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8月26 日(金) 改憲への賛否や9条改憲への賛否を問う世論調査の「落とし穴」 [憲法]

 「あなたは改憲について賛成ですか、反対ですか」と問われたとします。新聞などによる世論調査では、このように問うのが一般的です。
 しかし、改憲への賛否や9条改憲への賛否を問うこのような世論調査には大きな「落とし穴」があります。何をどのように変えるのかが特定されずに問うのでは、全く正反対の意見が含まれてしまうからです。

 例えば、朝日新聞社(5月3日)の調査では、「いまの憲法を変える必要があると思いますか。変える必要はないと思いますか」との問いに「変える必要がある」43%、「変える必要はない」48%という回答があり、毎日新聞世論調査(5月4日)では、「憲法を改正すべきだと思いますか、思いませんか」との質問に「思う」43%、「思わない」43%と答え、NHK (5 月 1 日 )では、「今の憲法を改正する必要があると思うか」という問いへの回答は「改正する必要があると思う」28%、「改正する必要はないと思う」25% 、「どちらともいえない」43%でした。
 いまの憲法を「変える必要がある」かどうかを問われて、朝日の調査では「必要はない」が多数、読売の調査では同数、NHK調査では「必要がある」が多数となっています。世論はバラバラのように見えますが、それも当然でしょう。
 憲法のどこをどのように変えるのかが明示されずに聞かれているのですから。答える側が勝手に想像して判断しているわけですから、回答がバラバラになるのは当たり前です。

 しかも、「変える必要がある」という回答には、私が言う統治ルールの変更など憲法原理や国の形を変更しない「改憲」と、原理や理念に抵触し破壊してしまう「壊憲」とが混在しています。この両者は根本的に異なっており、厳密に区別されなければなりません。
 世論調査をする側は、この違いに気が付いているのでしょうか。同じ「変える」にしても、憲法原理と国の形を維持し改善するための「改憲」と、憲法原理と国の形を壊してしまう「壊憲」とでは、その方向性は全く逆になります。
 良くするために変えるのか、悪くするために変えるのか。この正反対の意見を一緒にして「変える必要があるか否か」を聞いても無意味だということが分からないのでしょうか。

 憲法9条についても同じような問題があります。朝日新聞社(5月3日)は「憲法第9条を変える方がよいと思いますか。変えない方がよいと思いますか」と聞き、「変える方がよい」29%、「変えない方がよい」63%となり、毎日新聞世論調査(5月4日) での「憲法9条を改正すべきだと思いますか、思いませんか」という問いには、「思う」27%、「思わない」55%と答えています。
 いずれも変えないという意見の方が多数になっていますが、ここで注意しなければならないのは、9条改憲論の中にも、自衛隊の現実にあわせて憲法を変えるという意見と自衛隊が海外に派遣されて米軍などの支援を行う「外征軍」化を防ぐために憲法を変えるという意見があるということです。ここでも「専守防衛」の壁を破るための9条改憲とその壁を強化するための9条改憲という正反対の意見が混在しているのです。
 これを一緒にして「憲法9条を改正すべきか否か」を聞いても意味がありません。もし聞くのであれば、朝日新聞社のように、「憲法第9条を変えて、自衛隊を正式な軍隊である国防軍にすることに賛成ですか。反対ですか」とするべきで、これには「賛成」23%、「反対」69%という回答が寄せられています。

 9条改憲論には、自衛隊の国防軍化や外征軍化をめざすものと、これ以上の増強を阻止することをめざすものという正反対の意見が混在しています。それでも9条改憲への反対論が多くなっているのは、安倍首相がめざしているのは「改憲」ではなく「壊憲」であること、9条改憲によって自衛隊の国防軍化や外征軍化を進めようとしていることが国民の中で理解されるようになってきたからです。
 このような世論の変化に直面して、安倍首相は一定の後退を余儀なくされました。「改憲勢力」や「改憲論」の中には、「壊憲」に反対する勢力や意見も含まれていることに、うすうす気が付いているからかもしれません。
 自衛隊についても同様です。自衛隊への支持や認知度が高まっていますが、それは必ずしも「軍隊」としてのものではありません。

 だから、7割近い人が「自衛隊を正式な軍隊である国防軍にすること」に「反対」しているのです。信頼を高めているのは「軍隊」としてではなく、災害救助のための専門家集団としてだということを忘れてはなりません。
 それを忘れて、安保法を発動させ外征軍としての訓練や装備、機能を強化すれば、国民の反発は免れません。世論による強力なしっぺ返しは避けられないのではないでしょうか。

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8月25日(木) 「壊憲」に反対していた後藤田正晴元官房長官の「情と理」 [憲法]

 『毎日新聞』8月23日付夕刊の「特集ワイド」に後藤田正晴元官房長官が取り上げられていました。「海外での武力行使認めず」「『待て』と言う勇気を持て」という見出しが付けられています。
 この後藤田さんの鎌倉霊園にあるお墓の墓碑には、「自身の戦争体験から来る平和への強い思いが一貫した政治信念であった」と書かれているそうです。長男の尚吾さんによるものだと言います。

 後藤田さんはイラン・イラク戦争のときペルシャ湾への掃海艇派遣に反対しました。アメリカからの要請を受けて、中曽根首相と外務省が海上保安庁の巡視艇か海上自衛隊の掃海艇の派遣に踏み切ろうとした際、「戦争になりますよ。国民にその覚悟ができていますか。閣議でサインしません」と首相に迫って、派遣を断念させたのは有名な話です。
 この後藤田さんを初当選以来支えてきた秘書の川人さんは「後藤田さんは、誰かが『ストップ』と言わないと日本人は流れてしまうと体感していて、その役目を果たし続けた」と語っています。この記事に付けられた「『待て』と言う勇気を持て」という見出しはここから取られたのでしょう。
 与党に後藤田なき今、「ストップ」と言うのは野党の役割です。「待て」という勇気を持つべきなのは、主権者たる私たち一人一人であると言うべきでしょう。

