論は、この攻撃を開始する烽火を意味していました。
 しかし、それは直ぐに大きな誤算に見舞われます。昨年の通常国会での森友・加計学園疑惑についての追及や共謀罪法案の強行採決などもあって、内閣支持率が急落したからです。
 通常国会を早めに幕引きして逃亡を図ったにもかかわらず、直後の都議選で歴史的惨敗を喫しました。大きな挫折を味わった安倍首相は、改憲についてもスケジュールありきではないと釈明することになります。

 その後も、閉会中審査などで森友・加計学園疑惑への追及は続き、そこからの逃亡を図って安倍首相は解散・総選挙に打って出ました。議席減覚悟のばくちを打ったにもかかわらず、小池都知事や前原民進党代表が結託した分断工作によって野党は自滅します。
 野党の分裂に救われて改選議席を維持しただけでなく、「改憲勢力」が3分の2を突破するという僥倖にも恵まれました。この結果に気を良くした安倍首相は、再び9条改憲に向けてのアクセルを吹かせることになります。
 年内での自民党案の取りまとめを指示し、与党の公明党や野党に対する働きかけを強めようとしました。しかし、ここでも思わぬ誤算に直面することになります。

 その第1は自民党内での抵抗が思いのほか強かったことです。自民党は2012年の改憲草案で9条2項を削除して自衛隊を国防軍とし、正式の軍隊とすることを求めていました。
 石破さんをはじめとしてこれに対する支持が強く、昨年中に安倍首相の提案で党内をまとめることができませんでした。安倍首相がこのような提案をしたのは、2項を維持した方が抵抗は少なく削除論は国民の支持を得られないと考えて譲歩したからです。
 しかし、『読売新聞社』は1月12~14日に世論調査を実施しましたが、「9条2項は削除し、自衛隊の目的や性格を明確にする」は34%、「9条2項を維持し、自衛隊の根拠規定を追加する」は32%、「自衛隊の存在を明記する必要はない」は22%となり、自民と公明の与党支持層では「2項削除」40%、「2項維持」34%、「明記不要」13%の順になりました。安倍首相が提案する維持論より自民党改憲草案の削除論の支持が多くなっており、安倍首相の提案で党内をまとめられるかどうかは依然として不透明です。

 第2は公明党が同調してくれなかったことです。安倍首相が自衛隊の書き込みを提案したもう一つの目的は、公明党の加憲論を取り込むためでした。
 公明党は以前から「加憲」を唱え、プライバシー権や新しい人権などの現憲法に必要な内容を加えることを提案していました。9条についても、この加憲論を逆手にとって公明党を巻き込もうと考えたわけです。
 しかし、公明党は衆院選後の連立政権合意で、当初自民党が提示した「憲法改正を目指す」との表現を削るよう求め、「憲法改正に向けた国民的議論を深め、合意形成に努める」という文言に落ち着きました。2月7日に党の憲法調査会の幹部会合を開き、16日に約8カ月ぶりとなる全体会合を開催することを決めましたが、慎重な姿勢を崩していません。

 第3は野党の状況が大きく変わってしまったことです。ここでの誤算は二つあります。
 一つは、総選挙で野党第一党が立憲民主党になり、希望の党などの統一会派づくりによってこの地位と奪おうとして失敗したことです。もう一つは、政権補完勢力として期待していた希望の党が、次第に安倍政権に対する対決色を強めていることです。
 どちらも、安倍9条改憲にとっては大きな障害となる変化でした。このような変化が生じたことによって、安倍9条改憲や安保法制反対、原発ゼロ、「働き方改革」などのテーマで、維新の会以外の野党が結束して共闘する可能性が生まれています。

 そして第4は、国民世論の状況を見誤ってしまったことです。『毎日新聞』1月24日付は、安倍改憲について「世論調査の結果が分かれ」「世論の理解は必ずしも進んでいない」と書き、「首相の方針に沿って党内を取りまとめようとした自民党は頭を抱えている」と指摘しています。
 NHKの調査では「憲法9条を変える必要はない」が38%で最も多く、「戦力の不保持などを定めた9条2項を削除して、自衛隊の目的などを明確にする」が30%で続き、首相案に近い「9条2項を維持して、自衛隊の存在を追記する」は16%で、『読売新聞』の調査と同様に、安倍首相案ではなく自民党改憲草案の方の支持が多くなっています。これに対し20、21日の『毎日新聞』調査では「9条の2項を削除して自衛隊を戦力と位置付ける」12%、「9条の1項と2項はそのままにして自衛隊を明記する」31%と大差がつきました。
 この結果について、自民党の憲法改正推進本部は「世論調査をすれば『2項維持』が多数になると見込んでいただけに、NHKと読売新聞の結果は『誤算』だった」と指摘しています。自民党憲法改正推進本部の細田本部長は、自民党所属の国会議員に対して9条改正に向けた具体的な条文案を提出することを求めていますが、無理やり安倍首相の2項維持案でまとめようとすれば、自民党内だけでなく右傾化した世論や極右の支持層の反発を受け敵に回す可能性が出てきました。

 この二つの案について、昨日の『朝日新聞』の社説「憲法70年 自民の抱えるジレンマ」は、次のように書き、自民党の改憲論議における「ジレンマ」を指摘していました。

 「高村氏は一方でこうも語っている。『安倍さんが言っていることは正しい。石破さんが言っていることも間違いではない。この二つは矛盾しない』
 だが、両者が矛盾しないはずがない。まず首相案で一歩踏み出し、いずれは2項を削除して各国並みの軍隊をめざす方向に進むということなのか。
 『変わらない』と言い続ければ、改憲の必要性は見えにくくなる。といって改憲の意義を明確にしようとすれば、どう『変わる』のかを国民に説明しなければならない。
 自民党の改憲論議は、深いジレンマに陥っている。」

 このような「ジレンマ」に加えて、以上に見たような誤算が積み重なっています。改憲の危機は高まっていますが、それは安倍首相が構想していたような形で順調に進んでいるわけではありません。
 その野望を阻止することは十分に可能です。カギを握っているのが世論であることに変わりはありません。
 それをどちらの方向にどう変えていくのかが、9条改憲をめぐるこれからの攻防を左右することになるでしょう。ここに、現在取り組まれている安倍改憲NO!3000万人署名運動の大きな意義があります。

 具体的な数をもって、改憲反対の世論を明示することが大切です。その壁の高さをはっきりと示すことができれば、改憲の野望を安倍首相に諦めさせることができるにちがいありません。
 同時に、森友学園疑惑での新たな内部文書の公表などによる追及を強め、政権の体力を奪っていくことも重要です。通常国会で安倍首相をどこまで追い込めるかも、安倍9条改憲阻止にとって大きな意味を持つにちがいないのですから。

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2月9日(金) 安倍9条改憲に向けての動きと並行して進む自衛隊参戦の準備 [憲法]

 安倍首相が言うところの「安全のための措置」をとればとるほど、不安が増すというのが現実の姿ではないでしょうか。平和安保法制の制定も改憲も、それを行うことで平和になり安全が高まるのではなく、実際にはその逆になっていることは皆さんが目撃している通りです。
 騙されてはなりません。現実を直視し、その意味を読み解くことによって騙されないための「知力」を身に着けることが、今ほど大切になっていることはありません。