 ところで、この記事の中で、自民党が「自主憲法制定」という党是を棚上げした時期のことが紹介されています。それを主導したのも後藤田さんでした。
 95年の立党40周年の大会で採択された「理念」や「新綱領」では憲法に触れず、「新宣言」では「新しい時代にふさわしい憲法のあり方について、国民とともに議論を深める」と書かれていただけです。その背後には、後藤田さんの憲法観がありました。
 それは著書『情と理』に書かれている言葉に象徴されています。この記事でも紹介されていますが、後藤田さんは次のように述べています。

 「僕の考え方では、マッカーサー憲法と言っても、それは平和主義なり、基本的人権なり国際協調なり、ある意味における普遍的な価値というものは、日本の中に定着しておるのではないか、だから、マッカーサーが作ったんだから変えるという時代はもはや過ぎたのではないかと。こういった価値を基本にしながら、どういうことで新しい憲法を作るのか。例えば89条には私学に対する寄付を禁止しているのにやっている、だからこの条文は変えるべきだと言うんなら、それはいい。しかし自主憲法を言う人たちの頭の中に持っているのは、再軍備ではないか、それには僕は反対だと言っているわけです。それは早すぎると。
 再軍備だってやりたければやって、もういっぺん焼け爛れる者が出ても構わんと言うのならやってもいいよ。しかしいま言うことではないな。この時期に9条を直すとなると、そう簡単にことは行かないよ。この流動化している世界の中では早すぎる。」(後藤田正晴『情と理[下]』講談社、998年、288頁)

 このブログの読者であれば、すでにお分かりだと思います。後藤田さんは、通常の「改憲」には賛成でも、憲法原理や理念を破壊する「壊憲」には反対しているのです。
 それは、「平和主義なり、基本的人権なり国際協調なり、ある意味における普遍的な価値というものは、日本の中に定着しておるのではないか、だから、マッカーサーが作ったんだから変えるという時代はもはや過ぎたのではないかと。こういった価値を基本にしながら、どういうことで新しい憲法を作るのか。例えば89条には私学に対する寄付を禁止しているのにやっている、だからこの条文は変えるべきだと言うんなら、それはいい」と述べている点に象徴されています。
 憲法の三大原理や自由で民主的な平和国家という国の形など「ある意味における普遍的な価値というものは、日本の中に定着しておるのではないか」と言い、それを前提としてその枠内での「改憲」なら、「例えば89条には私学に対する寄付を禁止しているのにやっている、だからこの条文は変えるべきだと言うんなら、それはいい」というわけです。逆に言えば、「9条を直す」ことによって平和主義を破壊するような「壊憲」は許されないと主張していることになります。

 私は8月20日付のブログ「『壊憲』阻止のための新たな戦略をどのように打ち立てるべきか」で、「『改憲』と『壊憲』を分ける境界は、憲法の三大原理にあります。自由で民主的な平和国家としての現在の日本の国の形を変えてしまうような憲法条文の書き換えであるかどうかという点が最大の判断基準になります」と書き、「このような基準からすれば、『改憲』勢力とされている与党の公明党や野党のおおさか維新の会は『壊憲』勢力にはなりません。民進党内の『改憲』勢力も保守リベラルを含む自民党内の『改憲』志向の議員たちも、必ずしも『壊憲』を志向しているわけではないでしょう」と指摘しました。
 ここに紹介した後藤田さんの主張はまさに「保守リベラル」のもので、これらの人は「必ずしも『壊憲』を志向しているわけではない」ことを示しています。このような意見の自民党内保守リベラルとも共闘可能な幅広い立憲共同の戦線を構築することが、今こそ求められているのではないでしょうか。

 「改憲」については、「憲法は時代に応じた改正が必要であり、いつまでも解釈論で済ませるべきではない」「憲法を吟味する機会を増やし、国民の声を反映していくことが憲法の価値を高める」「政権交代があった場合でもぶれることのない、一貫したルールを作っていくという視点が大事だ」などという意見が出されています。これらの意見はいちがいに否定できません。
 そうであっても、後藤田さんの言うように「平和主義なり、基本的人権なり国際協調なり、ある意味における普遍的な価値……こういった価値を基本にしながら、どういうことで新しい憲法を作るのか」が議論されるべきでしょう。その前提はあくまでも、憲法の三大原理や自由で民主的な平和国家としての国の形を変えないことです。
 「こういった価値を基本にしながら、どういうことで新しい憲法を作るのか。例えば89条には私学に対する寄付を禁止しているのにやっている、だからこの条文は変えるべきだと言うんなら、それはいい」のです。このような時代の変化に応じた統治ルールの変更を目的とし、現行憲法の原理や理念、普遍的な価値を基本にした憲法条文の書き換えであれば、何も問題はないのですから……。

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8月24日(水) 実証された市民と野党共闘の力 [論攷]

 〔以下の論攷は、日本科学者会議『東京支部つうしん』2016年8月10日号、に掲載されたものです。〕

 参院選では、与党が70議席を獲得して61議席という目標を越えました。改憲勢力も発議可能な3分の2の議席を突破しています。残念な結果に終わりましたが、同時に、新しい希望の光も見えました。それは市民と野党共闘の力が実証されたことです。
 昨年の安保法制(戦争法)反対運動では、SEALDsやママさんの会など市民が大きな役割を果たしました。学者や文化人も市民連合を結成して運動の発展に貢献しました。このような盛り上がりを背景に「野党は共闘」という声が上がり、全国32ある1人区で野党共闘が成立したのです。
 この野党共闘がどれほどの効果を生むのか。それが試された今回の参院選でした。初めての取り組みでしたが、大きな成果を上げたと言えるでしょう。
 第1に、野党側は東北甲信越を中心に11の1人区で議席を獲得することができました。11勝21敗ですから、まだ「負け越し」ですが、それでも3年前の2013年参院選での2勝19敗に比べれば5倍以上の議席獲得になります。統一候補を立てなければ、このような成果は得られなかったでしょう。
 第2に、比例代表での各党の得票の「足し算」以上の得票を上げました。たとえば、山形(当選)1.71倍、愛媛(落選)1.66倍、長崎(落選)1.40倍、沖縄(当選)1.40倍など、28の1人区で合計を上回り、「共闘効果」が示されています。朝日新聞の出口調査では無党派層の6割、公明党支持者の2割、自民党支持者の1割も、統一候補に投票していました。
 第3に、与野党による一騎打ちの構図が有権者の関心を高め、1人区での投票率を押し上げるという効果もありました。3年前との比較では合区を除く30選挙区のうち、26の1人区で前回を上回っています。伸び率が高かった青森(9.06ポイント増)や愛媛(6.96ポイント増)は特に激戦となった選挙区でした。
 第4に、共闘に加わった各党にとっても、少なからずメリットがありました。民進党は改選議席を維持できなかったとはいえ前回の17議席をほぼ倍増して32議席となり、共産党も改選議席を倍増させて8議席を獲得しています。社民党は改選2議席を維持できませんでしたが、比例区の得票を28万票増やしました。
 最もメリットが大きかったのは生活の党だったかもしれません。事前の推計ではゼロとされていた比例代表で1議席を獲得し、1人区でも岩手と新潟で党籍のある候補が当選しています。統一候補でなければ、2人の当選はおぼつかなかったでしょう。
 このように、市民が野党と協力・共闘することによって統一候補の擁立に成功しただけでなく、積極的に選挙活動にも取り組んで与党と互角に渡り合える新たな可能性を切り開きました。今後の首長選挙や衆院補選、来るべき総選挙でも野党共闘を維持・発展させなければなりません。参院選の最大の成果は、このような形でアベ政治の暴走をストップさせる新しい力を誕生させたところにあったのです。

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8月23日(火) 市民と野党の共同の発展を願う―参議院選挙をふりかえって(その2) [論攷]

〔以下の論攷は、『雑誌 経済』2016年9月号、に掲載されたものです。2回に分けてアップします。〕

 成果を生んだ野党共闘

 今回の参院選で与党は勝利しましたが、圧勝ではありませんでした。野党も完敗したわけではありません。安倍首相に凱歌を上げさせなかったのは野党協力の力です。市民と野党との共同のたたかいが参院選にも引き継がれ、全国32の1人区で野党が統一候補を擁立したからです。
 その結果、11選挙区で野党候補が当選しています。3年前には2勝にすぎませんでしたから大きな前進です。議席が増えただけではありません。当選にはいたらなくても得票増となり、1+1=2という「足し算」以上の効果を発揮しています。『朝日新聞』の出口調査によれば、無党派層の56%、公明党支持者の24%、自民党支持者でさえ11%が野党統一候補に投票しました。その結果、28の1人区で各党の比例代表での得票合計を上回っています。
 市民と野党が統一候補を立てて一騎打ちになったために有権者の関心が高まり、投票率も上がりました。26の1人区で前回よりもアップしています。
 共闘に加わった各政党にもメリットがありました。民進党は3年前の前回民主党時代の17議席をほぼ倍増させ、32議席を獲得しています。共産党も改選議席3を6議席に倍増させ、比例代表では601万票と1998年の820万票に次ぐ2番目の得票になりました。
 社民党は改選2議席を守れませんでしたが、比例代表の得票を28万票増やして3年前の1議席を維持しました。生活の党と山本太郎と仲間たちは比例代表で12万票増となって1議席を獲得し、岩手新潟では党籍のある候補が当選しています。

 改憲阻止・戦争法廃止に向けて

 参院選での与党の勝利によって、安保法(戦争法)廃止に向けた運動の再構築が必要になりました。同時に、改憲勢力が衆参両院で3分の2を超え、改憲に向けての動きが強まる危険が生じています。いつでも改憲発議可能な「危険水域」に入ったことは間違いありません。
 改憲を悲願としている安倍首相は、虎視眈々とチャンスを狙っており、少しでも隙を見せれば攻勢をかけてくることは目に見えています。投票日夜のテレビ番組で、さっそく「どの条文をどう変えていくか、憲法審査会で議論していく。いかに与野党で合意を作っていくかだ」と述べ、秋から改憲論議を始める意向を明らかにしました。当面、憲法審査会の再開とそこでの審議を通じて準備工作を進め、緊急事態条項に限って改憲発議を行うのではないかと見られています。
 今後、改憲をめぐる動向を注視し、戦争法の発動による既成事実化を阻み、民進党内の改憲派の動きを抑えて立憲4党の共闘を維持することが必要です。同時に、憲法に対する国民の理解を深めて改憲勢力の狙いと危険性を周知していく活動が重要になっています。
 また、野党共闘を継続し、首長選挙や衆院補欠選挙、来るべき解散・総選挙へと引き継いでいかなければなりません。安倍暴走政治をストップさせるために手に入れた最強の武器である野党共闘こそ、日本の政治変革に向けての希望となっています。戦争法を廃止して立憲主義を確立し、個人の尊厳を守ることのできる新しい政府の樹立に向けて、これからも闘いは続きます。