 安倍首相は5日の衆院予算委員会で、憲法9条1、2項を維持して自衛隊を明記する自身の改憲案に関し「自衛隊が合憲であることは明確な一貫した政府の立場だ。国民投票で、たとえ否定されても変わらない」と述べました。自衛隊明記案が国民投票で否決されても自衛隊の合憲性は変わらないとの考えを強調したものです
 これまで「自衛隊が合憲であることは明確な一貫した政府の立場」であったことは、安倍首相が明言している通りです。それなら何故、わざわざ国民投票までして憲法を書き換え、自衛隊について明記する必要があるのでしょうか。
 しかも、この「国民投票で、たとえ否定されても変わらない」と言うのです。つまり、改憲を提案する前から自衛隊は合憲だと言っているのに、わざわざ合憲にするために改憲を提案して国民投票を実施し、国民投票で否決されても合憲だということになります。

 一体、何のために改憲を提案して国民投票を実施するのか、訳が分かりません。やってもやらなくても、国民投票で承認されてもされなくても、自衛隊は合憲だというのですから。
 このような疑問に対して、安倍首相は1月24日の衆院本会議で行われた各党の代表質問に対する答弁で、「自衛隊は違憲だと主張する有力な政党も存在する。自衛隊員に『君たちは憲法違反かもしれないが、命を張ってくれ』と言うのは無責任だ」と答えました。しかし、現在、「自衛隊は違憲だと主張」しているのは共産党と社民党だけです。
 この両党が「有力な政党」であるかどうかは見解の分かれるところでしょうが、この両党の「違憲論」を解消するための改憲だと、安倍首相は主張したいのでしょうか。そのためにわざわざ国民投票までして憲法を書き替えるのだと。

 加えて、これまでも安倍首相は「自衛隊員に『君たちは憲法違反かもしれないが、命を張ってくれ』と言うのは無責任だ」と繰り返してきました。このような情緒的な理由を前面に出せば国民が納得してくれるとでも思っているのでしょうか。
 安倍首相が「命を張る」と言うのは、戦闘行為に加わって「殺される」リスクを覚悟することを指しています。安倍首相はこれまでこのような改憲論を口にしなかったのに、急にこのようなことを言うようになったのは何故でしょうか。
 それは、安保法=戦争法の制定や北朝鮮危機の増大などによって自衛隊員に「命を張ってくれ」と言わなければならないリスクが増えているからだと思われます。安倍首相が本当に狙っているのは、「君たちは憲法違反ではないから、命を張って捨ててくれ」と胸を張って言えるようにしたいということではないでしょうか。

 憲法上の位置付けを明確にして参戦の準備を整え、万全な体制で「殺し殺される」ことのできる「戦力」へと自衛隊を変貌させたいというのが、安倍首相の考えていることなのでしょう。そしていずれ、まごう方なき真正の「軍事力=軍隊」にしたいと……。
 これまでも安倍首相は「我が軍」と口を滑らせることがありました。1月30日の衆院予算委員会では、自衛隊について「憲法下、必要最小限度の戦力として、われわれは保持している」と答弁し、直後に「『実力(組織)』と申し上げるところ、戦力と申し上げた」と弁明して訂正しています。
 はしなくも、安倍9条改憲の本当の狙いが顔を出した瞬間でした。自衛隊を戦場へと送り出し「命を張る」新たな任務に従事させるためにこそ憲法に書き込むことが必要だと、安倍首相はそう考えているにちがいありません。

 AFP通信が6日に報じた記事によると、米軍の制服組トップのダンフォード統合参謀本部議長はオーストラリア北部のダーウィンに駐留している米海兵隊部隊を視察した際、隊員から「(1950年の)朝鮮戦争のような被害をどのようにして避けるのか」と質問されたそうです。これに対して議長は米軍の軍事力が当時と比べて格段に向上していることを指摘した上で、「最終的には海兵隊や地上部隊が投入され、同盟国の軍隊と一緒に戦うことになる」と答えました。
 他方、マティス国防長官は先月15日、カナダ・バンクーバーでの北朝鮮問題に関する外相会合関連の夕食会で「米国には作戦計画があり、準備もできている」と発言して注目されました。「ダンフォード議長が言う『同盟国』が日本と韓国であることは自明」だとされ、「自衛隊が朝鮮半島で戦う悪夢がいよいよ現実味を帯びてきた」と2月8日付の『日刊ゲンダイ』DIGITALが報じています。

 このような形で、第2次朝鮮戦争に向けての動きと安倍9条改憲とが並行して進んでいることに注目せざるを得ません。安倍首相の言う「最大限の圧力」のなかには、このような準備も含まれているのでしょうか。

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2月8日(木) 野党や働き方改革、沖縄の状況などについての『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [論攷]

 〔以下の私のコメントは、1月13日以降の『日刊ゲンダイ』に掲載されたものです。参考のために、アップさせていただきます。〕

 「野党3党の統一会派結成は、安倍首相を喜ばせるだけですよ。まず、『理念、政策が違うのに一緒になるのは野合だ』とカサにかかって責めたててくるでしょう。野党3党は、政策をスリ合わせるだけでも相当なエネルギーを取られますよ。とくに、今年は〝改憲〟が一大テーマになる。安倍首相が、野党3党の違いに目を付け、手を突っ込み、揺さぶってくるのは間違いない。最悪なのは、希望の党の議員は、細野豪志や長島昭久などのチャーターメンバーを中心に安倍首相の考え方と極めて近いことです。党統一会派を組んだら、野党全体が彼らに引っ張られかねない。統一会派を組んだら、どうしたって他党に気を使わなくてはならなくなりますからね。立憲民主が『安倍首相による危険には反対だ』と訴えても、希望の党が『いや、改憲の是非を国民に聴くべきだ』と異議を唱えることは目に見えています」
 「やはり野党が選挙に勝つためには共闘が不可欠です。異分子を排除したうえで、可能な限り手を結んだ方がいい。たとえば、希望の党のなかにも、大串博志など、立憲民主と考え方が近い議員が何人もいます。同じ考え方の議員がまとまり、安倍自民党と対峙すべきです。自民党と対決するリベラル勢力が1つに結集すれば、共産党も選挙協力をしやすくなるでしょう。前原誠司や細野豪志たちは、維新の会と一緒になればいい。自民党の補完勢力が一緒になれば、祐江kン社にもわかりやすくなります」(2018年1月15日付)

 「安倍政権が掲げる働き方改革は、労働環境の改善とは程遠い。全身に毒が回った重症者に薬と毒を一緒に処方するようなものです。100時間残業の合法化はブラック労働の助長につながるでしょう。労災申請のハードルが上がり、認定を争う裁判で雇用者側が敗訴する可能性も懸念されます。安倍首相が目指すのは世界一、企業が活躍しやすい国。国民生活の破壊を許し続ければ、大企業が栄えて民滅ぶ。そうした事態を招きかねません」(2018年1月19日付)

 「いくらなんでも、安倍政権はアメリカに対して弱腰すぎます。米軍は約束を破ったのに、なぜ安倍首相と河野外相は抗議声明を出さないのか。これは重大な外交問題ですよ。もし中国や韓国が約束を破ったら、鬼の首を取ったように騒ぎ立てたはずです。本来なら、米軍機の全面飛行停止と地位協定の見直しを申し入れるのが当たり前です。驚いたのは、安倍政権の政務三役は誰ひとり、現地を視察していないことです。コトが大きくならないように、アメリカに気を使っているのは明らかです。菅官房長官は、2月4日に行われる名護市長選のために沖縄入りしているのに、小学校には足を運ぼうともしない。安倍政権の価値基準は完全に狂っています」
 「安倍政権の沖縄潰しは常軌を逸しています。2月4日に投開票される名護市長選のために、官房長官を筆頭に閣僚、党幹部が次々に現地入りしている。一地方選に権力が総力をあげている。辺野古基地の新設に反対している稲嶺市長を叩き潰すつもりです。政権に楯突く者、とくにアメリカの政策を邪魔する者は、絶対に許さないという態度。この政権の異常さがよくわかります」(2018年1月22日付)

 「新自由主義的な規制緩和によって強者をより強く、儲かるものをもっと儲けさせようという安倍政治の延長線上にあるのがアベノミクスです。『働き方改革』も『生産性革命』も少子高齢化対策の間違った治療法で、毒にしかなりません。昔の自民党は、保守本流のハト派の野中さんみたいな人がいて、もっとマトモな政党でした。しかし、今はそうじゃない。弱者に対する感覚が薄い人ばかり。安倍首相を中心にタカ派の傍流派閥が発言力を増し、肩を怒らせている。それに対し、誰も文句を言わず、安倍独裁で一色に染まってしまっているのが現状です」(2018年1月30日付)

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2月7日(水) 沖縄辺野古での新基地建設反対の願いを踏みにじったカネと票 [在日米軍]

 先日、学習の友社から刊行する予定の新著の原稿を書き上げ、ようやく入稿しました。執筆中に情勢が変わり、かなり苦労して書き上げたものです。
 この本の執筆中、1月20日から2月4日までの16日間に10回の講演がありました。それも一段落し、1月末から2月初めにかけての繁忙期が終了しました。
 昨日、久しぶりに近くを散歩し、イヌフグリの水色の花が咲き、梅の花がチラホラ開いているのを発見しました。日本海側は大雪で大変なようですが、我が家の近くにはようやく春が訪れつつあるようです。

 しかし、沖縄の人に政治の春が訪れることはなく、2月4日の名護市長選挙はまことに残念な結果になりました。事情が複雑でいくつかの敗因が重なったためだったと思います。
 出口調査の結果からみても、辺野古での新基地建設に反対している人の方が多かったにもかかわらず、これが投票態度を左右することなく選挙結果に結びつかなかったようです。当選した新人候補に投票した人のうちでも3割ほどは新基地の建設に反対していたといいます。
 こうなったのは、すでに工事が始まった姿を見て反対することを諦めてしまった人がいたこと、辺野古の「へ」も言うなという指示の下に徹底した争点隠しが行われたこと、政府や自民党が米軍再編交付金をちらつかせて利益誘導したこと、公明党が先の総選挙での支援のお返しに支持に回ったことなどが大きかったようです。名護市民の新基地建設への反対の願いをカネと票によってねじ曲げてしまった結果が、自公維推薦候補の当選でした。

 この選挙結果が明らかになった直後、自衛隊のヘリコプターが墜落するという事故が起き、民家が炎上しました。小学生が軽傷を負いましたが、一歩間違えば大変な事態になっていたと思います。
 このところ、沖縄米軍のヘリコプターが不時着したり部品を落としたりという事故が頻発していました。自衛隊のヘリコプターによる墜落死亡事故も、今年度に入ってから3回もあり、今回が4回目になります。
 ヘリコプターが空を飛ばなければ、墜落することはありません。飛行回数が増えて現場の隊員の負担が過重になればなるほど事故が起きる危険性も高まります。

 軍事的な対応を重視するトランプ大統領の登場と軍事大国化を目指す好戦的な安倍首相によって、在日米軍や自衛隊に対する要請が増大しているということなのでしょうか。北朝鮮危機を煽り立てる指導者のあおりを受ける形で、現場の隊員の訓練や業務が過大で過剰なものになっているのかもしれません。
 そもそも、今回墜落した自衛隊のヘリコプターは対戦車攻撃用の戦闘ヘリです。いまだに戦車による上陸型の武力侵攻があるとでも考えているのでしょうか。
 このような時代遅れのヘリコプターを保有し、飛ばしていることの意味から根本的に再検討されるべきでしょう。同様に、沖縄における新基地建設についても、その必要性や意味が根本から再検討されなければなりません。

 軍事基地の存在は安全ではなく危険を高めているというのが、私たちが目撃している現実の姿です。抑止力という幻想ではなく基地被害という現実を直視することこそ、平和と安全を守るための第一歩ではないでしょうか。

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2月5日(月) 2017衆院選の分析と今後のたたかい(その3) [論攷]

〔以下の論攷は、『月刊全労連』No252、2018年2月号、に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

3、 今後の闘い―その課題と展望

 〇安倍9条改憲をめぐる激突

 総選挙後の特別国会での所信表明演説で、安倍首相は改憲論議の加速化を呼びかけた。「与野党の枠を超えて、建設的な政策論議」を行う努力の中で、「憲法改正の議論も前に進むことができる」と表明したのである。
 与党が3分の2を越え、「改憲勢力」が8割を突破したとされる総選挙での結果を受けて、安倍首相が9条改憲に本腰を入れ、その動きをスピードアップしたいと考えていることは間違いない。しかし、事態はそう簡単ではない。「改憲勢力」とは言っても、その中身はバラバラだからである。
 まず、安倍首相の掲げる自衛隊の明記など4項目の改正案について、自民党内が一致していない。12年自民党改憲草案のように9条2項を削除して自衛隊を国防軍とするべきだという意見が14%ある。
 自衛隊明記については、与党の公明党も反対しており、「改憲勢力」とされている希望の党や維新の会も積極的ではない。希望の党の玉木雄一郎代表は特別国会での代表質問で安倍首相の改憲案について「違和感を禁じ得ない」と述べ、「平和主義や専守防衛の立場から、どこまで自衛権が認められるのかをしっかり議論すべきだ。立憲主義にのっとって、憲法の議論を正しくリードしたい」と語っている(『毎日新聞』11月22日付)。
 野党第一党の立憲民主党の枝野幸男代表も代表質問で、安保法を「立憲主義の観点から決して許されない」と批判し、改憲については「今ある憲法を守ってから言え、それがまっとうな順序だ」と、対決姿勢を鮮明にした。もちろん、共産党と社民党は改憲に反対する立場で一貫している。
 9条改憲について安倍首相は、11月21日の参院本会議で、「合憲の自衛隊を書き加えることで何が変わるのか」という民進党の大塚耕平代表の質問に答えて、「自衛隊の任務や権限に変更が生じることはない」と述べるとともに、「自衛隊員に『君たちは憲法違反かもしれないが、何かあれば命を張ってくれ』というのはあまりにも無責任だ。そうした議論が行われる余地をなくしていくことが私たちの世代の責任ではないか」と改めて表明した。
 9条改憲によって何も変わらない、自衛隊が違憲だと言われなくなるだけだというのである。つまり、「違憲」の2文字を消すための改憲である。そうすれば、自衛隊員は「何かあれば命を張ってくれ」、気持ち良く死んでいってくれるとでもいうのだろうか。そのために、改憲発議と国民投票に政治的エネルギーを費やし、何百億円もの国費を投じようというのである。
 そんなことがいま必要なのかが、国民に問われている。政治が力を尽くして緊急に取り組むべき他の課題が別にあるのではないのか。改憲ではなく、国際環境の改善による平和と安全の維持、少子化対策や景気回復こそ、政治が全力を傾けて解決するべき課題なのだということを、国民に理解してもらうことが必要である。
 安倍9条改憲をめぐる激突において、憲法96条で規定されている改憲論一般とは区別し、安倍首相が目指している9条改憲の違憲性と問題点を暴露し孤立させなければならない。そのためにも、国民的な学習運動を組織して安倍9条改憲の狙いを明らかにし、反対世論を広げていくことが重要である。安倍9条改憲NO!市民アクションが提起している3000万人署名を核として国民的な運動を盛り上げ、たとえ国民投票を行っても勝てる見通しを持てなくすることで、改憲策動の息の根を止めなければならない。