 本格的に政権をめざす

 今回の参院選で、野党は共闘すれば勝てるという実績を示しました。それは初歩的なものでしたが、自公政権に代わる受け皿づくりとしては大きな成果です。このよう野党協力が実現したのは2月19日の5党合意ですが、それから参院選まで半年もありませんでした。
 いわば、野党協力は突貫工事でプレハブ住宅を建てたような状況で選挙に突入したわけです。これを風雪に耐えるような本格的な建物にするのが、これからの課題です。そうしなければやがてやってくる解散・総選挙には勝てません。戦争法を廃止して立憲主義を回復するための新しい政権作りに本格的に取りかかることが必要です。
 選挙後の『朝日新聞』の世論調査で、安倍内閣を支持する理由として「他よりよさそう」という回答が46%で最多、与党が勝利したのは「安倍首相の政策が評価されたから」が15%、「野党に魅力がなかったから」が71%となっています。野党にとっては厳しい意見ですが、新たな政権の受け皿づくりによって魅力を高め、支持される政策を打ち出し、「他の方がよさそう」と思われるようになれば政権交代できるということでもあります。
 そのためにも、第1に、主体的な力を強めることが必要です。この間のたたかいで培われた市民や野党間の多様なつながりや信頼関係を大切にし、今後の共同の発展に生かしていかなければなりません。共同の力を発展させ団結を強めることです。
 第2に、政策的な魅力を高めることが必要です。個々の政策課題では安倍政権に対する支持は高くありません。その弱点を突くため、野党共同で国会に提出した法案や選挙に当たっての協定などを基礎に政策合意の幅を広げ、安保・自衛隊・税制・エネルギーなどの基本政策に関する合意を追求していかなければなりません。
 第3に、大衆運動の分野で個々の政策課題についての日常的な取り組みを強め、一点共闘を発展させることです。これは将来の連合政権に向けての土台作りであり、それを支える力を草の根から準備することでもあります。
         *      *      *
 野党共闘は始まったばかりです。緒戦で一定の成果を上げましたが、どう発展するかはこれからの取り組み如何にかかっています。再生に向けての足場はできました。いかに魅力を高めて幅広い国民と共同できるかが、その成否を決めることになるでしょう。
                                 (7月19日記)

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8月22日(月) 市民と野党の共同の発展を願う―参議院選挙をふりかえって(その1) [論攷]

〔以下の論攷は、『雑誌 経済』2016年9月号、に掲載されたものです。2回に分けてアップします。〕

 日本の進路を左右するとして注目されていた参院選です。7月10日に、その投開票が行われました。選挙結果を示すボードに赤い花をつける安倍首相は満面の笑みを浮かべていました。マスメデイアも改憲勢力が3分の2を越したことを大きく報じていました。
 一方、この選挙結果を見て、都知事選挙に手を挙げたのが鳥越俊太郎氏で、野党与党と市民の共闘が実現しました。こうして、あらたなたたかいが開始されたのです。

 目標は達成したけれど

 参院選に際して、安倍首相は与党による改選議席の過半数(61議席)突破という目標を掲げていました。与党の獲得議席は、自民党56議席、公明党14議席で合計70議席でしたから、目標を達成したことは明らかです。それだけでなく、大阪維新の会や無所属などの改憲勢力全体で参院の3分の2の議席を超えました。
 しかし、自民党圧勝であったかといえば、必ずしもそうは言えません。もう一つの悲願であった27年ぶりの単独過半数を回復できなかったからです。選挙後、無所属だった平野元復興相を自民党に入党させて実現しましたが、これは姑息な政治工作によるものでした。
 また、自民党は3年前の2013年参院選と比べて9議席減となっています。比例代表では1議席増となったにもかかわらず、選挙区で10議席を減らしたからです。実は、自民党の議席は衆院で12年総選挙を頂点として14年総選挙で2議席減となり、参院の議席も13年をピークに今回は9議席減っています。自民党の力は衆参両院で下り坂にあるということになります。

 安定志向に助けられたのでは

 自民党の党勢が弱まりつつあり、昨年は「2015年安保闘争」ともいえる市民の運動が高揚したにもかかわらず、どうして自民党は勝ち、野党は安倍首相を追い詰めることができなかったのでしょうか。
 世界的に見ても、アメリカの大統領選挙では既成政治家への不信感が高まって「トランプ現象」や「サンダース現象」が起こり、ヨーロッパでは極右勢力が台頭しています。イギリスでもポピュリズムが強まってEU離脱が決まりました。それなのに日本の安倍政権は国会内と自民党内での「ダブル一強」を維持しています。それは何故でしょうか。
 それには、移民問題の不在や日本周辺の安全保障環境が大きく影響していると考えられます。欧米の先進国に比べて外国からの難民の流入は少なく、大きな社会問題にはなっていません。北朝鮮の核開発やミサイル実験、中国の南シナ海での埋め立て、尖閣諸島周辺での不穏な動きなど、安全保障面で不安をあおるような報道が相次ぎました。
 世界経済の先行きが不透明になり、バングラデシュのテロ事件で日本人が狙われて犠牲になるなど、国民の多くは不安感を抱き安定志向を強めたのではないでしょうか。バブル崩壊以来、長期のデフレ不況に痛めつけられてきた国民は民主党政権に裏切られ、もうこりごりだと思っているところに安倍首相から「あの暗い、停滞した時代に戻っても良いのですか」と言われてひるんでしまったのです。アベノミクスによって得られたというささやかな成果にかすかな期待をつなぎ、その行く末を見極めようとしたのかもしれません。