 〇野党共闘の継続と発展

 このような安倍9条改憲NOの運動にとっても、市民と立憲野党の共同が大きな力となるにちがいない。それだけでなく、原発再稼働反対や沖縄の辺野古新基地建設反対、消費税の再増税や偽りの「働き方改革」、全世代にわたる社会保障給付の削減と負担増への反対などの運動においても、市民と野党の共同を追求することが必要である。
 これまでも、国会正門前集会や周辺での抗議行動、各種の集会やデモ、駅頭での演説会などで政党代表があいさつしたりエールを交換したりすることがあった。そのような場を数多く設定するとともに、そこに野党の代表を招き、できるだけ多く市民の声に直接、接する機会を作っていくことが重要である。
 国会議員は、そのような場に身を置くことで変わっていく。そのような場に、国会議員を招くことによって変えることもできる。市民の運動と国会内での審議の連動も可能となるだろう。国会内外の動きを結び付けることによって、議員を鍛え成長させ、国会内の議論を活性化させることも、これからの大衆運動の大きな役割なのである。
 もちろん、選挙への取り組みも忘れてはならない。労働組合の活動や大衆運動において共同の実現という視点を貫くとともに、国政選挙だけでなく各種の地方選挙での市民と野党との共闘を可能な限り実現していく必要がある。
 地方自治体の首長選挙での市民と立憲野党の共闘の実現、各種議員選挙での政策協定、相互推薦や相互支援も検討されるべきだろう。これらの経験を積み重ねながら、2019年4月の統一地方選挙や夏の参院選に向けての野党共闘を、今から準備していかなければならない。
 とりわけ、2019年7月の参院選に向けての取り組みが重要である。この時まで安倍9条改憲の発議を阻止し、改憲勢力を3分の2以下にするだけでなく与党を過半数以下にできれば、安倍内閣を打倒することが可能になる。そのためにも、野党の連携と共闘を何としても実現することが必要である。

 むすび

 総選挙の結果、安倍政権の基盤にはほとんど変化がなかった。選挙中の野党の分裂によって、「一強多弱」と言われるような国会の状況はさらに強まったように見える。安倍首相の驕りは一層高まり、強引な国政運営も強まっていくにちがいない。すでに、国会質問における与野党の時間配分の比率を変え、与党の質問時間を増やそうとしている。
 選挙が終わっても、国政の課題に変化はない。「森友」「加計」学園疑惑は解明されていず、選挙があったからといってウヤムヤにしてはならない。安倍首相夫妻の関与や国政の私物化に対する真相解明と追及は、引き続き重要な課題になっている。
 北朝鮮危機にも変化はなく、国民の不安は解消されていない。トランプ米大統領に追従し、圧力一本やりの安倍首相の対応は問題の解決を遅らせるだけでなく危機を高めている。対話の可能性を探り、軍事力によらない解決の道を模索するしかない。
 安倍首相が選挙中に約束した全世代を対象にした社会保障の組み換えは、全世代を対象にした社会保障の切り下げと負担増に転化しようとしている。教育費の負担軽減と子育て支援の充実は選挙対策のための思い付きにすぎなかった。
 国民の生活と労働を守るたたかいは、さらに大きな意義と役割を担うことになる。アベ暴走政治をストップさせ、日本が直面している危機からの活路は共闘にしかない。バラバラでは勝てないこと、統一して力を合わせてこそ勝利への展望が開かれること――これが今回の総選挙における最大の教訓だった。そのために労働組合と労働運動が大きな役割を果たすことが期待されている。この期待に応えることこそ、来るべき春闘の最大の課題ではないだろうか。
 これまで日本では維新の党や都民ファーストの会などの「右派ポピュリズム」はあっても、今回のような「左派ポピュリズム」の発生はあまりなかった。今回、それが生まれたのだと思う。
 「ポピュリズム」とは既存のエスタブリッシュメントの政治への不信、エリートに政治を任せていられないという人々の自発的な政治参加の波を意味している。それが排外主義に向かえば右派、民主主義を活性化させれば左派ということになる。
 今回の総選挙では、希望の党による「右派ポピュリズム」の発生が抑制され、立憲民主党による「左派ポピュリズム」が生まれた。それは、アメリカ大統領選挙でのサンダース、フランス大統領選挙でのメランション、イギリス総選挙でのコービンなどによる「左派ポピュリズム」旋風と共通するものだったと言える。
 国際的な政治の流れに呼応する新たな市民政治の局面が「左派ポピュリズム」の発生という形で表面化し、立憲主義を守り民主主義を活性化させる新しい展望を切り開いたのではないだろうか。ここにこそ、今回の総選挙が戦後政治においてもっている重要な意味があったように思われる。


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2月4日(日) 2017衆院選の分析と今後のたたかい(その2) [論攷]

〔以下の論攷は、『月刊全労連』No252、2018年2月号、に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