 「選挙隠し」と「争点隠し」

 これに加えて、今回の参院選は「選挙隠し」「争点隠し」とも言うべき選挙戦術が駆使されました。マスメディアの選挙報道は貧弱で、とりわけテレビからの情報は極端に少ないものでした。選挙権が18歳以上へと70年ぶりに変わった歴史的な国政選挙であったにもかかわらず、ワイドショーがもっぱら報じたのは参院選ではなく都知事選でした。
 事実、調査会社エム・データの集計ではNHKを含む在京地上波テレビの放送時間は2013年の前回参院選より3割近く減っています。情報・ワイドショー番組で民放は6割減だったそうです。安倍政権による懐柔と恫喝によってメディアが委縮して放送を控え、結果的に選挙への関心を低めて「選挙隠し」と「争点隠し」に手を貸すことになりました。
 また、安倍首相による「争点隠し」という選挙戦術も顕著でした。その最たるものは安保関連法や改憲に関わる争点です。「首相が本気で改憲を目指すのであれば、自ら国民に問いかけるべきではないか」(『朝日新聞』11日付)と批判されるように、街頭演説では完全に口をつぐんでしまいました。
 その代わり、安倍首相は都合のよい数字を並べてアベノミクスの成果を誇り、政策を訴えるのではなくネガティブキャンペーンを全開させ、共産党への反感をあおり野党共闘への批判を繰り返しました。このような選挙戦術が一定の効果を上げたことは否めません。
 しかし、争点を隠しきれなかったところでは厳しい審判を受けています。TPP(環太平洋連携協定)への不信が強い北海道東北甲信越、東日本大震災や原発被害への対応の遅れが批判を浴びた被災3県、米軍基地被害や辺野古新基地建設が怒りを引き起こした沖縄などでは野党が善戦し、福島と沖縄では現職閣僚が落選しています。

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8月21日(日) 「改憲」から「壊憲」を区別して批判を集中する新戦略の意義とメリット [憲法]

 安倍首相による改憲暴走が可能となった新たな情勢の下で、新しい戦略の提起が必要になりました。改憲に反対する野党が抵抗しても、それを無視して改憲に向けて突っ走ることができる議席を衆参両院で手に入れることに成功したからです。
 このような情勢の下で、いかにして安倍首相の暴走を阻むかが問われています。私の回答は、「改憲勢力」全体を敵とするのではなく「改憲」勢力を味方にして「壊憲」勢力に批判を集中するべきだというものです。

 この両者は憲法条文の書き換えである明文改憲を目指している点で共通しています。その意味では「改憲勢力」であることに間違いありません。
 しかし、この両者には根本的な差異があります。現行憲法の平和主義、基本的人権の尊重、国民主権という「三大原理」を前提するか否か、自由で民主的な平和国家という現在の国の形を破壊するか否かという点での違いです。
 現行憲法の原理や理念を前提に国の形を守るような憲法の書き換えには反対せず、それを破壊するような「壊憲」に対してだけ打撃を集中するというのが新しい「壊憲」阻止戦略の眼目です。具体的には日本会議を中心とした戦前(というより戦中)回帰の改憲構想を掲げている勢力です。

 これは一部の「改憲」を認めることになりますから、これまでの護憲運動からすれば一定の譲歩であり、後退を意味することになります。それが明文「壊憲」の呼び水になったり、そのために利用されたりする危険性も十分にあります。
 しかし、現行憲法の原理と理念を守り、国の形の破壊を許さないという原則については今まで以上に明確にされています。この点で柔軟で原則的な戦略になっていると、私は判断しています。
 確かに一定のリスクはありますが、それも覚悟のうえで「壊憲」反対勢力を拡大することが必要になっています。そうすることでしか、幅広い国民の合意と共感を得て安倍首相の改憲暴走を阻止することはできず、あるかもしれない国民投票で多数派を形成することはできないのではないでしょうか。

 「改憲」阻止から「壊憲」阻止への戦略的転換は、「護憲」勢力の結集から「立憲」勢力の結集へと憲法をめぐる共同の幅を拡大することになります。明文改憲を主張していても、それが憲法原理や国の形の破壊を目指すものでない限り、「立憲」勢力として手を結ぶことができるからです。
 また、憲法を「不磨の大典」とし金科玉条としてしまっているのではないか、憲法に指一本触れさせないということで良いのかという疑問や、96条という改憲条項があるのに全ての改憲を否定するのはおかしいではないか、「改憲」と聞くだけで条件反射的な反発をしているのではないかなどの批判が、これまで「護憲」勢力に対して寄せられていました。
 新たな戦略を掲げることによって、これらの疑問や批判に対しても簡単に応えることができるようになります。現行憲法の原理や理念、国の形を破壊するような「壊憲」でなければ、社会の変容に対応して憲法原理や理念を具体化したり、統治ルールを変更したりするような「改憲」であれば、憲法条文の書き換えには何の問題もないのだと。

 この戦略は、この間発展してきた市民と野党との共同を憲法の分野にも拡大しようとするものです。その対象には、これまでの民進、共産、社民、生活の野党4党に加え、公明や維新、さらには改憲派の無所属議員や自民党内の保守リベラル層をも巻き込んでいく幅広い「壊憲」反対勢力の結集を展望しています。そうしなければ、「壊憲」を目指す国民投票では勝てないでしょうから。
 これらの勢力を区分けする基準は「憲法の三大原理」と理念、国の形を破壊することには反対だということであり、安倍首相自身の言葉を借りれば「自由と民主主義、基本的人権、法の支配という共通の価値観」を擁護するということにあります。これに敵対し破壊しようとする条文の書き換えは「壊憲」であり、それは自民党の憲法草案が示しているような戦中の軍部独裁体制の再来やファシズム国家の誕生にほかならず、断固として阻止しなければなりません。
 そのためには、国民の理解と納得が得られ、幅広い支持を獲得できるような戦略を掲げ、味方を増やして敵を孤立させることが必要です。批判する相手を限定して分断し、「改憲勢力」を腑分けして最も危険な「壊憲」勢力を浮かび上がらせ、そこに打撃を集中することです。

 このような戦略は、当面の安倍改憲暴走への抵抗を意図しているだけでなく、あるかもしれない国民投票を考慮に入れつつ、解散・総選挙後に成立する可能性のある新しい連立政権をも展望しています。憲法についての最低限の共通認識を確立しなければ、連立を組むことは困難でしょうから。
 今回の私の提起は、そのための一つの「試論」にすぎません。これを材料に幅広い議論がなされ、新たな「壊憲」阻止戦略を掲げた「立憲」勢力の幅広い共同の輪が形作られることを望んでいます。

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8月20日(土) 「壊憲」阻止のための新たな戦略をどのように打ち立てるべきか [憲法]