2、野党の混乱と分裂

 〇「小池劇場」の開幕と暗転

 総選挙の直前に野党第一党が姿を消すという、あり得ないはずの事態が勃発した。安倍首相が正式に衆院解散を表明した9月25日、小池知事も記者会見で新党「希望の党」の立ち上げと自らの代表就任を明らかにした。こうして「小池劇場」が幕を開け、やがて民進党の混乱と分裂に結びついていく。
 解散表明の翌26日、市民連合と民進党・共産党・社民党・自由党の4野党は政策合意に調印した。その日の深夜、小池知事と前原誠司民進党代表、連合の神津里季生会長らが帝国ホテルで密談している。『朝日新聞』の「検証 民進分裂」によれば、「民進党を解党したい。民進の衆院議員は、希望の党に公認申請させます」と前原代表が提案し、「それでいきましょう」と小池知事が応じ、同時に「全員(の合流)は困る。私は、憲法と安全保障は絶対に譲れません」と注文を付けたという(同11月19日付)。
 つまり、「全員」の合流という「なだれ込み」路線は、最初からあり得なかったのだ。そのことを知りながら、28日に開かれた両院議員総会で前原代表は事実上の解党と希望の党への合流を提案し、全員一致で承認された。小池人気を頼りに「安倍一強」を打破して生き残りを図ろうという思惑に支配されての結果だったといえる。
 しかし、このような思惑は直ぐに吹き飛んだ。29日の都庁での記者会見で、小池知事は改憲や安保で政策が一致しない民進党出身者について「排除いたします」と明言した。この「排除の論理」によって一挙に舞台は暗転し、それまで吹いていた「追い風」は「逆風」に転じた。
 こうして民進党は混乱のるつぼに投げ込まれ、10月2日には枝野幸男代表代行によって立憲民主党の結成が発表される。結局、民進党は希望の党への合流、立憲民主党への参加、無所属での立候補、そして参院議員などの民進党残留という形で、4つに分裂することになった。
 このような混乱が生じた要因は、民進党が都議選で大敗を喫したことにある。その責任を取って蓮舫代表が辞任し、後任に前原新代表が選出された。代表選挙で対立候補となった枝野氏は共産党を含む野党共闘の継続を訴えたが、前原氏は見直しを主張した。野党共闘に消極的で小池新党との連携に期待を寄せる右派グループに押されて前原氏は新代表に当選する。
 総選挙でも都議選と同様の小池新党ブームが生まれれば民進党は大敗して存亡の危機に陥る。かといって、共産党などとの野党共闘で「勝利」することも前原氏には望ましいことではなかった。周辺には「共産党と組んだら、死んでも死にきれない」(『朝日新聞』11月20日付)と話していた前原氏にとって、それは「望まざる勝利」だったのである。
 こうして、進退窮まった前原氏にとっての唯一の選択肢は、「小池に飛び込む」ことだけになった。これが「なだれ込み」路線である。しかし、民進党を道連れに飛び込んだ前原氏は「排除の論理」に翻弄されておぼれ、「小池劇場」は希望の党の失速という形で幕を引いた。「敗残の将」となった前原氏は希望の党に入り、小池知事はさっさと共同代表を辞任して都知事の椅子に舞い戻ったのである。

 〇野党共闘の試練と刷新

 民進党の新代表に選ばれた前原氏は、それまで各選挙区で行われてきた市民連合などの市民団体と共産党など立憲3党との共闘の動きには批判的だった。できれば共産党抜きで1対1の対決構図を作りたいというのが本心だったのではないか。新たに就任した野党第一党の党首が野党共闘に消極的だということも、安倍首相が突然、解散に踏み切る決断をした要因の一つだったと思われる。「前原新代表が就任したばかりの、今がチャンスだ」と。
 この安倍首相の思惑通りに前原氏は市民連合と野党との政策合意を踏みにじり、野党内に大きな混乱を持ち込んだ。しかし、突如として発生した逆流と試練に対して立憲野党は直ちに対応し、それを立て直すとともに刷新に成功した。
 衆院解散と民進党の事実上の解党がなされた9月28日、共産党は社民党との共闘に合意し、翌29日に志位和夫委員長は「安保法制廃止を守って共闘の大義に立って行動しようという方であれば、私たちは共闘を追求したい」と表明した。これらの動きは、民進党の消滅にもかかわらず連携可能な勢力が生まれれば共闘は立て直せるという展望を示す点で、重要な意味を持った。
 そして、それに応える動きが始まる。ネットなどに沸き上がった「枝野立て」という声に押される形で、枝野氏が新党「立憲民主党」を立ち上げた。背景になったのは、2016年2月の「5党合意」以来、積み重ねられてきた市民と野党との共闘である。このような経験と実績がなければ、市民の中から新党結成を求める声は上がらず、枝野氏も確信をもって新党結成に踏み切れなかっただろう。
 この立憲民主党の結成を機に、野党共闘をめぐる状況は一変する。翌10月3日、共産党は中央委員会総会を開いて対応を協議し、新党結成を歓迎するとともに枝野代表の選挙区での候補者擁立の見送りを表明した。候補者調整について都道府県別での協議を開始するとともに一本化に向けて67の小選挙区予定候補を降ろし、多くのところで自主的に支援を行った。
 こうして、立憲民主党は改選15議席を3倍以上も上まわる55議席を獲得して野党第一党となった。市民の強力なバックアップと共産党などの他の立憲野党の支援や協力なしには、このような成果を上げることはできなかったにちがいない。
 野党共闘は大きな試練に直面したが、それによって、その意義や重要性が再確認され市民の財産として再認識されたのである。それを失うまいとして多くの市民が立ち上がり、その力に押されて各政党は連携し、相互の信頼を強め、人間関係を深め、つながりを広めることができた。共闘は単に再建されただけではない。それは刷新され、よりバージョンアップされた形で生まれ変わったのである。
 第1に、共闘の核となるべき野党第一党が明確に共闘推進の立場に立つことになった。安倍9条改憲と安保法に反対するだけでなく、消費増税や原発再稼働への反対でも、民進党より明確な政策を打ち出している。旧民主党からぬぐいがたくこびりついていた負のイメージから脱却することにも成功した。野党第一党は量的に減少したけれども、質的に強化されたのである。
 第2に、この立憲民主党の躍進は市民と野党共闘の成果として達成された。とりわけ小選挙区で当選した議員の多くは、そのことを十分自覚しているにちがいない。このような実感として共闘の意義を理解できる議員が増えたことも、今後の共闘の発展にとって重要な意味を持つだろう。「手を結べば勝てる」ことを知る者が増えれば増えるほど、共闘への期待が高まり逆流は生じにくくなる。
 第3に、立憲民主党の選挙運動において、新たな政治文化が生まれた。インターネットを利用したネット戦略が功を奏し、若者を巻き込んで大きな威力を発揮した。特にツイッターやフェイスブックでは自民党のフォロワー数を抜き、投票日までに19万を超えている。街頭演説も、いかにスマートに格好良く見せるかに留意し、アーティストのプロモーションレベルに高めたという評価もあるほどだった。

 〇「立憲チームの勝利」に貢献した共産党

 野党共闘の立て直しのために力を尽くしたのが、共闘の推進力としての役割を担ってきた共産党だった。共産党は市民と野党の共闘成功を大方針にすえ、10月7日には立憲民主党・社民党とともに市民連合との7項目の政策合意を結び、協力・連携して選挙に取り組んだ。その成果が立憲民主党の躍進として結実し、市民と野党の共闘勢力が全体として大きく議席を増やすことができた。
 しかし、共産党は比例代表選挙を重点として闘ったにもかかわらず、前回の14年総選挙で獲得した20議席(606万票、11.37%)から、11議席(440万票、7.91%)への後退となった。これに沖縄選挙区で当選した1議席を合わせても12議席にすぎない。改選21議席と比べれば9議席減である。
 これは野党共闘全体で前進するための自己犠牲的な献身の結果でもあった。他の野党共闘候補に一本化するために候補者を降ろすという措置を取り、そのために様々な制約を被ることになった。小選挙区での候補者を減らせば、その分だけ政見放送の時間や選挙カーの運行台数などに制約が生ずる。それにもかかわらず候補者を取り下げたマイナスの影響が出たのである。
 また、選挙戦序盤において野党共闘の立て直しのために忙殺され、小選挙区ごとの候補者調整に手間取ったために比例代表を重点とする独自の選挙活動が手薄になったという面もある。選挙公示後、次第に野党共闘の体制が整い、小選挙区での対決構図が固まったころに比例代表への取り組みに力を入れたが、序盤の遅れを取り戻せなったということだろう。
 そして何よりも、これまで共産党に引き寄せられてきた旧民主党や維新の党の支持者や革新無党派層が、今回の選挙では立憲民主党に殺到したということではないだろうか。民主党政権や改革政党として期待をかけた維新の党などに裏切られ、失望した支持者や無党派層は共産党に期待を寄せてきた。これが地力以上の前進を可能にした背景である。
 そのために共産党は、13年の都議選から連勝街道を進み始める。同年7月の参院選、14年12月の衆院選、16年7月の参院選、そして先の都議選と、いわば連戦連勝だった。今回は一歩後退したわけだが、13年以降でみれば5勝1敗の成績になる。しかも、連携の幅は広がり、共産党の威信と信頼は高まった。次に前進できる条件と要因は十分にある。悲観することはない。
 このような選挙結果について、市民連合も以下のような「見解」を明らかにし、「日本共産党の努力を高く評価」している。立憲野党のためのサポ―ト役に徹し、ゴール前へのアシストによって得点を挙げることに貢献した共産党は、チームの勝利のために大きな役割を果たしたのである。