 本日、帰京しました。ということで、ブログを再開します。
 故郷はありがたきかな、を実感した帰省でした。お陰様で、たっぷりと充電することができました。
 お世話になったすべての方にお礼申し上げます。ありがとうございました。

 今回の帰省でのメイン・イベントは分校の同級会です。卒業以来、初めて頸城村立大瀁小学校松橋分校の同級会が開かれ、懐かしい顔に会うことができました。
 男8人+女8人の「32の瞳」です。このうち男6人+女4人の10人が顔をそろえました。
 小学校4年の時以来ですから、55年ぶりの同級会です。大瀁中学校までは一緒でしたから、半世紀ぶりの再会という人もいました。

 この帰省期間中にも、ずっと考え続けていたテーマがありました。憲法をめぐる新たな状況にどう対応するべきかという問題です。
 今のところたどり着いた結論は、「壊憲」阻止のための新たな戦略を打ち立てなければならないというものです。以下、この点について述べることにしましょう。

 参院選の結果、衆参両院で「改憲勢力」が3分の2議席を超え、いつでも改憲発議できるような状況になり、憲法をめぐる状況が新たな極めて危険な段階に立ち至ったことは明らかです。私はそれを「危険水域」に入ったと表現しています。
 もちろん、このことは直ちに「難破」することを意味していません。上手に船を「操舵」することができれば、無事にこの「危険水域」を抜けだすことは可能です。
 そのために、どのような戦略を立てるべきか。これまでとは異なった新たな危険を避けるために、どのような「操舵術」が必要になっているかが、ここでの問題です。

 そこでキーワードになるのが、「改憲」とは区別される「壊憲」です。この両者はどう違うのでしょうか。

 「改憲」とは憲法の文章を書き変えることではありますが、憲法の原理や理念に抵触するものではなく、平和主義、国民主権、基本的人権の尊重という「憲法の三大原理」を前提とした条文の変更のことです。
 それには限界があります。現行憲法の原理や理念を前提とし、自由で民主的な平和国家という国の形を保ったうえでの改定であって、それを踏み越えてはなりません。
 『毎日新聞』の古賀攻論説委員長は8月2日付の「社説を読み解く:参院選と改憲勢力3分の2」で、「一口に憲法改正と言っても、理念・基本原則を対象にする場合と、統治ルールの変更を検討する場合とでは、論点の階層が根本的に異なる」と指摘しています。この「統治ルールの変更」が「改憲」ということになります。

 これに対して、「壊憲」は憲法の文章を変えるだけでなく、原理や理念も変えてしまおうというもので、「憲法の三大原理」を前提としない条文の変更です。
 これには限界がありません。現行憲法の原理や理念を破壊し、自由で民主的な平和国家という国の形を変えてしまう憲法条文の書き換えを意味しています。
 毎日新聞の古賀論説委員長の言う「理念・基本原則を対象にする場合」がこれに当たります。9条改憲はその典型であり、安倍政権が目指しているのはこのような憲法の破壊、すなわち「壊憲」にほかなりません。

 「改憲」と「壊憲」を分ける境界は、憲法の三大原理にあります。自由で民主的な平和国家としての現在の日本の国の形を変えてしまうような憲法条文の書き換えであるかどうかという点が最大の判断基準になります。
 秋の臨時国会が始まれば憲法審査会が再開されるでしょう。この審査会が「審査」すべき焦点は、条文の書き換えが「改憲」か「壊憲」か、つまり憲法の三大原理を前提としたものであるか、現在の国の形を変えてしまわないかどうかという点にあります。
 このような判断基準からすれば、現在提案されている自民党の憲法草案は完全に失格であり、それは「改憲」のたたき台にはなりません。撤回するか破棄することを、審査会再開の前提とするべきでしょう。

 このような基準からすれば、「改憲」勢力とされている与党の公明党や野党のおおさか維新の会は「壊憲」勢力にはなりません。民進党内の「改憲」勢力も保守リベラルを含む自民党内の「改憲」志向の議員たちも、必ずしも「壊憲」を志向しているわけではないでしょう。
 真の「壊憲」勢力は「日本会議」と「美しい日本の憲法をつくる国民の会」に絞られます。これと同調する「日本のこころを大切にする党」や「日本会議国会議員懇談会」「日本会議地方議員連盟」に属する議員たちこそが真の敵であり、与党と自民党内にクサビを打ち込むことによって、これらの勢力を孤立させることが新たな戦略の基本になります。
 憲法の三大原理を前提とし、自由で民主的な平和国家という国の形を変えないような「改憲」であれば、拒否する理由はありません。もちろん、その内容やタイミングについては十分な検討が必要であり、それが「壊憲」への「呼び水」や「お試し」にならないように警戒しながらではありますが。

 安倍首相は海外に出かけて援助資金をばらまいていますが、その時、必ず口にするのが「自由と民主主義、基本的人権、法の支配という共通の価値観」という基準です。これこそ、憲法の三大原理や国の形に通底する理念であり、今後の憲法論議においても前提にされるべき重要な基準になります。
 憲法審査会が再開される際には、ぜひこの「共通の価値観」に基づいて「審査」することを与野党間で申し合わせてもらいたいものです。安倍首相自身が再三再四、繰り返してきた重要な価値観ですから、よもや自民党によって拒まれるようなことはあり得ないと思いますよ、多分……。

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8月14日(日) 天皇の「生前退位」問題をどう考えるか [天皇]

 こんな日がいつか来るのではないかと思っていました。天皇家の人々が、「皇族として生きるのは大変だから何とかしてくれ」と言い出す日が。
 天皇制というのは、統治に関わる制度を個人の犠牲によって維持しようとする非人間的な仕組みです。その無理が高じて「もう年だから、辞めさせてもらいたい」と天皇によってSOSが発出されたのが、今回の「生前退位」問題なのではないでしょうか。