 「立憲民主党が選挙直前に発足し、野党協力の態勢を再構築し、安倍政治を憂える市民にとっての選択肢となったことで野党第一党となり、立憲主義を守る一応の拠点ができたことは一定の成果と言えるでしょう。この結果については、自党の利益を超えて大局的視野から野党協力を進めた日本共産党の努力を高く評価したいと考えます。社会民主党も野党協力の要としての役割を果たしました。
 そして何よりも、立憲野党の前進を実現するために奮闘してきた全国の市民の皆さんのエネルギーなくして、このような結果はあり得ませんでした。昨夏の参議院選挙につづいて、困難な状況のなかで立憲民主主義を守るための野党共闘の構築に粘り強く取り組んだ市民の皆さんに心からエールを送ります。」

 〇民進党の分裂で「また割き状態」に陥った連合

 今回の選挙に当たって、労働組合はどのように対応したのだろうか。全労連は、市民と野党の共闘実現のために力を尽くし、野党統一候補の勝利に向けて要求実現の立場での活動に参加した。傘下の単産や単組も、組合員の政党支持の自由を保障しながら、市民と立憲野党の共闘を後押しする活動に取り組んだ。
 これに対して連合は、神津会長が希望の党への民進党の合流を話し合った9月26日深夜の密談に同席し、「信義なき再編」の旗振り役の一人になっている。しかし、小池都知事の「排除の論理」によって全員の合流は不可能になり、民進党は希望の党・立憲民主党・無所属の3つに分裂した。
 これに伴って、連合の選挙支援も「また裂き状態」に陥った。連合全体として特定の政党を支援するのではなく、傘下の産別組合がそれぞれ個別に民進党系の候補者を支援するという方針を取らざるを得なくなったのである。
 民進党分裂で連合の組織内候補も3分裂した。連合傘下の産別による各候補の支援の状況は、図4(省略)の通りになっている。希望の党に対しては、自動車総連・電機連合・JP労組・情報労連、立憲民主党については運輸労連・JP労組・私鉄総連、無所属の候補者に対しては、UAゼンセン・自治労・全国農団労が、それぞれ支援する形になった。
 連合労組の場合、労働組合として特定の政党や候補者の支持を機関で決定し、組合員に支持を押し付けるという方法が一般的である。今回のように、その支持の対象が分裂したり、動向が不明であったりした場合、組合や組合員の側も振り回されることになる。特定政党支持押し付けの問題点が、より大きな形で浮き彫りになったと言える。
 これに対して、労働組合としての自主性を尊重しつつ、共同行動の実現に向けて努力した例もある。全国一般東京東部労組の地元である東京・葛飾地域の労働組合4団体が10月4日、「今回の総選挙にあたって、私たち4団体は、この間の運動の積み重ねを踏まえて、憲法改悪反対、『戦争法』廃止、『共謀罪』法廃止の世論を盛り上げるために、力を尽くします」という共同アピールを発表した。
 この4団体は、東部労組が加盟している葛飾区労協のほか、葛飾区労連・葛飾区職労・東京土建葛飾支部で、それぞれ連合、全労連、全労協と異なるナショナルセンター(労働組合の中央組織)に所属している。この4団体は、2016年5月に「労働組合の上部組織の違いを超えて、『戦争法の廃止を求める』共同アピールを発表し、その後、共同での駅頭宣伝・署名行動、学習会の開催などを行ってき」たという。
 これは野党共闘を草の根から作り上げていく貴重な例である。今後も、組合員の政党支持の自由を尊重しながら、労働組合として可能な形での共同を進めていくことが求められている。

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2月3日(土) 2017衆院選の分析と今後のたたかい(その1) [論攷]

〔以下の論攷は、『月刊全労連』No252、2018年2月号、に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

 はじめに

 突然の解散・総選挙だった。安倍首相の意向が報じられたのが9月17日で解散が28日、公示は10月10日で投票が22日。稀に見るあわただしい総選挙だった。どうして突然、解散する必要があったのか。その理由は最後まで明確にならなかった。「大義なき解散」と批判されたのも当然である。
 このあわただしさに輪をかけたのが、小池百合子東京都知事による新党「希望の党」の結成表明に始まる野党内での混乱だった。こうして「小池劇場」の幕が開いた。しかし、「排除の論理」によって舞台は暗転し、民進党は分裂、立憲民主党が登場する。「信義なき再編」による混乱が静まる暇もなく、22日の投票日が迎えられた。
 衆院選の結果は、表1(省略)のとおりである。自民党は284議席、公明党は29議席で、与党は313議席と300議席の大台を確保し、安定過半数の維持に成功した。野党は大きく明暗が分かれ、第一党の立憲民主党は55議席に躍進したが、第二党以下の希望の党は50議席、日本共産党は12議席、日本維新の会は11議席に後退し、社会民主党は2議席を維持した。このほか、無所属が22議席になっている(図1=省略)。
 各政党の選挙期間中の勢いの変化を示すために、ここでもう一つの表2(省略)を示したい。中盤の情勢と選挙結果とを比べたものである。この表を見てわかることは、立憲民主党の勢いのすごさだ。この勢いに呑み込まれるような形で、希望(-6)、共産(-3)、自民(-2)、維新(-1)の各党が、予測よりも議席を減らしている。
 選挙戦の中盤から後半にかけて、立憲民主党の「ブーム」が生じたということだろう。強力な「追い風」が吹いて議席が上積みされたことが分かる。
 今回の選挙では、新たに結成された立憲民主党と無所属だけが議席を増やした。予測との比較を見ても、その勢いを知ることができる。選挙の勝敗ということで言えば、立憲民主党こそが唯一の勝者だった。ここに、今回の総選挙の最も大きな特徴が示されている。
 このような結果をどう見たらよいのか、「劇場型選挙」の舞台の上で何が演じられ、その幕の影でどのような動きがあったのか。その内容と意味を明らかにし、選挙後の課題についても若干の検討を行うことにしたい。

1、 与党は「勝った」のか

 〇自民党の延命と「勝因」

 選挙後の新聞各紙の見出しには、「自民圧勝」「自民大勝」の文字が躍った。自民党は単独で過半数を制し、与党でも3分の2の多数を維持している。政権基盤の安定という当初の目標を達成したのだから、負けたわけではない。しかし、選挙後の安倍首相の表情には、勝利感や高揚感が意外なほど感じられなかった。それは、自民党が支持を増やして「勝った」わけではないからである。
 図2(省略)は、衆院選での自民党の獲得議席数と絶対得票率を示している。これを見ればすぐに分かるように、自民党の獲得議席は2005年の小泉郵政選挙での296議席がピークだった。その後、政権を失った09年総選挙で119議席と惨敗する。12年総選挙で政権に復帰したが、獲得議席は293議席で05年総選挙に及んでいない。
 その後も、14年総選挙では291議席で2議席減、今回の17年総選挙では284議席と7議席減になっている。過去3回の総選挙で、自民党の獲得議席は増えていない。今回は定数が10議席削減されたので単純な比較はできないが、ほぼ現状維持にすぎなかった。
 なお、今回の自民党の獲得議席のうち、比例代表・東海ブロックでの1議席は立憲民主党の候補者が足りなかったために当選したもので、本来であれば自民党の獲得議席は283であった。
 小選挙区での自民党の得票数を有権者総数で割った絶対得票率の変動でも、ピークは05年になっている。政権を失った09年総選挙で大きく減らしているが、政権に復帰した12年総選挙でもさらに減っている点が注目される。自民党は議席を回復したが、有権者内での支持の割合は減っていたのである。この割合は12年総選挙で横ばい、今回の17年総選挙で多少上向いているが、大きな変化ではない。過去3回の総選挙での絶対得票率はほぼ25%で、有権者の4人に1人しか自民党に投票していない。
 それなのに「圧勝」「大勝」などと報じられるような成績が残せたのは、大政党に圧倒的に有利な小選挙区制のためである。この選挙制度のカラクリと恩恵は、対抗する野党が分裂しているときに増大し、統一しているときには減少する。与野党の対決構図が1対1になれば、小選挙区制の害悪を減らすことができる。だからこそ、このような対決構図を作ろうとして市民と野党は共闘をめざしたのである。
 しかし、このような共闘体制は十分に構築できなかった。今回の総選挙でまたもや自民党が「大勝」した根本的な要因はこの点にある。

 〇安倍首相による「疑似餌」と野党の「敵失」

 「衆院選の結果には驚きませんでした。自民党が勝ちましたが、それは他の政党のオウンゴールが原因。野党同士がまるで共食いをしているようでした。」
 日本外国特派員協会(FCCJ)会長でシリア出身のカルドン・アズハリ氏は、こう言っている。多くの日本人の報道関係者の感想も似たようなものだろう。政府寄りの『産経新聞』の石橋文登編集局次長兼政治部長も、次のように指摘している。
 「事前調査では、民進、共産両党が共闘すれば自民党は50議席超を失う公算が大きかった。そうなれば憲法改正は水泡に帰す。それどころか総裁3選に黄信号が灯(とも)り、政権運営もおぼつかなくなる。……ところが、9月25日の首相の解散表明に合わせて、小池百合子東京都知事が『希望の党』を旗揚げした。28日には民進党が希望への合流を決めた。……小池氏が『排除の論理』を唱えたことにより、民進党は希望の党、立憲民主党、無所属の3つに分裂。期せずして自民党が『無敵』となる枠組みが生まれたのだ。しかも小池氏は出馬を見送り、希望の勢いは急速に衰えた。……振り返ってみれば敵失による勝利といえなくもないが、政権与党が圧倒的な勢力を得た意義は大きい。」(『産経新聞』2017年10月23日付)
 このように小選挙区における自民党の「勝因」は明らかだ。それは小池都知事による希望の党の結成と「排除の論理」をきっかけにした野党の分断にあった。このような「敵失」によって、小選挙区制が持っているカラクリと恩恵が増幅させられたからである。
 しかし、自民党は比例代表でも1856万票を獲得し、90万票も増やすなど健闘している。その要因として考えられるのは、第1に、客観的な背景としての北朝鮮危機と経済状態である。北朝鮮の金正恩政権による核開発とミサイル発射実験に国民は不安を高めていたうえに安倍首相はそれを煽りたてた。また、景気の状況も「いざなぎ超え」がささやかれるような一定の回復状態にあり、株価も「官製相場」による高進を続けていた。国民の実感を伴うものではなかったとはいえ、安倍首相が数字を挙げて「景気回復」を強弁できる程度の経済状態だったことは事実である。
 第2に、このような客観的背景を利用して、安倍首相は「疑似餌」をまいた。一定の有権者はこれに食いついて釣り上げられたのである。解散の「大義」として北朝鮮危機への対応や消費増税による増収分の使途変更を打ち出し、若者の教育と子育て支援に力を入れ、高齢者重視から全世代型に社会保障のあり方を変えると約束した。これがある程度、青年層や若いママの期待を集めたのである。
 第3に、「小池劇場」によって混乱に陥った野党の状況は、小選挙区だけでなく比例代表の得票にも微妙な影響を与えた。北朝鮮危機に不安を高めた国民は「信義なき再編」に嫌気がさし、離合集散を繰り返す野党よりも安定した政権の方がましだという意識を強めたのではないだろうか。そこに安倍首相は付け込み、北朝鮮の脅威を煽って政権安定のメリットを強調した。
 他方で、選挙直前に大きな問題となっていた「森友」「加計」学園疑惑には口をつぐんで「丁寧な説明」を回避し、「政治の私物化」という批判を無視した。9条改憲についても、選挙公約の重要項目に掲げたものの街頭演説で触れることはほとんどなかった。重要な争点を隠しての選挙戦術に徹したのである。このような「争点隠し選挙」も、自民党の「勝因」の一つだったと思われる。

 〇「全勝神話」が崩れて「敗北」した公明党

 現状維持に成功した自民党と比べて、公明党の状況は厳しいものだった。公明党は改選前の34議席から5議席減となって29議席にとどまったからだ。総選挙が公示される直前の10月3日、樋口尚也前衆院議員が女性問題で離党して公認を辞退しているから、実際には6議席減になる。
 小選挙区では神奈川6区に立候補した当選7回の前職が敗れて議席を失った。政権交代を実現した2012年選挙以来の小選挙区での全勝がストップするという思いもかけない結果だった。「全勝神話」の崩壊である。
 図3(省略)は公明党の比例票と議席数の推移を示している。これを見れば、今回の結果がいかに大きな「敗北」であったかが分かる。比例代表では前回731万票だった得票数が今回は698万票となり、700万票を下回った。これは自民党と選挙協力を始めた2000年衆院選以降、初めてのことで、13回にわたる衆院選と参院選での最低である。
 獲得議席数でも、民主党ブームによって与党の座を失った09年選挙の21議席に次ぐ少なさになっている。この2回以外、30議席を下回ったことは一度もなかった。これは公明党にとって大きなショックだったにちがいない。
 この結果について、公明党は総選挙総括の原案で、安倍首相を強く支持する姿勢や憲法論議での対応が支持者の不信感や混乱を招いたと指摘していた。斉藤鉄夫選対委員長は、①準備時間の不足、②野党再編で公明党の存在感が埋没した、③当時の現職2人に女性問題が相次いで発覚したことなどを敗因に挙げている。
 党内や創価学会には、特定秘密保護法や安保法の制定、共謀罪の新設などをめぐって「平和の党」を掲げる公明党が安倍首相サイドに押し込まれてきたという不満があるようだ。衆院選で立憲民主党が注目され、「中道やリベラルな政策に期待した無党派層が流れた」(創価学会関係者)という見方も出ており、公明党関係者は「自民に引きずられ続けると、いずれ党内や支持者の不満が爆発しかねない」と指摘している(『毎日新聞』2017年11月11日付)。
 ただし、自民党との距離の取り方は簡単ではない。小選挙区で自民党を応援する見返りに、比例は公明党に投票してもらうように求めているからだ。今回の結果についても、都議選で小池都知事の都民ファーストの会と選挙協力したために自民党側にわだかまりが残り、衆院選に尾を引いたという見方もある。
 安倍首相は自衛隊の存在を明記する改憲を提案しており、公明党は慎重な構えを崩していない。今回の選挙結果は、安倍9条改憲に対する公明党の対応についても微妙な影響を与える。態勢の立て直しを目指す公明党の指導部にとっては、これが大きな試金石になるにちがいない。