 天皇制について、ずっと昔に私は拙著『概説・現代政治―その動態と理論』(法律文化社、1993年)で、「天皇制の存続が憲法上の様々な規定と矛盾していること」を指摘しながら、以下のように書いています。この本は1993年に出版したもので、第3版で絶版になりました。
 「天皇家の存在は、憲法第19条、20条、22条等で保障されている基本的人権の例外を作り出している。
 天皇制の存在は、『法の下の平等』(憲法第14条)という近代立憲国家の基本原理を犯し、天皇家の人々はその『社会的身分又は門地』によって、『政治的、経済的、又は社会的関係において、差別』されていることになる。天皇家における人権の回復は、もう一つの『人間宣言』として実行されるべき課題だといえよう。」

 今回の「生前退位」についての希望を強くにじませた天皇の「ビデオメッセージ」は、まさにこのような「人間宣言」そのものでした。人間としての心からの叫びを、憲法に抵触しない形で伝えたいという苦肉の策だったのではないでしょうか。
 人間であれば年を取るのは当然ですし、肉体や健康面での問題も出てきます。若いころと同じようにはやれませんから、現役を退いて余生をゆったりと過ごしたいと思うのは自然なことでしょう。
 このような人間としての当たり前のあり方を否定し、心の底からの叫びに耳を貸さないというようなことがあって良いのでしょうか。「天皇だから」ということで、誰にでも認められているリタイア(退位)の権利を無視し続ければ、「法の下の平等」に反する新たな差別を強いることになります。

 できるだけ早い機会に希望を叶えてあげるべきでしょう。摂政を置いたらどうかという意見もありましたが、それでは解決にならないということが、先の「ビデオメッセージ」によって示されています。
 天皇が望んでいることは、一刻も早く「生前退位」を可能にすることです。しかも、現在の憲法はそれを禁じているわけではありません。
 改憲問題に関連させることなく、皇室典範を改正して「生前退位」を可能にすればよいだけのことです。もし、政府・与党がグズグズしていたら、野党が共同して国民の声を聴きながら皇室典範の改正案を作成し、国会に提出するべきでしょう。

 しかし、この問題は「退位」だけにはとどまらない広がりを持っています。国事行為と私的行為の中間にあるグレイゾーンとしての公務のあり方をどう考えるかという問題にも関わるからです。
 公務は憲法に規定されていませんが、象徴としてのあり方から生ずるものとして実行されてきました。その範囲が広がってきたために高齢者には担いきれないという問題が生じています。
 したがって、公務をなくす、あるいは思い切って限定するということも一つの考え方でしょう。しかし、天皇自身はそれを望んでいず、天皇の来訪や出席を喜んだり政治的に利用したりしようとする人々にとって、それは受け入れがたい解決策だということになります。

 また、この問題は女性・女系天皇や女性宮家の創設という問題にも関わってきます。「生前退位」すれば皇太子が天皇となり、その後継をどうするのかという問題が生じ、やがては女性・女系天皇を認める必要が生まれてくる可能性があります。
 だから、日本会議などこれに反対する人々は「生前退位」にも反対するのです。「辞めたい」と言っている天皇に、「死ぬまで続けろ」と無理強いしているようなものです。
 このような無理強いや差別を根本的になくすには、いずれ天皇制を廃止することが必要になります。もともと政治制度の維持を少数の特別な人々に委ねることには無理があり、民主化が進んで少子化社会になってきている今日の日本社会への適合性を失ってきているから、様々な問題が生じているのです。

 時代の趨勢からすれば、このような無理はいずれもっと拡大した形で矛盾を生み出すにちがいありません。それを防ぐためには、最低限、公務を制限し女性差別を撤廃することが必要です。
 そうしたからと言って、君主制という制度が時代遅れで非民主的な制度であるという本質的な問題は解決できません。また、天皇家の人々の人権を制限し、結婚や出産、老化など人間としての属性に抵触する形でなければ制度が維持できないという根本的な矛盾も解消されません。
 今回の天皇が行った「ビデオメッセージ」は「我々も人間なのだ」という「人間宣言」であっただけでなく、「だから、人間扱いして欲しい」という意味での「人間宣言」であり、さらには「いつまで、このような非人間的な制度を維持するつもりなのですか」という問いかけでもあったのではないでしょうか。それにどう答えるかが、我々「主権の存する日本国民の総意」に問われているのです。

 なお、明日から20日まで、故郷の新潟帰省します。この間、ブログもお休みさせていただきます。
 新潟から帰ってきた後の21日から再開する予定です。引き続きご愛読のほど、よろしくお願いいたします。


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8月13日(土) 新しい情勢で注目すること~革新懇運動にもふれて [論攷]

〔以下の論攷は、『全国革新懇ニュース』第381号、2016年7・8月合併号、に掲載されたものです。〕

 「改憲勢力3分の2超す」「自公改選過半数」という見出しが躍っていました。参院選投票日翌日の朝刊です。
 確かに、自民党と公明党の与党におおさか維新の会となどを加えた「改憲勢力」は参院の3分の2を越えました。しかし、その中身はバラバラで、憲法のどこを変えるかについても一致していません。「加憲」を唱える公明党は与党ですが「改憲勢力ではない」と弁解しています。改憲に向けての動きが急発進するという状況にはありません。
 それに、与党は安倍首相が目標として掲げていた61議席を越えましたが、この目標自体が低いものでした。自民党は56議席で単独過半数の回復に1議席足りず、与党も合計で70議席になりましたが、3年前の前回2013年参院選と比べれば6議席減となっています。万全の勝利というわけではありません。

 市民と野党共闘の力が証明された

 どうして、こうなったのでしょうか。それは、「2016年安保闘争」によって育まれた市民と野党との共同のたたかいが参院選にも引き継がれたからです。国会前の集会で自然に沸き上がった「野党は共同」という声に背中を押され、全国32ある1人区で野党が統一候補を擁立しました。
 その結果、11選挙区で野党候補が当選しています。3年前には2勝にすぎませんでしたから大きな前進です。このため、自民党は選挙区で10議席減となり、比例区で1議席増やしたものの9議席減らす結果になりました。
 野党共闘で議席が増えただけではありません。当選にはいたらなくても得票増となり、1+1=2という「足し算」以上の効果を発揮しています。無党派層の8割、自民党支持者の3割、公明党支持者の24%が野党統一候補に投票したという出口調査もあります。その結果、28の1人区で各党の比例代表での得票合計を上回りました
 市民と野党が統一候補を立て一騎打ちになって有権者の関心が高まったため、投票率も上がりました。26の1人区で前回よりもアップしています。
 共闘に加わった各政党にも大きな成果がありました。民進党は3年前の前回民主党時代の17議席をほぼ倍増させ、32議席を獲得しています。共産党も改選議席3を6議席に倍増させ、比例代表では601万票と1998年の820万票に次ぐ2番目の得票になりました。
 社民党は改選2議席を守れませんでしたが、比例代表の得票を28万票増やして3年前の1議席を維持しました。生活の党と山本太郎と仲間たちは比例代表で12万票増となって1議席を獲得し、岩手新潟では党籍のある候補が当選しています。

 改憲阻止を掲げて共闘を発展させよう

 急速に進む状況にないとはいえ、いつでも改憲発議可能な「危険水域」に入ったことは間違いありません。改憲を悲願としている安倍首相は、虎視眈々とチャンスを狙っていることでしょう。少しでも隙を見せれば、すかさず攻勢をかけてくることは目に見えています。
 このような企みを阻むだけでなく、安保法制(戦争法)を廃止できるような新しい政府の樹立に向けての取り組みを継続しなければなりません。そのために市民と野党との共同の発展を意識的に追求することが必要であり、これこそ革新統一戦線結成につながる新たな希望にほかなりません。
 ともに選挙を闘うことで思わぬ人と知り合い親しくなるということもあったでしょう。こうして培われたつながりや信頼関係を大切にし、今後の共同の発展に生かしていくことが必要です。
 また、野党共同で国会に提出した法案や選挙に当たっての協定などを基礎に政策合意の幅を広げ、安保・自衛隊・税制・エネルギーなどの基本政策に関する一致を追求していくことも重要です。これは将来の連合政権を展望した準備作業でもあります。そしてそのためにも、大衆運動の分野で個々の政策課題についての日常的な取り組みを強め、一点共闘を発展させなければなりません。
 まさに、革新懇運動の出番の時代が訪れたということになります。それぞれの地域や選挙区において参院選での野党共闘の実情を検証して教訓を明らかにし、今後の首長選挙や衆院補欠選挙、解散・総選挙などでの野党共闘の実現と勝利に向けて、今から準備しておくことが必要です。
 参院選での野党共闘は初めて取り組まれたものですが、最初のチャレンジにしては大きな成果を上げ、「こうすれば勝てる」という確信と展望を示すものとなりました。共同と統一の力こそ政治を変えるカギなのだということが実証されたわけです。安倍首相に対抗して、「この道を、力強く、前へ」進めていこうではありませんか。

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8月12日(金) 「政治を変える」ことと労働組合―参院選の結果をふまえて(その3) [論攷]

〔以下の論攷は、勤労者通信大学の『団結と連帯③労働組合コース』に掲載されたものです。3回に分けてアップします。〕

3、変革の推進力としての労働組合

 労働組合が持つ力と武器

 今日の社会において働く人々の数は圧倒的です。この働く人々が労働組合を結成して恒常的な団結の力を発揮し、賃金・労働条件の改善や権利擁護・拡大を目指して活動するのが労働組合運動にほかなりません。そして、この組織された数の力は政治に対して働きかけるうえでも大きな影響力を発揮することができます。
 企業内や生産現場での要求実現のために大きな武器となるのはストライキです。他方、政治や行政に対して要求を実現するためには選挙で多数を獲得しなければなりません。そのための武器となるのは数の力です。
 労働組合はこのような数の力を発揮して政治を変える力を持っています。同時に、要求で団結する大衆的な組織ですから、組合員の思想・信条の自由を守らなければならず、特定の政党への支持を強制してはなりません。

 野党共闘の推進力として

 今回の参院選では、戦争法を廃止して立憲主義を守り、個人の尊厳を回復するために市民運動も積極的に選挙に関わりました。市民連合を結成して、1人区での野党共闘の推進と統一候補の当選のために大きな役割を果たしています。このような野党共闘の推進力の一つが労働組合でした。
 その典型的な例は鹿児島選挙区での野党共闘と県知事選に対する取り組みに見られます。ここでは、参院選の統一候補として県連合の事務局長が立候補し、県知事選挙での統一候補として県労連の事務局長が立候補予定者になりました。その後、県知事選に無党派の三反園訓さんが立候補の意思を示したために川内原発の一時稼働停止という協定を結んで一本化し、現職を破って三反園さんが当選しています。
 すでにふれたように、全国でも32ある1人区の全てで野党共闘が実現し、11人が当選するという成果を上げました。この共闘の推進力として各県の労働組合も大きな役割を果たしています。政治を変え、働く人々の要求を実現するために、組織された社会的勢力としての数の力を発揮したことになります。

 むすび

 参院選では与党が勝利しました。しかし、3年前の2013年参院選と比べて、自民党は比例代表で1議席増となったものの選挙区では10議席減となり、合計でも9議席の減少となっています。アベノミクスは支持されたわけではなく、安倍首相が口をつぐんでいた改憲についても白紙委任されたわけではありません。
 このような結果になったのは、1人区での野党共闘が成果を上げたからです。今回が最初の試みでしたから、それはまだ初歩的なものですが、今後に生かされるべき大きな教訓を示しています。

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