 〇小選挙区制の問題点と克服への道

 今回の総選挙では、改めて小選挙区制の問題点が浮上した。そのカラクリと恩恵によって自民党が「勝利」したことは、すでに指摘した通りである。これに関連して、さし当り2点指摘しておきたい。
 その一つは、得票数と議席数の大きなかい離である。今回の選挙での自民党の得票率は小選挙区で47.82%、比例代表では33.28%であった。しかし、議席占有率は小選挙区で74.4%へと跳ね上がり、30ポイント近くの増である。比例代表の場合には37.5%で、4ポイントほどしか増えていない。
 小選挙区の場合、4割台の得票率で7割台の議席を獲得している。この結果、莫大な「死票」が生まれ、大政党の議席が膨れ上がり、有権者の投票行動が歪められ議席に反映されなくなる。このような歪みが選挙への信頼を失わせ、投票率の低下を招いているのではないだろうか。
 もう一つの問題は、今回新たに明らかになった選挙区割りの混乱である。一票の価値の平等を実現するために選挙区割りの変更がなされ、行政区画や生活圏とは無関係に線引きが行われたために大きな混乱を招いた。しかも、今回は突然の解散でもあったために、この混乱に拍車がかかったように見える。
 このような投票価値の平等を実現するための区割りの変更は、今後も繰り返されるにちがいない。選挙区の人口は固定されず、その流動化と人口構成の変化は避けられないからである。一票の価値の平等を保障する点でも、小選挙区制は極めて不合理で不適格な制度なのだ。
 このような問題を解決するためには、制度を変えなければならない。得票率に獲得議席が連動する比例代表制に変えれば、このような問題は解決する。さし当り、全国11ブロックの比例代表はそのままに、小選挙区を廃止してその定数をそれぞれのブロックの比例代表定数に加算すればよい。
 もし、現行の制度が変わらないとすれば、得票数と議席数の大きなかい離によって自民党が常に優位に立つ状況の方を変えなければならない。そのために、唯一有効な方法は野党間の選挙協力である。小選挙区で与党と野党が1対1で対峙するような状況を作ることができれば、圧倒的に与党が有利になる現行制度の欠陥を一定程度是正することが可能になる。
 しかし、その場合でも選挙区割りの見直しと、それに伴う混乱は解決できない。今後、人口減少が進み、さらに人口分布は変化するにちがいない。その影響を最小限にとどめるための選挙制度の変更、すなわち小選挙区制の廃止はいずれ避けて通れなくなるだろう。

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2月1日(木) ヘイト大統領と好戦首相をともに権力の座から放逐するのが今年の目標 [国際]

 今日から2月です。「もうそろそろ春ですね」と言いたいところですが、雪が降るようで春はまだ先です。

 アメリカの連邦議会で、トランプ大統領の一般教書演説が行われました。日本の通常国会で冒頭に行われる施政方針演説に相当するものです。
 トランプ大統領の演説も安倍首相の演説も、美辞麗句と誇張をちりばめた自画自賛に満ちたものでした。これでどれだけ、国民に希望を与えることができたでしょうか。
 トランプ大統領は「今こそ米国の新時代だ」と宣言し、「米国の強さと自信を国内で立て直し、海外でも強い地位を取り戻す」と主張。今年11月の中間選挙をにらんで、税制改革法の成立や株価上昇など政権1期目の成果を強調し、インフラへの大規模な投資や移民制度改革への決意を表明しました。

 引き続きアメリカファーストを掲げて国際社会を「敵」と「味方」に色分けし、中国とロシアへの対抗意識をむき出しにしています。核戦力の強化を打ち出すなど非核化へと歩み出した国際社会の動向に背を向け、北朝鮮への先制攻撃も示唆するなど安倍首相と同様の「力による平和」を打ち出しました。
 好調な経済を自慢しながら軍事力をさらに強化する方針を示しましたが、その直前にニューヨーク株式市場のダウ工業株が急落し、前日比362.59ドル安となったのは皮肉です。この下げ幅は昨年5月17日以来、約8カ月半ぶりの大きさで、一般教書演説を前に冷や水を浴びせた形になりました。
 11月に中間選挙があるというので、「アメリカは一つのチーム、国家、家族だ」と融和の姿勢を示し、民主党にも秋波を送っています。しかし、民主党の議員14人がボイコットし、抗議の黒い服も目立っていたようです。

 確かに、アメリカに「新たな時代が到来」したことは確かでしょう。これほど国内に亀裂が拡大し、国際的な威信を低めて孤立することはかつてありませんでした。
 壁にこだわって公約を守ろうとする姿勢は、強固な30%ほどの支持者には受けるかもしれません。しかし、それよってアメリカの政治と社会はさらに分断と対立を深めるにちがいありません。
 公約を守らなかった実施されていないと言って批判されるのが通例ですが、公約を守って政策を実現したと言って批判されるのはこれまでにないことです。確かに、「新たな時代」がやって来たとは言えますが、それはやってきてはならない時代だったのです。

 このトランプ大統領との密接な関係を自慢しているのが安倍首相です。施政方針演説では「トランプ大統領とは、電話会談を含めて二十回を超える首脳会談を行いました。個人的な信頼関係の下、世界の様々な課題に、共に、立ち向かってまいります」と、親密さや関係の深さを誇示していました。このようなことが自慢の種になるという感覚がすでに異常です。
 トランプ大統領が、アメリカ国内はもとより世界中の鼻つまみ者になっていることが分からないのでしょうか。まあ、似た者同士だから分からないのも仕方がないのかもしれません。
 これから1年、トランプ大統領と安倍首相はともに手を取り合って世界とアメリカ、日本を分断し混乱の渦に巻き込むことになるでしょう。アメリカ国民とともに日本国民も、それに対する覚悟と責任を自覚しなければなりません。

 それを阻むことが、今年1年の両国の国民にとっての大きな獲得目標になります。中間選挙での敗北と通常国会での追及によって、ヘイト大統領と好戦首相を権力の座から放逐することをめざして全力を尽くさなければなりません。 

 なお、今月も以下のような講演が決まっています。お近くの方や関係者の方に沢山おいでいただければ幸いです。

2月1日(木)18時30分 江東区総合区民センター:戦争法廃止をめざす大島の会
2月3日(土)18時 河辺市民センター:市民連合おうめ
2月4日(日)13時 東京革新懇総会:東京労働会館ラパスホール
2月11日(日)14時 静岡市あざれあ(男女共同参画センター):静岡県革新懇
2月18日(日)13時30分 田無公民館:西東京革新懇
2月20日(火)13時30分 八王子由井市民センターみなみ野分館:スイートピーお喋り会

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